312: 名前:浅葱☆02/28(月) 22:30:04
歩いているうちに見つけた椅子に腰かける。
外の景色が良く見える場所だった。
空はこんなに青くて、太陽がこんなに眩しいのに、私の心は全然晴れない。
当たり前、か。
「ウイ」
嗚呼、この声、優奈ちゃんだ。
でも、駄目だ、振り向けない。
「ウイ」
再び聞こえた声。
さっきより幾分か優しい声色だった。
喉の奥がツンとして、声が上手く出せない。
否――出したら、多分、駄目だ。
泣いてしまう。
「ウイの所為じゃないよ」
――どうして、そんな優しい声を掛けるのよ。
罵ってくれた方が、いっそ清々しいのに。
友達が、元彼が、私の所為で事故に遭って。
私の所為で大怪我して。
あんなに血まで出て。
今、生死の境を彷徨っているというのに。
どうしてそんな優しいのよ。
「チアキは、大丈夫だよ。さっきフミヤも言ってたでしょ? チアキは死なないって」
頷く。
その瞬間出てきそうになる鼻水を軽く啜った。
だけど、文弥君は死んだりしないって言ったけど、そんな確証はない。
私だって思ったよ、蓮君は死んだりしないって。
私を置いて行ったりしないって。
だけど無理だった。
もう会えなかった。
会いたいと、願ったのに。
会えなかったんだ。
津田も?
津田もそうだったら?
私はこんなに会いたいと思って、こんなにも強く願っているのに、――もう二度と会えなかったら?
私はきっと生きてなど行けない。
316: 名前:浅葱☆03/02(水) 20:09:29
優奈ちゃんが私の傍に寄り、私の手に触れる。
そこで漸く気付いた。
私が自らの手を強く、とても強く握っていたことに。
一つ一つの指をゆっくりと解き、諭すように呟く。
大丈夫だよ。チアキだもん。大丈夫。
それはまるで子を宥める母親のようで、いつもの優奈ちゃんにはとても見えなかった。
手を見ると、それは指の形にくっきりと赤くなっていて、私がどれほど強く握り締めていたのか、一目瞭然だった。
次第に視界が滲み、涙がぽろぽろと零れる。
私の痛みなど、津田の痛みに比べれば、小さいものだ。
共有したい。
彼の痛みを。
津田は今、生きたいと頑張っているのに。
――私は何にも出来ないから。
せめて、彼の痛みだけでも共有したかった。
「ウイ、戻ろ。後悔するよりも今はチアキの為に祈ってて。今はそれ以外考えないで」
私の腕を引き、そう言う優奈ちゃん。
力強い瞳、そしてその言葉に背中を押され、私は再び手術室の前へと戻った。
「憂ちゃん」
文弥君が私の名を呼ぶ。
自分自身、津田のことでいっぱいいっぱいの筈なのに私の心配をしてくれる。
何処まで私は幼稚なのだろう。
自分のことばかりで、周りや、津田自身のことなど考えなかった。
急に自分が恥ずかしく思えた。
そう言えば津田先生は先程から一言も発していない。
――私に、怒っているのだろうか。
「ごめん、なさい。私の所為です」
その言葉に文弥君と津田先生が同時に私を見た。
「謝るなよ。謝ったって何にもならない。今は津田が生きてることだけを考えろ」
文弥君の、言い方は少しきついけど、尤もな言葉。
文弥君と優奈ちゃんは似てる。
そして津田のことを良く分かってる。
津田のことを想ってる。
「……どんな事情かは良く分かんないけど、憂ちゃんが思い詰めちゃ駄目だよ。あいつなら大丈夫だから」
津田先生の、優しい声。
本当はこの中の誰より津田を心配してて、不安な筈。
それを面に出さず平然とした表情を浮かべている先生は、やっぱり大人なんだなって改めて思い知った。
318: 名前:浅葱☆03/02(水) 20:38:37
津田先生の前に行き、背の高い先生を見上げて、言った。
「……怒ってますか?」
すると先生は両手の親指と人差し指で私の頬を摘み、それぞれを反対の方へ引っ張った。
抓られ、引っ張られたそこがひりひりと痛む。
「怒ってないよ。――だからそんな申し訳なさそうな顔しないでよ」
その言葉に私はただ頷くことしか出来なかった。
先生が満足そうな顔を浮かべ、頬から手を離す。
「大丈夫だから、な?」
ぽんぽんと頭を叩きながらそう言う。
その仕草が津田とダブって、どうしようもなく切なくなった。
――津田、会いたいよ。
目を閉じてそう願った。
すると次の瞬間、先程からずっと点灯していた手術中と書かれた灯りが消え、静かに扉が開いた。
自動ドアだから早く開いている筈なのに、その一瞬が私には凄く長い時間に思えてもどかしかった。
「先生!」と言うと、津田先生が小走りで医師の元へと駆け寄った。
文弥君と優奈ちゃんもそれに続く。
私は何故だか足が凍ったみたいに動かなくなり、そこに呆然と立ったままだった。
医師は、何と言っているのだろう。
口元を見ても何と言っているかまでは読み取れなかった。
だが、三人が安堵の表情を浮かべていること。
確信した。
――津田、生きてる。
中からベッドに横になっている津田を、看護士が運んできた。
皆が口々に津田の名を呼び、再び安堵の表情を見せる。
そして私のすぐ横を津田を乗せたベッドが通り過ぎてゆく。
津田は、目を瞑り、深く眠っているようだった。
呆気に取られ、何も発せず、駆け寄ることも出来なかった。
津田先生がこの場を離れる時、また私の頭を軽く叩いた。
「大丈夫だったろ?」そんな言葉が聞こえたような気がした。
後ろから残された二人が私の名を呼ぶ。
私は突っ立ったまま、反応出来なかった。
溢れた涙が頬を伝い、服や床に滴となって落ちる。
津田、生きてた。
良かった、良かった。
320: 名前:浅葱☆03/02(水) 21:45:53
もう遅い、と言うことで私と文弥君と優奈ちゃんは家に帰宅することになった。
外はもう暗く、闇はこれから私たちを呑み込もうとしているようにも見えた。
「本当にウイ大丈夫?」
心配そうにそう問いかけてくる優奈ちゃんに親の迎えがあるからと言い別れた。
本当は優奈ちゃんが心配していたのは帰る手段の話ではなく、――それも含まれていたと思うが――私の精神状態を心配してくれたのだろうと思う。
だけど、独りになりたかった。
考えなければいけないこともある。
近くのベンチに腰掛け、深く息を吸い、ゆっくりと時間を掛けて吐き出した。
あの後、津田先生に津田は今日は麻酔の所為で目を覚まさないだろうと説明され、私たちは明日また来ることになった。
明日……私は津田に会ってどうするつもりなのだろう。
まず、謝らなければ。それが第一。
津田は許してくれるだろうか。
否、許す、許さないの問題ではない。
仮令、津田が許したとしても私はまたこの罪を背負って生きて行くこととなるのだ。
考えるとまた涙が出そうだ。
津田が、私のことなどもう興味も無くなってしまったら――?
その可能性が頭を掠めた。
私はこれからどうやって生きて行くのだろう。
……ほら、こんな風に私はまた、自分のことばかり。
津田が私の所為でこんな目に遭ったというのに、情けない。
兎に角、今は津田が生きててくれた、それだけでいい。
これ以上のことは望まない、己の幸せなど望まない。
暗闇を、二つの平行した灯りが此方に向かって走ってくる。
あれは多分、家の車だ。
運転しているのは父だろう、そして後ろの座席に母が乗っている筈だ。
私を隣に座らせて、抱き締めるために。
大丈夫? 怪我は? 大変だったね。
そんなやり取り。
良いよ、お母さんお父さん、慰めないで。
辛いのは私じゃない、痛みを生じているのは私じゃない。
だからそんなにかわいそがらないで。
だけど、目の前に停められた車から出てきた母に抱き締められた瞬間、その温もりが今の私には酷く堪えた。
321: 名前:浅葱☆03/03(木) 22:13:11
翌日。
昨日あまり眠ることが出来なかった私の目の下にはクマがくっきりと残っていた。
私を待っていた文弥君と優奈ちゃんはそんな私を見ても何も言わずにいた。
そして現在、津田の病室の前。
心臓の音が直ぐ近くで聞こえて五月蝿い。
「行くぞ」
コンコン、とノックをし、意を決したように文弥君が扉に手を掛けそれを開いた。
津田先生が待ち侘びていたような表情を見せる。
津田はと言うと、未だベッドに横たわり、すやすやと眠っていた。
過去に一度私が見たあの無防備な寝顔だった。
「未だ起きてないんだ。コイツ一回寝たら中々起きない奴だからさ」
こつん、と頭を小突き、笑いながらそう言う津田先生。
あの時はそんな印象を受けなかったが、成程そうだったのか。
「御免ね、今日、皆ズル休みだね」
爽やかな笑顔の津田先生。
そうか、優奈ちゃんは兎も角私たちは津田先生含め四人で学校を欠席している。
まぁ、津田の場合は特別だが。
きっと学校の皆の想像はついているだろうが、学校に行ったときに色々聞かれることを考えると――やや憂鬱になる。
「あ、じゃあ皆にちょっとコイツのこと任せていい? 一旦家に帰って必要なもの取って来たいんだ」
それを快く受け入れ、津田先生を送り出した。
すると優奈ちゃんが「フミヤ、優奈たち外に出てよっか」と言い出し、二人とも病室を出て行ってしまった。
私に気を遣ってくれたことは明らかだった。
近くにあった椅子を引き、ベッドの横に持ってくる。
暫く、津田の寝顔を見ていた。
「津田」と、小さな声で呼んでみた。
応えてくれないかなと期待したが、津田の目は開きそうになかった。
323: 名前:浅葱☆03/03(木) 22:44:55
開け放たれた窓から日差しと共に心地よい風が入ってくる。
その風がカーテンを揺らし、私の髪を靡かせ、津田の髪までも泳がせた。
その所為で津田の髪が顔に掛かってしまったことに気付き、手を伸ばした。
触った津田の髪は相変わらずサラサラで、不意に触れた肌からは津田の温もりを感じた。
凄く久し振りに津田に触ったような錯覚に陥る。
「生きてて有難う」と、またしても小さな声で呟いた。
刹那、手首を勢いよく掴まれる。
それによって身体がビクッと反応し、一歩身体を後退させた。
しかしその手が津田の手だということに気付き、津田の名を呼んだ。
すると長い眠りから覚めたかのようにゆっくり津田が目を開いた。
その目が私の目を捉え、お互いの目がパチと合う。
どういう表情を浮かべればいいものか分からず、笑顔になりきれていない顔を津田に向けた。
「起き、た?」
今の状況を理解していないのだろう。
津田の返答は長く、辺りをきょろきょろと見渡し、現状を把握しようとしていた。
「昨日、事故に、遭ったの。あの、津田、ごめ……」
御免。
その言葉を私は言いきれなかった。
津田の言葉によって遮られた所為だ。
……否、そんなことなどどうでも良かった。
どうでも良くなるほど、私は津田の口から出てきたその言葉に驚愕した。
「あんた、誰?」
325: 名前:浅葱☆03/03(木) 23:16:49
正直に言うと、冗談だと思った。
次にこれは夢だと錯覚した。
それほどまでに私はこの言葉を信じられなかった。
「な、に言って……」
色付いていた世界が輝きを失い、灰色の世界ばかりが私の目に映る。
瞬きを二度、してみる。
だけど津田の瞳の力強さと腕の感触。
とてもこれが冗談で、夢だとは思えなかった。
掴まれている手が震える。
動揺しながらも、もう一度、先程と同じ言葉を津田に問うた。
「つ、だ? な、何言って」
手だけでなく声までも震えている。
脳が上手く機能しない。
もうその言葉以外、何と声を掛けていいのか分からなかった。
「や。だから、あんた誰? ってか此処何処? 病院? 何、人の病室に入ってきてんの?」
やや早口でそう告げる津田。
これが、紛れもない津田自身の言葉だと信じたくなかった。
だってそれを認めてしまったら、津田が私を憶えていないということだ。
……つまり、きっとこれは、
記憶喪失。
326: 名前:浅葱☆03/03(木) 23:43:15
言葉にすると理解するまで早かった。
頭の中で高速に情報を処理する。
軽くめまいを感じてベッドに手をつくと反動で椅子が倒れた。
ガタンという床と椅子がぶつかった音が病室――廊下まで響いた。
病室の異変に気付いたのか扉ががらりと開く。
「憂ちゃん? どうかし、た」
不思議そうな声を発しながら病室を覗き込むと津田が起きていることに気付いたのか文弥君の言葉が徐々に小さくなった。
文弥君から病室内へと視線を移した優奈ちゃんも気付き「チアキ!」と喜びの声を上げる。
だけど私の目の前に居る津田はそちらを見たまま特にどういうリアクションもしなかった。
そして再び告げる。
「あんたら、誰?」という非情な一言を。
病室に沈黙が訪れる。
きっと後ろに居る二人は驚いた顔を津田に向けていることだろう。
私はそんな顔など見たくなくて、「どうして?」「何故?」なんて言葉を問われたくなくて、ただひたすら、津田の顔ばかりを見ていた。
津田が今思い出したように私の手を離す。
少し乱暴に、ぞんざいに。
「どうして俺は知らない奴の手なんか握っているんだ」と言いたげな表情で。
津田が生きていれば、それで良いと思っていた。
それ以上の不幸など存在しないとまで思っていた。
だけど、ねぇ、こんなことってあるんですか。
私の所為で津田は事故に遭って、怪我まで負って、――だけど。
こんなに酷い仕打ちってあるんですか、神様。
329: 名前:浅葱☆03/04(金) 22:27:57
記憶喪失、記憶障害。
私たちが後から医師に告げられたその言葉は、私が一番聞きたくない言葉だった。
津田先生もやはり驚き、信じられないという顔をしていた。
当然だろう。
津田先生にとって事実上唯一の肉親である者が事故に遭い、記憶を失った。
でも一番大切なものを失ったのは、津田だ。
己の記憶を失くし、だけど失くしたことさえも分からない。
津田は今どれほど不安なのだろう。
……これから私たちはどうすればいいのか。
忘れた記憶を思い出させる?
無理矢理?
津田は今のままでいいと望んでいたら?
私たちの過去は?
あの幸せだった日々は?
もう、元には戻らない……?
記憶を失くした原因の張本人の私が、津田の記憶を戻すなんて今の津田からしてみれば大きなお世話だろうか。
仮にも知らない人間、まして自分を事故に遭わせた人間が傍に居て、津田のために必死になる。
私たちにしてみれば当たり前のことでも、津田にとっては余計なことかもしれない。
「津田は、どうして欲しいんだろう……、私たちに」
呟くようにそう言った。
津田の病室へ向かう途中の廊下でのことだった。
前方を歩いていた三人が私を振り向く。
一番最初に声を発したのは文弥君だった。
「さあな。それを聞きに行くんだろ? 俺たちが結論を出すべきじゃない」
俯き、その言葉を受け止める。
そうだ、津田に聞かなきゃ分からない。
全部津田に任せるんだ。
これからの未来を……――。
333: 名前:浅葱☆03/08(火) 20:29:00
「は、記憶喪失? 俺が?」
その言葉を聞いた津田は驚いてはいたが至って冷静だった。
と、言うより笑っていて本気で信じていないようにも思えた。
そう言えば、記憶を失くしたと言ってもそれは何処から何処までなのだろう。
先程やっていた軽い検査では、身近なものの使い方は大体憶えているようだった。
つまり、失くしたのは津田に関わる者の記憶。
津田にとっても私たちにとっても無くてはならないものだった。
「つまり、何? あんたは俺の兄貴で、あんたらは俺の友達? 親友に、その彼女兼元カノに、――彼女?」
一人一人を指差し、再確認するように復唱する。
「んで、あんたらの記憶を失くしちゃったわけで、それを思い出してほしいって?」
そう言うこと? と面倒そうに言う津田。
態度から分かる、津田が言いたいことが、津田がこれから言う言葉が。
「別に今すぐ無理に思い出さなくても良いだろ。
確かに俺は今何にも憶えてないし、勿論あんたらのことも知らない。
記憶を失くす前に俺たちには関わりがあったのかもしれないけど、今の俺には正直、どうでもいい。
無理に思い出そうと思わないし、……思い出したくない。あんたらには悪いけ、ど」
津田の言葉が徐々に小さくなって行く。
津田はきっと今驚いているんだ、――私が泣いているから。
分かってた。分かってた。
津田がそう言うことも、そう思っていることも、今の津田にとって私たちの存在など“どうでもいい”ことも。
だって、あの頃の津田はそうだったから。
私に出会ったときの津田は、そういう人間だった。
近寄ってくる女たちなんかどうでも良くて、ただ自分が退屈しなければそれで十分。
相手の気持ちなど知らない振り、踏み込んだ付き合いなどしない、カラダだけの関係。
――津田は、そういう人だったから。
335: 名前:浅葱☆03/08(火) 20:40:28
だけど優しかった。
私が迷子になったら一番に見つけてくれて、いつも私を守ってくれて、私を好きだって言ってくれた。
誰より不器用だけど、誰よりも私を想ってくれた。
そんな津田だから好きになった。
あの頃の津田はもう居ない。
もう、居ないんだ。
「ごめ、私、出てるね」
溢れ流れる涙を止められなくて、急いで病室を出て行こうとする。
そのとき、ある声が私を引き止めた。
「あんたを泣かせてるのは俺なの?」
津田の声だった。
否定も出来ず、ただ立ち尽くす。
「俺が何も覚えてないことが、悲しいの?」
そう指摘され、頷くことも首を振ることも出来ない。
この気持ちが自分でも分からなかった。
悲しいのか、辛いのか、寂しいのか、空しいのか。
どれも正しいような、でもどれも当てはまらないような気もして、自分の気持ちの整理がつかなかった。
「分かんない。……へへ」
自分で作ってしまった間が厭で、思わず笑って誤魔化した。
そして今度こそ病室を出て行った。
337: 名前:浅葱☆03/09(水) 19:16:30
来るときには晴れていたというのに、窓の外では雨が泣いているように降り続いていた。
私の気持ちを見事に表しているようだった。
そして、溜息を一つ。
病室……戻れない、戻る気になどなれない。
帰ってしまおうか。
何れにしろ、病室に戻っても辛いだけ。
それにあの空気には耐えられない。
津田の記憶を戻そうにも――津田自身がああでは無意味だろう。
足をエレベーターへと向け、歩き出す。
「待てよ」
何者かに呼び止められ、一歩踏み出した足を留めた。
声で分かった。
――津田だ。
「帰んのか?」
「……そうだよ」
私がそう答えてから数分、私たちは見つめ合っていた。
津田は何も言わない。
何をしに来たのだろう、どうして私を呼び止めたのだろう。
疑問はあったが、津田が何も言わないことにとうとう痺れを切らし、先程と同じように足先をエレベーターのある方へと向けた。
「あ、おい、待てって」
最終更新:2011年07月15日 15:16