45: 名前:HARU☆03/31(木) 14:39:34
「奏太は、ど?くるみちゃんの前ではどんな感じ?」
撫でていた手が離れて、そう尋ねられた
どんな…って、
「すごく…、大切にしてくれる人です」
「そりゃよかった」
「優しいし、落ち着くし、…大好き、です」
かぁーっと顔が赤くなる
親目の前に何言ってるんだ私!
恥ずかしさマックスだ…!
「あいつ、わがままでしょ?」
「は、はいっ。…っあ!えと…っ」
「あはは、いいよいいよ。すぐ拗ねたりやきもちやいたりするでしょ」
う、と黙る私を見て「当たりだ」と笑う歩さん
「子供っぽいとこあるからね」と続けて付け加える
「でもそういうとこも含めて、すっ好きです…っ」
「べた褒めだね」
歩さんはいひひ、と笑う
話を続けてアイスティーを飲み干した頃、時刻は夜9時
夏空はすっかり暗くなっていた
歩さんが家まで送ってくれる為、帰る前に奏太くんの部屋に寄る
部屋の電気だけつけられていて、吐息を立てながらベッドで眠っていた
46: 名前:HARU☆03/31(木) 15:07:37
「寝顔…、可愛いー…」
小さく呟くと腰を下ろし、ベッドに手を置き顔を覗き込む
頬は赤く適度に汗もかいている
体温を測るためにそっと頬に触れる
「ん……っ」
「あ、わっ。ごめんね、起こしたっ?」
ゆっくり目を開ける奏太くんに、焦って謝る
手をぱっと離そうとすると、熱い手でぎゅっと掴まれる
「くるみ…先輩……?」
「う、うん。くるみです。熱いけど大丈夫っ?」
火照った顔をしてぼーっと薄目でこっちを見る
か、可愛すぎる…っ
「私もう帰るね。あと…、ごめんね…」
「…何が……?」
「体調悪いの気付けなくて、…それからわがまま言って」
握られている手と逆の手で、乱れている髪を直すように触る
「またね」と言って立ち上がろうとすると、握っていた手を引っ張られる
「…っの、わ!」
ドサッ…、と奏太くんの上に倒れこむ
かっ、顔が近い!
ぱちっと目が合うと恥ずかしくなり、奏太くんの上から離れようとする
すると顔を引き寄せられ、熱をおびた唇に触れる
47: 名前:HARU☆03/31(木) 15:25:16
触れたいつもよりも熱い唇
心臓がどきどきと音を鳴らす
重なるだけのキスだったのに、引き寄せる力が強くなり
奏太くんは自分の舌でこじ開けるように私の口内に侵入してくる
「奏太く、待っ……!」
荒い息と濃厚なキス
風邪のせいか、いつもより熱が伝わる
てゆうか下で歩さん待ってるのに…っ
数十秒後に糸をひいて唇が離れた
その瞬間にぱっと奏太くんから距離をとる
ぼーっとしたままの奏太くん
「か、奏太くん…?」
「先輩は…、わがままじゃないよ…」
「え?」
「体調悪くても…俺が会いたかった、から…。俺のわがまま…だから……」
何この生き物
可愛すぎて愛しすぎて…、離れたくなくなるじゃないか
ますます好きになるじゃないか
「ゆっくり治してね。大好きだよ?」
「ん…………」
頭を撫でてそう言うと、優しく返事をしてくれた
もう、駄目だなあ…
奏太くんがいてくれないと私の毎日、つまんなくなっちゃった
52: 名前:HARU☆04/01(金) 08:42:57
歩さんに送ってもらって、帰宅をした
寝る前も奏太くんのことばっかり
大丈夫かな?辛くないかな?
同時に思い出してしまうのは触れられたキス
奏太くんはいつもそう、必ず私に触れる
優しい手で、暖かい体温で、強引なキスで
付き合い始めの頃よりずっとずっと…、
―――…愛されてる
*
次の日の朝、耳元で着信音が鳴る
まだ眠たい目を閉じたまま、手探りで携帯を探して開くと、"奏太くん"の名前
目がぱちっと覚めたかのように急いで通話ボタンを押す
「も、もしもしっ」
『あ、くるみちゃん?』
聞こえた声は話し方も声も違う女の人
この声…って、
「日和、さん?」
『ピンポーンっ。ごめんね、くるみちゃんの番号わかんないから
勝手に奏太の携帯からかけちゃったっ。あ、今起きた感じ?』
「あ、はい」
朝から陽気な声だなあと思い、少し笑顔になる
『昨日は奏太ありがとね?それでお願いあるんだけどー』
「お願い?」
『奏太まだ熱が結構あって今日部活休んだのね。で、私も旦那も
今から仕事だし、八尋も出かけるんだけど奏太一人おいてくのは
さすがに不安で、もしくるみちゃん来れるなら来て欲しいんだけど…』
語尾がだんだん小さくなっていき、私に問い掛けてる
まだやっぱり熱高いんだ…
「い、行きますっ、一時間後には着きますっ」
『本当っ?助かるーっ、ありがとねっ』
電話の向こうで喜ばれると嬉しくなる
通話を終えるとすぐに準備を始めた
53: 名前:HARU☆04/01(金) 09:04:03
奏太くん家に行く前にゼリーなどの食べやすいものを買って行った
インターホンを押すと玄関の扉が開き、日和さんが迎え入れてくれた
「あの、奏太くんの熱ってどのくらい……」
「まだ8度越えなのよー、下がんなくて。まあ、夏風邪は馬鹿がひくってね」
けらけらと笑う日和さん
いや、笑っちゃ駄目ですって…
買って来たゼリーを冷蔵庫に入れさせてもらおうとすると
リビングの扉を開くと同時に私服姿に鞄を斜めにかけた歩さんが出てきた
「お、はようございますっ」
「おはよ。今日は奏太、よろしくね」
昨日と変わらない笑顔でそう言ってくれる
そのまま歩さんは仕事に向かって行った
「歩さんって何のお仕事してるんですか?」
「テレビ局。私がまだ新人デザイナーだった時に
局内で出会って一目惚れして猛アタックしちゃった」
日和さん、さらっとすごいこと言った
テ、テレビ局って企画とか広報とかよくわかんないけどすごいじゃん!
並みの夫婦じゃないな…
「羨ましい、です」
「そう?私からしたら高校で出会った恋がずっと続いてく方が羨ましいよ?」
日和さんはにこっと笑う
なんだか照れて目を合わせられなくて「ありがとうございます」と小さく言った
54: 名前:HARU☆04/01(金) 09:16:39
日和さんが仕事に行った後、すぐに八尋さんも出かける準備をした
「友達ですか?」
「紀子とデート」
靴を履きながらそう答える八尋さん
そっかあ…、のりと
なんだか嬉しくなってしまった
「何か困ったらリビングの電話の横に母さんの携帯番号書いてあるから」
「はい」
「電話はとらなくて大丈夫。宅配来たら受け取ってね」
「はい」
いつもへらへらしてる八尋さんが珍しく頼もしい
なんて、言わないけどね
「あと奏太に襲われそうになったら連絡して?」
「…しませ、ん」
やっぱり八尋さんは八尋さんだ、と身に染みた
悪戯気に笑うと「じゃ、よろしくね」と言い、鍵を閉めて出ていった
家の中が一気に静まり返る
ふうっ、と一息ついて階段を上り、奏太くんの部屋の扉をゆっくり開ける
咳をしながらベッドで横になっていた
とりあえずタオルを水で濡らしたものを額にあてる
「ずーっと傍にいるよ?」
ベッドに肘をつき、ただ奏太くんの傍にいる
62: 名前:HARU☆04/01(金) 17:36:31
夏とはいえ冷房のかけすぎは身体に障るから、窓を開けて網戸にする
換気も含めて過ごしやすい空気になればと思って
奏太くんは咳もやみ、穏やかな顔で眠ったまま
でも汗も適度にかいてるし今のところ問題なし
時刻はお昼になろうとしていた
「ふぁ…、眠…」
窓の外を覗きながらあくびをする
朝、まだ寝ている時間に電話があったから眠いっちゃ眠い
気持ち暑くなり、髪の毛が邪魔になったので簡単にポニーテールにする
「……ん」
ごそっとベッドで動きながら奏太くんが小さく声を漏らす
すぐに傍に行って顔を覗き込むとゆっくり目が開く
「起きた?気分はどう?」
「……くるみ先輩?」
「あ、日和さん達みんな出かけるから頼まれたのっ」
ぼーっとしたまま私を見つめ「…そう」と小さく呟く
「何か食べれる?あ、お腹すいてる?」
「帰って……」
「……え」
"帰って"と私に言うと、重々しく身体を起こす
64: 名前:HARU☆04/01(金) 18:03:49
腰を起こすと頭を押さえる奏太くん
まだ辛そう…、それに
「なんで帰ってなんて言うの」
「移るからに決まってんでしょ…」
「一人じゃ何もできないじゃん…っ」
そんな奏太くん放っておけないし、日和さん達に頼まれたんだもん
「任されたんだから帰らないよ」
「……じゃあ、せめて部屋からは出ていって」
「嫌」
「…………はぁ」
今は奏太くんの言うことなんか聞いてらんない
体温計を取り出して渡すと、諦めたように受け取り熱を測り始める
「それにね」
「ん……?」
「こんな時に不謹慎かもしんないけど、奏太くんといれて
実は嬉しいなーって思ってるんだけど。……やっぱずるい、かな?」
「……やめて、熱上がる」
熱のせいかはわからないけど奏太くんの頬がさっきより赤くなる
嬉しくなりそうな笑顔を堪えていると、ピピピピッと測り終えた音が鳴る
「38度調度…。何か欲しいものある?ご飯食べないと薬も飲めないし」
「…じゃあ、何か食べる……」
「雑炊とか大丈夫?」
「うん……」
おしっ、と気合いを入れて立ち上がり奏太くんを残して台所に行く
今日は私がついてるからね
66: 名前:HARU☆04/01(金) 18:19:10
できるだけ野菜を多めに取り込んだものにした
自分家じゃないから多少台所の使い方に戸惑ったけど割りと早めに完成
部屋に戻ると転がっていた奏太くんが身体を再び起こす
「味は悪くないと思うよ?熱いから気を付けてね」
「ありがと…です…」
ゆっくりだけど着々と口に運んでいく奏太くん
全部食べ終わると水を渡して、風邪薬を飲む
「辛い?大丈夫?」
「ん……、ちょっと寝ます……」
だるそうにそう言うとベッドにごろんと転がる
大丈夫かな…、思ったより辛そうなんだけど…
片付けを終えるとすぐに奏太くんの傍に寄る
額に新しく濡らしたタオルを置いて、布団も掛け直す
「良くなって部活も遊びも、たくさんしよーね…」
奏太くんの手をぎゅっと握りながら呟く
そのままうとうとして気付くと私も寝てしまった
69: 名前:HARU☆04/01(金) 20:06:48
午後2時、奏太の目が覚める
風邪薬のせいか身体が幾分か楽に感じた
午前よりも重くない身体をゆっくり起こすと、
ベッドにもたれかかって寝ているくるみに気付く
静かな寝息にぎゅっと握られている手
「…………」
そっとくるみの髪の毛に触れると、ぴくっと起き上がる
「寝ちゃった!……あ、」
「おはようございます」
はっ、として叫ぶと起きていた奏太くんにくすっと笑われた
お、起きてたんだ…
「ごめ、寝てて…!熱はっ?」
「ん。薬のおかげかだいぶ楽になりました」
「よかったあ…っ」
普通に話して笑ってくれる奏太くんを見て胸を撫で下ろす
顔色も良さそうだし、安心したあ
「ありがとうございます」
「ううん、全然。あ、でもまだ安静ねっ」
「はい」
また柔らかく笑う奏太くんにつられて、私も笑顔になる
奏太くんが風邪なのにやっぱり不謹慎だよね
忙しくてなかなか会えない夏休みに、
風邪のおかげでこうして一緒にいれることを喜んでるの
そんなことを伝えると「俺も不謹慎かも」、と優しく笑ってくれた
75: 名前:HARU☆04/01(金) 22:50:23
体温を測ると37度前半まで下がっていた
見た感じ回復してる様子だし問題なさそうだ
「大丈夫…ですか?」
「ん?何が?」
「や、風邪移ったりしてないかなー…と」
「大丈夫だよー、私意外と強いもんっ」
ぐっと腕に力を入れて力強いポーズをしてみせる
「細っ」と私の腕を見て笑う奏太くん
「移るなら昨日のちゅーだね」
「っごほ…!」
わざとらしく言い、横目でちらっと見ると奏太くんは咳き込む
あらら、熱があってぼーっとしてた割には覚えてたんだ
「いつもより甘えん坊で甘い言葉を吐く奏太くんだったぞ?」
「…体調悪いと弱くもなるでしょ……」
「うふふふー」
「…変な笑い方やめて下さい」
照れた様子で困り顔の奏太くんがすごく可愛い
ずっとにやにやしてしまう
「あ、ゼリーとかヨーグルトあるよ?取ってくるねっ」
「ま、待って!」
立ち上がろうとすると腕を引っ張られ、奏太くんの膝の上にトスッと座る
「奏太くん?」
「あ…、や…今いらないから…。ここに、いて」
ぎゅうっと後ろから抱き締められる
でた、甘えん坊さん
可愛いすぎるんだ馬鹿やろう
「…うん」
抱き締められたその腕に優しく触れ、頭をこてんと乗せる
77: 名前:HARU☆04/01(金) 23:19:16
急に抱き締めていた腕をゆっくり解く
「?」と思って奏太くんを見つめると、
「汗かいてるし…、着替える」
と言って私の返事も待たずにシャツを脱ぎ始めた
奏太くんの男の身体に恥ずかしくなり、くるっと思い切り顔を逸らす
後ろで「あっちぃ…」という声が聞こえ、変にどきどきする
「…そこの引き出しからタオル取って下さい」
「あ、はいっ。タオル、ね!タオルっ」
ぎこちない返事をすると立ち上がってタオルを取り出す
奏太くんの方を見ないように腕だけ伸ばしてタオルを渡す
「…?なんでこっち見ないの?」
「やっ、着替えてる、…から」
見れませんよ直視できませんよ!
やっ、見たことあるけどその時はそれどころじゃなかったし!
…って何思い出してんだ私!落ち着け!
―――と、心の中で突っ込みながら深く深呼吸をし、落ち着く
バサッと音がし、脱いだシャツが床に投げられ着替え直した様子
すると再び後ろから奏太くんの腕が伸びて、あっという間に引き寄せられる
「……意識されると意識するんですけど」
胸がどきん、と鳴った
最終更新:2011年07月16日 16:14