萌えます。年下男子 続き21

130: 名前:HARU☆04/08(金) 22:31:33

入浴を終えた部員達が食堂に足を運び、夕食に手をつけ始める



「うんめーっ!生き返るわ!」
「相沢も手伝ったんでしょ?まじ幸せーっ」

「あんたらくるみのことばっか!私も作ったんだけど!」



二年同士のやりとり

千穂ちゃんが「食うな!」と悪戯気に皿をわざと取り上げたりする

まぁ、作ったってゆうか食堂の人の手伝いしか本当にしてないんだけどね



「くるみ、お風呂行ってこよ」
「あ、うんっ」



のりが手招きをする

身体中ひりひりで痛いし汗臭いもんな私



「相沢風呂行くの?一緒に入る?」
「洗ってあげよっか?」



一年はまだしも、二年は口々に声をかける



「奏太くんならいーよ?」



くるみがわざと聞こえるように言うと、一人だけ大きく咳き込む

それを見ると楽しげに食堂から退出する



「んだよー、やっぱり北條かよー」
「奏太後でまじシメる」


「大変だね、奏太」



佐々木が笑いを堪えながら奏太の背中を優しくさする



「…本当、何考えてんだあの人……」



はぁーっ、と奏太は頬を染めて長いため息をつく






131: 名前:HARU☆04/08(金) 22:59:07

お風呂からあがると寝間着に着替え、邪魔な髪を後ろでくくる

いやー、生き返った

日焼けでお湯がしみて痛かったけど汗のべとべとは取れたしすっきり



「王子様は不機嫌な様子ですよ」
「へ?」



髪をくくりながら歩いているのりがそんな言葉を言う

のりの視線の先に目をやると廊下の壁にもたれかかっている仏頂面



「奏太くんっ」



テンションが一気に上がって忠犬のように奏太くんの傍に行く

すると頭をぺしっと叩かれた



「馬鹿か!」
「えぇぇっ!?」
「あんなこと友達や先輩の前で言わないで下さい!」



あんなこと…?あぁ、さっきの

叩かれた頭を自分でさする



「だって奏太くんならいいんだもーん」
「…あのねぇ、状況ってもんがあるでしょ」
「本当に奏太くんならいーよっ?」



反応が楽しくてついついからかってしまう

気付くとのりはすたすたと先に帰っていた

私があまりにも奏太くんににこにことして遊んでいると
急に肩を掴まれて呆気なく壁にトスッと押し付けられ、板挟み状態にされる

顔を見上げると真面目な表情



「そんなこと言ってると、……ここで襲いますよ」



胸がどきんと音を鳴らした

襲う、という単語の前の沈黙がいやにリアルで何も言えなくなってしまう




135: 名前:HARU☆04/09(土) 20:41:42

自分で仕掛けておきながら実際真に受けとられると

…どきどきして心臓がうるさい


私が黙ったままでいると先に奏太くんが口を開く



「…ほら、こういうこと言うと何も言えないでしょ?」

「…や、やれるもんならやってみなよ!」



少し上から言う奏太くんに張り合ってしまったのか、ついついそんな言葉が出る

あ、と慌てて口を押さえて奏太くんを見ると目を丸くして驚いている

変な緊張感が漂う


すると曲がり角の遠くの方から数人の声がだんだんこちらに近づいてくる

さすがに奏太くんとこんなところに二人だと奏太くんが部員に
なんやかんや言われてからかわれてしまうと思い、急いで去ろうとすると



「こっち」



腕を掴まれて一番近い使われていない部屋に入り、扉を閉められる

私達がいることに全く気付かず、真っ暗な部屋の前を声が通り過ぎて行く



「―――………っ」



自然に抱き締められた状態

密着する身体が熱い

お風呂上がりのせい…、じゃないよ…ね




139: 名前:HARU☆04/09(土) 22:55:57

熱い



「あ、の…。奏太く」
「デメリットを三つ」
「…へ?」



急にわけのわからないことを言い始める

てゆか抱き締められたまま…っ



「合宿に参加するって知ってたら全力で止めてました。
だから初日でわかった"相沢くるみがいることによる俺へのデメリット"」
「あ、…はい」



デメリットって…、ひどー

私は奏太くんのサポートができたらなって思ったのに

…まぁ、泊まりとか部活生姿とかに惹かれたけどさ



「まず一つ、暑いだるい焼ける」
「それ私に限りじゃん」
「二つ、外野がうるさい」
「…やきもちだ」



確かに二年はなかなかうるさいけど、ちゃんと適当にあしらってるし



「三つ目」
「あ、はい」



なんだろう?と思っていると、急にぎゅうっと抱き締める力が強くなる



「…俺が我慢できなくなる」



暗闇に目が慣れてきたころ、奏太くんの手が頬に触れ髪と一緒に掬われる

奏太くんの言葉と動作に胸がきゅうっと締め付けられる

何か言葉を発そうとした時には綺麗に唇を塞がれていた






140: 名前:HARU☆04/09(土) 23:12:23

奏太くんの熱を身体全部で感じてしまう



「待…っ、ふぁ…」



いつもそう

奏太くんは見た目じゃ想像できない濃厚なキス

私はついていくだけで精一杯


ズルズルと腰が砕けるように力が抜けていくのに奏太くんはお構い無し

真上から被せるように水音のするキスを続ける



「ひゃ…っ」



奏太くんの手が腰からするりと上へと伸びてくる

さ、さすがにまずい!



「まっ、待って!ストップ!」
「…なんで」
「な、なんでって…っ。合宿中だし不謹慎、かな…って……」



あ、熱い…

てゆか止めなかったら奏太くん本当に続けそうだったし…っ

やっぱりみんな同じ棟にいるし、あくまで部活の合宿中だし…



「こ、声が…っ聞こえちゃうかも、だし…っ」



そう顔を赤らめて私が言うと奏太くんは口に手をあてて、



「……恥ずかしいこと言わんで下さい」



と困ったように言った

わ、私何か間違ったこと言った?

焦り困っていると、ちゅっとリップ音を立てて私の唇に触れる




147: 名前:HARU☆04/11(月) 20:33:58

ひゃー!この萌え男子め!

私の頬が赤くなるのを見ると悪戯気に笑う

ド、ドSか!



「と、とにかく合宿中は駄目!練習に専念すること!」
「そんなこと言うなら初めから来ないで下さいよ」



うっ、……確かに私、邪魔かも

初日からこれじゃ駄目だよね



「わ、かった。奏太くんに合宿中は話かけない」
「…本当に?」
「ほ、本当…に」



嘘だよー!本当は常にかまっていたいんだよー!

…なんて言えるはずもなく

奏太くんの練習の妨げになるなら陰から見つめるだけ、にします



「…マネージャーらしく"部員"のサポートだけをします」
「ふーん…。わかりました」



さらりと返事をして触れていた手をぱっと離す

それはそれで、…少し寂しいような気も



「じゃ、また明日もよろしくお願いしますね。"相沢先輩"」
「な…っ」



わざとらしく私をそう呼ぶと一人で部屋から出て行く

な、何あの言い方ーっ!






148: 名前:HARU☆04/11(月) 20:45:48




次の日からあからさまに奏太くんから避けられ続ける

私が話かけないとかいう以前に奏太くんがわざとらしく逃げていく



「また喧嘩?」



ぶすっとした顔をしている私にのりが声をかける

部員達は部内でチーム練習中



「喧嘩じゃないもーん。私はマネージャーだもーん」
「はぁ?」



ツーンとしてそう言うと奇声を発する

私だって…わかんないんだもん

すると部室内の掃除を終えた千穂ちゃんが戻ってきた



「くるみさ、北條くんと別れたの?」
「はぁ!?」



さらっと言う千穂ちゃんに今度は私が奇声をあげる

わ、別れた!?



「あ、違うの?なんかここ数日二人共会話もしないで
変な空気漂ってるから破局っていう噂聞いたからさ。
部員が、"俺いけんじゃね?"とかちらほらほざいてるよ」



な、なんだその噂!

別れてないっつーの別れないっつーの!



「……合宿中はマネージャーだもん、私」
「は?」
「意味わかんないでしょ」



私の発言に千穂ちゃんが?マークを浮かべると、のりが同意を求める

私は奏太くんの力になりたかったのに、邪魔したくなかったのに

…なんでこうなっちゃうかなぁ




152: 名前:HARU☆04/12(火) 20:30:00

合宿は折り返し地点を過ぎ、残り三日

合宿最終日は他校との練習試合が組まれている為、
日が経つにつれて部員達の士気も徐々に高まっている


……なんてことよりも、



「まだ無視されてんの?」



のりが片付けをしながらそう問いかける



「無視じゃないもん、話さないようにしてるだけだもん。
てゆうか私が"あえて"無視して"あげてる"だけだもん」



はぶてた顔で一つ一つ強調して伝える

のりは「はいはい」と適当に返事をする

よく考えてみると内緒で私が合宿に参加したのがいけないんだよね…



「でもっ!」
「わっ!うるさい!」



でもだからってあんなふうに言わなくたってさ!

あからさまな態度をとらなくったってさ!

私だけが悪いんじゃないもん!そうだ!



「なんか…、くるみと付き合ったら面倒くさそうだよな」
「のり」



のりがぼそっと呟くもんだから、じろっと睨む

「おっと」とわざとらしくのりは口を手で塞ぐ

でも奏太くんも面倒くさい…、のかなあ…






153: 名前:HARU☆04/12(火) 20:43:23

その日の練習を無事終え、夕飯も入浴も済ましたので部屋に戻ろうとする



「相沢先輩」



私を呼ぶ声がし、後ろを振り替えると廊下の曲がり角で手招きが見える

誰かわからずにとりあえずとたとたと小走りに行くと部屋着の部員



「あ、えーと…佐々木くん。だよね?」
「当たりです」



ひひっと笑う可愛らしい表情

奏太くんと仲良いから顔はよく覚えていた

この子も可愛い顔してるんだよなあ



「なあに?」
「や、初日以来奏太と何かあったのかなーと。
先輩達は別れただの言ってますけど違うんですよね?」
「ち、違うよっ」



またそんな噂…!

二年はそんなことしか考えない暇人か!



「ですよね、よかった」



優しくはにかむ佐々木くん

はうっ、きゅん!

年下萌えスマイル頂きました!



「!、わざわざそのために?」
「理由は詳しく知りませんけど、奏太も変に頑固で子供だから。
…あっ、今言ったことは内緒にしてて下さいよ!」



「やばっ」と言いながら自分の口元に人差し指をあてて「しーっ」とする

か、可愛い!

奏太くんの友達は奏太くん並にきゅんとさせてくれるなあ

うん、ごちそうさまでした




155: 名前:HARU☆04/12(火) 23:16:35




「ありがとうございました!」



部長の号令に習い、部員が挨拶をして6日目の練習が終了する

各自で片付けを始める



「くるみ、行くよ」
「うん」



のりに声をかけられて、夕飯の準備の為に食堂に向かおうとすると


―――ガシャーン!


大きな音が響き、部員達が騒々する

焦って私達も振り向くと片付ける為に運んでいたゴールが倒れたようだ



「だ、大丈夫っ?」



慌てて人集りに近寄るけどみんな「大丈夫ー」と気楽そうに笑う

やっぱりみんな驚いてはいるけど、幸い大きなケガとかはなさそうだ



「あ」



ほっとした時に佐々木くんの足に目がいく



「佐々木くん、足っ」
「え?…あ」



本人も気付いてなさそうだったけど血が流れていた

切れた、とでもいうように縦に線が入り、真っ赤な血が滴っていた



「佐々木大丈夫か?」
「うわ!えぐっ!」
「痛くないわけ?鈍いなー」



佐々木くんは「うわー」と言いながらも冷静

や!痛いって絶対!

私は佐々木くんの手を握る



「保健室行こう!鍵借りたら入れるし!」
「大丈夫ですって。水道水で流せば」
「駄目だよ!行くよ!」
「え、あ、わっ」



ぐいぐいと引っ張って佐々木くんを連れて行く



「えー…、俺がケガすればよかった」
「俺も」



くるみと佐々木が手を繋ぐ姿を見て羨ましそうに呟く部員

奏太もその姿を不安気に見つめる

不安は佐々木のケガになのか、それとも

―――繋がれた手になのか




160: 名前:HARU☆04/13(水) 15:50:22

夏休みの為、保健室不在なので鍵を借りて扉を開ける

さすがにこの傷は応急処置用の救急箱では補えない



「あのっ、本当に大丈夫ですって!痛くないし!」
「はい!座って!」



佐々木の言葉に耳も傾けずに、くるみは椅子の上にどかっと座らせる

カタカタと消毒液やガーゼなどを探す



「痛くないってことは麻痺してるかもしんないし。甘く見ちゃ駄目だよ」



少し不慣れながらも手当てをしていく

血を拭き取ると縦に線が入った傷口が思ったよりも深いことに気付く

じわ…っ、と真っ赤な血が浮き出てくる

くるみは思わず身震いをする



「グロいのって女の子は無理なものなんでしょ?大丈夫ですから」



佐々木がくるみの様子に気付き、気を使ってそう言う



「だ、大丈夫!それにこんな状態でほっとけないもんっ」



―――…トクン


佐々木の胸がふいに鳴る

一生懸命で頑張っているくるみの姿を見て

そして、はっと我に返る



「や!ないない」
「?、佐々木くん?」



首をかしげて下から覗き込むくるみに再びドキッとする


―――…傷口よりこっちの方が重症かもしれない


佐々木は首を横にふるふるっと振り、雑念を掻き消す




162: 名前:HARU☆04/13(水) 16:30:26

佐々木はその後、顧問に連れられて一応病院に行ったが大事には至らなかった

それでも明日の練習試合は安静の為に不参加



「あーあ、ついてない」



徐々に痛みが感じてきた足でぎこちなく歩く佐々木

奏太と共に自動販売機の前で飲み物を選ぶ

ガコンッと音がし、かがんで炭酸を取り出す



「せめて試合はしたかった」
「いーじゃん。一生サッカーができないとかじゃないんだし」



奏太がそう言うと「まあね」とため息をつく佐々木

同じように奏太も飲み物を買うと部屋へと戻り始める



「…あのさ」
「ん?」



奏太が少し言いづらそうに口を開く



「あの人のこと…、ただの"先輩"だよ、な」



佐々木の胸が一瞬ドキリとした

あの人、つまり相沢先輩のことだろうと

奏太の勘がいいのか、やきもちなのかは佐々木にはわからない





「先輩以外なんなの?ははっ、奏太変なの」
「…や。だよね、だよな」



奏太は「変なこと聞いてごめん」と笑いながら謝る

それなのに二人の間に違和感が生じた気がするのはお互いの気のせいだろうか


…いや、気のせいならいいと互いに感じていた




169: 名前:HARU☆04/14(木) 20:28:43

サッカー部合は宿最終日を迎えた

結果から言うと他校との練習試合は3-1で我が南原サッカー部の勝利

気持ちよく過酷な合宿を終えれそうで私達もサポートしたかいがあった

だけど、



「佐々木くんっ」



ベンチに少し俯き気味で座っている佐々木くんに話しかける

足に巻かれた包帯



「残念だったけど、まだ一年なんだし。これからいっぱい試合できるよっ」
「ありがとうございます」



最終日直前のケガによって佐々木くんは試合に不参加

なんだか不慮の事故なのに可哀想で胸が痛い

笑って返してくれるけど本当は悔しいと思う



「奏太と話したんですか?」
「し、知らなーい」



わざとらしくツーンとしてみせる

だって私だけじゃなくて奏太くんも悪いし



「仲直りしなくちゃ。駄目ですよ?」
「はーい…」



仕方なさそうに返事をすると「あはは」と笑う佐々木くん

可愛いなあ、くそう

私が慰めようと思ったのに逆に元気もらっちゃった


部員達が片付けを始めたので佐々木くんも手伝おうと腰を上げた

するとケガした方の足がバランスを崩してよろっとなったので



「わ、危ないっ」



咄嗟に手を差しだし、私より大きい佐々木くんを支える



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最終更新:2011年07月17日 18:38
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