228: 名前:HARU☆04/22(金) 20:49:09
かき氷と綿飴、それからりんご飴を買って貰った
「そんな甘い物ばっかりよく食べれますね…」
「そ?」
若干引き気味で奏太くんが尋ねる
「甘いの嫌い?」
「りんごの回りを飴にする意味がわかりません」
私が食べてるりんご飴を見てそう言う
美味しいのにー
「足、大丈夫ですか?」
「うん、平気ー」
浴衣で歩きにくいうえに、さらに下駄と言うデメリット
そりゃいつもの靴に比べたら痛くなるのも疲れるのも早いけどさ
でもね、奏太くんが歩くスピードを合わせてくれたり
手を引いたり気にして聞いてくれるから全然大丈夫なんだよ
言わないけどいちいちきゅんとしてます
「あっ、サッカー部じゃない?」
うちの学校の部活ジャージ姿の集団が前方に見えたので指を差す
五人くらいの一年集団
あっちも私達に気付いて近付いてくる
「んだよ奏太ー、デートか」
「相沢先輩すっげ可愛い!」
「本当?ありがとーっ」
私がそう言うと奏太くんが「帰れ!」と逆方向に指を差す
やきもち?なんて
「浴衣似合ってますよ」
「佐々木くん優しーっ」
るんるんで再び喜ぶと奏太くんが私の頭をぺしっと叩く
「…にこにこしない」
「???、うん?」
痛くはない、…けど様子変?
235: 名前:HARU☆04/23(土) 21:34:58
急にムスッとし始めた
「奏太くーん?」
「…俺、頭冷やしてきます」
「へっ?」
小さくそう言うと握っていた手を離して人ごみの中を一人、進んで行った
「ちょっとここでくるみ先輩といて」と、友達に言い残して
「完全に意識剥き出しにされてる、…な」
「え?」
「や、なんでもないです」
佐々木くんが奏太くんの背中を見ながら困ったように笑い、ぽつりと呟く
私には意味がわからなかったしよく聞こえなかった
「奏太くん…」
気になって仕方がない
だいたい奏太くんの機嫌が悪い時は私絡み
奏太くんの思い違いだったり私に非があったり
「相沢先輩食べたいものありますっ?」
「あ、射的しましょーよ!」
本音からか、励ましからか部員達がそう言ってくるけどそんな気分じゃない
「相沢先輩?」
佐々木くんの問いかける声にも返事ができない
―――やっぱり、
「ごめんねっ、私行くから!」
追い掛けなくちゃと、浴衣で走りにくい足で奏太くんを追う
カランカランと下駄の音が響く
241: 名前:HARU☆04/24(日) 21:53:32
「―――…全然脈ないや」
「ん?佐々木何か言った?」
「や、なんでもない」
ぎゅっと拳を握り締める
*
カランカランと急ぎ足の下駄の音が鳴る
人が多い上に屋台の灯りしかなくて、よく顔がわからない
すると誰かに手をぎゅっと掴まれ、くんっと引っ張られる
「くるみ?」
「や、八尋さん!のり!」
振り向くと二人がきょとん顔をしていた
八尋さんは掴んでいた手を離して「何急いでんの?」と問う
「奏太くん見ませんでしたかっ?」
「奏太ぁ?何、はぐれたの?見てないけど…」
八尋さんはのりに目を移すが、のりも首を横に振る
呼吸を整えると「ありがとうございます」と言って、すぐにまた足を進め始める
あまりにも見つけられないので仕方なく携帯を開く
呼び出し音が長いことなるが一向に出る気配がない
切ろうと思い、通話終了ボタンに手をかけた瞬間、
『―――…もしもし』
携帯越しに奏太くんの声が聞こえた
ほっと胸を撫で下ろす
242: 名前:HARU☆04/24(日) 22:09:25
「奏太くん?今どこ?」
『…日本のどこか』
がくっ、と肩の力が抜ける
あぁ、完全に拗ねてる
「今どこにいるの?」
『佐々木達といるんなら別にいいでしょ』
「いないよ、今一人」
『…はぁ!?』
携帯の向こうで奏太くんが批判的な声を上げる
『何で一人でいんの!今どこ!』
「じ、神社の近く」
『じゃあそこから動かないで!いい!?』
「あ、はいっ」
そう言うとブチッと電話が切れた
な、なんだよう
*
数十分後に走りながら奏太くんが来た
来るなり頭をぺしっと叩かれ「馬鹿!」と罵倒される
そして言い合い
「いっ、意味わかんなーい!奏太くんが勝手にいなくなったのに!」
「こんな人ごみの中、先輩みたいな人なんか
あっという間にもみくちゃにされるんですから単独行動は避けて下さい!」
「奏太くんが置いて行ったから探そうと思ったのに!」
「何の為にあいつらと一緒にいさせたと思ってんですか!
俺を心配させるようなことはしないで下さい!」
―――…心配?
なんで奏太くんが私を心配すんの?
「心配ならはなから置いてくな、馬鹿」
私が落ち着き少し怒った口調で言うと、
奏太くんは墓穴にはまったのか、急に口ごもってしまった
245: 名前:HARU☆04/24(日) 23:38:41
奏太くんのこういうとこ、嫌い
「自分で勝手に何でも決めちゃって、私の考え無視して」
「そ、れは」
「違わないでしょ?」
キツい言い方かもしれない、責めてるかもしれない
でも本当だもん、事実だもん
「何が嫌だったの?何を思ったの?」
本題はそこ
急に「頭冷やす」なんて言って私を置いていって
奏太くんの服の裾をきゅっと掴む
「私も怒ってばっかじゃない。不安にもなるの…」
「くるみ先輩…」
奏太くんは言いにくそうに「やきもち」とだけ小さく言った
それ以上は何も言ってはくれなかったけど、もういいや
今日はせっかくのお祭りだから、仲良くいたいの
「りんご飴、も一つ食べたい」
「まだですか…」
少し呆れ顔をしながらも「わかりました」と言い、
私の手を優しく握って「行こ」と笑ってくれる
それだけで幸せになれるよ
「好きだよ?」
「…はいはい」
「わかってるから」と恥ずかしそうに言う姿がたまらなく愛しくて萌える
249: 名前:HARU☆04/25(月) 20:25:40
*
依存、って言葉が今の俺には一番似合ってる
会った時より、文化祭の時より、合宿の時より
愛しくて愛しくて仕方がない
「あー、いちご飴でもいいなあ」
人差し指を顎に当て、屋台の前で「んー」と悩むくるみ先輩
だからなんで果物に飴が美味しいのかって
小さい見た目とは裏腹に、いつも一生懸命で全力で素直な言葉と表情
掻き乱すだけ掻き乱すし、ストレートすぎる言葉もたまに困るけど
「や、次はいちご飴だ!」
全部ひっくるめて可愛くて、手放したくない人
くるみ先輩がお金を払う前に俺が先に店の人に手渡す
そしていちご飴を受け取って、「はい」とくるみ先輩に差し出す
すると嬉しそうな顔でお礼を言い、受け取るとほぼ同時に口へと運ぶ
「次はね、ベビーカステラっ」
「まだ食べんの…?」
俺の手を握り、「こっちこっち」と華奢な手で引っ張っていく
―――ふと思う時がある
あの日、あの瞬間
くるみ先輩が俺に告白をしていなかったら今どうなってたんだろ、って
「俺のこと好き?」
「?、うん。大好きだよ?」
「そっか」
そんなこと、いっか
今、ちゃんと手を取り合ってるんだから
251: 名前:HARU☆04/25(月) 20:43:27
*
「ふぁ…」
夏休みも無事終了し、始業式が行われ学校が始まった
「校長先生の話長いー」
「確かに」
「せめて座らせろっての」
私が欠伸をし、文句を言うとのりと満里奈もうなだれるように続く不満
夏休みはいろいろあって、なんだかんだ楽しくて学校なんて面倒くさい
部活動のあった人達は日焼けしたり、その他にも髪型が変わった人も多数
さすが長期休み、などと変に感心してしまう
「あれだね、体育祭の季節だね」
満里奈がそう言うと「おぉ」と間抜けな声を出す
そういえば9月の下旬にあったな、そんなの
「くるみ本当興味ないな」
「運動得意じゃないし、いつも応援隊だもんっ」
「えへっ」とわざと可愛子ぶりっこすると、のりに「きもい」と罵倒される
リレーとかはクラス代表だし、出るならせめて障害物競走かな
と、ゆうかぶっちゃけだるい体育祭
「くるみも今年は楽しめるんじゃない?」
「へ?」
満里奈が笑ってそう言う
「運動してる奏太くん。たくさん見れるじゃん」
―――…ばっきゅーん!
そ、そうだよ!奏太くん!
体操着姿の奏太くん!走ってる奏太くん!てゆうか奏太くん!
部活対抗リレーとかも出るのかなあ!
ひゃわ~っ!やばい!萌える!心臓爆発しそう!
「満里奈、放っておこう」
「うん」
どうしよう!すごく楽しみなんだけど!
260: 名前:HARU☆04/27(水) 20:30:27
*
「体育祭?」
本日は奏太くんの部活がお休みの為、久しぶりの一緒の下校
「そっ。奏太くんずーっと見てるからねっ」
「や、それ集中できないですって」
嫌そうに返事をするけど、私のテンションはそんなんじゃ下がりません
体育祭の奏太くん…、やばい、吐血しそう
紅白に別れて毎年行われる夏の大イベント体育祭
学年問わず奇数クラスが紅、偶数クラスが白
幸い私は三組、奏太くんは五組と同じ紅組
敵対することはなく、協力し合う同じチームである
「学年の種目はまだ決めてないけど部活対抗は出ますよ、俺」
「~~~っめちゃくちゃ応援する!」
やっぱり出るよね、リレー!
奏太くん足早いし萌え男子だし!
私がにやにやしながら笑っていると奏太くんは「気味悪い」と頭をぺしっと叩く
―――…あ、
「ねぇ、最近ちゅうしてないよね?」
「―――っげほ!」
思い出したように私が言うと奏太くんはすごい勢いでむせ始めた
だって合宿初日以来してない気がしたんだもん
261: 名前:HARU☆04/27(水) 20:45:14
すると奏太くんが再び私の頭をぺしっと叩く
「あのねぇ…、外でそんなこと言わんで下さい。
てゆうか面と向かってストレートに言うことじゃないでしょう…」
「あ、わ。ごめん」
奏太くんは頬を染めて困ったようにため息を吐く
別に本当にふと思っただけだもーん
そんなに取り乱さなくてもいーじゃん
「なんだよう、したくないの?」
「…直球すぎると困る」
たぶん私はきょとん顔
困らせるつもりはなかったんだけど、な
立ち止まった奏太くんの前をいつもより大きな歩幅で歩き始める
「じゃあ他の人としちゃうもんねーっ」
振り返って、べーっとすると「なっ」と奏太くんが何か言いたげな声が聞こえた
すぐに追いついて来て、私の手をぱしっと掴む
「それは、…駄目」
本当に嫌そうに言う奏太くんの表情を見て、きゅーんとする
可愛いな、こいつ
「嘘だよー」
ひひっと私が笑って言うと肩の力を落として安心した表情をする
ごめんね、ちょっとだけいじめてみたくなっただけだよ
掴まれた手を解き、ちゃんとお互いの手を繋ぎ直した
横に並ぶ見慣れた二つの影
夕焼けがすごく綺麗で見とれてると「本当に冗談ですよね?」
と、不安そうに再確認をしてくる奏太くんがたまらなく可愛くて愛しかった
最終更新:2011年07月24日 11:25