259: 名前:みるみる☆01/24(日) 11:19:40
完全に怒鳴るタイミングを見失った赤音さんは、仕方なさそうに、「おい、小町、帰ってきたぞ」と小町ちゃんを呼んだ。
奥の倉庫から、心配そうな顔の小町ちゃんがこっちにやってきた。
「ごめんね、小町ちゃん。食べ物買ってきたから、もう大丈夫、」
だよ、と言いかけたのだけど、小町ちゃんにぎゅっと抱擁されたので言葉が詰まってしまった。
私よりも小町ちゃんが少し背が高いので、余計に。
「もう、黙って居なくなったりしないでください」
多分、初めて小町ちゃんに命令された。
首筋に、彼女の鎖骨が当たっているのが少し苦しかった。
「うん、ごめん。ほんとに、ごめん」
本当は他に謝るべきことがあるのに、口に出すなんて、到底出来そうもなかった。
263: 名前:みるみる☆01/31(日) 14:23:39
262愛海様 わわわわわわわわ(黙
え、嘘っ!?←
前の作品…あれですか! お恥ずかしい……;
あんな思いつきの無理矢理終わっちゃった作品にそんなそんなΣ
こっちこそ嬉しくて涙がちょろりです!
本当にありがとうございます、あ、顔がしょっぱい(涙
◆
謝りはしたのだけれど、仕事は明日からも勤めると赤音さんに言った。2日や3日の食料じゃ、暮らして行くには全然足りない。
赤音さんは面倒くさそうな顔をしながらも承諾してくれた。
その日の夜は、小町ちゃんが買ってきた材料で夕ご飯を作ってくれた。
美味しい美味しいとみんなは言っていたが、私には味がよく分からなかった。ただ、舌に触れる感触の違いを感じていた。何だか、汚れたお金を使ったことが頭から離れなかった。
みんなが食べ終わって、小町ちゃんが後片付けを始めたようだったので、私も手伝った。
小町ちゃんが食器を洗い、私がそれを拭く。
流石に手際の良さが桁違いで、濡れた食器が私の前に山積みになった。
「ところで」
食器を全て洗い終えた小町ちゃんが、今度は布巾を手にとって話しかけた。
「何のお仕事ですか?」
別に何てことはない、ただの興味で質問しているようだったが、心の奥を見透かされたような、そんな居心地の悪い気分に襲われた。
「えっとね、朝は新聞配達をして、昼は便利屋って言うか…何でも屋さんみたいなやつ?」
嘘がすらすらと口から流れ出る。
「そうですか」
安心したように口元を緩める小町ちゃん。
ああ、心が苦しい。心配させないようにしているだけだが、騙しているということに変わりはないのだ。
「……小町ちゃんはさ」
「はい?」
「『茶色』になりたいって思ったこと、ある?」
重い。
スカートの中。
少しの沈黙の後、「無いと言えば嘘になります」と苦笑しながら言った。
「でも、いいんです。私は、これでいいんです」
私には訳が分からなかった。
どうして、みんなは『茶色』になろうと思わないんだろう。
そうすれば、堂々と町を歩けて、幸せな生活をして。
恋をして。
結婚して。
何だって、自由に出来るのに。
「どうしてそう思うの?」
そう言う気はなかったのに、非難するように言ってしまった。
「だって、これがきっと運命なんです」
それは、自分より数年しか歳の違わない人間の言葉とは思えなかった。
まるで人生を悟ったようで、その言葉は深く重みのある響きだった。
「たくさん辛いこともありました。でも、赤音さんや蒼太さんに会えました」
そして貴方にも――そう言って黒い瞳は私をとらえた。
たった3人の人間に出会ったことと等価に出来るほど、その苦しみは軽いものではなかったはずなのに。
何て深いんだろう。
様々な混沌を飲み込んで、静かに哀しみを湛えたようなその瞳。
急に、自分がとても小さな人間になったような気がした。
264: 名前:みるみる☆02/04(木) 20:13:30
◆
「今日も来たんだね」
「おはようございます」
「てっきり、昨日ので辞めちゃったのかと思ったけどねぇ」
「仕事を下さい」
昨日と同じ、静かな喫茶店の中で、携帯電話の上でせわしく指を動かすこの男――雇い主と、私は向かい合っている。
男の腰にはじゃらじゃらとチェーンのようなものが巻き付いていたり、垂れ下がったりしていて、足を組み直す度に音が響く。
ちゃらい男だ。私はそう思った。
「わかったわかった、そんなに怒んないでよ、おねーちゃん」
そう言って、また携帯電話を目にもとまらぬ動きで操作する。
「今日は何回か依頼されたことのある人だから安心できると思うよー。まあ、ちょっと変わった頼まれ事が多いんだけどねぇ」
「どこに行けば良いんですか?」
「ここ」
男は携帯電話の画面を私に見せた。
そこには、住所らしいものが書かれている。
電車じゃなくて良かった、もうあんなのはこりごりだ。
私は素早くその文字の羅列を暗記して、ネックレスを首にかけ、そして何故か白い布を持たせられて、街に出て行った。
266: 名前:みるみる☆02/18(木) 17:26:14
265あゆ☆様 お返事遅くなってすみません!あああ…;
面白いなんて言ってくださってもの凄く嬉しいです!
でも、自分ではあまり満足していません←
もっと上手く書けるようになりたいです……
ちょっと回想が混ざります、読みづらかったら言ってください;
◆
最近僕は君の夢をよく見ます。
◆
やっと捕まえたと思った。
でも、彼女は逃げていこうとするので、僕はもう逃げないようにその手首に鎖を巻くことにした。
意識のない人間というのは、こうも抱えづらいものなのか。
彼女を部屋に運びながら、そう思った。
だらりと四肢は僕の腕から抜け落ちてしまいそうで、首は反り、奇妙に重たい。
それは、彼女が決して小柄ではないことも関係しているかもしれない。
部屋について、コンクリートの床に彼女を寝かせた。
そして、床に打ち付けている鎖を、そこにある死体から外し、そのまま彼女の右腕につけた。
死体はどこかに埋めておけばいい。
腕は、細く、白く、なめらかな磁器の様にも見えた。
鴉の濡れ羽のような漆黒の髪が、それに良く映えていた。
267: 名前:みるみる☆02/19(金) 16:16:40
忌々しいはずのその黒。
これがなければ、僕も彼女も、「こんな風」にはならなかった。
それなのに、何故か僕の瞳には、それが清らかな白のように美しく映った。
彼女は動かない。死んだように、眠ったように動かない。
逃げようとしない。
桜色の薄く開いた唇を指で撫でてみる。
反応はない。どうやら本当に意識を失っているようだ。
本当は、こんな乱暴なことはしたくなかった。
「お前が悪いんだ」
そう言って笑った。
違ったのに。
本当は分かっていたのに。
きっと自分で認めたくなかった。
まるで、我が儘で、欲張りで、そのくせ大人ぶる子どものようだ。
ごめんなさい、と言ってここで止めておけば良かった。
そうだ。
僕はこんな事、望んでいなかった。
268: 名前:みるみる☆02/21(日) 15:15:21
◆
「いやです、離してください」
それはまだ彼女がまだ僕に対して喋ってくれていた頃。
抱きしめようとしたら、その腕を跳ね返された。
彼女の瞳は僕を心から嫌悪しているように見えて、それが僕には怖かった。
「どうして前は良くて今は駄目なの?」
「子供みたいなこと聞かないでください」
その言葉にむっときて、無理矢理肩を掴んで床に打ち付けた。
痛そうに黒い眉が歪む。
それでも抵抗する気はあるらしく、今度はその長い足でぼくの腹を手加減なしに蹴ってくる。
足加減と言うべきか。
「痛いよ」
「私だって痛いです」
その足を押さえつけて、今度は膝の上あたりに乗ると、もう彼女は何も抵抗できない。
ただ、僕の腕に指を巻き付けて、必死で引き剥がそうとしている。
無駄なのに。
成人間近の男性に、女性の力が敵うはずがないのに。
「諦め悪い」
唇を奪おうとすると、首を振って逃れようとする。
いやいやをするみたいで、それが更に僕をあおるとも知らずに。
無理矢理迫って、舌でも噛み切られたら冗談ではないから、首に甘噛みした。
「ひ」
彼女の動きが止まった。
そのまま舌や歯で首筋をなぞる。
「……あ、ぁあっ」
肌が粟立って、ぶる、と身体が震える。
耳の裏までくると、首を縮めて嫌がる。
ああ。
全部、僕のものになってしまえばいい。
269: 名前:みるみる☆02/22(月) 15:32:44
「もう、いい加減にっ……」
身体の奥に確かに感じる熱いものを隠すように、自分の本心を隠すように、彼女は逃れようとする。
「ねぇ、」
下着を一気に下げて、指を入れた。
「っ!」
「『いい加減に』、あきらめたらどう?」
まだ慣らされていないそこだったが、徐々に滑りが良くなっていく。
初めての夜だったあの日より、敏感になっているようだ。
もう、何が起こるのか分かっているからだろう。
「ねぇ」
「んっ、んんっ……ぅ、あ」
目尻をほんのり赤くして必死に耐えるその表情も、僕の心を捉えて放さない。
捉えられているのは、僕の方かもしれない。
「入ると思う? これ」
僕はポケットから丸い輪郭をしたプラスチックのモノを取り出した。
「え……?」
「昔友達と悪ふざけで買ってね」
所謂ローター。
やはり彼女は知らないようだ。
彼女のそこにローターをあてがった時、やっと彼女は分かったように、恐怖に目を見開いた。
「う、嘘っ、やだっ、嫌ですっ!」
その声には耳を貸さず、中に押し込む。
想像付かないだろうね、こんなのが体内にはいるなんて。
「いっあああっ……! んん――っ!」
少し痛そうな顔をしているが、すぐに慣れるだろう。
小さなリモコンのつまみを上げる。
ちなみに5段階らしい。
「1」
「え? っあ!」
まさか動き出すとは思っていなかったのだろう。
初めての不思議な感覚に、身体が戸惑っているようだ。
「なに、これっ……」
「3」
一気に2つ目盛りを上げた。
「あああああっ! い、や、ぁああっ」
身をよじって拒否しようとしても、僕の腕に押さえつけられているので出来ない。
「だ、出してっ、ください、」
「なに?」
「お願いですからっ、これっ……!」
「出来るでしょ、自分で」
腕が動かせなくても。
お腹に力を入れれば良いんだよ。
いつも、してるみたいに。
彼女はこの屈辱的な行為に唇を噛みしめながらも、何とかローターを体外に排出しようとしている。
恥ずかしさで頬が真っ赤だ。
僕はローターが出てくるところでそれを待っていた。
そして、先端が出てきたところで、
それを一気に奥へ戻した。
「っあ、ぁああっ!」
見開いた目から、こめかみに涙が散った。
黒い瞳は、絶望に染まっている。
その瞳の前に、僕は小さなリモコンを持ってきて、つまみの部分が見えるようにした。
「お願いですっ、それ、止めてっ……」
「じゃあさ、僕からもう逃げない?」
「っ……」
「僕のこと、あいしてる?」
「………………」
生理的なものなのか、それとも違うのか、涙が筋になって流れ落ちた。
答えがないのを確認して、僕は彼女のそれこそ目の前で、つまみを親指で「5」まで動かした。
絶叫が部屋に響く。
271: 名前:みるみる☆02/23(火) 16:11:02
270さおり様 どうしよう!椅子からずり落ちそうなほど喜んでます←
只今脳内リオのカーニバル中です。
いやいや、本当はたくさんこんなのより良い小説があるんですけど……でもお世辞でもこんなありがたい、うわぁ←
骨組み上手くいかないです、読みにくかったらびしっと言ってくださると嬉しいです。
ががが頑張りますね!
◆
指定された場所に着いた。
依頼主はまだ来ていないようだ。
実は、ここに来る道の途中で、ポケットの中にある染髪剤を捨てようかと思っていたのだけれど、やっぱり決心が付かなかった。
私には、差別の対象と分かっていて、それでも堂々と長い髪をなびかせて歩く赤音さんや、運命だと言ってじっと耐える小町ちゃんのような強い気持ちがないみたいだ。
まだ開店していない店のショーウィンドウに映る、分厚いコートを着て、フードをすっぽり被っている自分。
あまりその姿を直視する事が出来なくて、目をそらした。
手に握っていた白い布が抜き取られたのはそのときだった。
「?」
振り返る間もなく、フードごと目隠しをされた。
白い布は、このためだったらしい。
視界が奪われて、身体が強ばる。
今回も何か、嫌な予感がする。
でも、自分でこの道を選んだ。
やるしかない。
この怪しい光景に、気付く人は誰もいない。
誰も通りに人がいなかったのだ。
そのまま依頼主は黙って歩き始めた。
不安な足下に神経を集中させて、私もその歩調に合わせた。
10分ほど歩いたところで、何か建物らしいところに連れ込まれた。
冷たい床に、座らせられた。
何が始まるのだろう。おかしな趣味のビデオでも撮らせられるんじゃないだろうか。目隠しは取ってくれるんだろうか。コートは脱がせられるだろうか。
緊張でのどが渇く。
272: 名前:みるみる☆02/24(水) 08:55:52
ふわ、と風が起こり、隣に誰かが座ったのが分かった。
別に私は匂いに対してすごく敏感なマニアなんかじゃないのだけれど、その風は何か嗅いだことのあるような香りがした。
嫌な香りじゃない。思い出せそうで、なんの匂いか思い出せない。
取り留めのないことが頭の中をぐるぐる回っているが、身体の緊張だけは収まらなかった。
依頼主は、相変わらず喋らない。
まるで人間を相手にしている気がしなくて、恐ろしい。
「あ、あの……」
ご用件は何ですか、と聞こうとした時、腕の自由が無くなった。
緊張で固くなった体に、腕らしいものが絡みついた。
束縛ではない。
抱きしめられた、と分かるのに、数秒かかった。
背中に、感触がある。どうやら依頼主は後ろにいるようだ。
不思議な感覚だ。
その抱擁には、飢えた男の欲に満ちた邪悪な熱っぽさはなく、かといって無感情に腕を回された、という感じでもない。
硝子の人形を扱うような、眠れない夜に縫いぐるみをぎゅっと抱きしめるような、そんな感覚。
もう、何も喋れそうにはなかった。
◆
「は、ッ…… あ……」
こんな状況、こんな立場で乱れてしまった自分の大失態を激しく恥じながら、私はどろどろに溶けてしまいそうな意識と視界の中で、何とか茶色い髪を捉えた。
相変わらず腹部の中は無機質な振動に支配されている。
駄目だ、自分の理性は、こんな男を想う気持ちに完全に負けてしまっている。
彼の問いかけに答えなかっただけ、今日はましだと言うべきか。
明日まで、自分を保てるだろうか。
「なんで諦めないんだよ、お前」
彼の声は苦笑しているようにも聞こえる。
諦められるはずがない。
彼はもう殺人犯なのだ。
なんとしても、彼を認めて、降参してしまうようなことは避けなければならない。
そうしなければ、自分は共犯者も同然だ。
彼がこれ以上、堕ちないように。
「僕だって、こんな事やりたくてやってるわけじゃない」
何度か目に聞く台詞だ。
「もう、四六時中お前のことしか考えられなくて――」
「嘘はいいです」
なるべく冷たく言えたと思う。
「自分のことしか考えてない癖に」
攻撃が、自分を守る最後で脆すぎる盾だった。
それからの事なんて、思い出したくもない。
ローターを今度は無理矢理出される。
肩を乱暴に動かされ、体はひっくり返り、うつ伏せになる。
それが入っていたとはいえ、まだなにもしていないそこを、彼は一気に貫いた。
「っっあああああああ、いった……!」
後ろの彼は喋らない。
私の声なんて、聞いていない。
当然だ。
彼をひどく傷つけた。
自分だって分かっていた。
周りが見えなくなってしまうくらいに、彼は私を想ってくれていること。
「もぅ、ほん、とにっ……やめてっ……」
それなのに、私は。
なんとか自分の気持ちを分かって貰おうとしている彼に。
のどが熱い。
詰まってしまったように、痛い。
目の奥が熱い。
燃えるように、熱い。
ぐい、と髪の毛を掴んで、引っ張られた。
頭皮に鋭い痛みが走り、首が反る。
「ほら、また」
「ひっ…ぅ、くっ……っ……」
気付けば、息の中に嗚咽が混じっていた。
涙が、止めどなく反った首筋に流れる。
「なんで、お前が泣くんだよ」
泣きたいのはこっちだと言わんばかりに。
「……っご、めんなさっ……、ごめん、なさぃ……っ」
ごめんなさい。
あなたを酷く傷つけました。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
最終更新:2010年05月10日 19:33