68: 名前:+椎名+☆04/02(土) 05:34:14
次の日…
「おはよう!」
「ういーっす!」
登校中、クラスの子達がすれ違うたびに挨拶してくる。
まさか…あれ、本気だったんだ…
男子も女子もかまわず私に挨拶してくる。
そして私はクラスの女子2人と登校してる。
誰かと登校するのは久しぶりだった。
「怪我大丈夫?」
「…うん。」
「無理しないでね!」
その2人の名前は
林 未香
菊一 湊
だった。
この2人は穏やかでとても優しい。
だから声をかけられた時は行ってみようと思った。
「あっ……」
湊ちゃんが小さな声で呟き前を見る。
目線の先には登校してる子が左右に分かれていた。
そして真ん中には1人登校する女の子。
ーー岼華だ。
みんな岼華の近くに行くと左右に避けていた。
多分もういじめが始まっている。
通りすぎようとすると岼華と目が合う。
小さな口パクで何か言ってくる。
し………ね………?
こんな状況になってもまだこりないんだ?
お仕置きしようかな…
「岼華……」
話しかけようとするとぐいっと手を引っ張られる。
未香ちゃんだ。
「かかわらない方がいいよ。そんな奴。」
岼華は驚いた表情で私を見る。
私はそのまま未香ちゃんに引っ張られて学校に行った。
69: 名前:+椎名+☆04/02(土) 05:44:42
「あっ、香菜ちゃんおはよう!」
「おはよう。」
教室に行くとグループの塊が私の席の近くでたまっていた。
男子も女子もいる。
「ちょうどよかった!ねぇ、昨日のTMA見た?」
TMAとは有名なお笑い番組。
なかなか面白い芸人もいて更に私達の間では大人気。
「あっ、見た!昨日のダブルキノコー最高だったよね!」
お笑い好きの私はついついノってしまう。
あまりの性格の変わり様にみんなびっくりする。
「ダブルキノコーもよかったけどNAKAZIMA5もよかったなぁ…」
「嘘!昨日出てたのか!?うわー俺寝てたし…見たかったー!」
素っ気ない会話をしていると教室のドアが勢いよく開く。
その途端に教室が静かになる。
岼華だった。
静かだった教室はしばらくするとひそひそ話が聞こえてくる。
「うわ…来たんだ……」
「どの面さげて来たんだろうね。」
まわりからの冷たい視線。
冷たい言葉。
全て私が味わったもの……
ざまあみろ。
70: 名前:+椎名+☆04/02(土) 05:55:46
「うわ、来たんだね…」
私のいたグループでもひそひそ話が始まる。
「大丈夫。ウチ等渡辺さんの味方だから。」
岼華は私にガンを飛ばしてくる。
…全然怖くない。
そしてランドセルをぼん!と置く。
「ねぇ、うっさいんだけどー?静かに置いてくれるかなぁ?」
教室の隅にいた女子3人がからかうように言う。
「調子のんなよ。誰に口聞いてんの?」
この後に及んでまだクラスの女王様気分…か。
脳みそ意外と馬鹿なんだね。
「そっちこそ調子のんなよ!」
女子の1人が机を強く蹴る。
そして中に入っていたノートが落ちる。
笑い声が教室内に響く。
そして私も…
あれ?
私…このクラスで久々に笑ったかも……
「いい気味だよね?香菜ちゃん。」
「うん。」
最高。
…今思えばこいつは親友だったはずなのに…
私、目の前でいじめてる。
すべてこいつが悪い…
こいつが引き起こしたことだよ……
そう、これは私を使い捨てにしようとした罰だ……
71: 名前:+椎名+☆04/02(土) 06:07:39
「私トイレに行ってくる。」
私はそうみんなに告げて教室を出ていく。
しかし、これからが見ものかも。
岼華1人じゃ何もできないもん。
人間はこういう生き物だから……
私はトイレの鏡で髪の毛を整え直して出る。
教室のドアに手をかけたその時、
ドアの窓から岼華のまわりで集まっているみんなが見えた。
いじめている気配はない。
むしろ嫌な予感がする。
「アンタらやるじゃん。あいつ完璧に調子のってるよ。
じゃ、もう少しフリを続けてからいじめるよ。いい?」
ああ、やっぱり。
岼華のことだからこれで終わるはずないと思った。
「今までより悪化させてやろうよ!」
「岼華、いいよね!」
やっぱり全員とグルだったんだな……
湊ちゃんや未香ちゃんも混じってるし…
調子にのるんじゃなかったかも……
覚悟を決めて入ろうとした時、
「あのっ!」
1人の女の子が口を開いた。
「私は…やらない…私は香菜ちゃんの方に行く!」
75: 名前:+椎名+☆04/02(土) 20:52:27
「はぁ?何言ってんの?冗談はやめてよ。」
「本気だよ!」
今そう言っていた子はよく見ると未香ちゃんだった。
何十人もを目の前にして口論している。
「私、香菜ちゃんとは最初話して油断させるだけだと考えてたけど…
話してたら…その……楽しいし、悪い事をするようには思えなくて……」
小さな声だが、ちゃんとドアの向こうまで聞こえてきた。
「私も……」
未香ちゃんに続いて湊ちゃんも言う。
そしてクラス中が騒がしくなる。
「確かに悪い奴じゃないよな……」
「話してたら話合って面白いし……」
そういう話をしていると岼華が机をバン!と叩く。
「はぁ?何言ってんの?私を殺そうとしたのよ!?」
必死に反論する岼華に対して誰かが口を開いた。
「そういう必死になるとこが怪しいよな。」
1人がそう言うとクラスのみんなが口々に言う。
「実は犯人だったりして……」
話し終えるとみんな岼華に迫る。
それに対し岼華はまだ強がっていた。
「な、何よ…この私に逆らうの!?」
みんなはびくともしなかった。
1人の岼華なんか怖くもなんともないから。
「ちょっと待って。」
その瞬間、私はそう言ってドアを開けた。
77: 名前:+椎名+☆04/02(土) 21:06:32
「渡辺さん……」
みんなが私の方に注目する。
それは決して冷たい視線ではなかった。
「みんな…私のこと信じてくれるの?」
「うん!もちろん!」
「当たり前!」
最後にみんなの意志を確認する。
一気に形勢逆転。
さて、これから岼華はどうするのかな?
まだあがくのかな?
「岼華。あんたが私にしたこと…倍にして返してあげる。
あっ、先生に言っても無駄だから。」
それだけ忠告して席につく。
みんなも解散して自分の席につく。
岼華は床にぺたっと座ったまま。
そして先生が入ってくる。
「じゃあ授業を始める前に…
岼華は先生と一緒に来てください。」
岼華は先生に連れていかれる。
多分何か話があるのだろう…
私達も耳をたてて聞くことにした。
80: 名前:+椎名+☆04/07(木) 07:31:05
「先生っ…私、私…香菜ちゃんにまた脅されました…ッ!
先生にチクったら…いじめる…って!」
岼華は先生に迫真の演技をして言う。
ぐずっている嘘泣きの声も聞こえた。
うわ…必死だなぁ……
しかし先生は慰めの言葉をかけずに言った。
「岼華、嘘はよくないよ?
実は昨日隣のクラスの和田さんが真実を語ってくれたんだ。
君が岼華を突き飛ばして罪をなすりつけたってね。」
「えっ……」
素っ気なく弱々しい岼華の声。
手をうっていないとでも思った?
実は隣のクラスに行って目撃者の変わりをやってほしいと言ったら…ね?
まあ彼女は本当にたまたま目撃したらしいし……
嘘は言ってないよ?
「今このことについて教育委員会で話し合いをしてる。
多分転校の確率が高いと思う。」
転校だって…?
くくく…いい気味。
その歪んだ性格で友達なんてできるのかな?
みんなは転校と聞いて先生に聞こえないように笑いをこらえる。
これからは…あの顔を見なくて済むのかぁ…
そして一週間後、岼華は隣の都道府県の学校に転校していった。
ざまあみろ。
私はみんなと仲良くなって一緒に卒業した。
中学校は離れるけど…幸せな日々……
が、いつまでも続くわけなかった。
81: 名前:+椎名+☆04/07(木) 07:37:50
中学校に入学した。
私は母に入学祝いに小鳥を飼ってもらい、入学早々友達もできた。
友達の名前は森 唯科。
リーダー的な存在でみんなを引っ張っていくような子。
私はとあるファッション雑誌の話をしていて仲良くなった。
クラスにも結構馴染んできて大分落ち着いてきた。
でもこの時から地獄は始まっていたのに。
82: 名前:+椎名+☆04/07(木) 07:45:14
「やばい!遅刻する!」
私は今日、珍しく寝坊。
昨日深夜までゲームをしていたからだ。
寝癖のついた髪を整えて朝ご飯を食べる。
今日は何やらお母さんが静かだ。
しかしお母さんは振り返って笑いかける。
「香菜、そろそろ遅刻するわよ?
そこに弁当置いてるから早く包んで。」
「あっ!やばい!」
今8時10分。
そして学校の時間が8時20分。
そして片道15分。
はい、走らないと完全遅刻です(涙)
「今日のお弁当は新鮮な食材使ったから美味しいわよ~?」
お弁当を持ったままにこにこ笑って話をしてくる。
あの~、早くしてくれないと遅刻するんですが……
私は靴を履いてダッシュで学校に向かう。
最終更新:2012年08月11日 05:53