270: 名前:+椎名+☆2011/08/21(日) 03:41:23
あれは一年前。
俺が中1ん時だな。
俺はサッカー部で常に学年トップを維持していて、女子にも結構
モテていた。
そんなにモテていたんなら付き合ってる奴いるんじゃないかっ
て?
ああ、いたよ。一人な。
相手から告白されて少し戸惑ったけどOKしたんだ。
今思えばあの時断っておけばよかったんだ…
271: 名前:+椎名+☆2011/08/21(日) 03:49:20
「ねえ、鈴地。話があるの」
彼女の名前は山下佳暖。
多分女子の中で一番俺に話しかけてくる。
だから女子には少々嫌われていたみたいだ。
「なんだ?佳暖」
「屋上に来て」
俺はなんとなく想像ついたがあえて普通に話す。
それを聞いた女子はひそひそ話し始める。
「何?あの子。めちゃめちゃ馴れ馴れしくない?」
その目線は完全に佳暖に送られていた。
佳暖、確かに可愛いけどなんか性格が少し苦手だな。
まあ男子は皆好きみたいだけど。
272: 名前:+椎名+☆2011/08/21(日) 03:57:56
屋上。
「で、なんだ?」
「ねえ、鈴地。佳暖達付き合ってるよね?」
え?
いやいや、付き合ってねーだろ…
「付き合ってないだろ?」
「そうなんだ。じゃあ佳暖が付き合ってあげてもいいよ?」
え?
これは告白か?
だいぶ偉そうだけど。
他の女子の場合普通に断るけど…
佳暖はいつもそばにいるし友達関係に亀裂が入ってもなぁ…
きっと会った時気まずくなるんだろうな。
そんなもやもやしたのは嫌だ。
でも……
「時間くれないか?」
「佳暖は今聞きたいの」
うーん…
きっとふったら傷つくだろうな。
まあこれだけ上から目線なら。
「わかった。別にいいぜ」
「ふふ、言うと思った。鈴地が佳暖の告白断るはずないもん」
いや、どっちか迷ってた時点で確率は2分の1だろ。
「いいよ、でも。結果が大事だから。
よろしくね。鈴地」
そういうと佳暖は近づいて来て軽くキスしてくる。
…本当にいいのか?これで……
273: 名前:+椎名+☆2011/08/21(日) 04:10:54
俺達は教室に戻る。
結構視線が痛いな。
特に女子の。
と思っていたら女子達が近づいてくる。
「暁君。次移動だって」
それ言うためだけに3、4人で来るのやめてくれねえか?
「そうだ、一緒に行こう」
俺は承諾しようとすると隣から声がする。
「だめだよ。鈴地は佳暖の物になったんだもん。行こう?」
そう言って佳暖は俺の手を引っ張る。
「うらやましいなぁ、お前」
こいつは親友の和田斎。
こういうのあるたびに茶化してくる。
「…うるせえよ」
俺は荷物を持って教室を出る。
もちろん佳暖も一緒に。
佳暖は不思議っ子系で天然。ちょい独占欲強いけど。
別に嫌いではない。
かと言って好きではないが…
まあ俺がOKしちゃった以上こいつを守らないとな。
…俺は後で自分が頼りないやつだと初めて気づいた……
276: 名前:+椎名+☆2011/08/24(水) 12:24:03
俺は佳暖と移動する。
まあ俺有名人(自称)だからすげー目立つけど。
歩いていた女子が足止めて見てくるぐらい。
「暁君やっぱりかっこいいなぁ」
「私4組がよかったなー」
そして悪い声も聞こえてくる。
「あの子誰?彼女?」
「馴れ馴れしいよね。腕組してるよ…」
「…やだー…あの子佳暖ちゃんじゃない?」
佳暖もまた変わった性格で有名だった。
…主に悪い意味で。
俺は彼氏になっちまったわけだし…言った方がいいのか?
俺はため息をついて声を出そうとする。
しかしその瞬間、佳暖が止める。
「いいよ、鈴地。何言われても鈴地は私の物だもん。
だから何言われても平気だよ」
………
まあ佳暖が言うなら…なぁ。
「そうだ、鈴地。みんなに見せつけようよ」
俺は佳暖の言うことがよくわからなかった。
見せつける?
そう思った時、廊下にいた奴等はみんな声をあげる。
佳暖が廊下で…みんなの見ている目の前でキスをしてきたからだ。
277: 名前:+椎名+☆2011/08/24(水) 12:34:16
「……っ!」
俺は固まる。
突然の出来事だからだ。
「きゃあ!」
「嘘ぉ…」
廊下にいる女子達は騒ぐ。
また、騒ぐことにより教室から何かあったのかと人が出てくる。
……っ!
俺は自分が見せ物のような気がして嫌気がさした。
「や、やめろ!」
だからつい佳暖を突き飛ばしてしまった。
佳暖もさすがに驚きの表情を見せた。
「……」
俺はただ無言でその場を立ち去った。
さすがに…突き飛ばしたのはまずいかな?
いや、でもあんなのを人前でやるなんて……
いったいどちらが悪いかなんてわからない。
ただ佳暖の行動により俺は少し不愉快だ。
「…あーあ。もういいや。授業サボろっと」
別に理科の実験すっぽかしただけでそんなにひかれないだろう。
俺はまぁサボりが多くていつもオール4なんだが…
いつもみたいに先生に言って保健室でサボる気もない。
もういい。寝ちゃえ。
俺はそのまま目を閉じる。
282: 名前:+椎名+☆2011/08/26(金) 09:35:50
……つ…
ん…?
誰だよ、俺を呼んでるのは……
「あ……き……」
多分女子の声か?
……ってまさか…
佳暖!?こんなとこまで…!
「うわぁ!」
目をかすかに開けるとやっぱり女子の顔が近くにある。
とても甘い香りが漂ってくる。
俺は慌てて起きるが、彼女は佳暖ではなかった。
黒髪のロングに眼鏡、
アニメにいそうなちょっと地味な女の子だった。
「……誰?」
「…わ、私…宮本苗木といいます…」
宮本…さん?
確か5組の女子だよな…
ていうか小学5年の時にこっちに引っ越してきた子だな。
まあ話したことは全然ないけど。
「宮本さん、何か用?」
俺が聞くと彼女は下を向く。
「あの、暁…君が…ここに走って行くのを…見て…」
…あぁ、なるほど。
「あの、暁君は…や、山下さんと付き合ってるんですか……?」
なっ…!なんて質問を……
まあ一応付き合ってるってことだし俺は頷いた。
その瞬間、下を向いた彼女がなんとなく怖く感じた。
283: 名前:+椎名+☆2011/08/26(金) 09:45:08
「あの、暁君…さっき……突き飛ばしたじゃないですか…」
あぁ、見てたんだ。
あの屈辱なヤツ。
「それは不意すぎて…嫌気が差したから…」
「…山下さんのこと…好きなんですか?」
この子なんでこんなに佳暖のことを…
俺は頷く。
彼女になった相手を好きでなくてはいけない。
だから嘘だとしても彼女を悲しませるようなことはしない。
俺はそう思ってる。
「そう…ですか……でも私も暁君の事…ずっと………」
声が小さくて聞きとれなかった。
彼女は立ち上がるとお辞儀をして屋上から立ち去る。
……まあなんでもいいけど。
…佳暖、いるんだろうなぁ。
同じクラスだからなぁ。
でも俺おもいっきり突き飛ばしたし…
会うの気まずいな。
心の中で謝罪しようとするが、なぜか出来ない。
なぜだろう…
なら直接会って話するしかないな。
はぁ、なんか気が重いなぁ…
284: 名前:+椎名+☆2011/08/26(金) 10:10:01
ガラッ
俺は教室のドアを開ける。
みんなの目線は俺に向けられる。
「あ、暁君!またサボりぃ?」
「ノート写しておいたよ!」
あれ?
なんか女子がいつも以上に近づいてくるんだが…
あれ?そういえば…
「佳暖は?」
佳暖と言った瞬間みんな不機嫌になる。
「えぇ?山下さん?保健室行ったけど」
「関係ないからいいじゃん!あ、次社会だよ!」
関係ない…?
そうか、あれを見た奴らはみんな佳暖と別れた、
もしくは佳暖のことを嫌ってると思ったのか。
「関係なくない。俺見てくる」
「えぇー?」
俺はみんなの声も聞かずに走り出す。
…謝らなきゃ。
285: 名前:+椎名+☆2011/08/26(金) 10:16:12
「……佳暖!」
俺が叫びながら入ると先生が驚きの表情でこっちを見る。
「あら、鈴地君どうしたの?」
俺は保健の先生とは結構仲がよかった。
「佳暖来てませんか?」
「山下さん?なら来てるわよ。
でもなんだか全身びしょびしょだったから…」
全身びしょびしょ…?
今日の天気は…晴れだよな?
例え雨だとしても少しおかしいな。
と思っていたら保健室のカーテンが開く。
288: 名前:+椎名+☆2011/08/26(金) 16:22:06
「鈴地、やっぱりきたね」
「佳暖…」
佳暖の髪はすごく濡れていた。
髪から雫がぽたぽた落ちていくほどだった。
「どうしたんだ?」
「トイレに行ってたら水が降ってきたの。
すごく冷たくて気持ちよかったよ。」
何言ってんだこいつは。
いらんとこで天然……
って待てよ。
トイレに水が降ってきた?
ベタだけど展開からすると…
いじめ か…?
多分やるとしたら女子の奴らか。
でもたくさんいるし…
「鈴地、ありがとう。今犯人のこと考えてくれてるでしょ」
う…そしてするどいな。
「…嫌じゃないのか?」
「わからない、でも今はいいの」
今はいい?
普通嫌だろ。
訳わからないな…こいつ。
289: 名前:+椎名+☆2011/08/26(金) 16:33:56
「ねえ、鈴地。もう大丈夫だから教室戻ろ?」
「…あぁ……」
俺はこれでいいのだろうか…
軽い気持ちでOKしてしまったけど…
俺はこいつの彼氏として…何かしてあげたか?
普通彼氏は彼女を守らないといけないんじゃないか…?
それを俺は……
「鈴地」
「…あ、あぁ……」
佳暖は手を差しのべてくる。
こんな俺の事を…こいつは慕ってくれている。
俺はそれに答えなくていいのか?
「帰るか……」
決めた…
俺は佳暖のために…できることをしないとな。
じゃないと申し訳ないもんな…
俺は佳暖の手をとり、教室に戻る。
最終更新:2012年08月11日 06:31