390: 名前:+椎名+☆2011/10/02(日) 21:13:16
「…えっ?」
俺は彼女のそばに行ってしゃがむ。
今度は自分の気持ちに素直になっただけだ。
友達関係とか…そんなの知らねえよ。
「俺さ、佳暖と別に好きでもないのに付き合ってた。
でもそんな半端な気持ちは駄目じゃないかって。
宮本さんはただ協力者だと思ってた。
俺がどうするかを決める手伝いをしてくれる…
でも…話をしていたらすごく安心するんだ。
なんか分からないけど…そっから宮本さんに会うたびに少しドキ
ドキしてた。
多分…俺、宮本さんのこと好きなんじゃないかな…」
「…!」
自分に嘘はもうつかない。
これは俺の出した答えだ。
決してそんな軽い気持ちじゃない。
俺は…本当に初めて女の子を好きになったんだな…
「…暁君…私なんかでいいの?
ありがとう…でも…答えは明日でいいかな?
今は凄く緊張しててそれどころじゃないの」
宮本さんは笑いかける。
俺は頷いてもう一度宮本さんを強く抱き締めた。
394: 名前:+椎名+☆2011/10/03(月) 17:25:11
次の日…
俺は寝坊してしまった。
時計を見るとあと10分。
やば!走らないと遅刻する!
「ちょ、母さんなんで起こしてくれなかったの?」
「え?だって鈴ちゃん気持ち良さそうに寝てたもの」
見ての通り母さんは超天然。
こういう理由で稀にしか起こしてくれない。
天然な母親も大変だよな…
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃあい」
まあ走ったら間に合う!
大丈夫大丈夫!
でも…さすがにこの時間帯は誰も歩いてないな。
「あ、やっべ、あと7分」
俺は程ほどの力で走った。
俺は曲がり角を通りすぎようとした。
でも何やら人だかりができていて騒がしい。
ガタン__……
「…え?」
俺は持っていた鞄を地面に落としてしまった。
395: 名前:+椎名+☆2011/10/03(月) 17:37:12
~宮本side~
次の日、
ていうか今日はほとんど眠れなかった。
だって昨日のこと思いだして…その……
大好きだった暁君に告白されて…抱きしめてくれたのよ…?
あんなことがあって落ち着いていられないよ…
あの時はパニックになってて返事できなかったけど…
今日ちゃんと返事しなきゃ…
だから返事はこの手紙に書いてきたの。
「あら、おはよう。今日は早いのね」
「…うんっ」
「あ、朝ご飯置いてあるから」
…私はこんなに優しいお母さんを殺そうとしてたんだ…
自分勝手な理由で…
暁君が止めてくれてなきゃ私殺してたな…
それも含めてお礼言わないと!
「行ってきます!」
私は告白の返事の手紙を片手に家を飛び出した。
どうやって渡そう…
ありきたりな靴箱…?
渡してもらう…?
ちょ、直接…?
…でも私自身の返事だし…
よし、会ったら渡してさっさと立ち去ろう!
それが一番かな…
ていうか恥ずかしくて顔会わせられないかも…
ドスッ……
え…?
今のは…何?
…私に…何か突き刺さって……
痛い…よ…
私の体から何かが流れ落ちていく…
意識も遠く…なって……く…
……あか…つ……き…君……
397: 名前:+椎名+☆2011/10/03(月) 17:50:05
~十六夜side~
あーあ、つまらないな。
暁君が来たおかげで宮本ちゃん、殺すのやめちゃった。
僕さ、はっきり言うけど…
ハッピーエンドって言葉、苦手なんだよね。
僕が求めているのはお互いを傷つけあっている姿。
人が人を傷つけるところを見たいんだよ。
だからこんな茶番…悪いけどつまらないよ?
あーあ、しかし宮本ちゃんは本当につまらなかった。
だってすぐ飽きちゃったもんなー。
飽きたおもちゃは…
『片付けないと』…ね?
ドスッ…
だから僕は彼女にナイフを突き刺した。
真っ赤な血…なんて綺麗なんだろうね?
こんなに綺麗なもの、他に存在しないよ。
だから…君をもっと壊したくなってくるよ。
そして……あの暁君も狂わせてあげるよ。
398: 名前:+椎名+☆2011/10/03(月) 18:10:45
~暁side~
何が起きてるんだ…?
どういうことだよ…
嘘…だろ?
…宮本さん…か?
俺は必死で人を掻き分けて前へ進む。
「可哀想にねぇ…まだ13歳なのに」
「犯人目撃されてないんでしょ?怖いわね…」
うるさい…
そんなの聞きたくねぇ!
人々の声を聞くことで俺は更に不安を増した。
一番前に出るとパトカーが何台か止まっていた。
そして警察…
床には赤黒い血の跡…
そして丁度遺体を運ぶところだった。
……あ…
嘘…だろ……
見覚えのある長いロングの髪。
レンズの割れた眼鏡…
それは昨日まで…あんなに元気だった…
「…宮本さん!」
昨日俺が告白した時は…あんなに元気だったのに…
あんなに可愛らしい笑顔を浮かべていたのに…
なんでだよ…
なんでだよ…!
なんで寝てるんだよ?
なんで笑ってくれないんだよ?
なんで…動かないんだよ……
「宮本さん!待てよ!宮本さん!」
「君っ!ここから出ちゃ困るよ…」
「待てよ!なあ、あいつは俺が好きになった女の子なんだよ!
昨日は…あんなに……」
俺は気づかないうちに涙を貯めていた。
「…もしかして君が暁君かい?」
「…えっ?」
「実は宮本さんの遺体の近くにこれが落ちていたんだ」
そういって渡されたのはすでに開封された手紙。
手紙と封筒には血が染み込んでいた。
俺は中に入っていた手紙を読んでみた。
399: 名前:+椎名+☆2011/10/03(月) 19:00:00
『暁君へ
昨日は返事できなくて……んなさい。
だから手紙で返事を書き……。
私……暁君は遠い憧れでした。
人気者で頭も………頼りになって…
だから…告白された時………も嬉しかったです。
私も暁君が好き…す。
もし私で良ければ付き合…………
宮…苗木…り』
所々血が滲んで読めなかった。
でも内容は伝わった。
…あれ?
雨…か?
手紙に雫がこぼれてる…
変だな…
今日の天気予防は晴れだって言ってたのに…
俺は血で滲んだ手紙をぎゅっと握りしめた。
そしてその場で泣き崩れた。
「…ごめん……宮本…さん……」
俺は裏に血文字で何か書いてることに気がついた。
そこに書いていたのは何となく意味のわかる英文。
『She for you.
(彼女は君の為に)
Her`s tear is you pains.
(彼女の涙は君の苦しみ)』
……!
『 Your joy is her death.
(君の喜びは彼女の死) 』
誰が…こんな…
俺の喜びは…こいつの……死?
それって…
俺が……
俺が…こいつを……殺した…?
俺のせいで…こいつは死んだのか?
俺のせいで…
俺のせいで…
俺のせいで宮本さんは死んだ…
そうか…
俺が…宮本さんを……殺したのか?
俺があの時に宮本さんをとめて告白したから死んだのか…
…俺が……
俺は…最低な男だ……
400: 名前:+椎名+☆2011/10/03(月) 19:17:04
その後、俺は学校に行った。
でも先生は今朝の出来事で俺を保健室で休ませた。
「暁君、ショックよね…目の前で死体を見ちゃったもの…」
「暁君が告白した子でしょ?
確か五組の宮本さんよね…」
俺のことを心配して見に来る女子達。
でも…今は何とも思わない。
心にぽっかり大きな穴が空いたようだった。
「鈴地君、大丈夫?無理しなくていいのよ。
気持ちが落ち着くまで先生も一緒にいてあげるから」
保健の先生が言う。
そしていつものように抱きしめてくる。
いつもなら…優しい感じがするのに…
何にも感じない…
優しさも…今は分からないよ……
ごめんな、先生……
俺の心は…壊れちまったんだ…
だから…涙も出ない…
俺は…あの時に死んでおくべきだったのか?
そもそも俺がいなければ…宮本さんは…
俺に恋することもなかった。
俺のために他人を殺す考えも持たなかった。
俺のせいで狂うこともなかった。
俺が宮本さんの人生を狂わせたんだな…
俺が存在したせいで…
………
もう…俺なんかどうなってもいいよ。
別に傷ついても
死んでもいい。
俺なんかがどうなっても…何とも思わないよ…
最終更新:2012年08月11日 06:43