7日間の醜いゲーム。 続き23

401: 名前:+椎名+☆2011/10/03(月) 19:30:40
俺は自分から人を遠ざけていった。


そしてやがて俺は孤立し始めた。



「斎、これからは俺に近づくな。佳暖にも言っといてくれ」

「……ああ、わかった」

「悪いな…」



俺は自分から斎も佳暖も遠ざけた。



いつかまた別の人を自分のせいで死なせてしまうんじゃないかっ
て。



怖いんだ…




俺は何があっても笑ったり怒ったりもしなかった。




宮本さんの葬式に行った時も


どんなに美味しい料理を食べても


例えどんなことがあっても




俺は感情を示さなくなってしまった。




「暁君…全然笑わなくなったね」

「あの事件のせいでしょ…?」

「…暁の奴、いつも無表情になっちまったな」

「感情喪失なんて…気の毒だよな」




感情喪失…か。



今の俺にはいいかもな。



これからも感情なんか表さなくていい。



俺は重い罪を…好きな子を死なせた罪を背負ってるからな。






これくらいの罰は…俺には必要なんだ。

402: 名前:+椎名+☆2011/10/03(月) 19:41:18
「ねぇ、鈴地。明日買い物に行かない?」



…今までと変わらなかったのは佳暖が話しかけてくることだ。



斎の奴…ちゃんと言ってくれたのか…?


でも佳暖は聞かなさそうだけどな…



「…行かない」

「いいじゃん、行こ?」

「一人で行け…」

「じゃあ明日の午後ね!」

「おい…」



佳暖は勝手に予定を決めてきた。


…本当に勝手な奴だな。




俺なんかに構うなよ。


迷惑だっつーの…




俺は明日もちろん行かないつもりでいた。



でも次の日…



「鈴ちゃん、お友達と出かけるんでしょ?はい、着替え」



母さんに無理矢理家を出されてしまった。




…佳暖の奴、母さんに言いやがったのか。



面倒だな…


「鈴地、行こっか」

「そーそ、早いとこ行かないとな」



佳暖の後ろに斎もいた。



こいつら…近づくなって言ったのに。



仕方なく俺は二人について行った。

404: 名前:+椎名+☆2011/10/03(月) 20:02:59
俺達は広いデパートについた。



最近できたとか言うデパートだっけか?



「さ、鈴地行こう」



佳暖は俺の手を引っ張ってくる。


うぜぇけど…仕方ねぇか…



俺達はまず雑貨屋に行った。

すると斎がそこに置いてた猫耳を俺につけてくる。



「お、鈴地君かっわい~」

「ふふ、本当だぁ」

「………」



いつもなら俺は…ここでどうしていたんだろう…

…やっぱり…笑っていたのだろうか……



「あ、見て斎君!ゲームセンターだよ」

「お、いーじゃん!いこーぜ鈴地!」



二人には悪いけど俺は早く帰りたい気分だった。

ここにいたら…宮本さんに申し訳ない気がしたからだ。




「プリクラ発見~!なーなー佳暖ちゃん、鈴地!撮ろうぜ!」



俺は(ほぼ強引に)プリクラに連れて行かれた。



『いっくよぉ~!笑って~!』



プリクラの機械が言う。

こんな状況で笑えるかよ…



『さん、にぃ、いち!』




その途端、プリクラのカメラが光った。



そして二人は楽しそうに落書きしてそれを印刷した。

しばらくすると印刷された写真が出てくる。



「はい、鈴地の分」


俺は佳暖からプリクラを受け取った。




…今の俺、すごい無愛想だな。


笑ってる写真1つもねえじゃねぇか。





俺はプリクラを鞄にしまってまた二人についていった。

415: 名前:+椎名+☆2011/10/14(金) 18:34:44










俺達は結局あのあと飯を食べて帰った。


ま、こんな無愛想な奴といても楽しくないよな。





「今日はたのしかったな!佳暖ちゃん!」

「うん、鈴地もそうでしょ?」

「…そうだな」




俺は信号が青になるのを待ちながら俺は空を見上げた。



…赤いな…もう夕方か…

確か…宮本さんの血もこんな感じで赤くて…



………




向こうから青い大きなトラックが走行してくる。




あのトラックに突っ込んだら死ぬかなー?


俺は死を簡単に考えるようになっていた。




死ぬってやっぱり痛いのかな?

人間いつか死ぬんだし今死んでも変わらねぇよな。




罪を償いたいって気持ちもあるけど


やっぱり宮本さんがいない生活はおちつかねぇ。





俺はトラックが近づいてくると
横断歩道に一歩足を出した。


しかし…




「鈴地、まだ赤だよ」



佳暖に手を引っ張られて止められる。


トラックはそのまま横断歩道を通過した。










…死ねなかったか…

416: 名前:+椎名+☆2011/10/14(金) 18:58:05
…気のせいか?


佳暖が少し怒ってるように見える…

ま、表情は相変わらず笑ってるけど。



「ふふ、じゃあ明日ね」



佳暖は横断歩道を渡って角を曲がった。



斎と二人か…


いつぶりだろうな…


ま、話すことは何もねぇけど。





「鈴地」


「……」




俺は返事をせずに目だけを斎に向けた。




「お前さ、さっき渡ろうとした時…








死のうとしてなかったか?」



「……!」



さすがだな、親友ってのはよ。

何でもわかってやがる。



「答えろ!」



斎が珍しく怒ってる…?



「そう…だって言ったらどうするんだ…?」


俺は目をそらす。


バシッ…!




……!



斎が俺を殴った。




「ふざけんなよ、お前が死んだって変わらねぇだろ!」

「………」



確かに変わらねぇかもな…

でも俺が宮本さんを殺したも同然だ。
その俺がのうのうと生きてていいのか?



俺が本当は死ぬべきだったんじゃないか?





俺は斎を置いてまた歩き出す。

斎はここを曲がったところが家だからな。





「鈴地」




俺は今度は立ち止まった。








「…お前が死んだら悲しむ人もいるのを忘れんなよ…」



…悲しむ人?


誰の事だ…?
俺なんかを想って泣いてくれる奴なんているのか…?



聞こえてきたのは斎が走っていく足音だけ…




俺は振り替えることなくまた歩き始めた。

417: 名前:+椎名+☆2011/10/14(金) 19:08:55
~斎side~






くそっ…!



鈴地の野郎…何だよ!あいつ…



死ぬつもりか冗談半分で聞いたらそうだって…?

ふざけてやがる…




「くそっ!」



俺は部屋にあったクッションを壁に叩きつけた。


俺は普段あんまり怒らねぇからな。
こんなことは普段ならしないけど。



鈴地の奴…本当に何もわかってねぇよ。







悲しむ人の中には俺もいるってことも。




親友は…お前しかいない。

お前は一人しかいないんだ…


だから死んでほしくない。



鈴地が立ち直ってくれると信じて離れたのに…

鈴地が簡単に死のうと考えてたなんてな…






なんだか裏切られた気分だぜ…



俺はベッドに寝そべった。

428: 名前:+椎名+☆2011/10/21(金) 17:09:21
~鈴地side~












今日は日曜日。


今日こそゆっくりできるな…

さてと、何するかな……
毎日毎日暇だしな。


変わらない毎日。
まるで繰り返されてるようだ。



…あれ?机に俺カッターなんて置いてたっけ…



はは…最近忘れっぽいかもな…



……


俺はカッターを持つ。


どこにしまうかな…



俺は鋭い刃先を見た。



…このカッターなら死ねるかな?


宮本さんが死んでからは自分の死ばかり考えてる。





…俺が死んで宮本さんが生きてたらよかったのに…




俺はカッターの刃を手首にあて、横に移動させる。
すると一筋の線ができ、その傷から血が溢れた。



へぇ、カッターってすっと切れるもんなんだな。


溢れた血はやがて1つの雫になって床にこぼれた。
さすがに手首を切るとふらっとする。



俺はもう一度左腕にカッターをあてて切る。
するとまた新たに深めの傷ができた。


痛みは感じない。
ただ…見ているとなぜか不思議な感じがする。

…そういえばあの時…
宮本さんの血が…染み込んでて…


…くそっ!


俺はほぼ無意識に

何度も何度も自分の左腕を傷つけた。



気がつくと腕は傷だらけ…
というより血まみれ、かな。



俺はもう一度刃先を当てようとする。
しかし今度はふらふらして狙いが定まらない。



俺は自分の気が遠のいていくのを感じた。






このままなら…死ねるかな…








会いたいな…宮本さんに。






俺の…初恋の…人に……

429: 名前:+椎名+☆2011/10/21(金) 17:26:16
目が覚めると見慣れない天井が見えた。

横には白いカーテン…
ここは病院か…



ち…結局あのまま気失っただけか。

あの時首に刺しておけば…




俺のなかには罪悪感が残った。


起き上がろうと手をのばすと左腕に激痛が走った。

俺の手にはぐるぐる巻かれた包帯…



……



「鈴地君」



聞き覚えのある高めの女の人の声。

佳暖でも母さんでもない。



「先生…?」



それはあの保健室の先生…
梨隅優先生だった。


「鈴地君、あなた…自ら命を絶とうとしたの?
カッターを持ったまま倒れてたらしいけど」

「…うん」



すると先生は真剣な表情でこっちを見た。



「何で俺助かったんだよ…何で俺が…
なんで宮本さんは助からなかったんだよ!
俺が死ねばよかったのに…」



その瞬間、



病室にパチンという音が響いた。








…先生が俺を…打った?




「簡単に死ねばよかったなんて言わないで!
自分の命は大切になさい!
あなたが死んで悲しむ人もいる…
死んでも何もならないのよ!」




…!



斎と…同じことを言ってる…




『お前が死んだら悲しむ人もいる』




わからない…



俺は死にたいのに…


俺を必要としてくれる人がいる…




どうすればいいんだ?



こんなに苦しい状況に置かれたのは初めてだ…



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最終更新:2012年08月11日 06:45
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