401: 名前:+椎名+☆2011/10/03(月) 19:30:40
俺は自分から人を遠ざけていった。
そしてやがて俺は孤立し始めた。
「斎、これからは俺に近づくな。佳暖にも言っといてくれ」
「……ああ、わかった」
「悪いな…」
俺は自分から斎も佳暖も遠ざけた。
いつかまた別の人を自分のせいで死なせてしまうんじゃないかっ
て。
怖いんだ…
俺は何があっても笑ったり怒ったりもしなかった。
宮本さんの葬式に行った時も
どんなに美味しい料理を食べても
例えどんなことがあっても
俺は感情を示さなくなってしまった。
「暁君…全然笑わなくなったね」
「あの事件のせいでしょ…?」
「…暁の奴、いつも無表情になっちまったな」
「感情喪失なんて…気の毒だよな」
感情喪失…か。
今の俺にはいいかもな。
これからも感情なんか表さなくていい。
俺は重い罪を…好きな子を死なせた罪を背負ってるからな。
これくらいの罰は…俺には必要なんだ。
402: 名前:+椎名+☆2011/10/03(月) 19:41:18
「ねぇ、鈴地。明日買い物に行かない?」
…今までと変わらなかったのは佳暖が話しかけてくることだ。
斎の奴…ちゃんと言ってくれたのか…?
でも佳暖は聞かなさそうだけどな…
「…行かない」
「いいじゃん、行こ?」
「一人で行け…」
「じゃあ明日の午後ね!」
「おい…」
佳暖は勝手に予定を決めてきた。
…本当に勝手な奴だな。
俺なんかに構うなよ。
迷惑だっつーの…
俺は明日もちろん行かないつもりでいた。
でも次の日…
「鈴ちゃん、お友達と出かけるんでしょ?はい、着替え」
母さんに無理矢理家を出されてしまった。
…佳暖の奴、母さんに言いやがったのか。
面倒だな…
「鈴地、行こっか」
「そーそ、早いとこ行かないとな」
佳暖の後ろに斎もいた。
こいつら…近づくなって言ったのに。
仕方なく俺は二人について行った。
404: 名前:+椎名+☆2011/10/03(月) 20:02:59
俺達は広いデパートについた。
最近できたとか言うデパートだっけか?
「さ、鈴地行こう」
佳暖は俺の手を引っ張ってくる。
うぜぇけど…仕方ねぇか…
俺達はまず雑貨屋に行った。
すると斎がそこに置いてた猫耳を俺につけてくる。
「お、鈴地君かっわい~」
「ふふ、本当だぁ」
「………」
いつもなら俺は…ここでどうしていたんだろう…
…やっぱり…笑っていたのだろうか……
「あ、見て斎君!ゲームセンターだよ」
「お、いーじゃん!いこーぜ鈴地!」
二人には悪いけど俺は早く帰りたい気分だった。
ここにいたら…宮本さんに申し訳ない気がしたからだ。
「プリクラ発見~!なーなー佳暖ちゃん、鈴地!撮ろうぜ!」
俺は(ほぼ強引に)プリクラに連れて行かれた。
『いっくよぉ~!笑って~!』
プリクラの機械が言う。
こんな状況で笑えるかよ…
『さん、にぃ、いち!』
その途端、プリクラのカメラが光った。
そして二人は楽しそうに落書きしてそれを印刷した。
しばらくすると印刷された写真が出てくる。
「はい、鈴地の分」
俺は佳暖からプリクラを受け取った。
…今の俺、すごい無愛想だな。
笑ってる写真1つもねえじゃねぇか。
俺はプリクラを鞄にしまってまた二人についていった。
415: 名前:+椎名+☆2011/10/14(金) 18:34:44
俺達は結局あのあと飯を食べて帰った。
ま、こんな無愛想な奴といても楽しくないよな。
「今日はたのしかったな!佳暖ちゃん!」
「うん、鈴地もそうでしょ?」
「…そうだな」
俺は信号が青になるのを待ちながら俺は空を見上げた。
…赤いな…もう夕方か…
確か…宮本さんの血もこんな感じで赤くて…
………
向こうから青い大きなトラックが走行してくる。
あのトラックに突っ込んだら死ぬかなー?
俺は死を簡単に考えるようになっていた。
死ぬってやっぱり痛いのかな?
人間いつか死ぬんだし今死んでも変わらねぇよな。
罪を償いたいって気持ちもあるけど
やっぱり宮本さんがいない生活はおちつかねぇ。
俺はトラックが近づいてくると
横断歩道に一歩足を出した。
しかし…
「鈴地、まだ赤だよ」
佳暖に手を引っ張られて止められる。
トラックはそのまま横断歩道を通過した。
…死ねなかったか…
416: 名前:+椎名+☆2011/10/14(金) 18:58:05
…気のせいか?
佳暖が少し怒ってるように見える…
ま、表情は相変わらず笑ってるけど。
「ふふ、じゃあ明日ね」
佳暖は横断歩道を渡って角を曲がった。
斎と二人か…
いつぶりだろうな…
ま、話すことは何もねぇけど。
「鈴地」
「……」
俺は返事をせずに目だけを斎に向けた。
「お前さ、さっき渡ろうとした時…
死のうとしてなかったか?」
「……!」
さすがだな、親友ってのはよ。
何でもわかってやがる。
「答えろ!」
斎が珍しく怒ってる…?
「そう…だって言ったらどうするんだ…?」
俺は目をそらす。
バシッ…!
……!
斎が俺を殴った。
「ふざけんなよ、お前が死んだって変わらねぇだろ!」
「………」
確かに変わらねぇかもな…
でも俺が宮本さんを殺したも同然だ。
その俺がのうのうと生きてていいのか?
俺が本当は死ぬべきだったんじゃないか?
俺は斎を置いてまた歩き出す。
斎はここを曲がったところが家だからな。
「鈴地」
俺は今度は立ち止まった。
「…お前が死んだら悲しむ人もいるのを忘れんなよ…」
…悲しむ人?
誰の事だ…?
俺なんかを想って泣いてくれる奴なんているのか…?
聞こえてきたのは斎が走っていく足音だけ…
俺は振り替えることなくまた歩き始めた。
417: 名前:+椎名+☆2011/10/14(金) 19:08:55
~斎side~
くそっ…!
鈴地の野郎…何だよ!あいつ…
死ぬつもりか冗談半分で聞いたらそうだって…?
ふざけてやがる…
「くそっ!」
俺は部屋にあったクッションを壁に叩きつけた。
俺は普段あんまり怒らねぇからな。
こんなことは普段ならしないけど。
鈴地の奴…本当に何もわかってねぇよ。
悲しむ人の中には俺もいるってことも。
親友は…お前しかいない。
お前は一人しかいないんだ…
だから死んでほしくない。
鈴地が立ち直ってくれると信じて離れたのに…
鈴地が簡単に死のうと考えてたなんてな…
なんだか裏切られた気分だぜ…
俺はベッドに寝そべった。
428: 名前:+椎名+☆2011/10/21(金) 17:09:21
~鈴地side~
今日は日曜日。
今日こそゆっくりできるな…
さてと、何するかな……
毎日毎日暇だしな。
変わらない毎日。
まるで繰り返されてるようだ。
…あれ?机に俺カッターなんて置いてたっけ…
はは…最近忘れっぽいかもな…
……
俺はカッターを持つ。
どこにしまうかな…
俺は鋭い刃先を見た。
…このカッターなら死ねるかな?
宮本さんが死んでからは自分の死ばかり考えてる。
…俺が死んで宮本さんが生きてたらよかったのに…
俺はカッターの刃を手首にあて、横に移動させる。
すると一筋の線ができ、その傷から血が溢れた。
へぇ、カッターってすっと切れるもんなんだな。
溢れた血はやがて1つの雫になって床にこぼれた。
さすがに手首を切るとふらっとする。
俺はもう一度左腕にカッターをあてて切る。
するとまた新たに深めの傷ができた。
痛みは感じない。
ただ…見ているとなぜか不思議な感じがする。
…そういえばあの時…
宮本さんの血が…染み込んでて…
…くそっ!
俺はほぼ無意識に
何度も何度も自分の左腕を傷つけた。
気がつくと腕は傷だらけ…
というより血まみれ、かな。
俺はもう一度刃先を当てようとする。
しかし今度はふらふらして狙いが定まらない。
俺は自分の気が遠のいていくのを感じた。
このままなら…死ねるかな…
会いたいな…宮本さんに。
俺の…初恋の…人に……
429: 名前:+椎名+☆2011/10/21(金) 17:26:16
目が覚めると見慣れない天井が見えた。
横には白いカーテン…
ここは病院か…
ち…結局あのまま気失っただけか。
あの時首に刺しておけば…
俺のなかには罪悪感が残った。
起き上がろうと手をのばすと左腕に激痛が走った。
俺の手にはぐるぐる巻かれた包帯…
……
「鈴地君」
聞き覚えのある高めの女の人の声。
佳暖でも母さんでもない。
「先生…?」
それはあの保健室の先生…
梨隅優先生だった。
「鈴地君、あなた…自ら命を絶とうとしたの?
カッターを持ったまま倒れてたらしいけど」
「…うん」
すると先生は真剣な表情でこっちを見た。
「何で俺助かったんだよ…何で俺が…
なんで宮本さんは助からなかったんだよ!
俺が死ねばよかったのに…」
その瞬間、
病室にパチンという音が響いた。
…先生が俺を…打った?
「簡単に死ねばよかったなんて言わないで!
自分の命は大切になさい!
あなたが死んで悲しむ人もいる…
死んでも何もならないのよ!」
…!
斎と…同じことを言ってる…
『お前が死んだら悲しむ人もいる』
わからない…
俺は死にたいのに…
俺を必要としてくれる人がいる…
どうすればいいんだ?
こんなに苦しい状況に置かれたのは初めてだ…
最終更新:2012年08月11日 06:45