君を好きになる5秒前 続き2

59: 名前:雷蓮☆2011/07/18(月) 11:55:25

~蓮side~


教室に入ると、

いつもいるハズの舞がいなかった。

カバンも見当たらない。

蔵間も今日は早く来るって言ってたのに来ない。

「蔵間君なら舞さんと一緒にいたけど?」

聞き覚えのある嫌な声。

「…なんでてめぇが知ってんだよ」

「さっき見たのよ。ねぇ、どうしてあんな女にこだわるの?」

「じゃぁ俺も聞くが、どうしてそんなに俺にこだわる?」

「私は一目惚れしたのよ。かっこいいあなたに」

「それは外見だけだろ」

「!?」

「一目惚れって言うのは、大体は顔に惚れるんだよ」

「そ、そんなこと」

「俺はそういうのはごめんだ。分かったらあきらめろ」

「くっ…。まだあきらめないわ」

やれやれ。メンドクセー女だな…。



60: 名前:雷蓮☆2011/07/18(月) 12:44:55


~翌日~

  • 屋上-

「作戦実行のときがきた」

蔵間君が勢いのある声で言う。

「お嬢様はまだ、この作戦に気づいておられません。
 むしろ、今日を楽しみにしておられました」

「なら、作戦も成功しそうね」

鈴音は楽しそうに微笑む。

「じゃあ、改めてみんなの役割を確認するぞ」

蔵間君がみんなの顔を見る。

「まず、目黒さんは蓮を誘拐。
 車に乗せて学校のまわりを一周したら
 裏門に車を止める。
 そしたら目黒さんは指示がでるまで車内で待機。
 もちろん蓮も一緒に」

「承知致しました」

「次に康介。
 康介はあらかじめ目黒さんの車に乗っとけ」

「え!?」

「お前には蓮に状況を把握させてやるのが役目だ」

「それはマグロさんでいいんじゃ…」

「失礼ながら、私の名字は 目黒 です」

「康介、目黒さんにあやまれ」

「マグロって言ってすいません…。それで何で俺が乗るの?」

「高級車の運転は集中しなきゃいけないんだよ。
 すべての内容を話すには無理がある。
 そこで事故なんて起こして “さよなら” なんて悲劇だぞ」

「あ、そっか!分かった」

「そして鈴音。お前は舞の近くにいてくれ。
 舞の身が危険な時、知らせてくれ」

「え? あ、うん」

「でも、瑠菜ちゃんに気づかれないように」

「どうして?」

「二人が一緒にいればきっと他の執事とか呼ぶだろ。
 変な勘違いして身をまもろうとする可能性がある」

「お嬢様だしね…。了解!」

「んで、舞は目黒さんが
 瑠菜ちゃんから離れた後に説得してくれ」

「うん!」

「じゃぁ、一人一人にトランシーバー渡しとく」

「「「とらんしーばー? ?」」」

「あぁ。目黒さんと武塔先生は分かるよな?」

「もちろんだ!」

「承知しております」

「これは相手との連絡をとるんだ。
 ここのボタンで会話できる」

「おぉ~」

さっそく康介がいじりはじめる。

「んで、武塔先生も舞の近くにいてほしい」

「俺も?」

「あぁ。説得がうまくいきそうだったら、
 トランシーバーで目黒さんに報告。
 そしたら、目黒さんは蓮を連れて舞ちゃんのとこまできて」

「承知致しました」

あまりの完璧な蔵間君の説明に、

みんな関心する。

実は蔵間君は天才なんじゃないかな…。

「そういえば、じゅんはどうすんの?」

鈴音が蔵間に質問する。

「俺は予備の作戦実行者」

みんな首をかしげる。

まぁ、でも、成功する可能性は高いってことかな?

63: 名前:雷蓮☆2011/07/18(月) 13:44:56


  • 放課後-

私と鈴音は

ろうかの角で瑠菜ちゃんと蓮を見守る。

瑠菜ちゃんの脇には目黒さん。

蓮君は少し焦っている。

一応、眠らせないことは蓮君に言ってあるハズ…。

「あれ、蓮君の演技だよ」

「そうなの?」

本当に知らないような感じだったから、

てっきり伝えてないのかと思った…。

「もう一度言います。
 私と一緒にフランスへ行きましょう?」

「無理」

「どうしてです!? そんなにここが好きなのですか!!?」

瑠菜ちゃんは少しキレぎみ。

「あぁ。フランスに行ったって何の利益もねぇだろ」

「ありますわ!少しくらい!」

「俺ァ、女じゃないんだ。
 てめぇみてぇに、なんでもかんでも欲しがりはしねぇよ」

「チッ…。どうしてもって言うなら…」

「なんだよ?」

「無理やりにでも連れて行ってあげる」

「!?」

    ガバッ!

目黒さんはハンカチで蓮君の鼻と口をおおう。

蓮君は眠った演技を見事にこなした。

「よくやったわ、目黒」

「私は蓮様を車でお運び致します。
 お嬢様はお父様が来られるまでお待ちを」

タタタッ…

「やっと…蓮を手に入れた…」

    スタ…

「!!?」

「ごきげんよう、お嬢様」

「あなたは…!!舞さん、あなた…」

「もうお気づきになられましたか?
 ずいぶんとお察しが早いですね」

あたりの空気が凍る。

私と瑠菜ちゃんは睨み合う。

64: 名前:雷蓮☆2011/07/18(月) 15:01:36


「騙したわね!?」

「瑠菜ちゃんだってそうでしょ?」

「くっ…!あなた、蓮とどういう関係!?」

「友達だよ」

「よくそう言えるわね!私は友達なんてつくらない!!」

「どうして?」

「女なんか信用できないわ!私の思い通りに上手くいかない!
 男の方が思い通りに動くわ」

「だからって、蓮君をさらっていい理由にはならないでしょう」

「蓮は一目惚れした男よ!どうしようが私の勝手じゃない!」

「蓮はあなたのオモチャなんかじゃない」

「この私にかかれば、人間もオモチャになるわ」

「じゃあ、あなたは何様なの?」

「なっ!?」

「神様じゃないのに、何で偉そうに言うの?」

「そ、それは私が偉いからに決まって…」

「世の中にはやっていいことと悪いことがある。
 それもあなたの都合でなんとかできるの?」

「っ…!!」

「いくら偉いと言っても、法律も動かせないならそれまで」

「わけわかんない!!あなたは何がしたいの!?」

「私は瑠菜ちゃんとお友達になりたい」

「なっ……!?」

「お互いに何でも話せるいい友達になりたいの」

「っ……」

「瑠菜ちゃん、私は蓮君が好きだよ」

「えっ……」

「だから、あの取り引きの時すごく嫌だった。
 好きな人と2週間も話せないなんて、
 私にはたえられない」

「っ…」

「でもね、瑠菜ちゃんが少しでも
 蓮くんといい思い出を作りたいなら
 そんなこと喜んでやるって思ったよ」

「!! ど…して…?」

「だって、瑠菜ちゃん好きなんでしょ?
 そしたら海外に行く前に、好きな人と素敵な思い出つくりたいじゃん」

瑠菜ちゃんが涙を流す。

きっとフランスに行くことを瑠菜ちゃん自身は

望んでいないんだろうな…。

「どうして…? どうして優しくするのよ…」

瑠菜ちゃんが泣きながら問う。

「これが普通なんだよ」

「ふ…つう?」

「そう!友達に優しくするのが普通!
 悪いところは言い合ってお互いになおすのが友達!
 瑠菜ちゃんは、今までそういう友達に会ったことがなかっただけ」

「っ…う……」

  ゴソゴソ…

「はい」

私は制服のスカートのポケットに入れてあった

ハンカチを瑠菜ちゃんに手渡す。

「ふぇ…?」

「涙、ふきなよ。かわいい顔がだいなしだよー?」

「…」

「そういうとき、何ていうか知ってる?」

「え…」

「ありがとうだよ」

「あ、ありがとう…」

「はい、どういたしまして!」

私がにっこり笑顔で笑うと、

瑠菜ちゃんも思いっきり可愛い笑顔で返してくれた。

  • 5分後-


「フランスでお婿探し?」

「そう。お父様が日本の男はダメって言うから」

「でもね、いい人を見つけた」

「蓮君だね?」

「そうよ。でも…」

「ん?」

「舞にはかないそうにないわ」

「…へ?」

「気持ちで負けちゃった。
 舞が2週間話さないのはつらいっていったこと」

「あ、あぁ!」

「私はまだ我慢できるから、そんなに好きじゃないのかも」

「そ、そ?」

「えぇ。それに…」

「??」

「舞に会えて、嬉しかった…」

「え…」

「小さいころに私、ある女の子と約束してたの。
 そしたらその子、その約束守ってくれなくて怒ったら
 私と遊びたくなんかないって言われて」

「ひどい…」

「それからかな。女の子と遊ばなくなったの」

「そうだったんだ…」

「今は、舞がいるから大丈夫。
 目を覚まさせてくれてありがとう」

その後、瑠菜ちゃんとは友達、ううん、親友になった。

来年、日本に遊びにくることを約束して

学校を去って行った---。

65: 名前:雷蓮☆2011/07/18(月) 15:20:20


一人、ろうかに突っ立っていると

「舞!!」

後ろから声がした。

振り向いた瞬間に---

    ぎゅっ

えっ…

今…何が起きてるの…?

「心配した…」

私を抱きしめているのは…

「俺のために説得してくれてありがとな」

あのいつもぶっきらぼうな、蓮君だった…。

「蓮…くん…?」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「なに大声出してんのよ!!!バカ!!」

「蓮!イチャイチャするなら外でしなさい!!」

鈴音に康介、武塔先生の声。

それにご立腹の蓮君。

「康介、ロリコン(武塔)…。ちょっとツラかせや…」

蓮君は私から離れて、指をポキポキ鳴らす。

蔵間君は私にそっと耳打ちする。

「蓮は舞ちゃんとのラブラブを邪魔されて怒ってるんだよ」

蔵間くんはニコッっと可愛く笑って、蓮くんを止めに行った。

蔵間くんが教えてくれたことに、

私は心臓が止まらなかった。

68: 名前:雷蓮☆2011/07/18(月) 16:37:13


~夏~


「あぢぃーーーーー」

うなり声をあげているのは、

いつも暑苦しいくらいうるさい康介。

珍しく早く学校に来ていた康介と私と鈴音。

「うるさいんだけど、ムサ男」

「ムサ男って何だよ!!」

「ムサ苦しい男…」

「う、うるせぇ!!」

「あんたがうるさいわ!!」

「もー、二人共うるさいー」

私が二人の喧嘩を止める。

「鈴音ってば、可愛さのかけらもねぇんだもん」

「お前に言われたかねー」

「鈴音、口が悪くなってるよ」

蒸し暑いから喧嘩しかできないこの二人。

「もういっそのこと、海に行かね?」

「学校サボったら留年だぞ」

「あ…」

夏は生気を吸い取られる季節…。

  コツコツ…

「あ?」

「お、康介くんの顔が死んでるぞ」

「なんだ “ぶどう” じゃねぇか」

「 “武塔” です!!」

「せんせぇー、せんぷうきぃー」

鈴音が死にそうな声で言う。

「ダメダメ!節電に協力!」

「ケチ!バカ!ぶどう!鬼軍曹!」

「康介は内申書下げとくからな」

「嘘ですー!お代官様~」

私たちは夏バテ中---。

69: 名前:雷蓮☆2011/07/18(月) 17:57:00


  ガラッ

「あれ?舞ちゃん、早いね~」

「ん~…?あ、蔵間君ー」

「すぅんごい夏バテだね。大丈夫ー?」

「もう、むりぃ…」

こんなに暑いのに、元気そうな蔵間君。

爽やか男子とは、このことを指すだろうか…。

「しっぺ女が夏バテだなんて、笑えるな」

   どきっ

蓮くんが来ると、ある意味心臓に悪い…。

「もぅ、蓮君は帰っていいよ」

「うるせぇ、チビ」

「チビって言うな」

「チビにチビって言って何が悪ィ」

「全体的に…?」

言い合いが続く中、康介が割り込む。

「蓮、お前なんとかしろよ」

「何を」

「この暑さに決まってんだろ」

「体、弱ェなー。お前ら」

「冬が一番燃えるんだよ」

「年中暑苦しいクセに、よく言うぜ」

「うるせー」

康介も最近、蓮くんに反抗するようになった。

これも一歩成長…?

蓮君は康介のほっぺをつついてる。

蔵間君はケータイで何やら調べ物…?

70: 名前:雷蓮☆2011/07/18(月) 18:15:10


「やっぱり!あったあった!」

蔵間君が楽しそうに言う。

「何があったんだー?蓮のぬけがらかー?」

「はーん…。康介…。お前に教育が必要か…?」

「ひ!!う、嘘ですよ~!もぅ、蓮様ったら~」

「で?どうしたの、蔵間君?」

私が質問する。

「ねぇ、みんなで遊園地に行かない?」

「「「「遊園地?」」」」

4人揃って驚く。

「そう!遊園地!
 知り合いがさ、入場無料のチケットくれてさ!
 すっかり使うの忘れてて~!
 ちょうど人数分あるから、みんなで行かない?」

「「行きたい!!!」」

康介と私が一番に声をあげる。

「私も賛成~!!」

鈴音も元気よく言う。

「俺も構わねぇ」

「よし!決まりな!!」

こうして週末、みんなで遊園地に行くことになった。

あれ…?みんなってことは…蓮君も!?

ど、どどどどうしよう!!!???

何を着ていけばいいのーーーー!!?

73: 名前:雷蓮☆2011/07/18(月) 21:35:44

~4時限目(世界史)~

「はーい、席つけ~」

やかに爽やかな武塔先生。

嫌な予感がするなぁ…。

「今、嫌な予感がしたやつ!正解だ!!
 抜き打ちテストやるぞ~」

「「えぇーーーーーーーー!!」」

クラス中のみんながブーイング。

私は奇跡的に、昨日復習してたからバッチリ。

「嫌だァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

最初に反抗したのは康介。

学園中に響く叫び声。

「そうか~!康介はそんなに嬉しいか~!
 あっははははははははは!」

先生は全然めげないしむしろ、その反応を見て喜んでいる。

それが気にくわないのか康介はもっと反抗する。

「もう世界史なんか嫌いだぁ!!一生恨んでやる!!末代まで!!」

いや、世界史に家族とかいないし…。

てか、末代とかもないですから!!

私が心の中でツッコむ。

「はい、始めるぞ~」

気持ちいいくらいスルーする先生。

「いやめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

鼓膜がやぶれそうなくらい泣き叫ぶ康介。

康介のプライドってどんなのなんだろ…。

「うるせぇよ。しばらく眠ってろ」

  ゴスッ!

しびれを切らした蓮君が、康介にみぞおちをお見舞いする。

見事にクリティカルヒットする。

「おぅ……」

抜き打ちテストの康介は、とてつもなくうるさかった。

…と同時に、蓮くんがとっても正義のヒーローに見えた。

平凡な日常の印である。

78: 名前:雷蓮☆2011/07/18(月) 22:58:43


~お昼休み~

  • 屋上-

お昼休みになってもなお、

さっきの蓮くんのみぞおちが効いている様子の康介。

お昼を食べようって誘っても返事がないため、

キレた鈴音は上りの階段やろうかを

康介を引きずりながら来た。

康介のいたるところに、ほこりや傷の跡。

なんか今頃だけど、

康介が可哀想に思えてきた…。

「康介、そんなに痛かったか?」

蓮君が返事がない康介に問う。

「……ぁ」

かすかに返事らしき声が聞こえるが、

何を言いたいのかまでは分からない。

「せいぜい、俺の食いっぷりでも見物してな。
 せっかく蔵間特製の 卵焼き を…」

   バッ!!

卵焼きの一言に反応した康介。

「てんめぇ…その卵焼きは…俺んだァ…」

まだみぞおちが効いているから上手く話せないらしい。

「おぉ? そうだったのか?
 ほれ、今回はくれてやる」

   バッ!!

   モシャモシャ…

康介が獲物を狙うように食いついた。

幸せそうな顔して卵焼きをほおばる。

その姿は本当に、犬のようでした。

たとえるなら、飼い主が蓮君で

飼い犬が康介ってトコ?

何より、仲良しだから二人共可愛く見えてくる。

83: 名前:雷蓮☆2011/07/19(火) 22:02:04


~5時限目(HR)~


5時限目はホームルームの時間。

みんなのテンションが上がる。

だって勉強しなくていいんだもん!

   ガラガラ…

担任の武塔先生が入ってきたと同時に

みんな席につく---。

今日の号令の係は、康介と蓮君。

初めの号令は康介が言うらしい。

やたらとニヤけている康介…。

「きりーつ!!」

 ガタガタガタ…

「ロリコン教師に絶望!! じゃなかった、礼!!」

わざとっぽかった康介の号令。

蓮くんはクスクス笑っている。

それを見て、蓮くんを叱っている蔵間くん。

「よーし、いい度胸だー康介ー!!
 放課後、職員室まできなさい!!
 あと、笑ってる蓮!!お前も一緒にだー」

「「はぁ!? ふざけんじゃねーぞ!!」」

康介と蓮君がカブる。

「当たり前だー。
 一週間、俺の元で雑務をこなしてもらうからな」

「先生!冗談はよしてください!
 俺は蓮にって言わないと星にするぞって言われたから言ったんです!」

康介が自分の罪を軽くしようと、先生に弁解。

蓮くんは大人の対応。

「先生!俺は決して康介にそんな恐ろしいこと言ってません!」

いつもそれ以上のこと言うくせに…という顔で

康介が蓮くんを睨んでいる。

「分かった。 康介は2週間、雑務をこなしたいんだな?」

「えぇ!?」

先生は容赦なく、康介の雑務の期間を2週間にした。

今日は康介のアンラッキー・デーかもしれない。

あ…。鈴音がものすぅんごく、嬉しそう…。

ドSの血が騒ぐのかな…。

私はこのとき、

このクラスに個性派がたくさんいることを

改めて深く感じた。

84: 名前:雷蓮☆2011/07/19(火) 22:42:23


~放課後~


やっとこさの放課後。

みんな部活やらバイトやらで慌しく教室を出て行く。

…が、一人、窓の外を見てぼーっとしている男の子。

まだ話しかけたことがない男子。

確か名前は…

「小野 蒼太!!」

そう!! 彼の名前は、小野 蒼太(おの そうた)。

学年で上位の成績、顔もかわいいしかっこいい。

モテるなんてもんじゃない。

その可愛さに惚れた女子は、星の数ほど。

…と鈴音が言ってた記憶がある。

「もうちょっとしたら行く…」

彼は運動神経も抜群で、

毎日部活からのオファーや助っ人を頼まれる。

「じゃぁ、グランドで待ってるからな~」

約束している男子が教室を先に出て行く。

「はぁー…。ん?」

あ、やばい。目がバッチリ合ってしまった。

こ、ここはあえてスルーしよう!

 スタスター…

「スルーするなんて、舞ちゃんらしくないね?」

「え…」

いきなりバッサリと言われ、驚く。

「やっとこっち向いてくれた!」

彼は満面の笑みを私に向けた。

  キュンっ!

な、な、なんて可愛い~~~~!!

なんか子犬って感じ!

「舞ちゃんが振り向かせるために、
 さっきからずっと演技してたんだよ?」

「えっ?」

い、いきなりそんな事言われても…!

ど、どう反応すればいいのか困る!

「そういう天然な舞ちゃんが可愛くって、俺…好きなんだ」

!!!

それって…

「蒼太くん…。実は私…」

「うん?」

「実は私も、蒼太くんが好きなの!!」

「えっ!? ってことは…両思い!?」

「友達として両思いだね!!」

「え…??」

「え??」

蒼太くんが驚く。

「残念だったな、蒼太」

「!? 蓮!!」

いつのまにか教室のドアに寄りかかっている蓮くん。

「お前、本当に好きならよー、
 こいつがかなりのド天然だってこと把握ぐらいしとけ」

なぜか、どや顔でほこらしげな蓮君。

蒼太くんは少し落ち込んでいる様子…。

私、何かしたかな…???

「蓮、俺はあきらめないから。
 絶対舞ちゃんは俺の彼女にしてみせる」

「あぁ、やってみろよ。
 こいつは俺の彼女にするんだ。
 ぜってぇにお前には舞の心は奪えねぇよ」

二人の間に火花が散る。

私はまだ、二人がなんで睨み合っているのか理解できなかった---。



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最終更新:2012年09月06日 04:32
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