166: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 10:53:08
蓮くんと武塔先生がギャーギャー言っていると…。
「何抜けだしてるですか、武塔先生なのですよ」
なんと、花ちゃんが武塔先生を追っかけてきた。
あの小っちゃい花ちゃんが!!
ムスッとした顔で武塔先生を見つめる。
「武塔先生、そんなに元気なら学校に戻って仕事なのですよ~」
そう言って、武塔先生の服の襟を掴んで
引きずりながら行ってしまった。
「花先生~~~」
悲しい叫びだけが響いた。
「やっとうるさいのがいなくなった」
「先生をそんな風に言っちゃ可愛そうだよ?」
「別に可哀想も思わないな」
「もー」
お互いに長いつきあいだから、
こういう口論にいたっては情がないのかな…?
そうなると、武塔先生が可愛そうに思えてくる。
「おい」
「ん?」
「あした、お前の家に迎えにいく」
「本当!? ありがとう!!」
「寝坊したら、俺専用パシリな」
「だいじょーぶ!!絶対ない!!」
「待ち合わせ時間は10時だ。
9時には迎えに行くから、待ってろよ?」
「うん! あ、家についたよ!」
「ここがお前の…」
「小っさいけどね~」
「いや、結構でかいんじゃねーかな」
「そんなことないよ。じゃ、また明日!
送ってくれてありがとう!」
「あぁ、じゃあな」
スタスタ…
私は蓮くんの姿が見えなくなるまで、
家の中には入らなかった。
蓮くんと明日、もっと距離が縮まりますように…。
170: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 13:04:04
~翌日~
とうとうこの日がやってきた。
遊園地の日---。
蓮くんが迎えに来てくれるから、
道に迷う心配はない。
それに、少しでも一緒の時間を過ごせる。
お母さんは長期出張でいないし、
お父さんは海外でお仕事。
ほぼ一人暮らし感覚。
ピーンポーン…
蓮くんだ!!
「はーい」
ガチャ…
「迎えにきた」
「準備はできてるよっ!行こうか!」
戸締りをして、家を出た。
今日の天気は、晴天。
何をしても上手くいきそう。
「お前、俺だけ見てろよ」
「どうして?」
「どうしてもだ。
蒼太のこと見てたら、
パシリやらせるからな」
「何で半分脅しなの…」
「いじりがいがあって、楽しいから?」
「ドSだぁぁぁぁぁぁ」
「うるせぇ。…あれ、蔵間じゃねぇか?」
「え? どこどこ~?」
遊園地の入り口に、蔵間くんが立っている。
雰囲気が大人っぽくて気づかなかった。
「あ!! 蓮、舞ちゃん!!」
「蔵間くん、おはよう」
「おはよ!蓮とのデートはどうだった?」
「で、でーと!!??」
「おい、蔵間」
「はいはい、ごめんね~」
笑いながら私の頭を撫でる。
子供じゃないよ!!
「あ、みんなおはよう」
「蒼太くん、おはよう」
「舞ちゃん、おはよう」
「意外と早く来るんだな」
「蓮こそ、舞ちゃんのお迎えなんてずるいね~」
二人の間に火花が散っている。
蔵間くんはやれやれ…と肩を落とした。
「火花散らしてないで。時間なくなるよー?」
「チッ…。舞、最初は何に乗るんだ?」
「んー、そうだなー…」
「メリーゴーランドでもいいよ、俺は!」
さすが可愛さもある、蒼太くん。
女の子の好きな乗り物も乗れるなんて!!
「俺はお前が楽しんでくれんなら、乗ったって構わねぇ」
蓮くんの意外な発言に、驚いた。
「え、蓮くんいいの?」
「仕方なくだ。早くしろ」
「うん!」
そうして悩んだ結果、
私はジェットコースターに乗ることに。
二人ずつ座るから席をじゃんけんで決めることに。
私の隣は…
「舞ちゃん、よろしくね!」
蒼太くんになった。
蓮くんと一緒じゃなくて、ちょっと残念。
「うん、よろしく」
「何で男と座らなきゃなんねんだよ…」
不機嫌な蓮くんに蔵間くんが言う。
「それは俺もだよ。ま、お互いさまね」
ジェットコースターが動く。
「私、ジェットコースター大好きなんだ!!」
「そうなの? なら、気が合いそう!!」
蒼太くんが嬉しそうに言う。
ジェットコースターが徐々にてっぺんへ上がっていく。
そして---。
「きゃーーーーー!!」
思いっきり叫ぶ!!
もう最ッッッッッッッ高!!!
~広場~
「あぁ~、超楽しかった!!」
「うん、最高だった!!」
蒼太くんもすごく楽しそう。
でも、蔵間くんと蓮くんは違った。
「男の隣で何も楽しくねぇよ」
「蓮の隣は二度といやだね…」
二人に何があったかは、
分からないけれど楽しそうじゃないのは分かる。
171: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 14:07:52
~メリーゴーランド~
次はメリーゴーランド!!
私は馬車にのりたくてウキウキ!!
隣のお相手は蓮くん!
「ねぇ、何かあの人かっこよくない~?」
「いやだぁ~!めっちゃタイプ!」
まわりにいる女の子たちの黄色い声。
「ほら、早く乗れ」
「あ、うん!」
ガチャンッ!
メルヘンチックな音楽をバックに、
私はお姫様気分を味わう。
その正面で、蓮くんはじっと見つめている。
「ふぅ~!超楽しい!!」
「お姫様気分か?」
「うん!お姫様!王子様がいないけどねー」
「いるじゃねぇか」
「え…んン!?」
それは突然のことだった---。
蓮くんが私の唇にキスをした…。
別に嫌じゃなかったけど、
告白もしていないのにされるのは嫌だった。
ドンッ!
私は抵抗して蓮くんを突き倒した。
「…っはぁ。何すんの、蓮くん!!」
「…ってぇ。キスに決まってんだろ」
「どうして…」
「俺が舞のこと、好きだから」
「え…」
「前にも言ったろ」
「でも、イキナリ…」
「じゃぁ、蒼太なら許したのかよ?」
「そ、そういうわけじゃ…」
「なら、何なんだ」
「それは…」
ガチャンッ!
“お下りのお客様は、焦らずにお下りくださいませ”
「タイムオーバー」
スタスタ…
蓮くんは一人で先に降りてしまった。
私はちゃんと向き合って、
告白した後にキスをしたかった。
ちゃんとしたデートのときに、キスしたかった。
「ごめんね…蓮くん…」
蓮くんの背中につぶやいた。
172: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 14:17:37
~観覧車~
蒼太くんの希望で乗ることになった観覧車。
私はさっきのことで頭がいっぱい。
蓮くんは一人でどこかに行っちゃうし…。
「気にしないで、舞ちゃん」
蔵間くんが優しい言葉をかけてくれる。
「うん…」
「さ、舞ちゃん一緒にのろ?」
「そ、だね…」
蔵間くんは蓮くんを探しに行ってくるから、
観覧車には乗らない。
「じゃ、楽しんでね」
「うん。ごめんね、蔵間くん」
「蓮の勝手な行動だから、謝んなくていいよ」
「舞ちゃん、乗ろ?」
「うん」
私と蒼太くんに手を振ってから、
蔵間くんは遊園地の広場へと姿を消した。
173: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 15:05:53
~観覧車の中~
しばらくの沈黙。
蒼太くんは心配そうに私を見る。
「蓮がそんなに気になる?」
「え…」
「舞ちゃんは分かりやすい」
「…うん」
「いきなりキスされて、
そのまま流されるような人はいないから
舞ちゃんは正しいと思うよ」
「…うん」
「でも、後悔してるんだ?」
「あのとき、受け入れればよかったのかな?」
「うーん…。無理やり受け入れるのはできないんじゃないかな」
「そうだよね…」
「せっかくの遊園地なのにね」
「…」
「俺が先に舞ちゃんとっても、
文句ないって態度かな蓮は…」
「っ…」
「泣いてもいいんだよ?」
「っ…ふっ…」
「俺、片思いじゃん。
舞ちゃんになら胸貸してあげるからさ」
「そ…たく…ん」
「俺ならこんな風に舞ちゃんを泣かせないから」
「うん…」
「考えといてね。俺が彼氏になることも」
「…う…ん…」
「あと10秒で下に着くね」
「やだ…。涙拭かないと…」
私が立って、カバンからティッシュを取ろうとしたとき…。
ガタンッ!
間違えて足を崩して、蒼太くんを押し倒してしまった。
「うわっ!」
ドンッ!
チュッ
その衝撃で蒼太くんにキスをしてしまった。
その瞬間、ドアが開き…
「お疲れさ…きゃっ!」
「舞ちゃん、蓮連れてきたよー…」
「っ!!!!!」
ドアを開けてくれる女の人が声をあげる。
蔵間くんは絶句。
蓮くんは私と蒼太くんの状況に驚いている。
ダッ---
「蓮くん!!待って!!」
ダッ
私は蓮くんに誤解だと伝えるために、
走り出した。
174: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 15:25:40
「待って!!待ってよ!!蓮くん!!」
ガシッ
蓮くん腕を力いっぱいに掴む。
「あれは誤解なの!足を崩して…」
「俺には嫌だとか言っといて、
本命のやつには自分からすんのかよ…」
蓮くんが低い声で言う。
「え…?」
「最初っから蒼太が本命なら、
俺が来る意味も迎えに行った意味もなかっただろ」
冷たくて消えそうな声で私に言う。
それでも私は誤解を解こうとした。
「違うの!あれはね、私が間違って---」
「俺の気持ちを弄(もてあそ)んで、楽しかったか…?」
ズキンッ!!
心が張り裂けそうだった。
好きな人に、愛しい人につくり笑顔で言われるのは、
私にとって絶望のようなものであった。
「蓮…く…」
「もう近寄んな。顔も見たくねぇ」
ダッ…
蓮くんは低く、悲しい声で言って走り去った。
追うことができない私は一人、涙を流す。
待って…。待ってよ、蓮くん…。
お願いだから…私の話を聞いて…。
一人になった私をさらに悲しくさせるように、
空からは大粒の雨が降ってきた---。
175: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 15:44:59
~蓮side~
「もう近寄んな。顔も見たくねぇ」
俺は舞の話も聞かずに、
走り出してしまった…。
あの状況を見て、誤解だなんて思えねぇよ。
違うと思いたいけど、思えないんだ。
このままつらくなんのは耐えらんねぇから、
お前を突き放したんだ。
舞、どんな顔してただろ…。
でももう、そんなこと関係ねぇ。
俺はもう、アイツの顔は見たくないんだ。
早く俺の脳内から、存在を消すんだ。
遊園地に何を期待した?
アイツに何を期待した?
もしかしたら、フラれるってことも考えただろ?
分かってたけど、自信があった。
自信があったからなお、傷いたダメージは大きい。
もう、関わらないようにするんだ。
俺は不良。
女なんていらねぇだろ。
あんなやつ、早く忘れるんだ。
何度も自分に言い聞かせた。
俺の目が熱くなる。
大雨が頬を伝うように、
舞への思いも流されればいいのに。
雨の中、俺は走りつづけた---。
176: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 16:00:26
~舞side(普通視点)~
私は大雨の中、
傘もささずに歩いていた。
道行く人々に、哀れな目で見られた。
路地裏に座り込んで曇天の空を見上げた。
「バカだな…」
蓮くんにあんなこと言って、
蒼太くんとキスしてるってなったら
誤解も何も、信じらんないよね…。
蓮くんを傷つけたのは、私---。
一番つらかったのは、蓮くんだよね…?
ごめんね。私が矛盾してるって言いたいんだよね?
分かったよ?
もう顔を合わせたりしないよ。
近寄ったりしないよ。
「さようなら、私の好きな人…」
路地裏の黒猫につぶやいた。
177: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 17:25:06
~翌日~
「あ!!舞ちゃん!!」
教室に入ると、
蒼太くんが心配そうな顔で私に話しかけた。
「昨日、大丈夫だった?」
「ごめんね、なんかあんな感じになっちゃって…」
「やっぱり、蓮とは話せなかった?」
「うん…。話すら、聞いてもらえなかった。
でも、いいんだ。これが私の犯した罪だから…」
「舞ちゃん…」
「舞、何があったんだよ?」
康介が尋ねる。
鈴音も心配そうに見つめた。
「なんでもないよ」
「でも…」
「いいんだって。私が悪いんだし…」
ふと蓮くんの机を見る。
まだ学校には来ていない。
「舞、つらくなったら保健室に行きなよ?」
「ありがと」
つくり笑顔で鈴音に言う。
蓮くんには二度と振り向いてもらえない。
分かってても、涙がでてくる。
178: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 17:32:53
ガラッ
蓮くんが教室に入ってきた。
私は胸が熱くなって、
我慢できず教室を飛び出した。
蔵間くんは私を見た後に、蓮くんを見た。
「蓮…」
「……」
それだけが耳に残っていた。
~保健室~
保健室の先生に頼んで、
少しだけ休ませてもらうことにした。
「あなた、無理しすぎじゃない?」
保健室の女の先生が私に言った。
「ちょっと疲れてるだけですよ。
寝ればすぐに治ります…」
「そう? 相談なら先生に何でも言ってね」
先生は職員室に戻って用事を済ませてくるらしい。
また一人になった…。
「どうして、こんなに苦しいの…?」
蓮くんへの伝えきれなかった思いが溢れ出す。
ガラッ
ふいに保健室のドアが開いた音---。
私は急いでかけ布団をかぶった。
180: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 17:48:04
「舞ちゃん?」
声の主は、蔵間くんだ。
「蔵間くん?」
私は飛び起きて、蔵間くんの姿を探す。
「いたー!」
「蔵間くん…」
「よかった。
昨日の話、蓮に無理やり吐かせた」
「え…」
「舞ちゃんは悪くないよ」
「っ……」
「蓮が怖がってるんだ。
自分に自信がなくなってね」
「もう関わらないよ」
「え?」
「蓮くんに顔も見たくないっていわれたから」
「うーん…」
「私ね、海外に行こうと思ってるの」
「えっ…」
「お父さんが海外にいるんだけどね、
一緒に住まないかって連絡あってさ…」
蔵間くんは私のことを切ない目で見る。
「そんな悲しい目で見ないでよ。
そうすればさ、蓮とは関わりもなくなるし…。
昨日の事でこうなったわけじゃなくて、
私が前から悩んでたことだから」
本当は全部ウソ。
お父さんにはこっちでガンバレって言われてる。
前から悩んでなんてない。
私自身が蓮くんを苦しめる存在なら、
相手がいなくなるより自分から
身を引いた方がいいと思ったから。
そうすれば、顔もあわせなくていいし近寄ることもない。
私は自分の本当の気持ちを押し殺した---。
182: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 17:55:45
「それが、舞ちゃんの本心?」
私は少し考えて首を縦に振った。
「そっか…。蓮にはこのこと…」
「言っても蓮くんには関係ないから、
判断は蔵間くんに任せるよ」
つくり笑顔…。
やだ、私…ちゃんと笑えてるのかな…
蔵間くんが何かを言いかけたけど、
分かったと言って保健室を去った。
183: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 18:06:38
~蓮side~
俺はまだ、舞のことが忘れられずにいる。
あの日の夜、どうしても離れなかったあの光景。
思い出したくない嫌な記憶。
「クソッ!!」
ガンッ!!
「蓮、ものに当たるなよ」
「分かってるよ」
蔵間に何が起きたかを、すべて話した。
舞の話を聞かなかったことと、
無理やりキスしたことを説教された。
俺だって…悪いと思ってたんだ。
「蓮…」
蔵間が教室に戻ってきた。
「本当に舞ちゃんとは縁を切ったんだね?」
「……あぁ」
「本当に?」
「いいんだよ、もう」
「…分かった。じゃあ何も言わないよ」
「…」
蔵間は何か言うことあったのか?
聞きたかったけど、聞けなかった。
舞に昨日、本当は何があったか聞きたい。
だけど、あんなこと言っておいてそれはないよな。
寂しい気持ちと愛しい気持ちを押し殺した。
なぁ、舞…。
もう一度、お前と話したいって言ったらお前は何て言う?
教室のドアを見て、舞が戻ってこないか見つめる。
186: 名前:雷蓮☆2011/07/30(土) 15:03:32
~舞side(普通視点)~
私は蔵間くんが去った後、
いつの間にか寝てしまった。
誰か来てくれたのだろうか、
私のカバンが置いてある。
あれ…?
何でカバンが…?
もしかして、もう放課後!?
ガバッ
急いで体をおこし、時計を見てみると…
“16時”
嘘でしょ…。
完璧に授業でてないじゃん!
後で鈴音にノート見せてもらおっと。
服装の乱れを直し、カバンをしょって保健室を出る。
「爆睡だったんだね?」
蒼太くんの声だ。
でも、その姿が見当たらない。
「蒼太くん? どこにいるの?」
「下、下~」
「した?」
言われたとおりに下を見ると、
蒼太くんが保健室の入り口の、
ドアの前でしゃがんでいた。
「わっ」
「驚いた~?」
ニッと笑って見せる蒼太くん。
もしかして、私が出てくるのをずっと待って…。
「待っててくれたの?」
「部活帰りにちょっと休憩してただけ」
蒼太くんの優しさが胸いっぱいに広がる。
「ありがとう」
ちょっとおかしくって笑っちゃった。
「何で笑うんだよ~」
「なんか、可愛くって」
「可愛いくて悪かったねー」
私を元気づけてくれてる。
本当に蒼太くんには感謝しなきゃな。
「よかったら、一緒に帰らない?」
「え、俺といいの?」
「蒼太くん、待っててくれたんでしょ?」
「あー…バレちゃってた?」
彼は恥ずかしそうに言う。
「じゃ、行こうっか」
「うん!舞ちゃん、転ばないようにね」
「わ、私そんなドジじゃないもん!」
こういうやりとりをしてると、
思い出してしまう。
愛しいあの人との会話。
忘れたくても、脳が消去してくれない。
蒼太くんに言わなきゃいけないよね。
私の本当の思いを。
言わなかったら蒼太くんの心を弄んでることになる。
冷えた風が吹き抜ける廊下に、
一つ、愛しい人の影---。
187: 名前:雷蓮☆2011/07/30(土) 15:11:18
「っ!!!」
私は硬直した。
正面から蓮くんが歩いてくる。
「舞ちゃん、どうしたの? ……蓮…」
かすかに手の震え。
心が張り裂けそう。
彼との距離が縮まっていく。
私の心拍数は、尋常じゃないくらいスピードをあげた。
ふと、昨日の光景が脳裏をよぎる。
“もう顔も見たくねぇ”
すべてを絶望に染め上げたあの一言。
でも、私は伝えなきゃいけない。
もう海外に行くことは決めた。
最後に、誤解だけは解いておきたい。
気づいたら蓮くんの手を握ってた。
188: 名前:雷蓮☆2011/07/30(土) 15:31:45
「……何だよ」
蓮くんが低い声で威嚇する。
私はそんなことで引いてはいけないと思った。
「誤解だけ、解いておきたいと思ったの」
真剣な顔で蓮くんを見つめる。
でも、彼はこっちを向いてくれない。
「俺がお前に話すことはねぇ」
「せめて、私の話を聞いて」
「嘘じゃねぇのか?」
「え…?」
「昨日、俺のこと突き飛ばしたくせに
蒼太だったらいいってことだよな?」
「それは違う」
「何が違うんだよ。信じろってのか?」
「うん」
「今更…天然にもほどがあるぜ」
「蓮くんに会ったり、
話しかけるのはこれで最後にする」
「……は?」
「だったら、別に文句ないでしょ?」
「なら、一刻も早く消えてくれ」
ズキンッ!
「蓮!!そういう言い方は最低だぞ!!」
「本当のことだ。
俺はお前に話なんかないし、
聞くこともまったくないんだよ」
「蓮!!」
「分かったか、天然女」
「……もう、いい…。
明日から会うこともないし、話すこともない。
今までありがとう…」
「あぁ、じゃあな」
「さよなら…元気でね」
ダッ!!
「あ、舞ちゃん!!」
「……」
「蓮!!お前、好きなんじゃなかったのかよ!!」
「このままこういう関係だったら、
アイツを苦しめるだけだ」
「だからって、もっと違うやり方があったんじゃないのか!?」
「あるわけねぇだろ。昨日、あんなっこと言っといてよォ…」
私は一人、学校を飛び出して家に向かった。
心がバラバラで修復不可能になりそうで、怖かった。
明日、私は海外へ旅立つ。
二度と見れなくなる蓮くんの顔…。
未練はもうない。
あそこまで言われたら、さすがの私も言い残すことはない。
最終更新:2012年08月13日 01:19