君を好きになる5秒前 続き9

291: 名前:雷蓮☆2011/08/10(水) 13:32:50


「はい、では続きを」

委員長は仕切り直して、

またメガネをクイッと持ち上げる。

「それでは、決まった出し物の名前を決めます」

「名前か~。カッコいいのがいいなぁ~」

蔵間くんが頬杖をつきながら言う。

すると一番ノッてる康介が手を高く上げる。

「ふぁい!!」

それに驚いた委員長が「うわっ」っと声を上げる。

「康介とゆかいな仲間たち!」

 しーん…

しばらくの沈黙が続いた後、

最初に蓮が口を開いた。

「おんまえなー…それ、真面目に言ってんのか?」

呆れた様子で康介に言う。

「あったりまえだろ!!」

彼はまさかの本気だったらしい。

「出直してこい」

「えーっ…。けっこう力作だったのに…」

「どこがた、あのバカっ!!」

「え、えー…他には?」

「はい…」

手を上げたのは伊玖だった。

なんとも珍しい!!

「おばけカフェっていうのは…」

「おぉー」

まともな意見が出て、委員長も安心。

「伊玖もやるね~」

蔵間くんが面白そうなものを見るご様子。

「はーいはい!!」

まさかの康介だ。

本当に出直してきた…。

耳を塞ぎたくなる。

蒼太くんは、すでに両手を耳にあてる準備をしていた。

「え、こ、康介くんですか?」

「そーだよ!あったりめーだろ!」

「え…では、どーぞ…」

「康介THEおばけパーティー」

「委員長!!こいつ追い出していいすっかー?」

我慢できなくなった蓮は、教室のドアを開けて準備。

「ま、まぁまぁ。彼も悪気はないようですし…」

委員長の心の広さに、蔵間くんは涙している。

「委員長…。あんた、最高だよー…」

「委員長、これはどう?」

鈴音が手を高くあげる。

「カフェ・おばけコス」

「それの意味は?」

「えっと、お化け屋敷とコスプレカフェを合わせておばけコス」

「「おぉ~」」

「いいですねー。他には?」

「はいはい!!」

「えーっと…他には?」

「無視すんな!!委員長ーっ!!」

「うっ…えーっと…こ、康介…くん‥」

「おうよ!!今度は一味違うぜ!!
俺が汗水流して考えた名前は---」

そこまで言う康介に、みんなちょっと期待する。

「K-O-S-U-K-E だ!!」

 グサッ

蓮が用意していたコンパスは、

見事に放物線を描いて、

康介のおでこにぶっささる。

鈴音はこれ以上にないどす黒い笑顔で、

康介の頭上へかかと落とし!!

ひんしになった康介に、

大丈夫の声をかける者は、

誰一人としていなかった---。

292: 名前:雷蓮☆2011/08/10(水) 15:19:03


~休み時間~


「あ~あ。康介に少しでも期待した、アタシがバカだった」

「鈴音、期待してたんだ」

「ほんのちょっと」

「アイツに期待しても、バカの答えしか返ってこねぇぞ」

「分かってるよ。でも、一応アイツの彼女だから」

「ラブラブだよねぇ~、鈴音ちゃん」

蔵間くんが呆れてる。

「「きゃはははは~!!」」

ふいに後ろから、二人の女の子の声。

「「大変だね~、康介の彼女やるのもさ~」」

「沙奈に瀬奈!」

さっきから二人で話しているのは、

クラスメートの女子、

土屋沙奈(つちやさな)と土屋瀬奈(つちやせな)。

この学校で唯一の双子。

モデルをやっていて両親は大富豪。

別荘なんてあって当たり前。

可愛いからもちろんモテる。

でも、残念なことにこの二人もドS。

向かうところ、敵なしなのである。

「「康介~。そんなにモタモタしてると、彼女が逃げるぞ~」」

こんなバッサリと言うのだから、

彼のガラスのハートも粉々に砕け散る。

「ぐほぉっ!」

ほらね。

ダメージ大。

「「きゃはははは~!鈴音もガンバレ~」」

「え、あー、ははっ…うん」

さすがの鈴音も苦笑い。


293: 名前:雷蓮☆2011/08/10(水) 15:49:14


ふいに蔵間くんが私の肩を叩いた。

「ん、なあに? 蔵間くん」

「舞ちゃんは知ってるの? 星光10大人物のこと」

「じゅうだいじんぶつ?」

「あ、やっぱり知らないんだ」

「うん。歴史の人?」

「うんや。この学校の重要人物を指すんだよ」

「重要人物?」

「そう。あの双子もその中の一人。
 ま、実際2人なんだけどさー。
 双子だから一つにまとめて一人ってことにしてるらしーよ」

「へぇー。で、他に10大人物の人は?」

「そうだね。この機会に教えてあげる。
 まず一大目は、俺」

「えっ、蔵間くん!?」

「そう!んで、2大目が蓮」

「れ、蓮も!?」

「すっごいよ、蓮は。不良だしさ。
 んで、3大目が鈴音」

「え…」

「4大目が、あの双子。
 5大目は、須江金 奏太(すえがね かなた)。
 6大目は、宮前 左端(みやまえ さたん)。
 7大目は、黒鉄 颯斗(くろがね はやと)。
 8大目は、佐竹 眞奈(さたけ まな)。
 9大目は、森 千里(もり ちさと)。
 あぁ、この千里って奴は男だから。
 よく、女の名前って思うけどね。
 んで10大目が…」

ごくっ…

「佐藤 舞…。舞ちゃんのことだよ?」

「へぇー…。え。え、えぇえ!?」

「あれっ? 自分が入ってることくらい知ってると思った」

この予想外の展開って、アリですか---?

294: 名前:雷蓮☆2011/08/10(水) 16:35:56


「あ、でもね、10大人物って全員同じ学年だから」

ちょ、ちょっと待ってください。

10大人物ってサイトに入会した覚えも記憶も、

これっぽっちもないんですけど!?

「ちょ、蔵間くん。何言って…」

「このメンバーは、選ばれた人なの」

301: 名前:雷蓮☆2011/08/11(木) 10:50:38


「え、選ばれた…!?」

「そう。この前の件でさ!」

「この前…?」

「ほら、瑠菜ちゃんが蓮を外国にってやつ」

「あぁ。あのときね!それが…何?」

「それを見ていたある生徒が、
 舞ちゃんをただ者じゃないって言ってね。
 その噂が広まって、本来9人だった重要人物が10人になった。
 そんだけのことだよ~」

そ、そんだけって…。

「わ、私、大して大きい力持ってないよ?」

「持ってるよ。他の誰にもない、すっごい大きい何か…ね」

他の誰にもない、何か…?

「おい、何ごちゃごちゃ言ってんだ」

「んー? ちょっと雑談」

「遊んでねーで、とっとと康介起こせ」

「は~い」

私が10大目…。

別にそんな称号いらないんだけどなー…。

「「舞ちゃん」」

双子の沙奈と瀬奈が私を見る。

「「ファーストキス、まだしてないの?」」

「えっ…!?」

「おいっ!!てめぇら!!何言ってやがんだ!!」

「「怒ったぁ~!怖~い!」」

「うっせぇ!お前らの息ピッタリな行動の方が怖ぇよ!!」

「こら、蓮!!女の子相手に、それはないでしょ」

「ぜってぇこいつら、女じゃねぇ!!」

「「へへーん!オカマ~!」」

「おまえらぁ!!そこになおれ!!」

「「きゃ~」」

 ドタドタ…

「はぁー…。あいつら、マジやだ…」

「蓮もあのくらいうるさいよ?」

「あれよりはマシだろ」

沙奈と瀬奈も、根はいい子なんだけどな…。


302: 名前:雷蓮☆2011/08/11(木) 14:21:38


~放課後~


「「舞ちゃ~ん」」

放課後。

変える準備をしている途中、

双子に声をかけられた。

「ん? あぁ、沙奈に瀬奈。どうしたの?」

「「学祭で着る服、決まった~?」」

あ、そういえばそうだ!

「え、えへへ~」

「「決まってないんだ~」」

「う…」

「「そんな舞ちゃんにはうちらが」」

「え?」

「「ね~」」

双子がお互いに顔を合わせて、

ニコッと笑っている。

何か嫌な予感が…。

「「当日になったら、衣装持ってきてあげる~」」

「え、でも、悪いよー」

「「悪くない!!」」

「えっ」

「「可愛い舞ちゃんのためなら!!」」

「え、えー…っと…?」

「「それじゃ、また明日~」」

二人共、手をひらひらさせて去っていく。

事前に衣装教えてもらえないのかな…?


303: 名前:雷蓮☆2011/08/11(木) 14:40:09


「おい、突っ立ってねぇで帰るぞ」

「あ、蓮!」

「ほら、行くぞー」

 スタスタ…

「あぁ、待ってー」

 タタタッ…


~帰り道~


「ねぇ、蓮」

「あぁ?」

「学祭、一緒にまわろうね」

「何だよ、急に…」

「蓮が好きだからだよ」

「はぁー…。お前な、場所を考えろよ」

「言っちゃダメなの?」

「っ…そりゃ、…ダメ、じゃ…ない…」

「ふふっ。見栄っ張り」

「うるせー」

「蓮のこと、もっと知りたいって思ったの」

「は?」

「もっと蓮に近づきたくて、触れたくて…」

「ほぉー…。そりゃ、好都合じゃねぇか」

「へ?」

 グイッ

 チュ…

「んんっ!?」

蓮が強引に私の腕を掴み、

自分のところへと引き寄せてキスをした。

時間がたつほどに、深くなっていく。

私は息ができなくて、腰が抜けた。

へにょへにょと情けなく落ちる私。

でも、彼は私の腕をしっかり掴み引き寄せた。

「れ、れん…もう…腰が…」

「フンッ。知ってるよ。今日はここまでだ」

「ハァ…意地悪…」

「俺のことを知りたいって言ったのはお前だろ?」

「そうだけど…」

「大人にしてやるよ」

「なっ、なっ…!?」

彼の俺様かつ、ドSな発言にさらに腰を抜かしてしまった。

「へ、変態!!」

「何とでも言えよ、お姫サマ?」

「っ…!」

悔しさと嬉しさで複雑になる気持ち。

でも、蓮に近づけたことは確かに感じた。

強引なキスはナイけど…。


304: 名前:雷蓮☆2011/08/12(金) 09:30:13


~次の日~


「「舞ちゃ~ん」」

「あ、沙奈、瀬奈!」

「「はろ~」」

にっこり笑顔で私のところにくる。

私のところに来るなんて、珍しい…。

「どうかしたの?」

「「舞ちゃん、蓮とラブだよね~」」

「えぇっ!?」

「「昨日、キスしてたとこ---」」

「ストーーップ!!ちょっと、ここ学校!!」

「「照れちゃって、かわうぃ~」」

「か、可愛くない!!声、大きいよ~」

「「だから、忠告しにきた」」

「え…?」

「「蓮のことを一方的に想ってる先輩がいるの」」

「せ、先輩?」

「「そう。でも、舞ちゃんと付き合ってるって聞いて病んでるから」」

「えぇっ」

「「だから、気をつけた方がいいよ。うちらも見張っとくから」」

「あ、ありがとう」

「「舞ちゃんが危ないとき、助けられるのは蓮とは限らないからね」」

確かに…。

蓮がずっと私と一緒ってワケじゃないんだ。

「「文化祭のときまでに、何もないといいんだけど…」」

「そうだね。私も気をつけるね」

「「帰り道、蓮と帰れないときは声かけて。送ってく」」

「ありがとう」

「「きゅんっ!やっぱ、舞ちゃん可愛いーーーっ!!」」

 ギュムっ

「ぐ、ぐるじいよー」


307: 名前:雷蓮☆2011/08/12(金) 10:20:56
~昼休み~


「舞~、屋上行こうー」

「あ、うん!」

「「舞ちゃん、ま~ぜ~て~」」

「げ、双子!!」

「「げぇ~、おばさ~ん」」

「あぁん!? 何だってえ!?」

「「眉間にシワ~!老ける~」」

 ボコッ×2

「「いてぇっ」」

「お仕置き」

「あはは…」

鈴音と双子は、仲はいいんだけど

喧嘩相手によくなる。

だから、この光景を見かけると誰も近寄らない。

何されるか分からないかららしい…。

「舞ちゃん、すっかり双子に気に入られてるね」

蔵間くんが蓮と一緒に来る。

「うん。根はいい子たちだし」

「そーだね。舞ちゃんらしい」

「えへへ」

「何ヘラヘラしてんだよ」

「蓮みたいに威張ってないから、マシでしょ」

「好きで威張ってんじゃねぇよ」

「あぁ、本当は甘えたいの?」

「はぁ?」

「なんてね~」

「てんめぇ…」

「彼女のことは、てめえって言わないの!」

蔵間くんに説教をくらう彼。

 ゾクッ 

「っ…!」

「ん? どうしたの?」

蔵間くんが驚いて蓮に説教をやめる。

「今…、誰かに…」

「は?」

蓮も不思議そうな顔をする。

「ううん、なんでもない…」

今、確かに視線を感じた…。

「「…」」


308: 名前:雷蓮☆2011/08/12(金) 10:27:07


~屋上~


「「舞ちゃん」」

双子がそっと私に耳打ちする。

「え、あ、何?」

「「さっきのって…」」

「うん…。確かに、鋭い視線だった…」

「「やっぱり…」」

「あ、でも、みんなには言わないで!」

「「どうして?」」

「あんまり…迷惑かけたくないの…」

「「でも、事件がおきてからじゃ遅いよ?」」

「できるだけ、自分で解決したいから」

「「…ちょっとだけ、様子を見ようか」」

「おい、何密会してんだよ」

蓮が不機嫌な目で見る。

「ううん、何でもないよ」

「「蓮のやきもち屋~」」

「てめぇら!!今度こそ許さねぇ!!」

「「幼児虐待~」」

「いつから幼児になったんだよ!!」

いつものにぎやかな光景が、

だんだん遠のいていくのを

私はまだ知らなかった---。

316: 名前:雷蓮☆2011/08/16(火) 17:35:01


~放課後~


「あの…佐藤舞さんは、ここのクラスですか?」

「あ、ちょっと待ってくださいね!まいー」

私は日直の仕事を終えて、

最後の確認をしていたところだった。

「なにー?」

「3年生の先輩!」

「え…?」

私、3年生に知ってる先輩はいないけど…。

「えと…私…ですか?」

「あなたが舞さんですか?」

「はい…」

「良かったー。私、海馬 由奈(あしか ゆな)と申します」

「海馬先輩…?」

「はい。舞さんにぜひ、お話ししたいことが…」

「あ、少しお待ちいただけますか?」

「もちろんですわ」

「蒼太くん!」

「はいはーい?」

「ちょっと任せていい?」

「任せといて!舞ちゃんのためなら!」

「ありがとう!じゃあ…」

「ここでは話ずらいので、裏門でいいですか?」

「え、あぁ、はい!」

スタスタ…

  • 5分後-

ダダダダッ…

「「蒼太!!」」

「うわぁっ!? な、何だよ、双子ー…」

「「舞ちゃんは!?」」

「舞ちゃんなら、さっき3年生の先輩に…」

「ヤバいよ!!沙奈!!」

「どうしよう、瀬奈…。とりあえず、探しに行こう!」

「何で? てか、何でそんなに急いでんの?」

「「舞ちゃんが危ないから…」」

「は…?」

「行くよ!瀬奈!!」

「あぁ、待ってぇー!」

ダダダダダ…

「…危ないって…?」

317: 名前:雷蓮☆2011/08/16(火) 18:05:39


~裏門~


ザァァァァァァァ…


涼しい風が吹く、学園の裏。

ここには、かすかに不気味な空気が漂う。

なにせ、人気が少ないのだから。

「それで、話ってなんですか?」

先輩がいつまでも私に背を向けて、

沈黙を保っていた。

 くるっ

急に私の方を向き、

思いっきり足を振り上げる。

 ズドッ…

「いっっ!?」

先輩の振り上げた足のかかとは、

私の足の甲にかなりの打撃を与えた。

激痛がはしる足に、

さらに先輩は足で踏みつけた。

「いたいっ!!いだっ!」

その痛みは、激痛から苦痛に変わる瞬間だった。

先輩の突然の行動に、私は言葉を失う。

どうして…どうしてこんなことするの……?

「先輩!痛いです!やめてくだ……」

「あなたのせいでしょ……」

「えっ……」

海馬先輩の、さっきまでの優しさはなく、

別人のような低い怒りの声が聞こえた。

「誰がお似合いですって……?
 ちっとも釣り合ってないじゃない!!
 イケメンの蓮様と、無力の仔猫。
 蓮様は不良。だからこそ、あなたにはもっと似合わない。
 私の方がどれだけ似合っているか……」

「な、何を……」

「あのまま…遊園地であのままだったら、
 どれだけ私は恵まれていたか……。
 けど、それもあなたに打ち破られたわ!!」

穏やかだった先輩の表情が、

般若のように険しくなる。

「ひっ……」

思わず、震える声をあげる。

「あなたはたいそう楽しい時間をお過ごしでしょうね。
 だって、あの蓮様といらっしゃるんですもの……。
 いつもあなたを見て思ったわ。
 あれが私だったら良かったのに……。
 あなたがいなければ、私はあそこにいたのに……。
 ならいっそ、この手で消してしまいたい……と。
 ……どう? 怖くて逃げたくなったかしら?」

せ、先輩は何を言っているの…?

蓮様って…蓮のこと……?

わ、私を消してしまいたいって……。

遊園地のことも知ってた。

あそこに…この先輩は…海馬先輩はいたってこと……!?

「恐怖でおののく姿、見せてちょうだい。
 あなたの最高に怯えた顔、たまらないわ……。
 いつもすましている憎たらしい顔より、
 そっちの顔の方が魅力的よ?
 この痛いあんよ(足)、もう腫れてるのね。
 私が全力であなたの頭を殴ったら、
 どうなるのかしら?
 それとも、自慢の可愛いお顔がいいかしら……?」

「海馬先輩!言ってることが…よく分かりません……」

「……わからない? そ、分からないんだ……?」

「っ……!?」

「とんだ可愛い子ぶりね。
 天然なんて言われて、浮かれてるのね。
 可哀想な子……」

「浮かれてなんか……」

「私……あなたのこと、大っ嫌い」

「!?」

「いつもヘラヘラして、可愛い子ぶって……。
 自分なら何しても許されるんだって顔して……。
 見てると殺気がたつのよね……」


321: 名前:雷蓮☆2011/08/16(火) 20:22:57


「せ…んぱ…」

「驚いた? 優しい先輩がこんな鬼畜で…」

「え…」

「ごめんあさいね。私、どうしてもあなたのこと
 好きになれそうにないの」

 ズキンッ

「これは警告よ。
 今日から3日以内に、蓮様と別れなさい。
 もし、それが守れないようならば
 私も全力であなたを潰す。
 私は手段を選ばないから、気をつけてね」

「嫌です……」

「え?」

「嫌です!!」

「はぁ?」

「私だって…そんな簡単に……」

「じゃあ、蓮様がどうなってもいいんだ?」

「え……?」

「私はあなただけじゃなく、
 ターゲットを蓮様に変えることも可能。
 つまり、あなたと蓮様を無理やり引き裂けるってこと。
 言ったでしょ? 手段は選ばないって……」

「海馬先輩!!」

「悔しい? なら、本望よ」

「どうしてこんなことっ!!」

「あなたに苦しめられた分を、
 お返ししているだけ。
 舞さんにも、おんなじ気持ちになってもらおうと思って」

「本望なんて言葉、言わないでください!」

「っ……」

「私たちの仲を切り裂いて、楽しいですか!?」

「えぇ。あなたが邪魔だから」

「そうだとしてもっ……」

「そんなの人間のすることじゃない。
 蓮様は振り向いてくれない。
 ……そう言いたいんでしょ?」

「っ……!?」

「あいにく、もう情なんて捨てたのよ。
 今は、冷酷で己の欲だけを満たす人間になったの。
 地獄に落ちたっていいわ。
 すべて手に入れられるなら、それでいい」

先輩は不敵の笑みで言った。

その瞬間、背筋が凍るような感覚だった。

326: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 09:28:25


「さぁ、あなたは逃げ出すの?
 おとなしく蓮様を渡すの?
 それとも、この私に歯向かうの……?」

凍り付く空気が恐怖を感じさせる。

「っ……」

「「舞ちゃん!!」」

ふいに誰かの声……。

「っ……!?」

「「海馬先輩……。何したんですか……?」

「久しぶりね、沙奈、瀬奈……」

「沙奈!瀬奈!私は大丈夫だからっ」

「足の甲が腫れてるのに……?」

瀬奈が悲しい表情で、私を見る。

すると、沙奈が私を背中に乗っける。

「ちょっと、沙奈?」

「歩けないでしょ? 早く帰ろ」

沙奈が歩き出したとき、

「いいこぶり」

低い声と眼差しが突き刺さる。

その声が、悪夢の始まりだった---。

327: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 11:03:15


~保健室~


「舞、もういいよ」

沙奈は腫れた足の甲に、シップを張ってくれた。

「ありがとう……」

「ごめんね……。私たちがついていたら……」

瀬奈が私のカバンを教室から持ってきてくれた。

「いいんだよ、気にしないで」

「っ……でもっ」

沙奈が泣きそうになる。

「私は、大丈夫……」

「「蓮には言わないの?」」

「今回ばかりは、私1人でしかできないと思う」

「「え?」」

「先輩は、私に恨みがある。
 それを晴らせるのは、私だけでしょ?」

しばらくの沈黙が続く。

「「これからは、一人でいちゃ危険だよ。
 私たちが……」」

「それじゃあ双子が危ない。
 二人にまで危ない目にあわせたくたいよ」

「「それとこれとはっ……」」

「今回だけはっ!!……今回だけは人に迷惑かけらんないよ」

「「舞ちゃん、私たちは先輩にヒドい目にあってる」」

「え……?」

「「迷惑なんてかけられてないよ。
 先輩に何をされようが、言われようが関係ない」」

「二人とも……」

「前にね、うちらに彼氏いてさ……。
 学年でめっちゃモテてたから、先輩が目つけてて。
 もちろん、付き合ってるうちらに何も言うワケはなく、
 私たちも舞ちゃんみたいに海馬先輩に色々言われて……。
 別れるつもりなかったけど、
 それを偶然見てたうちらの彼氏が
 先輩に目、つけられたくないからって別れてね……。
 うちらは完全に海馬先輩の思うツボだった」

瀬奈が窓の外を見ながら、

切なげに言った。

「だから、あの時久しぶりって……?」

「そう。おかげでクラスのみんなに嫌われて。
 最悪だったよ。結局先輩は、付き合わないで
 別れさせたかっただけらしくって…」

沙奈が拳をつくって、グッと力をいれる。

「沙奈……瀬奈……」

「「舞ちゃんには同じ道、たどってほしくない。
 力になりたいんだよ!!」」

その言葉に、涙が溢れた。

嬉しくて、言葉にできない文字たちが

心の中で溶けていく。

「うっ……ありがどう……」

ただ、感謝の言葉だけしか思いつかなくて……。

私は床に膝をつき、溢れる涙を流した。



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最終更新:2012年08月13日 01:27
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