328: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 11:51:12
~蓮side~
委員会の仕事で戻ってきた教室に、
舞の姿はなかった。
「どこ行きやがった……?」
「あ、蓮きゅん!」
「あぁ? げっ……」
俺のことを「きゅん」とか言うこいつの名前は、
宮前左端(みやまえ さたん)。
ちなみに男。
俺と同じく、星光10大人物の一人。
「蓮きゅん!どうしたのお?」
「いっつもふざけた言葉使いやがって……」
「ひっどい!!もう、お婿にいけない!!」
「もうとっくに行けないだろ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「ハンッ。どーでもいいけどよ、舞はどこ行った?」
「んー? あぁ、舞ちゃん?」
「あぁ」
「蓮きゅんの心のなか~」
「殺されたいのかてめぇは……」
「きゃっ!襲われちゃう~」
「これ見よがしに、嬉しそうな顔すんな!!気色悪ぃ!!」
ダメだ……。
こいつと話してると、ラチがあかねぇ……。
他の奴に聞こ。
「舞ちゃんなら、海馬先輩に呼ばれたお」
「は……?」
「危ないんじゃない~? 裏門に呼び出されたらしいお」
「何で引き止めなかった……」
「双子ちゃんが探しにいったし、左端がでる幕じゃないお~」
「双子が……?」
「蓮きゅん、気をつけてね~。舞ぽんもだけど~」
こいつは本当に、どこまでもふざけやがる……。
「左端は、情報提供するだお~」
「珍しいな。お前、面倒ごと嫌いだろ?」
「舞ぽんが可愛すぎるから、左端、動くよ~」
えへっと可愛く言ってみせてる左端。
だが、実際可愛くない。
女子は大喜びだろうが、男の俺にはわかんねぇ。
左端は、可愛いくてイケメンで有名。
だが、内面は腹黒でいろんな人の「ネタ」を持っている。
いわば、情報屋。
元々、左端の家が秘密の国家機関と関わっている。
だから、学校のやつらの人生の歴史なんて
すぐに調べられる。
こいつはそれで、星光10大人物になった。
だが、それを知っているのは星光10大人物のみ。
他のやつらには、何ひとつ知られていない。
「左端、海馬先輩のやってきたことに
そろそろ歯止めをかけたいお」
「やってきたこと?」
「たあっっっくさんの悪行を働いてるんだもん~。許せないね~」
こいつの目が光る。
「俺らじゃあ、広範囲の仕事は無理だぞ?」
「なら、俺も参加させてもらおうか」
「あ!颯斗っち~」
「颯斗!!」
ぬらりと出てきたのは、黒鉄颯斗(くろがね はやと)。
こいつも星光10大人物の一人。
普段はクールで大人しいが、実は日本のスパイ。
他国の偵察や、怪しい組織を取り締まったりしている。
だから、左端との関わりは深く
小さいころから互いを知っている。
こいつの運動神経は、はかりきれない。
言うならば、妖怪のよう。
「俺では少しの力にしかなれぬかもしれないが、よろしく頼む」
「お前……なんつう所から来てんだよ」
「なんつう……とは? 普通に天井からだが?」
天井からぶらさがって会話してる時点で
普通じゃねぇんだよ。
「颯斗っち、今日仕事じゃなかったの?」
「香港で依頼を受けていてな。もう終わった」
「そっかぁ~。えらいえらい」
颯斗はかなりの電波系。
こいつもイケメンでかなりモテるのに、とんだ残念系。
けど、そこが可愛いという女子がいるから人気が絶えない。
「お前、教室のドアから入って来れねぇの?」
「つい、天井から入ってしまうのだ。すまぬ」
「いや、もういいや……」
星光10大人物のこいつも、
いざとなれば凄い。
……のに、性格が残念系ばっかだ。
331: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 17:11:45
~海馬side~
「最悪……」
帰り道、一人つぶやく私。
何であの子に歯向かわれるの?
この私が……。
でも、今回は本気よ。
蓮様は無二の完璧な人材。
私にピッタリじゃない!
なのに……どうして、あの子なんか……!!
「何たくらんでるかは知らないっすけど、
舞ちゃんを傷つけるなら阻止します」
「っ……!? く、蔵間……じゅん!!?」
「今まで、先輩の悪行を黙って見てましたが……。
もうそろそろ、限界がきました。
舞ちゃんと蓮の仲を引き裂いて見てください。
俺も一応、ちゃんとした家柄なんでね。
人一人、永久追放だってできますから。
ナメないでくださいよ?」
「なっ、何が言いたい!?」
「舞ちゃんに傷一つ、またつけてみてください。
あなたのその首、ちゃんと胴体と繋がっているか
分かりませんよ?
俺だって、不良なんですからね……先輩?」
「お前っ……!!」
「恋路を邪魔する奴が、一番許せなくてな」
「殺せるのなら殺してみ……」
「先輩だからって、容赦しません」
彼はにっこり笑って、姿を消した。
「な、何だったんだ……」
しかし、本気の目だった……。
いかん。怯えてはならない!!
この私、欲のためならば何だってする。
そう決めた。
揺るぎない精神が、なおかき立てる。
狂気を、欲望を、快感を……。
蔵間に警告されても、私は手に入れる。
蓮様、ただ一人を……。
332: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 17:33:22
~舞side(普通視点)~
「大丈夫だ。このことは蓮には言わない」
「は……はぁ……」
今お話中の相手は、黒鉄颯斗くん。
電波系のキャラでお馴染みだ。
「左端もだお~」
この子は、宮前左端くん。
可愛いイケメンキャラでお馴染み。
個性派軍団です。もちろん、星光10大人物の。
「それで、昨日は足を踏まれたと?」
「うん……。すっごい剣幕で……」
「それは怖かったな」
「颯斗っちはわかんないでしょ、怖いって。
あのね、颯斗っちはいつも任務で
しょっちゅう怖い経験してるから、
怖いっていう本当の感情が薄れてるんだお」
「え、に、任務って……?」
「とにかくだ!!舞自身の単独行動は命とりになる。
年中無休で、傍に護衛をつけなくてはな……」
「そんなのやりすぎだお、颯斗っち!!
それじゃあ舞ぽんは、おちおち恋愛日記も書けないでしょ!?」
「そ、そうか……。それはすまなかった……」
「いや、私書いてないし、そんなの……」
「えぇ!?」
左端くんが驚く。
「そんな乙女チックなこと、しないよ」
「では、ダンディチックなことはするのか!?」
一体どういう会話をしたら、
ダンディチックって文字が並ぶ言葉が出るんですか!?
「あの、颯斗く……」
「「舞ちゃんは確かに危ない」」
私が混乱しているところに、
双子がようやくきてくれた。
「お、お前ら……」
「沙奈っちに瀬奈っち?」
「「最悪の場合、死だ」」
「なっ……!?」
「そこまで事態が進んでんの!?」
「「何しろ、自身が地獄に落ちてもいいと言うのだから」」
「そんなに女は怖いのか……」
「颯斗っち、これは論外だから安心して!!
女の子はもっと可愛いことして、
ふわふわしてて、もう何やっても可愛い生き物だよ!?」
二人のとんでもない会話が始まる。
「「とにかく、舞ちゃんを一人にしないで」」
「そうだな。全力を尽くそう」
「うん!!舞ぽん、俺から目を離しちゃダメだよ?」
なぜか左端君に、ウィンクされる私。
「あ、ありがと……」
正直、やりずらいです。
333: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 17:46:15
「おはよ~。昨日は大変だったらしいね」
教室から入ってきたのは、蔵間くんだった。
「な、んで…‥知ってるの?」
蓮と一番近い関係の、蔵間くんには知られたくなかったのに……。
「ちょっと昨日、見ちゃってね」
「見たって…何を」
「先輩が舞ちゃんにヒドいことしてるとこ」
「「じゅん!!」」
「じゅんぽこ、知ってたの?」
「じゅん、お前見ていたのか?」
みんなが蔵間くんに詰め寄る。
「見ていたって言うより、聞こえてきたって方が正確」
「「つまり、近くにいたってワケではないのね」」
「そう。俺、いっつも屋上で寝てるんだ。
たまたまぼーっとしてたらさ、先輩の怒声が聞こえてね」
「このこと、蓮には」
「もちろん、言わないでおくよ。
でも、蓮はもうこのこと知ってるハズ」
「え……?」
「そうだよね? 二人共」
蔵間くんの視線は、左端くんと颯斗くんにそそがれた。
「左端…くん…? 颯斗く…・・・ん?」
「あり? もうバレてたんだ?」
「すまぬ、舞。実は、薄々勘ずいていたのだ」
「左端、海馬先輩の今までしてきたこと知ってる。
だから、舞ぽんが呼ばれたときも
怪しいと思ってたんだ。
ごめんね、なんか探るようなことしちゃって」
「ううん。そんなことより、多くの人を巻き込むことはできない」
「でも、舞ぽんの危険が!!」
334: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 18:37:39
「私は大丈夫!あんまり、大事にしないで」
コツコツ…
「ここまできて、まだいい子ぶってるの?」
「っ……!?」
「海馬先輩…だお?」
「「海馬先輩!!」」
「まだ、懲りていないようね」
「何を言われようと、一歩も引くつもりはないです」
「私に足を踏まれようと、びくともしないってわけ?」
面白い子と言って、私の机を思いっきり蹴る。
ガンッ
「何するん……」
「目障りなのよ!!!早く消えなさい!!」
「っ……!!?」
「あんたみたいな貧弱な仔猫は、お呼びじゃないの!!」
「それでも、蓮が好きって気持ちは変わりません!!」
「そういうところが、一番嫌なのよ!!」
バシンッ
先輩は私の頬を思いっきり叩いた。
その生々しい音が、教室に響き渡る。
ガラッ…
運悪く教室に入ってきた蓮に気づくまで、あと5秒---。
336: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 19:24:38
「っ!!」
ふいに開いた教室のドアに気づいた蔵間くん。
先輩もびっくりして後ろを振り向く。
「れ、蓮様……」
っ……!!?
れ、蓮……?
恐る恐る顔を上げると、さっきの状態を見てか
ものすごい剣幕でたっている。
「な、に……してんだよ」
「蓮様!!これには理由がっ……」
「そんなの、理由になんねぇよ!!今すぐ謝れ!!」
「なっ……!? 蓮様!?」
「俺はてめぇなんかに、興味はねぇ。
けどよ、大切なやつ傷つけられんのは放っておけねぇ」
「れ…ん…」
ダメだ……。
もう、泣きそう……。
「こいつを傷つけるのも、泣かせるのも全部
この俺しか許さねぇ……。
早く謝れよ。3年だからってデカイ面してんじゃねぇぞ」
蓮は今までにないメンチをきって、
先輩を威嚇している。
さすがにみんな背筋が凍って、
話す言葉がない。
「嫌よ。私は……悪くない!!」
ダダダダッ…
「おい!!ま……」
ガシッ
私は追いかけようとする蓮の腕を、必死に掴む。
「いいよ、もう。何でもないから……」
「っ……!!お前…‥また、そうやって……俺に黙ってるのかよ!?」
「え……」
「また、そうやって迷惑かけるとか言って突き放すのかよ!?」
「そ、そんなこと……」
「なら、昨日何で俺に言ってくれなかった?
どうせさっきも蓮には言うなって言ったんだろ!?
何で俺を頼ってくれないんだよ!!?」
急に怒る蓮に、私はただ黙っていた。
けど、一言一言が胸に突き刺さる。
「おい!!何とか言えよ!!舞!!」
「っ……」
「舞!!」
「っ……たいよっ」
「聞こえねぇ……。何だよ……?」
「っ……たいよ。蓮と一緒にいたいよぉっ!!」
「っ……!!」
「もっと蓮と一緒にいたい!!
だけど、あの先輩は何するか分かんないんだよ!?
もし、蓮に何かあったら私……私、立ち直れないよ!!」
本音が次々と口からこぼれる。
抑えられなくなってしまったこの気持ち。
大粒の涙が、溢れ出てくる。
今まで言えなかった気持ちを、制御できなくなってしまった。
「でも、できないの!!今回だけはっ!!
好きで黙ってたわけじゃないよ!!
大切だから、愛しいと思うから言えなかったの!!」
「ま……い……?」
「本当は誰よりも大好きで、愛しくて……!!
この気持ちは誰にも負けない!!
だからこそ、守り抜きたいのっ……。大切な蓮を……。
でも、ごめんね……。
もう、蓮の苦しむ姿……見たくないよ……」
ダッ…
「舞!!」
338: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 21:47:26p
気づいたら走り出していた。
でも、もう後には戻れなくて。
何であんなにムキになったんだろう……。
私……蓮をあんなに不安にさせてたの…知らなかった……。
私は体育館の裏側で、時間を潰すことにした。
ピロリン!
「っ……!?」
突然のメールの受信音。
びっくりして携帯を開くと…
「知らないアドレス……」
メールの内容を確認すると、それは---
“ あなたに謝りたいことがあるの。
さっき叩いてしまったこととか…。
来るか来ないかは、あなたの勝手。
星光公園の前で待ってる。
3年F組 海馬由奈 ”
答えは一つ。
星光公園に行って、すべて和解してもらおう。
私は携帯を片手に、急いで海馬先輩の待っている所へ向かった。
339: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 22:03:43
「はぁっ、はぁっ……っ海馬…先輩……?」
星光公園の前には、先輩の姿はなかった。
「裏の入り口にいるのかな……?」
ザッ…
「あ……せんぱ……」
「全部あなたのせいよ!!」
「海馬先輩……?」
「どうしてあなたなんか!!
この、いいこぶりが!!!」
「ここまできて、まだそんなこと言うんですか!?」
「当たり前でしょ!? あたしはあんたなんかクズって思うわ!!」
「ちょっと待ってくだ……」
「あなたなんか消えていなくなればいいのに!!」
ドンッ
先輩は私を強く突き飛ばした。
足を崩して、そのまま私は後方へといく。
私の後ろには、多くの車が走る道路。
「っ!!ちょっと!戻って来なさいよ!!」
「せ…んぱ……」
キィィィィィー…
嫌だ……。嫌だよ……。
まだ……蓮に、ごめんねって……
ドォンッ!!
言って……ない……の……に……。
その後の意識は、静に途絶えた。
340: 名前:雷蓮☆2011/08/18(木) 07:43:02
~蓮side~
「舞!!」
舞は俺の声に反応せず、
ひたすら走っていった。
「……止めないの?」
蔵間が俺に問いかける。
けど、俺は立ちつくしているだけだった。
「蓮きゅん……。こういうとき、立ちつくしてると違うよ?」
「……」
「好きな人追いかけてさ、後ろからぎゅってするんだよ?」
「蓮……。お前の愛はそれくらいしか、なかったのか?」
「……分かってる。けど、……」
「何を迷っているのだ?」
「そうだよ、蓮きゅん!!」
「蓮……、舞ちゃんは追いかけてくれるのを待ってるよ?」
「……自信がねぇ……」
「え?」
左端が俺に近寄る。
「あいつをこれから、幸せにしてやれる自信が……ねぇんだよ」
俺はうつむいて、涙を必死にこらえた。
「そうか。なら、舞は俺がもらう……」
この声は……
「伊玖っ……!?」
「俺が幼いときから、舞といることは知ってるだろ。
なら、お前の代わりに近くにいてやれるのは
俺しかいないだろう」
「……あぁ、そうだな…」
「蓮」
「あ?」
ゴスッ
「ごはぁっ!?」
伊玖は俺の腹に、一撃を与えた。
「っつー……てんめぇっ!!」
「それが、今の舞の気持ちだ」
「っ……!!?」
「いや、もっと大きい。
あいつは、バカでどうしようもない奴だが
人を大切に思うことだけは、人並みを越えている。
毎晩、毎晩、俺に電話で
お前からのメールがきただの、愛してると言われただの
ノロケ話ばっかりさせられて。
あげくの果てには、デートの報告までされた。
ここまで幸せそうに話したことはないから、
ずっと聞き入っていたが……。
今のお前には、あいつを笑顔にできないんだな?」
「っ……」
「哀れだな……。
こんなにも、お前は非力だったのか。
この俺が唯一譲った男だというのに、
見込み違いだったようだ」
「っ……待てよ!!」
「何だ……? 呆れた男に用はない」
「ごめん!!」
「っ……な、何を……」
「俺、一人でずっと悩んでた。
本当に不良相手でいいのかって。
でも、今のこと聞いて安心した。
ごめん、俺が一人で甘えてただけだった。
確かに、あいつは俺よりももっと大きいもの見てた。
こんな自分が恥ずかしいって思った……。
気づかせてくれて、ありがとな」
「……役目は果たしたからな、鈴音、康介」
「は?」
がっしゃーん!!
俺は目が点になる。
ろうかから、妙な物音が聞こえた。
「伊玖ー!!それはこっちに戻ってきてからの台詞!!
今ここで言ったらバレるでしょーが!」
「伊玖ー!!お前、褒美のお菓子はナシだぞー!!」
341: 名前:雷蓮☆2011/08/18(木) 07:52:37
廊下からひょっこり顔を出したのは、
鈴音と康介…。
「おい、伊玖……どういう」
「こういうことを予測して、
俺が説得しろと鈴音と康介に頼まれていた。
お前が本気になってよかった」
「ちょ、まっ」
ピロリロリ~♪
「蓮、電話」
蔵間が俺のカバンから取り出す。
「は? 非通知じゃねぇか。
蔵間、お前出てくれ」
「あ、うん。もしもし?
はい、そうですけど……。
……え? 今……何て……?」
ピッ
「え、おい。何だって?」
「……星光……病院から……電話」
「病院?」
「舞ちゃんが……車に引かれて重体だって」
「っ……!?」
「蓮きゅん!!早く行こう!!」
「あぁ!!」
「俺は先生に言っておこう」
颯斗が猛スピードで駆け抜ける。
それに続くとばかりに、
俺らは病院へ向かった。
342: 名前:雷蓮☆2011/08/18(木) 08:33:33
~病院~
ガラッ
「舞!!」
舞のいる病室を開けると、
そこには海馬先輩がいた。
「てめぇっ……」
「ごめんなさい……。
まさか……本当にこんなことになるなんて……」
彼女は涙を流して、俺らに土下座した。
「もう、舞さんに手を出しません!!
ですから……せめて、ここにいさせてください……。
最後のお願いです!!どうか……」
すると蔵間が俺の横で言った。
「舞ちゃんに傷をつけたら、どうなるか警告したよね?」
急に剣幕が恐ろしくなる蔵間。
「おい、くら……」
「蓮はちょっと静にしてて。
先輩、俺はもう永久追放する準備はできています」
「ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
「もし、このまま舞ちゃんが目を覚まさなかったら……
ごめんなさいで済みませんよ!!?」
「舞ぃっ!!」
後ろから鈴音が、舞が寝ているベッドに走ってきた。
舞は頭を包帯でぐるぐる巻にされて、
腕は骨折したようで動きがとれる状態ではない。
その姿を見て、泣き崩れる鈴音。
「まいいいいいー!!」
「あの姿を見て、あなたは今も舞ちゃんを憎みますか?」
「っ……!!」
「それでも、地獄に落ちることを本望と言えますか?」
「はっ……!!本当に……申し訳ありませんでした……」
「俺はっ……!!そういう理不尽な人間が、一番嫌いだ!!」
その言葉に海馬先輩は、
改めて大切なことに気づいたらしく、
顔をあげてただ泣いていた。
「舞……」
俺は愛しい人の名前を呼ぶ。
けど、返事はない。
寝息だけが聞こえてくる。
静かで、でも、苦しいような……。
鈴音は唯一無事だった舞の左手を、
自分の頬に当てて泣いていた。
双子は鈴音の向かいに座り、
舞に「大丈夫だよ」と声をかけている。
蔵間は切なげな目で、舞を見る。
康介は泣きつづける鈴音の隣で、
舞を見守っている。
俺はこの光景に、恐怖を覚えた。
もし、もし……舞が目を覚まさなかったら……。
目の前が真っ暗になる気がした。
345: 名前:雷蓮☆2011/08/18(木) 13:54:49
~舞side(普通視点)~
フワァ…
風……?
気持ちいい風だ……。
ここは……どこだろう……?
確か……車に跳ねられて……それで……
パチ……
ここは……病室……?
まわりを見てみると、
いつも一緒にいるみんながいた。
でも、みんな疲れて寝ていた。
「み……んな……」
私……生きてる……。
生きてるよ、私……。
涙が絶え間なく、こぼれてくる。
「起きたのね……」
この声……
「海馬……先輩?」
「私がバカだったみたいね。
結局、地獄が怖くなって逃げ出して……。
いいこぶりっこしてたのは、
私の方だったのかもしれない……」
「せん…‥ぱ」
「これで最後……。
もう生きるのに希望なんてない。
疲れたわ、私……。
それに……親にあわす顔がない」
ダッ……
「せんぱっ……つー…」
先輩は、病室を出て行ってしまった。
私はまだ傷が治ってないために、
すぐには追いかけられない。
それでも、近くに置いてあった松葉杖を使って
先輩を追いかけた。
まわりにいるみんなに気づかれないように…。
346: 名前:雷蓮☆2011/08/18(木) 14:25:32
それも虚しく、
廊下でひっそり立っていた
颯斗くんに引き止められる。
「何をしているのだ、舞」
「颯斗……くん。そこを……どけて……」
「ダメだ。今のお前に、夜風は刺激が強すぎる」
「そんなこと……ないよ……」
「今、目覚めたばかりのお前を
このまま屋上に連れていくと思うか?」
「っ……時間がないのっ!!」
「っ……!? 舞!!」
カッツカッツ
なれない松葉杖を、必死に動かして
一歩でも多く前に進んで行く。
「舞!!いいかげんに……」
「先輩を見捨てらんないよ……」
「っ……?」
「颯斗くん……。星光10大人物なんでしょ?
私も、颯斗くんも……。
危険なことで、噂になるよりっ、
いいことの方で……噂になった方がっ……
絶対に、居心地っ……いいよ……?」
「舞……」
「先輩、屋上に自殺……しに行った……の」
「それは本当か?」
「う……ん。早く……行かないとぉ……間に合わ……きゃっ!?」
松葉杖で歩いている途中だった。
ふいに後ろから、横抱きにされる。
「っ……れ……ん?」
「なーにやってんだ、バカ」
「蓮!!お前、寝ていたんじゃ……」
「本気で寝れるかよ。
好きな奴が生死さまよってんのによ」
「れん……」
「わーってるよ。行けばいいんだろ?」
「はぁ……。10大目のすることが分からない。
……が、こういうことで目立つのも悪くはないな」
颯斗くんが呆れながらも、嬉しそうに言う。
「颯斗くん……」
「俺も強力させてもらおう」
「ありがとう、颯斗くん」
「「私たちも」」
「っ……!? 双……子……?」
「あたしたちもいるよ?」
「舞ー!!ふざけんな!!
勝手に死なれちゃ困る!!
誰が鈴音を止めるんだよ!!」
「り……んね、こ……すけぇ……」
「舞ぽんったら、
左端のことこれっぽっちも気にしてくれないじゃん!!
もう、いじけちゃうおーーー」
「左端くん……」
「舞は相変わらず、危ないことが好きだな」
「そうなの? 俺には舞ちゃんには珍しいことだと思ってるけど?」
「舞ちゃんの悪口、許さないよ?」
「伊玖……蔵間くん、蒼太くん……」
「みんな……ありがとぉー……」
嬉しくって視界がゆがむ。
「みんな、病院嫌いだから眠れねぇんだと」
蓮がニッと笑う。
「ちょっと屋上でUNOでもしようぜー!!」
康介の一言で、みんな屋上へ向かう。
私は嬉しくて、蓮の胸の中で泣いてしまった。
最終更新:2012年08月13日 01:29