416: 名前:雷蓮☆2011/09/17(土) 10:47:15
~蓮side~
なーにやってんんだよ、あのバカ。
俺は下駄箱の隅の影で、アイツを見ていた。
……というより、見張っていた。
「いつものフェイスで女落とせるんじゃなかったのかよ?」
いつものフェイスとは、蔵間の涙目のこと。
アイツはそれで数々の女をいい結果でフってきた。
なのに、今回ばかりは上手くいかなかったようだ。
「蓮、女を落とせるとか言っちゃダメ」
舞は俺にデコピンする。
「いでっ」
「女の子に失礼でしょ」
ツッコむとこ、そこかよ……。
こいつのド天然ぶりにはかなわない。
「それより蔵間くん、しずちゃん追わなくていいのかな?」
「知らねぇよ。アイツも考えがあるんだろ」
「それにしては、いつもの余裕のある顔には見えないよ?」
「お前、意外と勘がいいのんじゃねぇか? 確かに……」
「そういえば、しずちゃんは!?」
「あぁ、それなら左端と颯斗が待ち伏せしてる」
「待ち伏せって……こうなることを予想してたってこと?」
「まぁ、そういうことになるんじゃないか」
いつも勘が鋭い蔵間が、こんなに近くにいる俺らにも気づかない。
……ってことは、相当焦ってるんだろうな。
一体、アイツは何に焦ってやがんだ……?
417: 名前:雷蓮☆2011/09/17(土) 11:44:55
~左端side~
「あー。やっぱり、こうなっちゃうんだー」
俺が星光10大人物に選ばれている理由。
秘密国家機関に所属している俺ん家は、
これからの起こりうる物事も予想できる。
……というのも、この俺自身が未来の物事を予知できるから。
小さいころからこういう力を持ってたんだ。
そして、隣にいる運動神経がはかりしれない男、黒鉄颯斗。
颯斗っちとは、小さいころからの友達。
日本のスパイだから秘密国家機関と深く関わりがある。
「どうしてここまで予想できる?」
颯斗っちがさっそく質問。
「さー? 俺もよく分かんないんだ」
「……最初から分かっていたのなら、教えてやってもよかったんじゃないのか?」
「ダメだなー、颯斗っちったらー。未来を教えてどうすんの?」
「いけないことなのか?」
「当たり前だよ。未来を教えても、起こってしまうんだ。物事ってのは」
「……まるで、それを経験したような口癖だな」
「ハハッ。経験してなきゃ、もっと楽しく生きてやってたよ」
「秘密国家機関も大変なのだな」
「お互いさまじゃないのかな」
たわいもない、けど、どこか少し切ない会話。
この世には、不平等なものがありすぎた。
「左端、本当に屋上に来るのだな?」
「もちろん、信じてよ。俺の力を。ざっとあと、5秒」
「5」
「4」
「3」
「2」
「1」
ガチャッ
「ビンゴッ!!」
「えっ」
「しずちゃんだよね? どーも」
「お、お前はっ」
「秘密国家機関、代表取り締まり役の宮前左端」
「同じく秘密国家機関、偵察代表取締役の黒鉄颯斗」
「え、な、なに」
「じゅんぽんの奴隷の、しずちゃんでしょ?」
「お前に言っておきたいことがある」
「……私は、奴隷なんかじゃないです」
「自分で断ち切ったんでしょ? 離れるのはいやなのに」
「っ……!?」
「俺に嘘は通用しないから、よろしくね」
じゅんぽん、じゅんぽんだからここまでしてあげるからね。
まだ、古傷が治っていない君のために。
一肌脱いであげようじゃないか。
さぁ、ここからは俺たちの力のみせどころだ。
418: 名前:雷蓮☆2011/09/17(土) 12:28:13
~しずほside~
突然私の前に現れた、星光10大人物の二人。
ひみつこっかきかん?
なんじゃそら。ふざけてんのか?
「ふざけてなんかないよ?」
左端が私の心の中を読み取ったように言う。
「なっ!?」
「あんまり時間がないのでな。手早く進ませてもらう」
颯斗は静かに言った。
「蔵間が今まで誰とも付き合わなかったのは、なんでか分かる?」
「え……」
「その顔、知りたそうで知りたくないって感じ?」
「っ……」
「蔵間は元カノがいたって知ってるかな?」
「この情報は、ごくわずかの者にしか知られていない」
二人は真剣な表情で、私に蔵間の事を教えてくれる。
「蔵間には元カノの 愛 っていう子がいた。
けど、ある日をもって星になったんだ。愛ちゃんは帰り道、
何者かに殺されバラバラにされて見つかったんだ」
「それは直視できないほどのむごさで、
見る人の心に衝撃を与えたほどだった。
それを知らされた蔵間は、ヒドく落ち込んだ。
突然のコトで頭がついていかず、夢かとも思ったらしい。
けど、それはまぎれもない現実で
棺には変わり果てた姿の彼女があった。
心にかなりの傷を負ってしまっているんだ、蔵間は」
そんな……。
そんなこと、考えられない。
あんなに元気そうな蔵間は、そんな過去を持っていたなんて‥…。
「今も……傷ついているの……?」
「まーね。結構、お似合いのカップルだったから。
でもね、最近は違うんだよねー」
「どういうこと?」
「最近は表情が明るくなった気がしない? な、颯斗?」
「あぁ。何か楽しいことでもあるのかと聞いたら、
秘密と言われたんだ。すごく気になるな……」
「……?」
「奴隷がー……可愛いとか、何とか?
あ、でもしずちゃん、奴隷やめちゃったんだっけ?
なら、違うのかな~? あれ~?」
「奴隷……?」
「だが、奴隷はしずほしか雇っていないと聞いたぞ?
お前のことではないのか?」
「え……」
「俺さー、この前その子紹介してって言ったら
奴隷は俺の言うことしか聞かないから
会っても無駄だって言われちゃったよー。
いったい、だれなんだろーなー?」
「っ……宮前左端!黒鉄颯斗!」
「なーに?」
「なんだ?」
「私の質問に答えよ。私にも可能性はあるか?」
「……君以外に、誰がいるっていうの?」
「お前にしか成せないことだと、俺は思うがな」
考えるより先に、足が駆け出していた。
「ありがとう!」
バタンっ
屋上の階段を駆け下りて、
思いを伝えたい愛しい人の元へと飛び立つ。
届け!!私の想い!!
響け!!あの人の心に!!
もう何ににも支配されない。
私は私のやり方でいかせてもらう。
早く会いたくて、会いたくて、限界を越えるくらいに走った。
419: 名前:雷蓮☆2011/09/17(土) 12:56:18
~沙奈・瀬奈side~
私たちは中庭でみーこと話し合い。
これは誰に頼まれたわけでもなく、
みーこから話を聞いてほしいと言われたから。
「私ね、しずほの本当の気持ちを聞きたいの」
「「本当の?」」
「うん。私ね、蔵間くんのことが知りたくてしずほに調べてって頼んだの」
「「……」」
「なんだけど、しずほも好きになっちゃったみたいでね。
普通は嫉妬するところなんだろうけど、
不思議と嬉しいって気持ちになってね」
私たちは首を傾げた。
「「嬉しい?」」
「そう。だって、今まで恋をしたことがないしずほに好きな人ができたって、
私にとってすっごい嬉しいことなの」
みーこは満面の笑みで話す。
「けどね、しずほは臆病だから……。私がきついこと言えば、上手くいくかなって思ってたんだけど……」
「「どうしたの?」」
「ちょっと心配になって……」
「「それなら、大丈夫じゃないかな」」
「え……」
「みいいいいいいこおおおおおおお」
ダダダダダダ…
「し、しずほ!?」
「みーこ!!聞いてくれる?」
「え?」
「私、あきらめたくないの」
「しずほ……」
「私にとって、初めての恋で最初で最後にしたいから……だからっ」
「知ってたよ」
「え……?」
「しずほが気を遣ってくれてたこと」
「みー……こ?」
「あんたが私の好きな人を奪っちゃだめって制御してたのも」
「っ……」
「嬉しかったよ。こんなにヒドいことしても、優しくしてくれた」
「みぃ……こお……」
「だから……」
ドンッ
みーこはしずほの背中を強く押した。
「行ってこい!!」
それはまるで、しずほに喝を入れるようだった。
「みーこ……」
「……大好きだよ、しずほ」
「っ……!!ぅう、うちもお、うちも大好きだよ!!」
ダッ
「っ、ハッピーエンドじゃなかったら許さないからね!」
しずほは猛ダッシュで、駆けて行った。
「「……許したんだ?」」
「しずほだもん。可愛くて、許しちゃうよ」
「「これからどうすんの?」」
「また、合コンに参加する日々!」
「「懲りないね~」」
笑っているように見えた彼女の顔は、少し寂しそうだった。
427: 名前:雷蓮☆2011/09/18(日) 13:45:38
~しずほside~
私は学校の隅々を全速力で駆け抜けながら、
愛しい人の姿を必死で探した。
「はぁっはぁっ……、どこに、いるのっ」
どこを探しても見つからない。
「もう帰ったのかな……?」
そう思えば、足どりが重くなってしまう。
もうこの気持ちに制御などかけられないのだから。
明日まで待てる気がしない。
ときめいたあの瞬間のように、
鼓動のスピードが、ボリュームが大きくなってゆく。
「あっ、しずちゃーん!」
自分の教室の前を通りかかったときだった。
足を止めて、声の主を探す。
「舞?」
教室からひょっこり顔を出してにこっと笑う彼女。
「ごめんねー、呼び止めちゃって。これ、蔵間くんに届けてほしいんだけどー」
「え、蔵間に?」
「そうなのー、ごめんね? 何せ、蓮が急用だって言うから」
「蓮が行けばいいじゃないか」
私が呆れたように言うと、張本人が舞の後ろから出てきた。
「俺がアイツにわざわざ会う? カレカノじゃねーんだよ、俺らは」
いや、別にそれがカレカノのすることじゃなくね?
「お前、ただメンドクセーだけだろ」
「めんどくせーなんて言葉、俺の辞書には載ってないね」
「つくづくウゼェー野郎だな、お前」
蓮とアタシの間に火花がちり始める。
でも、そこに割って入った天使。
「仲良くしなきゃダメだよ!蓮も!」
「チッ」
こいつは舞のことになると、いきなり態度が急変する。
結局、この学校で一番強いのは舞なんじゃないか?
「分かったよ。届ければいいんでしょ」
「ありがとう、しずちゃん」
キュンッ
あぁー、なんて可愛いんだろう!!
女のアタシでもキュンとしてしまう。
アタシは舞から一枚の手紙をポケットに入れ
ゆっくりと歩き出した。
「想い、蔵間くんに伝わるといいね」
え……。
「お前、他のやつに知れてないとか思うなよ」
二人の姿が見えなくなったとき、
聞こえた舞と蓮の言葉。
このとき、初めて応援されていたのに気づく。
二人共、知ってたんだ。
心がぎゅっとなって、温かくなる。
きっとこれが愛情なのだろう。
アタシは、今の気持ちが零れないように
しっかり抱きしめながらまた走り出した。
433: 名前:雷蓮☆2011/09/19(月) 11:55:49
そろそろ学校の校舎を一周する。
どこを探しても見つからない。
さきほど下駄箱を見たら、まだ靴があった。
彼はどうやら、まだ校舎にいるらしい。
「もう、どこだよ……」
そう言って曲がり角をまがろうとしたとき---
「うわっ!?」
「っ!?」
誰かと正面衝突した。
「ってー……」
「わーお。お二人さん、大丈夫?」
「うぅ……。ご、ごめんなさい……」
ぶつかった相手は二人組の男の一人らしい。
「気をつけろ、波野目しずほ」
「はい……って、えぇっ!?」
何でアタシの名前知ってんの!?
「俺らのこと知らない奴、初めてだよ奏太ー」
奏太(かなた)……?
私のぶつかった男の名前は奏太というらしい。
「ったりめーだろ。まだ一度も演説してねーんだ」
演説? こいつ、ふざけてんのか?
「俺のこと知らないようだから教えといてやる。
次期生徒会長の須江金 奏太(すえがね かなた)だ」
ドクンッ
須江金 奏太……。
こいつは星光10大人物の5大目。
詳しいことは分からないがヤバいらしい。
「何か、怖がっちゃった感じだよ? 奏太が剣幕やっばすぎるからー」
「俺のせいにすんじゃねぇよ。おい、立てるか?」
「たっ、たてます」
すんごい嫌な奴と会ってしまった。
「あ、ついでに俺の名前も覚えてって。森 千里(もり ちさと) ってね」
「っ……!?」
星光10大人物9大目の、森 千里!?
「名前だけだと、よく女の子に思われるんだよね。
一応言っとくけど、俺は男だから」
「もう女みたいなモンだろ」
「うるせーよ、奏太ー」
そうそうたるメンツに後ずさる。
まさかこんなところで、また星光10大人物に会うとは。
「それより、蔵間のこと探してんだろ?」
「え……」
何でそんなこと知ってるの?
441: 名前:雷蓮☆2011/09/24(土) 09:34:59
「それより、蔵間のこと探してんだろ?」
「え……」
「何でそんなこと知ってるんだって顔だね~」
「千里、お前は黙ってろ」
「えーっ!奏太だけずるいよ~」
「お前はただうるさいだけだ」
「ぶーっ!!」
「蔵間は図書室にいるぞ」
「えっ……」
「アイツ、元カノがいなくなったとき、抜け殻みてぇになったんだ」
「蔵間が……?」
「そうだよ~。可哀想で、見てらんなかったよねー」
「あぁ。もうアイツの抜け殻は拝みたくねーんだ。
頼む。アイツの傍にいてやってくれ」
「っ……!」
「今のアイツには、お前が必要なんだ」
ドクンッ
その言葉に、鼓動が大きく跳ねる。
ダッ
「あっ、しずほちゃん!」
「……。」
「……奏太が応援するって、珍しくない?」
「……何の事だ」
「恋の応援だよ」
「さーな。俺は腐れ縁のバカの背中、押しただけだ」
「あー。蔵間とは小さいころからの仲だったんだっけ」
「アイツにはまだ借りがあるからな。お返しだ」
「かっこつけー」
「黙れ、動く要注意人物」
442: 名前:雷蓮☆2011/09/24(土) 10:57:47
~図書室~
ガラッ
「蔵間!!」
しん・・・
もうすぐ下校時間になるからか、
図書室には人の気配がまったくない。
バサバサッ・・・
けど、棚から本が落ちたような音がした。
「蔵間っ…!?」
タタッ……
アタシは音のした方へ走った。
……けど、そこには誰もいなかった。
「っ……!」
いや、誰もいなかったんじゃない。
誰もいなかったように見せかけたいだけなんだ。
実際、ここに蔵間はいる。
けど、彼は姿を現してくれない。
「
く……らま?」
しん……
「ねえ、本当にいないの?」
コト……
かすかに物音があが、彼らしき姿はどこにも見つからない。
「なんでよ……」
どうして隠れてるの? アタシと顔を合わせるのが、そんなに嫌なの?
「なんか、言ってよ……。ねえ……蔵間」
静まりかえる図書室。
時計の針が休むことなく、小さな音を立てて動く。
アタシは手の平を、ぎゅっと固めてつぶやいた。
「蔵間!!いるんだったら、出てこい!!」
ガタッ!
「ねえ!いつまでかくれんぼ、するつもりなの?」
アタシは目に涙をためて、ありったけの声を出した。
「もう鬼はやだよ!!」
そう言ったとき、
最終下校時間を告げるチャイムが鳴り響いた。
静かに、そして優しく。
まるで別れを告げるかのように、その音色はアタシの涙腺を刺激した。
そしてまた、沈黙が己が身を包み込む。
「……どうして、ここが分かったの?」
「っ……!!」
アタシの耳が焦がれていた、欲していた声。
誰にでも優しい、けどどこか悲しい声。
「俺、誰かに教えた覚えはないんだけど……」
けれど、彼の姿は見当たらない。
と思いきや、かすかに伸びた影がすぐ近くにあった。
「くら、まっ……」
「……さっきは、ごめん。その……」
「アタシこそ、意地張ってバカみたいだった。ごめんね」
「いや、俺が悪かったんだ。
あんまり俺には笑顔を見せてくれないもんだから、
嫌いなんじゃないかって思って……。
そしたら何か、モヤッとして……」
「え……?」
蔵間、それって……。
もしかして―――
「それって、嫉妬……?」
「っ……!?」
ガタッ
バサバサッ……
ふと、隣で本が落ちた音がした。
タタタッ
今度こそ、見つける!
「……みーつけた」
「あっ……!」
蔵間はなぜか、焦った様子でいる。
アタシの顔を見たと思えば、くるっと後ろを向いた。
「ちょっ、なんでそっち向くの!?」
「あ、あっち行って!」
「はあ?」
蔵間は、自分の顔を覆い隠すようにして
図書室の出口を指差した。
今更、帰れっての? いい度胸してんじゃん。
「どこ指差してんの? 出口?
アタシは後戻りしないよ。もう何も隠さない。ねえ、こっち向いて?」
アタシがそう言うと、
彼は少し戸惑ったが、ようやく振り向いてくれた。
443: 名前:雷蓮☆2011/09/24(土) 11:17:45
「え……」
アタシは彼の顔に驚いた。
珍しく顔が真っ赤なのである。
「蔵間……? 顔、赤いよ?」
「う、うるさい!だから嫌だったんだ」
まるで5歳児の子供のように、
顔を真っ赤にして言う。
「どうして、顔赤いの?」
「ゆ、夕日のせいだ」
なんて分かりやすい嘘。
そんなに今日の夕日は赤くないのに。
本当は嫉妬がばれて、恥ずかしいんろう。
なんとなく、分かってしまった。
「蔵間、嘘つくのはこれで終わりにして?」
「っ……」
「嫉妬、したの?」
「……、そうだけど、文句ある?」
いつもとは違う、余裕のない蔵間が可愛い。
そんな彼の表情を、今は私が独占している。
そう思うと、思わず顔が綻んでしまう。
「ふふっ」
「なっ、何笑ってんだよ!」
「だって、可愛くて……」
「うるせー」
「子供なとこも、あったんだね」
「悪かったな、子供で」
「蓮みたいに天の邪鬼」
「アイツより、俺の方が大人だよ」
「そんな変わんないってば」
「うるせえ」
「子供ー」
「黙らすぞ?」
「どうやって?」
「へえ。覚悟、できてんのか?」
「やってみてよ?」
「……上等だ」
グイッ
ちゅっ……
えっ……。
それはほんの瞬間で、甘い罠だった。
「ふ……はあ」
深い、優しい口づけで私を癒す。
息ができなくなって、蔵間の胸を叩く。
けど、一瞬の隙も与えてくれない。
気絶しそうになったとき、彼はようやく離してくれた。
「っはあ、はあ……」
「お前の方が、よっぽど子供じゃない?」
どうやら。アタシはコイツを甘く見すぎていた。
「不意打ちはナシでしょ……」
「俺、卑怯だから」
そういって、意地悪く微笑んでみせる彼。
そしてまた、甘いキスを交わしたーーー。
444: 名前:雷蓮☆2011/09/24(土) 16:13:05
~蓮side~
「やーっとハッピーエンドか?」
「しっ。蓮、もう少し静かにしゃべって」
「チッ。何でこの俺がこんなこと・・・」
「おい、お前ら。何してんだ?」
「あ"?」
「へ?」
ふいに現れたのは、武塔。
こんなときにメンドくせー奴が……。
「なんだよ、ロリコン教師か」
「久しぶりの登場なのに、そんな言い方ひどい!!」
「ぶ、武塔先生!えっと、どうしたんですか?」
「どうしたんですかじゃないよ~。もうとっくに下校時刻過ぎて……」
「うるせーんだよ、いっつもテメーは。常識にとらわれ過ぎてんだよ」
教師ってモンは、いつでも校則にうるさくて嫌いだ。
「とらわれてんじゃねーよ。守らなきゃいけないルールってモンだ。
ほら、とっとと帰って勉強!」
「嫌だね。生憎、教師にツラ下げようなんざ思わねーからな」
「蓮!先生にそんな言い方……」
「何かここから動けない理由があるのか?」
「お前に教えて何になる?」
「利益の問題じゃないだろ、蓮。理由を聞かなきゃ納得できない」
「教師に教える義理はない。職員室でテストの採点してろや」
「ちょっ、蓮!先生、ごめんなさい!蓮にはあとで……」
「いいんだよ、舞さん。蓮、理由が言えないなら帰ってもらう」
「……」
「蓮」
「っせーな、分かったよ」
「うんうん」
「本当は言いたくなかったんだけどよ……」
「はいはい」
「康介が腹こわして、トイレから出てこないんだ」
「……え?」
「れ、蓮!?」
「だから言ったろ!? 俺は康介のために言わなかったんだ!」
「えっと……その……先生が悪かった」
「せ、先生!?」 ※本当の理由はそんなんじゃありません。
「分かったらとっとと行けよ!戻ってきた康介が気まずいだろ……」
この俺にかかれば、演技もお手の物だ。
こんなヘタレ教師に負けるハズがない。
……ざまーみろ。
「そ、そうだな。なるべく早く帰るんだぞ!」
タタタッ
「……ザコが」
「蓮、あんまり大人をいじめちゃダメだよ?」
「悪いのは俺じゃねえ。いじめがいのある大人がいるのが悪いんだ」
「……。」
コツコツ……
「生徒一人、下校させることもできないのか。あきれたな」
「さすが蓮だよね~。巧みに惑わす言葉を並べて、自由自在に人を操るなん
て」
「まったく。いたずらにしか脳を使わないのかしら?」
っ……!?
「お、お前らっ!」
「蓮? この人たち、だあれ?」
そっか。舞はまだ、星光10大人物全員知らないんだった。
「あら、舞ちゃんじゃない」
最初に舞に気づいたのは、佐竹真奈。
一応女で、こいつも星光10大人物の中の一人。
「初めまして。次期生徒会書記を担当する、佐竹真奈よ」
「え、あ、はいっ!」
「そんなテンパんないで。同い年なのに」
「えっ!?」
「よく大人びて見えるらしいから、驚くのも無理ないわ。よろしくね」
「あ、え、えっと」
「真奈でいいわ」
「ま、真奈?」
「ええ。私も呼び捨てでいいかしら?」
「も、もちろん!」
「それじゃ、これからよろしくね。舞」
「うん!真奈」
ま、女同士のあいさつはこんなもんか。
唯一、舞を怖がらせるだろう人物は---
「あ、俺!俺の名前!俺の名前も覚えてよ!」
こいつ、森 千里だ。
こいつは腹黒でドSだから、何しでかすか知れたもんじゃねえ。
「俺は森 千里って言うんだ!性別は男だからね!!」
「あ、うん!」
「次期副生徒会長なんだ
!奏太より、九九を覚えるの早かったのが自慢!」
そしてこいつは、言動がバカだ。
「余計なこと口走ってんじゃねーよ!いつの話持ち出してんだ、てめー
は!!」
いつもツッコミ役がこいつ、須江金 奏太。
「あれ? いたんだ、奏太ー」
「お前、死ぬ覚悟はできてんだろーな」
「もう、冗談だってばー半分。はい、奏太もあいさつ!」
「お前、後で覚えとけよ。あー……俺は須江金 奏太。
次期生徒会長になる。ま、よろしく……」
「こ、こちらこそ!」
「そして、照れ屋だよ~」
「うるせー!!お前、一回地獄に案内してやろーか!!」
「あはは~。バカだなー、生徒会長ー。冗談ですってば!
俺がいつでも変わってあげますよー?」
「お前は俺専用のイスで充分だ」
そして、こいつらをひっくるめて一言であらわすと
三バカトリオだ。
最終更新:2012年08月13日 01:34