468: 名前:雷蓮☆2011/09/30(金)14:01:10
~舞side~
付き合い始めて、もう半月が経つ。
蓮は最近、なぜかピリピリしていた。
せっかく久しぶりに一緒に帰っているっていうのに…。
最近は委員会の仕事とか、日直の仕事で
放課後は別々に帰っていた。
それから蓮の不機嫌は始まった。
「ねぇ、蓮…?」
「…なんだよ」
「笑ってよ」
「断る」
「じゃあ、手、繋いでいい?」
「……嫌だ」
ぎゅっ
断られたけど、めげずに私から手を繋ぐ。
「ねぇ、どうしてそんなに機嫌悪いの?」
「……」
「蓮、言ってくれなきゃ分かんないよ」
「…………」
なんとか拗ねている理由を聞こうと頑張るが、
彼は心を開いてくれない。
それどころか、私と顔を合わせてもくれない。
蔵間くんといるときは、普通にしゃべってくれるのに…。
きっと蔵間くんに説教されたくないからだろう…。
「分かった。蓮の機嫌が直るまで、帰らない」
「っ……!?」
その言葉に驚いて、蓮は私の方を振り向いた。
何か言いたそうな顔で。
「やっと見てくれた」
「っ……」
プイッ
「あ……」
せっかく顔を合わせたのに、蓮はまたそっぽを向いた。
「もしさ、最近一緒に帰れなかったことで機嫌を損ねちゃったんだったら、
ごめんね?」
「っ……」
「だから、蓮……」
「…………」
「蓮……寂しいよ……」
ぱっ
近くにいるのに遠いことが悲しくて、
私は繋いでいた手を離した。
469: 名前:雷蓮☆2011/09/30(金) 14:23:00
「舞っ…!!」
ぎゅっ
「ごめんっ!その……本当にごめん!」
「れ……ん」
「恥ずかしくて、言えるようなモンじゃねぇんだよ」
「恥ずかしい?」
「あぁ。その……お前の言う通り、一緒に帰れなくてっていうことも、だし…」
「うん……」
「あと!!お前、俺がいるってのに他の男と一緒に帰っただろ!!」
「え? あ、左端くんのこと?」
「それがっ……俺にはつらいんだよ!!」
「ど、どーいう……」
ぎゅうぅぅー
蓮の抱きしめる力が強くなる。
「お前……ヤキモチって言葉、前に教えたの忘れたのかよ?」
「え……。蓮…じゃあ、ヤキモチ……」
「うっせぇ。かっこ悪いだろーが」
「蓮……」
「誰よりも近くにいて、余裕をもつ男でありたいのに……。
これじゃあただのかっこつけじゃねぇかよ……」
ぎゅぅぅー
私も蓮にされたように、お返しをする。
「ま、舞……?」
「かっこ悪くなんてないよ。私の大好きな蓮だもん。
かっこいいとかかっこ悪いとか関係ない。
ただ、蓮を好きなの!愛してるの!それ以外、何も理由はいらないでしょ?」
「舞……。やっぱり、俺……お前が好きだ」
「私もだよ、蓮」
チュッ
「んっ……」
蓮のキスは、いつも優しくて温かかった。
いつもは恥ずかしいって思うけど、
今は全然そんなこと思わない。
私も蓮をしっかりと、この両腕で、全身で受け止めたいから。
蓮を信じているから……。
「蓮、これからっも一緒だよ」
「あぁ、お前を離す気なんてないから。俺だけしか見れないようにしてやるから、覚悟しろよ?」
「ふぇっ!? んっ……ふぁ」
蓮はまた、私に深くとろけるようなキスをする。
もしかしたら、本当に蓮の本気スイッチを入れてしまったかもしれない…。
470: 名前:雷蓮☆2011/09/30(金) 16:20:58
~蔵間side~
「蔵間ーっ!」
「ん? あぁ、しずちゃん」
「うっ…。いいかげん、その名前で呼ぶのやめてよねー」
「ははっ。やだね」
「このやろーっ。あ、それどころじゃなかった!あたし、今日用事あるから先帰るね!」
「帰るなら、俺も一緒に…」
「あたし、親戚の葬式だからさ!そのまま行かなきゃ間に合わないんだ!じゃ」
「あ、うん…」
なーんだ。
俺、一人で帰るのかー…。
寂しいなぁ……。
「兄さん!!のろのろしてないで、早く帰りますよ!!」
「あぁ!わーってるよ!!チッ」
「聞こえてますよ~」
「うるっせぇな!!早く帰ればいい話だろ!?」
「分かってるんなら、早くしてください!」
「康介ー、鈴音と帰るんじゃ…」
「今日は無理だって言った!」
「珍しい……」
「じゃなー」
どてっ
「あいでっ!」
「何もないとこで何で転んでるんですか、兄さん!!役者になりきってる暇なんてありませんよ!?」
「わざとじゃねーだろ!!今のはどー見ても!!」
……。
苦労するね、四季くんも。
「鈴音もそろそろ帰っ……」
「っ……」
鈴音……。
初めて鈴音の切ない顔を見た。
ったく、康介の奴……。
女の子一人にして、置いていくやつがあるかよ。
俺はしずちゃんに置いてかれてるけど……。
「鈴音、また明日」
「ん? あ、蔵間。また、明日……」
「あんま落ち込むなよ」
「あぁ。ありがとう……」
つくり笑いしてまで、あいさつしなくてもいいのに。
いつもはサディスト国の旗かかげて、
大威張りしてるっていうのに……。
ま、康介もドSの鈴音を気に入ってるから問題はないけど。
471: 名前:雷蓮☆2011/09/30(金) 16:52:41
帰り道、ちょっと寄り道したくなって
ファミレスでパフェを食べていた。
もちろん、一人で……。
いつもはリア充の俺が、
今こうして一人でいるとリア充の奴等が憎い。
「はぁ……」
我ながら、大人げない発想だ。
ダメだ。気分転換にドリンクでも…
「こんなところでお受験対策か? 蔵間じゅん」
「げっ!!」
嫌なやつに会ってしまった。
「須江金 奏太!と、ゆかいな仲間たち…」
「ちょっと!!そんな言い方、ないんじゃないかしら?」
「お前もいたのかよ、真奈」
「失礼ね!ゆかいな仲間と絶世の美女って言ってほしいわ!」
「お前、予想外のバカだったんだな」
真奈が一番マシな奴だと思ってたけど、
やっぱりバカだったんだな。
「んじゃさー、いっそ役立たず生徒会2名と、絶世の美男ってのはどう?」
そしてこいつもバカ。
475: 名前:雷蓮☆2011/10/23(日) 13:39:00
「つーか、何でここにお前らがいんだよ」
俺がしびれをきらしながら言う。
「寂しそうにしてる蔵間くんを慰め隊がきたってのに、その顔はなんなのさ~?」
「うるせーんだよ。余計なお世話だコラ」
森 千里。こいつに絡まれると、一番やっかいだ。
「奏太!お前のお友達なんだろ。相手しろよ」
「誰がお友達だ!こいつの面倒なんて、百歩譲ってもお断りだ!」
「っていうことは、次期生徒会長の座は俺に譲るってことだね!」
「誰がそんな解釈しろっつったよ!!」
ゴンッ
奏太のチョップが垂直に千里の頭部へ。
「ぅいって~」
身構えるのが遅かった千里は、まともにそれをくらう。
「バカね。そんなことばっかりしてるから、蔵間じゅんにも甘く見られるのよ」
「おめーもだよ!!何分かったような顔してんだ!!」
真奈は奏太の蹴りをくらう。
たとえ女だろうと容赦なしの奏太。
「話は変わるんだけど、あなたの彼女は?」
「いや、話が変わりすぎだろ」
奏太のツッコミが入る。
「しずほのことか?」
「それ以外に誰がいるっていうのよ」
「腹立つ言い方しかできないのか、真奈」
さすがの俺もここでツッコミを入れなければならない。
「最寄りの警察署から連絡があってね。
最近、ここらで不審者の目撃情報が多数きていて…。
女性の一人歩きは控えるように伝えておけとのことだから、
あなたと一緒にいると思って来てみたのだけれど…。
どうやら、倦怠期のようね」
「倦怠期じゃねーよ!!普通に一緒にいなかっただけでいーだろーが!!」
佐竹 真奈の異常なボケに、正直疲れてきた。
「迎えに行ってやらないのか?」
「しずほは家族と一緒だ。俺の出る幕じゃないよ」
「親戚の葬式に出てるんじゃ、迎えに行くにも行きにくいわよねー」
「あぁ…。……って、真奈!!勝手に人の都合まで調べんな!!」
「蔵間は何かと沈黙を保つから、聞きにくいのよ。さて、学校に戻りましょ」
「人のこといじっといて、用が済めば帰んのかよ」
「さびしいでちゅか?」
「二度と面見世んな」
真奈との無駄話のおかげで、どっぷり疲れをもらった。
「蔵間じゅん。お前も、夜道には気をつけることだ」
「お前じゃねぇんだから、道に迷ったりはしねーよ」
「っ!!余計なお世話だ!!!」
「俺は寂しがり屋だから、いつでも遊びにきてちょって、さっき奏太が言ってたよ~」
「お前は何でも偽造すんじゃねぇぇぇ!!」
ツッコミ担当の奏太も、大変そうだ。
ボケが二人いたんじゃ、手が負えないだろう。
476: 名前:雷蓮☆2011/10/23(日) 14:09:29
~鈴音side~
学校を出て、しばらく歩いてた。
無心になって街を歩くというのは、何とも恐ろしいことだ。
「ここ……どこ?」
今、それを体験中。
アタシ、今まで何考えてここに来た!?
家に歩いてるって思ったら、何!?
ここ海なんですけど!? 帰るって何!? 前世!?
ザァァァァン…
さざ波の音が耳を微かにくすぐる。
それでいて、どこか切なげな音。
「……もぉ、帰りたいよぉ……」
「鈴音!?」
「えっ……」
聞き覚えのある、懐かしくて、愛しくて、私が求めていたこの声…!
「こぉ…すけぇ?」
「何でこんなとこにいんだよ、お前…そんな薄着でよ。ほら、これ羽織れ」
バサッ
10月と言っても、秋の深まるころ。肌寒い日が続いている。
康介の温かさに、またじわりと涙があふれてくる。
「もぉ、ばかぁ」
一人ぼっちになって分かる、康介の大切さ。
一人ぼっちになって感じる、今までの愛しいぬくもり。
康介にわがまますぎたアタシが子どもだったんだ…。
「おいっ!? 何で泣くんだよ? っ……あぁ!ったく!」
ぎゅうっ
ふいに、康介に抱きしめられる。鼓動のテンポが徐々に上がっていく。
「こ、すけぇ。ごめんね、ごめん…わがままっ、すぎた、アタシ。
いつも、自分ばっかで…うーっ…」
伝えたいことがありすぎて、うまく話せない。
ろれつがまわらない。
「っ……そんなの気にしてねぇよ。お前のそういうとこも、愛してるんだ」
「ふぇっうぅーっ……」
「だから泣くなよ。お前にはいつも、笑っててほしいんだ」
「こぉすけ、大好きだよっ。だからっ、離れないでぇっ」
「あぁ、分かってる。分かってるから、もう泣くな」
「ぐすっ、うぅー」
私は康介に抱きしめられたまま、しばらくの間泣いていた。
480: 名前:雷蓮☆2011/10/27(木) 21:45:52
~舞sode~
蓮と寄り道したから、家に着いたのは夜19時。
家に帰ると、違和感のあることに気づいた。
いつもは鍵がかかっているはずの玄関が開いている。
これは一体、どういうこと……?
不思議と不安より、好奇心が大きい私。
だが、油断していられない。
もしかしたら空き巣かもしれない。
……真夜中の空き巣??
なんか、あんまり聞いたことないな。
普通、昼間とかだと思うんだけど……。
一人でそんなのんきなことを考えていると、
リビングから声がした。
「だから!!もう帰った方がいいって!!」
聞き覚えのある男の子の声。
「ですから、ご挨拶だけでもと……」
ご挨拶??
「普通、ご挨拶ってのは家の主がいるときにするの!!
勝手に入っていいもんじゃないの!!見つかったらヤバいって!!」
この声……!!
バンッ!!
私は勢いよくリビングのドアを開ける。
「うおっ!?」
「おや、来られたようですね」
「康介!四季くんまで!何でいるの!?」
そこには勝手に家に上がり込んだ康介と、四季くんの姿があった。
「改めて、ご挨拶にと……」
「不法侵入ですよ」
「けれど、今日中に終わらせたくて……」
「そういう問題じゃ……!てか、どうやって入ったんですか!?」
「企業秘密です」
「企業なんですか……?」
四季くんは私の質問を、のらりくらりと簡単にかわす。
蓮と少し、性格が似ている。……悪い意味で。
「羽柴家次期当主、羽柴康介のご挨拶に参りました。
弟の尾上 四季です」
「羽柴家? 次期当主?」
「羽柴家の後継ぎのことです」
「康介!? そんなこと聞いたことないよ!?」
「っ……あ、あぁ、まーな!かっこいいから、秘密に、しててー」
「ヘラヘラとしないでください、兄上。常に冷静でいることです」
「あ、あぁ……」
ピクッ
このとき、私は康介のいつもの笑顔が偽りだと分かった。
だって……目が笑えていない。
「……かっこよくないよ」
「はい?」
四季さんが目を丸くしてこちらを見る。
「こんな康介、康介じゃない。今すぐその名前、撤回して」
「舞……」
いつもは鈍い私だけど、ずっと一緒の康介なら分かる。
すぐ状況もつかめたし、その名が嫌なのも承知。
康介が家族がらみのことで悩んでたのも、知ってるんだ。
「私は康介の相談をうけたりするから、四季くんのことも知ってるよ」
「ほぅ……。なかなかの演技力でしたね」
「康介が後継ぎになりそうってことも知ってた」
「兄上がそこまで言うとは。よほど、信頼されているようですね」
「そんな弱いもので終わる絆じゃないの。
康介とは心友なんだから」
「舞さんは部外者。何をしても無駄ですよ」
「舞!これ以上、口出しはっ……」
「不法侵入で訴えられる私の立場を甘く見ないで!!」
「……舞、その言い方、ちょっとかっこ悪い……」
「康介はだまってて!今いいとこ!」
「お前のその言葉でもう台無しだよ」
康介は私の腕を掴んだ。
「いいよ、舞」
「康介、鈴音を置いていくなんて許さないから」
「っ……!!」
「私のもう一人の心友泣かせたら、蹴るからね」
「舞……」
「先ほど、別れを告げてきたハズです。兄上、そうですよね?」
「え……?」
「四季っ!!お前っ……」
「海辺で二人寄り添い、最後の一時を過ごしましたね? 兄上はお分かりのハズ」
「別れなんて……」
「どっちにしろ、もう会えないのですからいいでしょう」
「どういうこと!? 鈴音は康介の彼女なんだよ!?」
「舞さん、鈴音さんは兄上にふさわしくないお方です。
お分かりいただけますでしょうか?」
「わかんない!!四季くんが決めないで!!」
「世間から見ても、私と同じ意見の方は多いと思いますよ?」
「どうして!?」
「王様と庶民が結婚するように、無理に近いことですから」
そう言うと、四季くんはニヤッと笑った。
481: 名前:雷蓮☆2011/10/28(金) 19:45:53
「とにかく兄上には、何が何でも後を継いでもらいます」
「康介は鈴音と一緒にいるの!!ずっとここにいるの!!」
「いいですか、舞さん。日常は突然崩れるものです」
「っ!?」
「何にでも終わりがくる、ということです」
「……」
「もう、いいでしょうか?」
「舞……、ごめん。俺……」
「嫌だ」
「え……?」
「そんなの許さない!!康介、一緒にいるって約束したんじゃないの!?」
「っ……!」
「一緒にずっといようって、鈴音と約束したんじゃないの!?
今日の鈴音、康介がいなくって寂しそうだったのに!」
「あ……」
「言葉で惑わそうったって、そうはいきませんよ」
「四季くんは黙ってて!!」
私は怒声を張り上げた。
「康介は鈴音を泣かせて楽しみたいの!?」
「っ……舞」
「うちはっ…うちはぁっ、そんな康介大っ嫌いだよ!!」
「っ!!」
いつの間にか涙があふれていた。
もう誰一人、失いたくない。
誰一人、かけちゃいけないんだ。
もう、誰かが傷つくのは見たくない。
バンッ!
突然、後ろで壁を蹴る音がした。
483: 名前:雷蓮☆2011/10/29(土) 10:24:21p
「何……やってんだ!!」
「れ、蓮!?」
振り返ると、康介たちを睨みつけている蓮がいた。
「これは……蓮さん」
「気持ち悪ぃ。さん付けすんじゃねぇよ、四季」
「これは失礼しました。……あなたも兄上を止めに?」
「んなわけねーだろ。勝手に俺の女の家に上がりやがって」
「それはあなたも一緒では?」
「てめぇみたいに初対面じゃねぇんだよ」
「そういうものなんですか」
「康介、お前……鈴音を置いてくのか?」
「っ……」
「舞を泣かした罪は後でとってもらう。
お前……鈴音なんてすぐに忘れられる存在だったのか?」
「そ、そんなんじゃ……」
「じゃあ、何なんだよ? 鈴音はお前のこと、彼氏以上に思ってるぞ。
お互いにそう思ってんじゃねぇのかよ?
鈴音の幸せを願って別れるっていうのは善じゃない。偽善だ。
お前自身の本音で行動しなきゃ、何も意味はなさないんだよ」
「っ……俺の家は元々、財閥だった。
今もその証拠が残ってる。代々の後継ぎに任命された奴は、
それをこなさなくちゃならないんだ。もう……どうしようもないんだよ……」
「……兄上。どうしてそこまで、鈴音さんを大切になさるのです?
あんな女、そこら辺にいくらでも転がってるじゃないですか」
四季くんが口を開く。
どことなく、その顔が切なく見えた。
「あいつはそこら辺にいるような女じゃない。
ちょっと変わった奴だけど、一緒にいて安心する。
いつも素の俺でいられる。気をつかわないでいられるんだ。
そういう関係って、中々できるもんじゃないだろ?
それに……何よりも誰よりもあいつを愛してるんだ」
「それでも、お前は手放すのか?」
「……やっぱ、無理だわ。あいつの笑顔、二度と見られなくなるのは耐えらんねぇ」
「……だってよ、鈴音」
「……え?」
「鈴音、きてるの!?」
コツ……
「鈴……音……」
「バカ。さっき、浜辺で抱きしめてくれたみたいにぎゅっとしてよ」
「ごめん、鈴音。俺……まだお前の大切さに気づけてなかった」
「……うん」
「今日、寂しそうにしてたことも知らずに……ごめん」
「……うん、分かってる。だから、今度またしたら別れる」
「えっ!?」
「その覚悟で!いい? これは命令だから!」
「ははっ、あぁ。分かった」
そういって康介は鈴音に、小さな小包を渡した。
「……? なに、これ?」
「誓いの指輪」
「え……」
「もう鈴音を泣かせない約束。この指輪にかけて誓うよ」
「クスッ。ありがとう、康介」
ぎゅっ…
二人は強く、抱きしめあった。
そして、それを唖然と見つめる四季くん。
「……どーだ、四季。うちの康介くんの愛は」
……え?
突然、蓮が四季くんにたずねた。
会話の切り出し方がおかしいと思うのは、私だけなのか?
「そうですね。あつすぎてヘドロが出ます。できれば、半径50センチ以内に近寄らないでほしいです」
「だろ? ま、これで不安はなくなったろ?」
「はい。ここまでいくと、もう手のつけどころがありませんし。合格です」
二人のわけの分からない会話が、私と鈴音と康介の間を飛び交う。
「お、おい、四季。どういうことだよ……?」
「すみませんね、兄上。
兄上の彼女さんへの愛を確かめろとおじに言われまして。
どうしてもときかないものですから。試してしまってすみません」
ニコッ
……ということは、
「それって嘘なんですか?」
私は目を丸くして尋ねた。
「はい、そうですよ。楽しかったですね~」
四季くんはにこにこ笑っている。
「あんなクサイ台詞、どこで覚えてきたんでしょうかね~。
最高に素晴らしかったですよ、兄上」
そう言いながらも、笑いをめちゃめちゃこらえている。
「ニコッじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!今までの嘘かよ!?」
「はい、そうです」
「てめぇ……さっきおごったファミレスの金返せぇぇぇぇぇぇ!!」
しばらく、私の家で馬鹿騒ぎが起こりました。
484: 名前:雷蓮☆2011/10/29(土) 15:45:32
~次の日~
「おい」
「何です? 兄上」
「何です?じゃねぇんだよ!!お前、帰るんじゃなかったのか!?」
「チケット、どこかになくしちゃいました」
「なくしちゃいましたじゃねぇ!!探せよ!!」
「面倒くさいです」
「なら自力で帰れ!!」
「まだ怒ってるんですか? そんなに毛嫌いなさらなくても……」
「お前の巧みな言葉に操られそうで怖いんだよ!」
「私はそんなのにひっかかる兄上が心配でなりません」
「嘘つけ!!お前、昨日楽しんでたじゃねぇか!!」
「面白かったんですもん」
「ですもんじゃねぇーーー!!」
雨の日の朝。
昨日のことが許せない康介がピリピリしていた。
「まぁまぁ。四季くんも悪気があったわけじゃないんだし……」
「ぜってぇ悪気満々だったよ、コイツ!!」
「兄としてその発言は見逃せませんね!弟の役目を果たしていただけですよ!」
ぎゃーぎゃーぎーぎーと騒ぎ立てる二人。
クラスのみんなが注目していた。
「なーにー? 喧嘩~?」
「喧嘩するなら俺が仲裁してやろう……」
喧嘩の噂を聞きつけて、左端くんと颯斗くんがきた。
「げっ!左端に颯斗!」
「その言い方はひどいんじゃない? せいぜいイケメンとか言ってほしいな~」
「バカだろ。お前バカなんだろ」
「バカバカ言ってないで、勉強ぐらいしたらどうなんだ? 喧嘩している奴に上位の成績はつかないからな」
「うるせーよ颯斗。てか、いいかげんお前はドアから出てこい。
いきなり天井から来られると、心臓に悪いんだよ」
「それは悪かった。何せ、日頃の習慣だからな」
「お前の習慣にドアという設置物は存在しないの!?」
「あはは~っ。颯斗っちは天然だからね~」
「俺はミネラルウォーターではない」
「別に天然水って言ってないけどね、颯斗くん!?」
「このとおり、颯斗っちは天然そのもの!」
「ダメだ。こいつといるとマジ疲れる。蔵間、交代」
「え、えぇ? 俺!?」
「なになに、弱気な康介くん?」
「左端。前から思ってたけどうざい」
「ははっ……。お前もな、チビ助」
「ん? 今、何か言った?」
「空耳じゃないかな?」
「そ」
そう言いながらも、二人の間で火花が散っていた。
485: 名前:雷蓮☆2011/10/30(日) 09:12:33
「おい、舞」
突然呼ばれたので肩をビクッとさせて反応してしまった。
「え、あぁ、どうしたの?」
声の主は蓮だった。
「今週の日曜、空いてるか?」
「ちょっと待ってねー」
私はカバンから手帳を出す。
「んとー……うん、OKだよ!」
「なら、デートにでも行くか」
「えっ!?」
「恋人同士なのに、ろくなデートもしてねぇんだ。行くだろ?」
「う、うん!」
そっか。よくよく考えたら、あんまりデートしたことなかったかも…。
「「スケベ不良」」
蓮との会話を聞いた双子が割って入ってきた。
ぎゅむっ
双子に抱きしめられた私。
「「舞をどうするつもり!?」」
必死に守る双子。
「ちょ、沙奈、瀬奈!?」
「「舞はまだ純粋な子なのに!!」」
蓮はそれを聞き、双子を睨む。
「とんだ妄想だな。俺はそんなつもりはさらさらないんだが?」
「「男はいつも野獣よ」」
「どこでそんな台詞覚えてきやがった、双子」
蓮の額に青い筋が浮かんでいる。
相当怒っているよう……。
「はいはい、双子も蓮も喧嘩しない!クラスのみんなが見てるでしょー」
「「エキストラだから気にしない」」
「はい!!エキストラとか言わない!!」
「「だって設定じゃん」」
「それもNG!!もうしゃべんな!!」
蔵間くんはまたまた仲裁役。
「「あ~あ。蓮の喧嘩もつまんな~い」」
「俺は疲れるんだけどな……」
蓮の視線の威圧にクラスのみんなが目をそらす。
双子はびくともしない。むしろ、面白がっている。
「「あー。そういえば~、生徒会の人が呼んでたよ~」」
「は?」
「「蓮だけ~」」
「何でそれを早く言わねーんだよ」
「「忘れてた~」」
「せってぇー嘘だろ。それ、いつ言われたんだ?」
「「昨日~」」
「そうか。ならいい。……って、昨日!?」
「「うん」」
「いいわかねーだろ!!もっと早く言えよ!!」
「「だから忘れて……」」
「そんなん嘘だろ!!」
「「うん」」
「やっぱそーじゃねぇか!!怒られんのは俺なんだぞ!」
「「だから面白くって~」」
「面白いとかの問題じゃねぇ!お前ら後で半殺しだ」
「「きゃーっ!」」
バタバタ…
双子は私を離してどこかへ逃げた。
「ちっ!クソッ!」
「まぁまぁ、蓮も落ち着いてー」
「あいつらのせいで、何か雑務やらされるかもしんねぇ」
「俺が後で弁解しとくから」
「ちっ!ちょっくら行ってくる」
「俺もついてくよ」
スタスタ…
「「やっと行った~」」
「二人共、あんまり蓮を怒らせないであげてね」
「「…舞は優しいなー」」
「そんなんじゃ……」
「「うちらは小悪魔だから優しくできないの!女の子は別だけどー」」
「二人共優しいよ」
「「舞にはね!」」
「ありがとう」
「「かわいい~!!」」
ぎゅむっ
またまたハグされた。
双子は本当は優しい子。
みんなから愛されてるからこそ、できる悪戯ってものがある。
けっして悪質ではないし、ちゃんと後で謝るから可愛いもんだ。
最終更新:2012年08月13日 01:36