初めまして。蝶々と申します。
では、愁×直人をどうぞよろしく。
キャスト
□南川 愁(ミナミカワ シュウ) 高1
■柊 直人(ヒイラギ ナオト) 小5
× × ×
episode1
「うぅーー……愁ちゃんー! またココわかんない……!」
リビングのテーブルに宿題と共に突っ伏しながらオレが声を掛けたら、向かいのソファで本を読んでいた愁ちゃんが顔を上げた。
「ナオはさっきから俺に聞いてばっかだなー……。自分で解かないと頭入んないよ? どこ?」
夏休みの宿題が難しくて、愁ちゃんについつい助けを求めてしまう。
問題を解くペースが遅いのは内容が難しいっていうのもあるけど、愁ちゃんと一緒に居たいからからって方が大きいかも。
愁ちゃんは本を置きながらソファから床に座り直して、テーブルの反対側からノートを覗きこんだ。
一気にオレと愁ちゃんとの距離が近くなる。
サラサラの黒髪。
長い睫毛。
スラッとした指。
「んーと、この問題は……この公式を当てはめて計算すると……こうなるから……」
説明を聞きながらぼんやりと愁ちゃんを眺める。
愁ちゃん、やっぱり格好良いなぁー……。
愁ちゃんはオレの5つ上の従兄弟で、オレの家に居候している。
頭がすごく良くて、通っているのは中高一貫の私立の学校。
中等部の時は二時間半かけて実家から通っていたらしいけど、高等部になってから愁ちゃんは学校からすぐのオレの家に居候する事になった。
従兄弟は愁ちゃんだけだし、昔から大好きだったから家に来るって決まった時は本当に嬉しかった。
子供で男のオレが見ても格好良い。……というか綺麗って言う方がいいかも。
オレのお母さんも「愁君は本当に綺麗な顔立ちしてるわぁ。ナオは男の子なのにかわいい系だし……従兄弟なのに全然違っちゃうもんなのねぇ」なんて言って見とれたりしちゃうくらい。
オマケに頭も良い だなんて、ズルいよ神様。
愁ちゃんの両親も、将来は医者か弁護士なんて期待してるみたいで。
オレはクラスでも中ぐらいで、愁ちゃんの学校に行くにはまだまだ全然勉強が足りない。
だからこそ、ちゃんと勉強しなくちゃダメなのに……。
「……ってなるから、この問題も今の応用で……ナオ、わかった?」
「う、うん! ……えーと、んーと……こう?」
あ、できたかも!
「正解! 良く出来ました、ナオは偉いなー」
そう言って愁ちゃんは優しくオレの頭をクシャクシャと撫でた。
むぅぅ。子供扱いしてるー……。
でも、問題も解けたし、愁ちゃんが喜んでくれたからオレも嬉しい。
愁ちゃん、彼女にもこんなに優しいのかな?
そーいえば今まで愁ちゃんの彼女なんて聞いた事ないや。絶対モテるはずなのに。
「……ねえねえ。そーいえばさ、愁ちゃんて彼女とかいないの?」
いきなりの質問に、愁ちゃんはちょっとびっくりした顔をして、それからニコッと笑って答えた
「いないよ」
「えー!? なんでー? 愁ちゃんこんなにカッコいいのに!?」
「だって男子校だし。……ま、俺はちょっと変わってるからね」
そういって愁ちゃんはまたオレの頭を撫でた。
……? なんかはぐらかされた気がするなぁ。
でも、まだ愁ちゃんを独り占めできる事がわかってホッとした。
「じゃーさ! オレ宿題頑張って早く終わらしちゃうから、夏休みいっぱい遊ぼ?」
愁ちゃんは優しく微笑んで、読みかけだった本をまた開き始めた。
×
宿題に一段落ついたオレはちょっと伸びをして、向かいに座ってる愁ちゃんを見た。
あれ……? 愁ちゃん寝ちゃってる。
愁ちゃんはいつの間にかソファに横になって、スウスウと気持ち良さそうに寝息をたてていた。
クーラーで風邪引いちゃうとダメだし、タオルケットを部屋から持ってきてそっと愁ちゃんに掛けてあげた。
そのまま近寄ってマジマジと愁ちゃんの寝顔を眺める。
やっぱ綺麗だなあー……。
そっと唇に触れてみる。
柔らかい……。
ドラマとかだと、恋人同士がこのままチューとかしたりするんだよね……。
チュー……。しちゃおっかな。
でも、愁ちゃんは男っていうか、オレにとってもうなんか憧れすぎて、性別とか超えてるっていうか…
……チューなんかしちゃったら、さすがに愁ちゃん怒るかな。
なんか、ドキドキしてきた。
うー……でも、愁ちゃん寝てるし、一回だけ、ほんの一瞬なら……。
なんて思いながら、ゆっくり愁ちゃんに顔を近づけて、そして、そっと唇を合わせた。
その瞬間。
「――そういうのは、好きな女の子にするもんだよ?」
声がして、突然愁ちゃんにフワッと抱き上げられた。
ソファに寝っころがってる愁ちゃんの上にまたがるように抱っこされる。
サーッと血の気が引いて、一気に泣きそうになる。
怒られる。
嫌われる。
怖くて顔が見れない。
愁ちゃんの顔を見ないように下を向いて、目をギュウと瞑る。
「ごめん…なさい。怒らないで…」
「怒ってないよ」
え?
驚いて愁ちゃんの顔を見ると、愁ちゃんは困ったような笑顔でオレを見つめていた。
「タオルケット掛けてくれたとこで目が覚めたけど、ナオが動く気配ないから何してんのかなって思って目瞑ってたら……キスするからびっくりしたよ」
自分からチューしたのに急に恥ずかしくなってきて、自分でも顔が赤くなるのがわかってまた下を向いた。
「ごめん……ね。愁ちゃんが……あんまり綺麗だったから……」
ますます顔が熱くなる。
愁ちゃんは上半身を起こしてオレを抱っこするみたいな体勢になって、いつもの優しい声で言った。
「ありがとう。でも、キスは本当に好きな人にしかしちゃいけないんだよ?」
「オレ……愁ちゃんの事……大好きだよ?」
「俺だってナオの事大好きだよ? でも、俺達は男同士だから……。ナオは男の子だから女の子と付き合ったりするんだよ?」
「……そんなの、わかんないよ……。女の子と遊んだりするけど、……チューなんてしたくないもん。愁ちゃんは、男だけど……チューしたくなったから……したんだもん」
そこまで言ったら、堪えていた涙が出てきた。
でもずっと言いたかった事が言えてスッキリして、顔を上げて愁ちゃんの目を見た。
愁ちゃんはやっぱり困ったような笑顔だったけど、下を向いて小さく何か呟いたみたいだった。
× × ×
《愁目線》
――ずっと、好きだったんだ。
自分が普通と違うってわかったのは小学生ぐらいから。
小学6年の時、法事で初めて会った直人はまだ小学生1年生だった。
目がクリクリ大きくて、柔らかい茶色っぽい髪が可愛くて……一目惚れだった。
俺の行く所にピッタリくっついて来て、別れる時には俺に抱きついて大泣きしてたっけ。
学校だって別にどこだって良かったけれど、母さんから直人の家が近いって聞いて即決した。
その方が何かと遊びに行く機会が増えると思ったから。
叔母さんにも良くしてもらって、高校生になったらこっちの家から通いなさいと勧められた時は、夢かと思ったほどだ。
直人はもちろん普通の子。
しかもまだ小学生。
俺がもし……傷つけてしまったら、もう一生会う事はできない。
直人のこれからの人生をメチャメチャにしたくない。
叔母さん達にも迷惑をかけたくない。
もし直人に彼女が出来たって、俺が卒業するまで直人の側に入れればそれでいいと思ってた。
……でも、柊家に居候することになって約半年、俺は逆に耐えれなくなってきた。
毎日直人と一緒にいて、自分の気持ちを抑えられなくなりそうになる。
そして……――――。
今、俺の前には、涙が溢れそうな目で真っ赤になってうつむいている直人がいる。
キスされた時、そのまま押し倒そうかとも考えたけれど理性が必死になって俺を抑える。
直人の好きと俺の好きは違うんだよ……。
直人はただ年上の俺に憧れているだけで、そのうち同世代の女の子に興味が出てくるに決まってる。
俺は必死で冷静を装い、声が震えるのを抑えて言った。
「俺だってナオの事大好きだよ? でも、俺達は男同士だから……。ナオは男の子だから女の子と付き合ったりするんだよ?」
自分で言ってて胸が締め付けられる。
わかってる。
自分でもわかってるからこそ苦しいんだ。
すると今まで俯いていた直人が急に顔を上げた。
「……そんなの、わかんないよ……。女の子と遊んだりするけど、……チューなんてしたくないもん。愁ちゃんは、男だけど……チューしたくなったから……したんだもん」
直人の真っ直ぐな目を見れなくなって下を向く。
耐えろ。
耐えろ。
でも……。
「も……ダメだ。我慢できない」
俺は小さく呟くと、直人を抱きしめてキスをした。
× × ×
《直人目線》
愁ちゃんは小さく何かを呟いたかと思ったら、いきなりオレを抱きしめて……。
……今、愁ちゃんからチューした……?
「!? 愁……ちゃん?」
突然で頭が混乱する。
愁ちゃんは両手でオレの顔を挟みながら言う。
「俺……ナオが好きだよ。従兄弟としてじゃなく……ずっと……ナオの事が好きだったんだよ」
「ほんと……に? オレも……愁ちゃんの事……好き……」
愁ちゃんの首に腕を回して抱きつくと、愁ちゃんはギュウッとオレを抱きしめてくれた。
首元からフワッと愁ちゃんのいい匂いがして、もっと嗅いでいたくて顔をスリスリと擦りつけた。
「ナオ……? くすぐったいよ」
クスクスと愁ちゃんが笑って首をすくめる。
「愁ちゃん、もう一回……チューしたい……」
さっき愁ちゃんにチューされたのがホントだったかどうか確かめたくて、抱きつきながら言った。
ほんの少しだけ顔を離してチュッと唇を重ね合わせ、また見つめあう。
ニコッと愁ちゃんが笑って「次はもうちょっとしてもいい?」と聞いてきたから、よく解らなかったけど頷いた。
四回目のチューは……なんていうか、凄かった。
チューっていうか……これが本当のキスっていうのかなあ?
さっきまで一瞬だったのに、愁ちゃんがなかなか離してくれなくて苦しくなって口を開けたらいきなり愁ちゃんの舌が入ってきて。
「んっ……ふぁっ……んん……」
熱くて、舌の感触が頭の中を擽られているみたいでボーッとしてくる。
「ふっ……ナオも……舌出してみて?」
ちょっと離して愁ちゃんはそう言うと、またキスを始めた。
「っ……ん……ん……」
うー……。恥ずかしいよぉ……。
でも、愁ちゃんにこうやってキスされてると気持ち良いから、オレも出したら愁ちゃんも気持ち良くなってくれるかも……。
そう思って、オレも舌を出した。
愁ちゃんの口はとっても熱くて、舌が絡み合って、なんか、すっごいやらしい音が大きくなったみたい。
頭がトロトロしてきて、変な気持ちになってきた時――愁ちゃんが唇を離してニコッと笑った。
「よく出来ました。ナオは偉いなー」
そういってまたオレの頭をクシャクシャと撫でた。
「あ、また子供扱いしてる!」
「してないって」
「してるっ!」
……もー! オレだっていつか愁ちゃんをヨシヨシしてやるっ!
×
しばらく時間が経ってから、愁ちゃんとオレは二つの約束をした。
一つは『二人の関係は誰にも内緒にすること』。
もちろん、オレだって男同士がキスしたりするのは普通はダメだってわかってる。
お母さんにも、友達にも言えない二人だけの秘密。
そして二つ目は『オレに他に好きな人ができたら、愁ちゃんにちゃんと打ち明ける事』。
こっちは、意味が良くわからなかった。だって一番好きな人は愁ちゃんなのに。
「愁ちゃんより好きな人なんて絶対できないよ?」
すると愁ちゃんは悲しそうに笑ってからオレをギュッと抱きしめた。
「俺もナオが誰よりも好きだよ。でも……どうしても不安なんだ。ナオが他の子を好きになったら……俺は……」
愁ちゃん、いつもと違って子供みたい。
なんか、可愛いなあ……。
あ、今ならオレもできるかも!
そう思ってオレは愁ちゃんの頭をヨシヨシしてあげた。
「……こら。それは俺の仕事でしょ」
「へへ。いつもやられてるから、お返し」
オレ達は見つめあって笑って、そしてこの日から、オレ達の恋人生活は始まったんだー。
× × ×
オレ達が恋人同士になって1週間。
「今日の宿題ノルマ、終了~!」
鉛筆とノートを投げ出して、愁ちゃんに飛びつく。
「! ナオっ……苦しっ……! ……なんかナオ、いきなり問題スラスラ解けるようになった気がするんだけど……」
あったり前じゃん。
愁ちゃんとラブラブできるなら夏休みの宿題なんて楽勝だよ。
お母さん達も昼間は仕事で居ないし、もうずっと夏休みだったらいいのに。
しかも、一日分の宿題が終わるとお待ちかねのご褒美タイム。
「ね、はやく愁ちゃんご褒美ちょーだいっ」
「良くできました。……ナオ、口開けて?」
そして、当たり前のように接吻けを交わす。
「ん、ふっ……んん……」
愁ちゃんの舌が熱くて、頭が蕩けそう。
毎日ご褒美のキスをもらってるけど、なんだか、最近……変なんだ。
キスしてるのは口なのに、なんだか体の下の方が熱くなってくる。
愁ちゃんが唇を離して今度はオレの首にキスをしてくれる。
そのまま首を伝って、唇が耳までくると愁ちゃんが囁く。
「ナオ……好きだよ」
小さな声なのに耳元で囁やかれると、頭に響いて、息がかかって……。
「愁……ちゃ……」
ぅー……ますます体が熱くなってくる。
「……なに?」
「な、んか……、オ……レ、最近変な……の」
オレが離してる間も愁ちゃんはキスを続けるから、上手に話せない。
「なんか……体の……下の方が熱く、な……ってきて……変なの」
「……下の方ってどの辺り?」
愁ちゃんはクスクス笑いながら、それでもキスを止めてくれない。
「……えっ……とね……。お、ちん……ちんの……辺り……」
愁ちゃんにこんな事言って恥ずかしいよ……。
……トイレに行きたいのとはまた違う感じ。……これって病気なのかなぁ?
「……ここ?」
そう言って愁ちゃんはオレのズボンの上からそっと手を置いた。
「ゃあ、んっ!」
今まで感じた事ないような気持ち良さが頭を駆け抜ける。
「すごい……ナオの……スゴくおっきくなってるよ。気持ちいいの?」
そう言って愁ちゃんはゆっくり撫でる。
「あっ、んっ……やぁっ……!!」
愁ちゃんの手が動く度に勝手に腰が浮いてしまう。
「直接触っても……いい?」
ほんとは、汚いからダメって言いたかったのに、首が勝手にコクンと頷いた。
愁ちゃんはオレのズボンと下着をずらして、優しく握る。
そのままゆっくり上下に動かされると、さっきよりも刺激が強くて声が大きくなる。
「やぁっ……あっ! ぁっ! んっ!」
先っぽからオシッコとは違うヌルッとした液体が出てきて音がリビングに響く。
体が支えられなくて、愁ちゃんに抱きついたら愁ちゃんがまたキスしてきて。
一生懸命気持ち良さに耐えてたけど、いきなり頭が真っ白になって……。
オレはいつの間にか意識を失っていた。
×
……目を開けると、心配そうにオレを見つめる愁ちゃんがいた。
「ナオ……。ゴメン……初めてだったのに……大丈夫?」
「うん……。きもちくて……訳わかんなくなっちゃった。愁ちゃん……」
「ん?」
愁ちゃんが心配そうに顔を寄せる。
耳元で「大好き」と囁いたら、愁ちゃんは微笑んで「俺もだよ」とほっぺたにキスをしてくれた。
最終更新:2010年05月17日 02:13