××× 続き5

episode8

――プルルル、プルルル
リビングで愁ちゃんと宿題を解いていると電話がなった。

「ハイ、柊です!」
「――あ、ナオ?お母さんだけど――」

電話から聞こえた声はお母さんからだった。

「どうしたのー?」
「今日仕事が溜まってて帰り遅くなりそうなのよねー。お父さんには連絡しとくから、愁君と何かご飯食べといてくれる?」
「はーい。わかった!」

電話を切った後、愁ちゃんに事情を伝える。

「――そっか、じゃあ夜ご飯は外にでも食べにいく?」

んーそれもいいけど……。
あ。
ふと、ある考えがひらめいた。

「……オレが作ってあげる!」

愁ちゃんはあからさまに驚いた顔をする。

「えっ!? ナオ料理なんて出来たっけ!?」
「前、調理実習でカレー作った事あるもん。愁ちゃん何が食べたい?」

胸を張って愁ちゃんに答える。
まあ、班ごとに作ったから俺がした仕事はルーを入れてかき混ぜただけだったんだけど。
一応作り方は学んだし大丈夫だと思う。……多分。

「じゃあそのカレーのお手並みを拝見しようかな。俺も手伝うよ」
「いいよ! 愁ちゃんにはいつも勉強教えてもらってるからオレが一人で作る! 愁ちゃんは座ってて!」

愁ちゃんを無理矢理ソファーに座らし冷蔵庫を見ると、野菜、お肉、カレールーと基本的な材料は揃っていそうだった。
オレは棚からいつもお母さんが使っているエプロンを取りだし、キュッと紐を後ろ手で結んだ。

みんな最初に何をしてたっけな……。
……拓也が遊んでばっかりいた事はよく覚えているんだけど。

「えーっと……まず肉を炒めて……? イヤ、野菜を煮るのが先だったっけ?」
「……野菜の皮を剥くのが先じゃない?」

ブツブツとじゃがいもを手に取りながら呟いていると、
愁ちゃんが見かねてフォローを入れてくれた。
そう! 皮剥き!
うん。わかっていましたとも。

包丁なんて握るの初めてかも。
愁ちゃんはオレん家にくる前はよく自分で作ってたって聞いたことがある。
――オレだって、美味しいカレーをパパッと作って愁ちゃんに褒めてもらうんだもん!
オレは包丁とじゃがいもをグッと握りしめて気合を入れた。

最初の一、二個は緊張したけれど、慣れてくるとスルスルと皮を剥けるようになった。
オレ……上手いかも?
調子に乗ったオレはフンフンと鼻歌を歌いながらじゃがいもの皮を剥き続ける。
よし、これで最後の一個だから次はニンジン……。
そう思った瞬間、支えていた手が滑り、ザクッとイヤな音が身体に響く。

「……っ! 痛ぁ……!!」
「ナオ!?」

鋭い痛みに思わず大きな声をあげると、声に反応して愁ちゃんが駆け寄ってきてくれた。

「ぅー……指、切っちゃった」

ジワジワと真っ赤な血が浮き上がり、ツゥと指先を流れてゆく。

「……やっぱり俺がすれば良かった。今、救急箱持ってくるから」
「ううん。そんなに深くないし舐めてれば大丈夫だよ」

音にビックリして包丁を持つ手を瞬間的に引いたので、幸いにも傷口は浅いようだった。
指先をペロリと舐めていると、愁ちゃんがオレの手を取った。

「……貸して」
「ぁっ」

そのまま愁ちゃんの口に運ばれ、指を咥えられる。

「ナオの味がする」
「ふっ……ぁ」

チュゥ……。
指を舐められているだけなのに、ジンジンと感じてしまう。
舌が絡まり、傷口をそっとなぞられるとピリリとした痛みが走る。
……だけどその痛みはすぐに快感へと変化し、オレの身体を熱くさせる。

「は……ぅ」

息が甘くなるのが自分でもわかる。
目線を指から愁ちゃんに移すと、目が合いニコリと微笑まれる。
愁ちゃんは口から指を抜くと、掌、手首へとキスを移してゆく。

「ん……愁、ちゃん……」

手を舐められてるだけなのに、どうしてこんなに感じてしまうんだろう。
夕御飯の準備の事なんか飛んでしまった。
愁ちゃんとエッチしたいという欲望と期待が、オレの頭の中をどこまでも占領していく。
そんなオレの期待をよそに、愁ちゃんはオレの頬にチュッと軽くキスをして身体を離した。

「よし、もう血は止まったみたいだけど、念のため消毒しときなよ? ご飯の続きは俺がやるから。ナオはもう包丁触らずに大人しくしといて」

そう言って愁ちゃんは次々と残りの野菜達を手際良く切ってゆく。
――ちぇ……もっと続けて欲しかったのに。
愁ちゃんを眺めながら、まだ濡れている指を今度は自分の口でパクリと咥える。
――まるで愁ちゃんとキスをしてるようで、また少しだけ身体が熱くなった。

×

「いただきます」
「いただきまぁす」

テーブルの上には美味しそうなカレーだけではなく、サラダ、スープまで並んでいる。
どれも美味しそうでコクリと喉が鳴る。
早速カレーを一口スプーンに取って口に運ぶと、こないだの調理実習で作ったものとは比べものにならないくらい美味しい。

「……! 美味しー……!」
「ほんと? 良かった」

愁ちゃんはオレの感想を待ってふわりと柔らかく微笑んでから、自らも食べ始める。
……一体愁ちゃんには不得意なものとかなんてあるんだろうか。
あ、甘いものはダメって前言ってたけど。

「愁ちゃんってさ」
「何ー?」
「勉強もできて、料理もできて……何か不得意なものって、無いの?」
「え、別に勉強も料理も得意だと思った事はないよ。うーん……。あんまり走ったりするのは苦手だけどね。疲れるし。サッカーとか、もう全然ダメだよ。」

へええ。それは意外。
サッカーと聞いて、拓也がパッと思い浮かんだ。
拓也が愁ちゃんに勝てる事があったなんて変な感じ。
つい口元が弛んでフフフッと笑ってしまった。

「何笑ってんの」
「フフ、何でもないよー。このスープも美味しいね」
「……変なナオ。指、もう痛くない?」

愁ちゃんは心配そうに身体を気遣ってくれる。

「うん。もう全然痛くないよ」
「ほんとに? 俺が食べさせてあげよっか。ナオ、あーん」

愁ちゃんはそう言ってオレにスプーンを向ける。
オレは愁ちゃんの意外な行動に、一気にカアアッと顔が熱くなる。

「……愁ちゃん、オレをからかって楽しんでるでしょ」
「うん。すごい楽しい。ホラ、あーんして?」

オレが恥ずかしそうに睨んでも愁ちゃんは全く動じずに、にっこり笑いながらスプーンを揺らして口を開けろと促してくる。
ま、いっか……。と半ば諦めながら口を開けると優しくスプーンを運んでくれる。
モグモグと口を動かしてる間も愁ちゃんは優しく見つめていて、つい目を伏せてしまう。
恥ずかしくて、もう味なんてわかんないよ……。

「……愁ちゃんもっ、ハイ、あーんっ!」

オレが恥ずかしいなら、愁ちゃんだって恥ずかしいはず!
そう思い、お返しにとばかりにカレーをすくって愁ちゃんに向けると、愁ちゃんは照れる様子もなくパクリとスプーンをくわえる。
それどころか、そのままスプーンを持つ手を掴んで手の甲にチュウとキスまでされてしまった。
手の甲に唇をつけたまま「ナオの考えてる事なんてお見通しだよ」と笑われて、ますます顔が熱くなる。
ぅー……またオレが逆に照れちゃったじゃん……。

「も、もう自分で食べるよっ!」

パッと手を払って、慌ててカレーを口に運ぶ。
……もうそれからはまともに愁ちゃんの顔が見れなくて、黙々とご飯を食べ続けた。
もちろん食べながらも頭の中ではグルグルと愁ちゃんの事を考えていて。
愁ちゃんにとってはただの愛情表現かも知れないけど、ほんの軽いキスでもオレの欲望を煽るのには充分すぎるから。
――愁ちゃんとギュッてして、キスして、エッチしたい……。
チラリと愁ちゃんを見ると、愁ちゃんと目が合う。
オレが下を向いてた間、ずっと見られてたみたいでドキリと胸が鳴る。

「な、何?」
「いや、ナオが何考えてんのかなー、って思って」
「……ご飯食べたら、しよ?」

真っ赤になってうつむきながら小さく言うと、愁ちゃんがカタンと椅子をひき、俺の後ろまで回り込むとギュッと抱きしめてくれた。

「もー……、ナオ、ほんとに、可愛いすぎ……」
「愁ちゃ、ん……っ、ふぁ」

――そうしてオレ達は深く唇を重ねた。

「んっ……ん、ふ……」

息をするのも忘れて深く舌を絡ませると、頭の奥が甘く痺れてゆく。
やっと二人の唇を離すと、ツゥと銀色の糸が繋がる。
全身から力が抜けそのまま愁ちゃんに身体を委ねると、フワッと椅子から抱き上げられた。

「わっ……!」 
「……しょっと、……ナオを抱っこ出来るのも今年が限界かなー」

これ……、お姫様抱っこ……!?
まだ力の入らない足を揺らして慌てて愁ちゃんの腕の中でもがく。

「ゃあっ……降ろし、て」
「ダメー」

暴れると落ちるよ、と愁ちゃんは笑いながらリビングを抜けてオレを抱っこしながら階段をゆっくりと登っていく。
……確かに愁ちゃんが階段から落ちたら大変だ。
オレは諦めて愁ちゃんの首にソロリと腕を回す。
間近で愁ちゃんと目が合い、にこりと微笑まれる。
顔から火が出そうで、愁ちゃんの首元にギュッと顔を埋めた。

「自分から誘ったのにね」

ヨシヨシと埋めた頭を撫でられる。
……そうなんだけどっ。
まさかお姫様抱っこでベッドまで行くとは思わないじゃんか普通っ。

「どっちの部屋、行きたい?」
「愁ちゃんの、方……」

ぎゅ、と愁ちゃんの服を掴む。
愁ちゃんの部屋で、愁ちゃんの匂いに包まれたい。
オレを支えながら片手でドアを開け、そのままベッドへと進む。
ポフッと仰向けにベッドに降ろされ愁ちゃんがオレの上に乗ると、キシリとスプリングが沈む音がした。
そのままジッと上から見つめられる。
恥ずかしさに耐えきれずにフイッと横を向き目線を外すと、両手で顔を挟まれて正面に戻される。

「ナオ……ちゃんと俺を見て?」

愁ちゃんの顔がどんどん近いてくる。
オレの心臓は早鐘のように早くなっていく。
オレは愁ちゃんの言葉を無視して反射的にギュウと目を瞑ってしまう。

「ナオ、照れすぎ。……じゃ、このまま目瞑ってていいよ」

そう言って、愁ちゃんの手がオレの目に被さると同時に、口にぬるっと舌が入り込む感覚がした。

「ふっ……、んく、ん」

愁ちゃんの手で視界が遮られて全く何も見えない。
ただ感じるのは熱い舌が絡まる感触と、愁ちゃんの体温。
長いキスが続き、やっと唇が離れた頃にはオレの息はすっかり上がっていた。

「愁ちゃ、ん……見えないよ……」

手を伸ばすと、サラサラとした愁ちゃんの髪の毛に指が触れる。

「次に何されるか分かんないからドキドキするでしょ?」

目が見えないから、他の感覚に頼るしかなくてオレの身体は一層敏感になったみたいで。
スルリと首を撫でられただけで甘い息が漏れてしまう。
愁ちゃんは決して強い力で押さえている訳ではないから、オレが本当に嫌がれば手を外すことは簡単にできる。
……でも、そうしないのは……多分、オレが望んでいるから。
感じている恥ずかしい顔を愁ちゃんに見られたくないっていう理由もあるけど……。

プチプチと着ているシャツのボタンが外される音がして、肌が空気に触れる。
もう冬も近づいているので部屋にいても少し肌寒いくらいの気温。
それでもオレの火照った身体には心地よい涼しさだった。
上半身に不意に暖かくヌルリとした感覚が襲ってきて、甘い声が自然と出てしまう。

「は、……んやぁっ」
「ここ、もう固くなってる」

胸の突起を舌で転がされると身体に軽い電気が走り、腰がビクンと浮いてしまう。
その隙間に手が入り、腰を上に引き上げられる。
そのままズボンに手を掛けられ、下着ごと器用に片手でずらされてしまった。

「……こっちも固くなってるけど、まだ触ってあげない」

下腹部に掌を当てられると、じんわりと愁ちゃんの温かさが伝わってくる。
そこからオレの太腿を滑るように手を這わされると、くすぐったいようなむず痒い気持ちになってくる。

「愁ちゃ……ん、……はや、く」

もどかしい愛撫が続くと、早く中心に触ってほしいとでも言うように体が揺れてしまう。
その間も舌で上半身は舐め続けられていて、オレは愛撫だけで登りつめてしまいそうだった。

「……んああっ!」

いきなりそれを握られて、身体が仰け反る。
何も見えないまま手で空をかくと、愁ちゃんの首らしき部分に触れたのでぎゅっと掴んで快感に耐える。
緩急をつけて上下に扱かれると、クチュクチュと水音が耳に聞こえてくる。

「ナオ、この音聞こえる?」
「や、っだあ……ぁぁっ……あん」

突起と同時に攻められてあっという間に意識が飛びそうになる。
堪えたいのに、まるで自分の身体のように愁ちゃんは気持ちいいポイントばかり攻めてきて。
カリッと突起に歯を立てられた瞬間、強い電気が身体を走り、愁ちゃんの手の中に白いものを射精してしまった。
まだビクビクと波打っている腰をそっと優しく撫でながら、ようやく愁ちゃんは目を覆っていた手を退かしてくれた。
そっと薄く目を開けると久しぶりの光で眩しく感じる。
愁ちゃんは自分の上着を脱いでいて、パサリとベッドの横に投げる。

……今からがむしろ本番だと思うと、さっき出したとは思えないぐらいに血液が下半身に溜まっていくのがわかる。
愁ちゃんと目が合って、にこりと微笑まれる。
――いつも目が合うと微笑んでくれる、愁ちゃんのこの表情が大好き。
身体を起こして愁ちゃんに抱きつくと、愁ちゃんの肌と直接密着して、心地よい温かさが伝わってくる。
耳を当てると、トクントクンと心臓の音が重なる音がする。

「目隠ししてると、ナオ、いつもより気持ちよさそうだったよ」
「そっ……そんな事ないよ!」
「そうなの?」
「……いつも気持ちいいもん」

素直に自分の気持ちを言うと愁ちゃんはアハハと笑って抱きしめ返してくれる。

「また、腰痛くなっちゃうかもよ?」
「……そしたら、愁ちゃんに湿布貼ってもらうから大丈夫」

痛くならないようにするね、と肩にキスを落とされながら先程出した液を拭うように下半身に指を絡められる。
腰を持ち上げられ、指をゆっくりと入れられていく。

「ぁ、あ……あっ、」

指は自分の液でさほど抵抗感なく深い所まで入ると、縦横無尽にうごめいて少しづつ中の容積を拡げてゆく。

「っ……んあっ、愁っ……ちゃ、んっ」

一本、二本、三本……。
ジュプジュプと卑猥な音を大きくしながら指が足されていくのが感覚でわかる。

「はぁ……んゃ、ぁ……」

恥ずかしくて足を閉じようとしても、愁ちゃんに押さえられてて動かせないし。
ひたすらシーツを握って快感に溺れそうになるのを耐えるしかなくて。

「力、このまま抜いててね」
「……ん、んぁ、あっん!」

愁ちゃんは祖反り返った自身のものを取り出し、ほどけきった部分に指を抜いて当てると、ゆっくりと前に進めていく。

「ナオの中……熱い……」
「ひゃっ……ぁあっ……ぁぅっ」

自分の体内に、内臓を押し避けながら柔らかく固い物体が少しずつ侵入してくる感覚。
……一回目は絶対入らないと思っていたから、恐怖感があったけど。
二回目の今回は入ってくる快感で気絶しそうなほど。
力抜いて、なんて愁ちゃんは言うけど、身体が自動的に収縮しちゃうんだもん。
……でも、あんまり締め付けたら愁ちゃんが痛くなっちゃうから精一杯息を整えようと口を開けて酸素を吸い込む。

「……っ……ナオ、動くよ」

そう言って愁ちゃんが腰を動かし始めると、もう息さえまともに出来なくなる。

「ひゃぁっん、ぁんっ! んぁっ! ……ぁっ、んぅっ!」

奥まで腰を打ち付けられると、まるで女の子みたいな高い声が喉から出てきて、その声に一層羞恥心を煽られる。
愁ちゃんに触れたくて手を伸ばすと、愁ちゃんが指と指を絡ませて手を握ってくれた。

「んゃっ……しゅ、ちゃっ、んっ! ぁっん!」

喘ぎながら愁ちゃんの名前を呼ぶと、手を握り返して答えてくれて。
愁ちゃんと繋がったまま、顔を近付けて熱いキスをする。

「ナオ……っ、好きだよ」
「オレ……も……愁……ちゃん……」

抱き合っていると二人のお腹でそれぞれのものが挟まれて、ヌチュヌチュと擦れて音を鳴らす。

「んっ! あぅ……やぁ……ん、ぁっ! オ、レっ……も……限界……」

前と後ろ両方の刺激が強すぎて、我慢の限界が来てしまった。

「……っんぁ……!」

――お腹の中に熱いものが広がる感覚がしたと同時に、オレは意識を手放した。

 × × ×
続き
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最終更新:2010年05月16日 15:41
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