どうして変態なんですか 続き2

5年前、小学六年生の頃のこと。

もうすぐ小学校最後の夏休み直後、俺のクラスに慎也は転校してきた。

なんというか、小学生の時からハテンコーであった。

「先生、感度いいですね」

自己紹介のとき、いきなり担任の胸を揉んで真顔でそういっていたのが印象的だ。

それまでキャーキャー言っていた女子陣からのえもいえぬ沈黙も。

転校してくる前は、アメリカのアーカンソー州ってところにいたらしい。

帰国子女で成績優秀、スポーツもそこそこでき、おまけに顔立ちが物凄く綺麗。

モテ男の三大要素をそなえているのに、慎也は転校三日目でからかう標的にされていた。


「きゃああああ!」

ある日の水泳授業の時のこと。

小学校はまだ男女合同で体育をする。

女子からの悲鳴。

俺はびっくりして後ろを振り返ると、全裸の少年が立っていた。

「中田の変態ーーっ!」

と叫んで、クラスのみんなは大騒ぎだった。

「何やってんの?」

俺は聞いた。すると慎也は真剣な顔で、

「水着が切れてたから」

という。全然意味が分からない。

慎也は周りの目なんて全く気にすることなくプールに入り、泳いでいた。

「中田くん、上がってきなさい。何でハダカなの?」

先生は慎也を無理矢理引き上げた。

そのまま保健室につれていかれ、(俺は慎也の制服を取りに行かされ)先生からの説教を受ける。

俺も少し興味があり、バスタオルに包まった慎也をじっと見ていた。


「どうして水着を着なかったの?」

「着れなかったからです」

俺が持ってきた制服に交えて慎也の水着があった。

確かにずたずたに切り裂かれて、とても着れる状態のものではない。

「じゃあ先生に言えばいいでしょう。なんでそれを思いつかないの?」

「思いつきましたけど」

「じゃあ、どうして?」

しつこく質問攻めされ、慎也は、

「僕はどちらかというと全裸で水泳したいからです」

とひょうひょうと答えていた。


であったときからあんなんだったな。

俺は回想に浸りながら帰っていた。

慎也の変態武勇伝はそれだけに留まらない。


中学生の時、同じクラスの男子生徒に体育倉庫内で襲ったっていって、学校中の噂になったなぁ。

噂というか、真実なんだけど。

そして第一発見者は不幸なことに俺だった。



当時は(半年だけだが)俺は陸上部に入っていた。

先輩にハードルを出すように言われた俺は体育倉庫に向うと、

誰もいないはずなのに中から変な声が聞こえた。

「な…なか…だ、こんなトコでしなくても…。誰か来たらどうすんだよ」

「そういうスリルを味わいたいんだよ、俺は」

…こういう場合、俺はどうしたらいいのだろう。

ハードル出せって言われているのに持っていかないわけにも行かないし、

第一いずれは誰かが来て、バレてしまうじゃねーか。

ならいっそ、俺が入って見つかった彼らは逃げていく、

イコール穏便に済ませられる、でいいんじゃね?

コンマ5秒で以上のことを考え、俺は決心して中に入った。

「ゆ、雪代…」

跳び箱の上で、慎也に覆いかぶさられていたクラスメートの男子が困った顔でこちらを見る。

ある程度意識していたので、あまり驚きはしなかった。

「ごめん」

俺はそれだけ言ってハードルを取り出した。

いわゆる…受けの方の男子は顔面蒼白で逃げていく。

よし、思ったとおり。

だが慎也の方は、そこから動こうとしなかった。

「何で邪魔するかな」

「邪魔って…こんなトコであんなんしてるからだろ」

突然慎也は、嫌な感じで俺に迫ってきた。

「な…なんだよ」

「邪魔されたお返ししようかなって」

はぁ? ふざけんじゃねー!!

お前が悪いんだろうが。こんなところでしかも男子をたぶらかしてるから!!


「ちょ…やめっ、放せよ!」

ハードルを持った手をつかまれ、壁側に押し付けられる。

怖い…何されるんだ?

俺はその時には既に、慎也はバイセクシャルであることを知っていた。

このままじゃ俺、初めてが男になる…汗。


「おい雪代ー、ハードル出すのに何時間かかってんだよ?」

部活の先輩がやって来た。

うわ…最悪。危機的状態だ。

すると慎也は、自分の顔で俺の顔が見えなくなるようにうずくまり、先輩の方をみた。

「何か用ですか?」

薄暗い体育倉庫とあって、慎也が隠したヤツが俺だと先輩は気付かなかったようだ。

「いや…。雪代来なかった?」

「来ましたけど、水筒忘れたって教室戻っていきました」

「そう…か。すまない」

先輩は気まずそうにその場を後にする。

「あ、ありが…とう」

自然にその言葉が出たけど、後から考えると変じゃねえ?

そういう状態になったのは慎也のアホのせいなのに、俺が庇ってくれたことに対して礼言う必要ないじゃん。


慎也はにっこり笑って俺を放した。

「お返しなんて冗談だよ。旭がもっと可愛くなったら襲ってやる」

絶対に要らん。

と俺は言い、ハードルを抱えて体育倉庫を出て行った。


次の日。既にクラス内は慎也のキモさをみんなで噂していた。

どうやら噂の発端は受けのクラスメートのようだ。

自分が受け入れたことがバレたくなくて、"襲われた"と言ったらしかった。

「いいのかよ、何にも言わないで」

俺は何度も慎也に聞いた。

「いいよ別に。変態と思われていた方が、次から襲いやすくなるだろ?」


やっぱり昔から変なヤツだったなぁ。

家に帰ってからも、慎也のことばっかり思い出している自分がいた。

「旭くん、何かいいことあったの? すごく笑ってるね」

みぞれに笑顔でそういわれて初めて俺は我に帰った。

俺…学校から家まで考えたこと慎也のことばっかりだ…。

やばい、俺どうかしてる。

自分で自分のこと、心から気持ち悪いと思った。

「どうしたの旭くん? 変なのー」

変? 変なの俺って??

嘘だああああああ!! 俺は変態じゃねえええ!!

慎也とは違うんだっ! あんな変態ヤローとは!!

「ねえ旭くーん、大丈夫ぅー?」

「大丈夫、大丈夫だ。みぞれ、俺は変態じゃない。

慎也のこと考えてドキドキなんてしてません。変態じゃありませんから!」

みぞれは分かったよう分からないようなといった表情でふうん、と頷く。


…ああ、俺ってますます慎也に毒されている気がする…。


待ちに待っていない合宿ーわーい! …はぁ。

5日後がまったく苦痛で仕方がない。

「母さん、合宿休むことって…できないよな」

その夜、俺はそう母親に聞いた。

答えは予想していた通り。

「何言ってるの。二泊で3万円もするのよ? 行ってくれないと困るわ」

合宿だぞ? たかが。

なのに何で一泊1万5千円もするんだよ。

5千円とかなら俺の小遣いでどうにかなるのに!!

ああ、やっぱり慎也と相部屋は避けられないってか。

と俺は頭を抱える。

「そうだっ」

慎也が眠りに着くまで、俺が違う部屋にいればいいんじゃね?

ていうかもういっそ、違う部屋で寝ればいいじゃん。

二人部屋って言ったって、三人寝るのに充分なスペースくらいあるはずだ。

よし、それで行こう。

慎也のバーカ。お前の言いなりになってたまるかっつの。


「おはよ」

朝から嫌な声による挨拶を聞いた。

俺と慎也は家が近い。

互いに遊びに行ったことは無いし、正確にどこにあるのか知らないけど。

というわけでたまに、登校時に出あう。

慎也は前に言っていたとおり、早朝に出かけるらしいから出あうのは本当にたまの出来事だ。

「無視するなよ、旭」

あーあ、せっかく気付かない振りしてやり過ごそうと思ったのに。

「なぜケツを触る!?」

というか揉んでる。

「触りたいから。挨拶代わりだろ」

何が挨拶代わりだよ。もういい、放っとこう。


…と思ったら、急にいなくなっていた。

「あれ? …何だアイツ」

辺りを見回す。絶対誰かにちょっかいかけているだろうから。

案の定、だ。

後ろの方にいる慎也の目の前には小学生くらいの男の子と、

俺らと同い年くらいの綺麗な青年が立っていた。

「何やってんだよおおおおっ!」

と、三人のところに走っていく。

青年の方は怪訝な表情をしていた。

男の子の方は、青年にぴったりとくっついている。

「あ、あの。本っっっ当に申し訳ありません」

状況なんて聞く必要、全くありません。

なぜなら100%慎也が悪いから。

俺は慎也の手を引っ張り、後ろを向きながら何度も二人に謝った。

「あ…いえ。そんなに誤っていただかなくても…」

と言われるくらいまで。


「お前、何やったんだよ」

「んー? いや、あの男の子がすっごく可愛かったから、ちょっと抱きしめさせてもらった」

アホだコイツ。究極のアホだ。

そりゃ、怒られるのも無理はない。


「旭も可愛いよ」

慎也は俺の前に立って、呟いた。

「きゅ、急になんだよ」

「抱きしめてもいいか?」

「は? 嫌に決まって…っ、!!」

だから嫌と言ってるであろうが。

俺に構わず、そして午前8時の、学校の校門前であることも構わず慎也は俺を抱きしめてきた。

「やめろっ! みんながいる前だぞ!? 放せーーっ!!」

ってじたばた手を動かしながら言ってるのに慎也はより強く抱きしめやがる。

俺の髪の毛に指を絡め、

「今日の放課後、旭ともう一回エッチしたいなー」

と耳打ちする。

もう一度言うけど、登校時の校門の前。

数多くの生徒が見ている。

俺は恥ずかしさで顔面が溶け出しそうだった。


「俺はしたくねえ! 俺は変態じゃないんだぁぁぁ!!」

周りの生徒に弁明するように俺は叫んだ。


じゃーっん!! 数学のテスト、23点でしたー!

先生から返却されてから、俺はずっと沈んでいた。

あー…、何でこの世の中に数学と言うものが存在するのだろう…。

二次関数って何だよ! 絶対社会人になっても使わないだろ。

少なくとも俺は使わない。加減積商以外は。


「へえ、23点…。欠点だから追試だな」

放課後になると慎也が俺の解答用紙を覗いて、哀れむような声で言った。

「…お前は何点なんだよ?」

見るな、という風に俺は用紙を伏せる。

慎也は俺に、自分の解答用紙を渡してきた。

俺には縁のない、三桁の数字が名前の横に書かれてある。

…ムカつく。

「何でそんなに数学できるわけ?」

国語英語ならまだしも、だ。

「数学は答えが一つだから」

うわー来やがったよ、数学出来るヤツの典型的な発言が。

答えが一つってなあ、その一つに辿り着くまでが何十通りもあるんだろうが。

俺はそれが理解できないんだよ!!

「じゃあ、俺が教えてあげようか? 追試滑ったらヤバイだろ」

ヤバイです。留年かもしれません。

放課後慎也と二人きりというのは結構警戒が必要だけど、

頭の良さはハンパないので、教えてもらうのはありがたかった。


「…だから、式をaとbとcで作って、xとyの数字を当てはめたらいいんだよ」

慎也は覚えの悪い俺に、懇切丁寧に教えてくれた。

だれもいない教室。クラスメートはみんな帰ったようだ。

俺は目の前の慎也をじっと見つめた。

はぁ…。黙ってたら本当に格好いいのにな。

なんか…ドンマイだよ、お前。

「聞いてる? 旭」

見られていることに気付いたのか慎也は顔を上げた。

「あ…ご、ごめん」

俺はびくっとして顔を背ける。


「で、えっと…解を持たないなら、判別式は0以下…だったよな」

俺がそういうと、慎也は不機嫌そうな顔をした。

「旭」

「何?」

ガタン、と音を立てて慎也は立ち、俺の横に来た。

「旭も立って」

「え?」

俺は戸惑いながらも言われたとおり、立つ。

すると慎也は俺を抱き寄せ、頚動脈を舌でなぞった。

「ひ…ぁ、ん」

「旭、俺の話聞いてなかっただろ」

慎也の声がぞくっと響いた。


「し、慎也。本気か?」

床に押し倒されて俺は不安になった。

だってここは教室だぞ。この前の屋上と違って、誰かが来る確率が高い。

いや、あの…それ以前にするのかよ。

「うん、するよ」

「ちょっ、見つかるかも…」

「誰かが来たら中学の時みたいに旭を守るから」

またもや耳元でそっと囁く。

俺は一瞬ドキっとした。

あんなこと…覚えていやがったんだ。

小学生時からのつきあいだが、高校に入るまで俺と慎也は仲がいいわけではなかった。

喋ったことがあるのも数えるくらい。

正直言うと近づきたくなかったし。

あれは、慎也にとっては"何人もの内の一人"としてしか見ていないと思ったから…。

だから…驚いた。

と同時に冷静に帰る。

別に覚えていたって普通だろ。

何をドキドキする必要があるか。俺、バカだ…。


「あ…ちょっと、慎也…」

慎也は俺を押し付けたまま学ランのボタンを外す。

数日前の記憶が蘇った。…悪夢再び。

「旭、可愛い。エロい。俺の手で無茶苦茶にイかせてやりたいな」

おいおいおいおい。

よくもまあそんな恥ずかしいセリフ言えるな。


学ランのボタンを外し終えると今度はシャツの番だ。

片手で器用に、慎也は俺のシャツのボタンを外す。

なんかその時間が…すごくもどかしい。

もう、抵抗する気力も無いし。っていうか抵抗してもどうせ負けるし。

「俺に犯されること、身体が覚えてるんじゃねえ? これ、ビンビンだけど」

と、慎也は俺のチクビに吸い付いた。

そうされることによってますますそれは凝り固まる。

「ぁ…っ」

不意打ちされ、俺は嬌声を漏らした。

声をもっとねだるように慎也は身体のいたるところを舐める。

「ん…あ、はぁッ」

段々気持ちよくなると共に、顔と身体が火照ってきた。

「今日はやめろとか言わないんだな。そんなに俺に愛撫して欲しかったのか?」

「ち、ちが…っ、んん」

断じてそれは無い!

…とは言い切れない。

本音を言うと、マジで気持ちいいからな、慎也の愛撫は。

「や…ぁ、ん…ッ、は…」

恥ずかしくて声を出さないように努力してみるけど、無駄だ。

何で気持ちよかったらこんな女子みたいな声がでるんだろ。

「気持ちいいだろ」

得意げに慎也は言う。

「ズボン張ってるけど。処理してあげようか?」

「い、いらねえ」

ちょっと意地を張ってみる。

扱いてくださいなんて死んでも言いたくない…けど、やっぱりちょっとしてほしいかも。

あ、いや、ホントに慎也上手いから!! それだけのことだから!!

って、何自分に言い訳してるんだろう俺。

「ふうん? じゃあしない。扱いてほしくなったらいつでも言っていいぞ」

慎也は俺の耳を甘噛した。

「ぁ…、や…ッ」

唾液のクチュクチュといった音が、鼓膜のそばなので鮮明に聞こえる。

というかくすぐったいだろうがー! いきなりするのやめろっ!

「旭って耳弱いんだな」

くすっと慎也は笑った。

くそー…、また馬鹿にされてるよ俺。


慎也に身体を触られるたび、俺の下半身はジンジンとうずく。

自分の手で触れようとしてみたが、慎也に阻止された。

「な…っ抜かせろよぉ…」

涙目になって言ってるのに慎也はその鬼畜振りを発揮し、

「旭の"してください"が聞きたいんだよ」

と言って笑う。

そして再びチクビに噛みつきだした。

「あ…あぁっ」

…え、何この拷問。

俺は落ちたほうがいいってか。

しかし慎也にねだるなんてプライド崩壊もはなはだしい。

そんでもって恥ずかしさで蒸発すると思う。


「いいのか? 旭がいわないと本当にやってやらないからな」

うわーお、向こうも意地ですよ。

慎也は尚も俺に攻撃を仕掛ける。

ピンク色の突起物を爪先でピン、と弾いた。

「ぁんッ」

喘ぎ声と共に俺の身体はぴくんと跳ねる。

「かーわいーな、旭は。"ツンデレなトコも魅力的"、だな」

可愛いっていうなー! 

俺だってなぁ、女の子に、"きゃー!雪代くん格好いい!!"

とか言われてみてーんだよっ。

なのに何で男に可愛いとか言われなくちゃなんないんだぁぁ!

…あと誰がツンデレだよ。

"ツン"はあるよ、確かにな。

でも俺、慎也に"デレ"たことはないぞ!


慎也から最低な拷問を受け続けて早30分。

もうそろそろ限界かもしれない。

そして俺はずっと誰かが入ってくるかも、という不安で気が気でなかった。

慎也は見つかっても平気らしい。

カギもかかっていない教室の扉にまったく興味を示さない。


「あ…はぁッ、慎…也ぁ…」

慎也は上半身の愛撫をやめようとしない。

俺の腰から上は、慎也の唾液でべとべとになっていた。

かといって、ズボンのベルトに手を掛けたりもしない。

「早く諦めろよ…、俺つかれてきちゃったな。旭が言わないと俺、自分のモノ突っ込む部分がないんだけど」

知らねーよそんなの。

お前が勝手にしてるんじゃねーか。

「旭も…すごい勃起してるのに…」

慎也はズボンの上から俺の性器を指でなぞった。

「あ、んッ」

俺は生きのいい魚のように身体を跳ねさす。

「可愛い。…もっと苛めたくなった」

にこにこ笑いながら大きな手の平で慎也はその固まった物体をふわりと掴む。

「や…やぁ…、なに…すんだ…っ」

掴む力を込めたり緩めたり。

それでも刺激が足りないもどかしさに、俺は不覚にも涙を流してしまった。

「も…、負けを認めるからっ、お願い…慎也…、してくださ…」

悔し涙も交わる。

俺のプライド…ズッタズタのボロボロですよ。

まぁ俺が諦めたんだがな。

慎也はこの結果が分かっていたと言わんばかりに、

「わかった」

と笑顔で呟いた。


ためらい無く慎也はズボンのベルトを外す。

…なんか急に恥ずかしくなってきたなぁ。

だってさ、俺の見る限り下半身はあんなに膨らんでるんだぞ。

それを男に処理してもらうんだぞ。

しかも、俺は少しこの状況を望んでいる。

ほ、ほんの少しだけだが…汗


「旭、チンコ勃ちすぎ」

くすくすと彼は笑う。

お前はダイレクトに言いすぎだ。

オブラートっつーものを持ったほうがいいと思うぞ。

「や…っぁ」

慎也に触れられるとジンと電撃のようなものが走った。

「おまえなぁ、触っただけだぞ」

またもやにこにこ笑う。

自分のケツの穴らへんがぬるぬるしてるのが良く分かった。

股の辺りまでその体液が流れてきているのも。

条件反射…。パブロフの犬だっけ??

今日、生物の時間にならった言葉が頭に浮かんだ。

俺は完璧パブロフの犬状態だ、現在。

「はぁ、んッ…んぅ」

男にこんなことされるって、あまり気持ちのいいものじゃない。

っていう考えが俺の中で覆されてきている。

慎也はもくもくと俺の突起物にしゃぶりついてきやがる。

俺はそれに、悔しいが快感を覚えずにはいられない。

「し、しん…やぁ…ッ、ん」

真冬で、暖房の効いていない室内は寒いはずなのに、額からは意味無く汗が出る。


慎也は腕を伸ばし、俺の口の中に長く綺麗な指を突っ込んだ。

「ふぁ…ッ、は…」

指を口内で2、3回かき混ぜて唾液を絡めると、その腕を下の方に持ってきた。


あ゛ー。

ホモでもないのに人生で男と二回もヤるとは。

目の前の光景が信じられないけど、なんか本気でどうでもよくなってきた。

慎也は蜜の滴った俺の下半身に指先を触れた。

「…ぁあ」

内部から何かがジンジンとうずく。

間違いなく、最高の快感を欲している。

中学の時、初めて自慰と言うものを経験した時、これ以上に気持ちのよいものは無いと思った。

しかし、今は慎也に施されている、以上に気持ちのよいものはない。

「んん…ッんぅ…」

クチュクチュ…

慎也は自身の指で、どんどん俺に快感を与えていった。

「はぁ…はぁ…っ、ぁ…んっ」

俺は声を我慢することが面倒くさくなって、なされるがままに喘いだ。

「旭…。知ってるか?」

うっとりするような低音の美声で慎也は俺に囁く。

「な…んだ、よっ」

会話をするのも苦難なくらい感じている俺は、途切れ途切れに答えた。

「俺…さ、セックスはするけど、旭にまだ一度もキスしたことがないんだ」


…は?

真顔で聞き返したくなる言葉だ。

そんなこと言って、どうする気ですか。

「いきなり…何言ってんの??」

息は整いかけ、視線を上に向けて呟くようにそう言う。

慎也は微妙に切なそうな表情を浮かべ、

「キスは好きな人とするもんだろ。お前のキスは"好きな人"にしかやっちゃいけないからな」

とまぁ、答えにならない答えを提示した。


はぁ、そうですか…。

…て、何納得してるんだろ。

俺は仰向けになったまま辺りを見回した。

慎也も俺も、肌蹴た服を精液で濡らし、汗ばみ、紅潮している。

俺の下半身は外部にむき出しの状態で、それを慎也はソフトクリームを舐めるように扱き。

言いようのない快感を味わいつつ俺は喘ぎ声を漏らし…ってまあこれはどうでもいいや。

そんな状態でいるんだぞ。

それをキスは好きな人と云々。そんなこと問題になるか??

本当に慎也の考えていることはわからん。

頭かち割って中身見てみたいよマジで。


「…旭」

慎也が耳元でそっと囁く。

「あっ…」

脳髄までに響く振動によって、俺は変な声を出してしまった。

「だ、だからっ…いきなりはやめろって…」

くすぐったいプラスびっくりするだろうが。

慎也はそんな俺の様子を横目でくすくす笑う。

「そろそろ挿れていいか?」

ゴムと軟膏を取り出す。

「そ…ゆこと、俺に聞くなよ。自分のタイミングでどーぞっ」

自分を客観的に見て言えること。

…完全に開き直っていますね。

でも開き直らせるほど慎也の扱いは気持ちがよくて。

男子だからな、うん。性的欲求があるのは当然だよ。そう。

だから別に慎也にやってもらいたいとかじゃないんだよ。

ええ、そりゃそうですとも。誰がこんな変態なんか…。


「あ…ぁあん…ん、んはッ」

ズブズブ…。

卑猥な音が広い教室全体に響き渡った。

「んぅ…ッ、し…んや…ぁ」

「…あ、さひ…っ、もっと…呼んっ…で、俺の…名、」

パツンパツンと肉壁にあたる音がよく聞こえる。

痛感も少しはあるけど、やっぱり気持ちがよかった。

「慎也…し…んやっ」

慎也の名を連呼する必要は全くないんだけど、何度も呼んでいた。

というか…自分でも不思議なくらい呼びたくなったのだ。

「旭…俺は…な、」

「ん…ぁっ、ああッ……な、に…?」

腰を振り、上がった息を交えた声で慎也は何かを言いかけたが、それ以上は何も言わなかった。

ま、いいか。今はそんなこと。

正直今は、この快感だけに溺れていたい。

と、俺は対して気にはしなかったが。

「はぁッ、…ん、慎也……イきそ…っ」

「俺、も…」

トピュッ

快感の絶頂に達したかと思うと、その証拠に俺の下半身の先端から白濁とした液が飛び出る。

「ぁぁあッ……はぁ、はぁ」

ほぼ同時にイッた慎也は俺の体内からびしょ濡れのそれを抜く。


「気持ちよかっただろ」

黙って俺は頷く。

「可愛い…旭」

くしゃっと慎也は俺の頭を撫でた。

だから可愛いとかいうなって。

「次は絶対拘束プレイしような」

「…はあぁ!?」

にこやかに問題発言する慎也に俺は呆れ果ててしまった。

寝言は寝ても言うな。お前の場合。


いつも通り、下校は途中まで慎也と一緒。

上を見上げると、帰路には見ることのない星が輝いている。

はぁっと溜め息をつくと、それは凍り付いて白くなった。

「いってーなボケが」

慎也を見ることなくそう吐き捨てる。

腰らへんが痛いんだよ。

「ん?」

「お前絶対わざとだろ。わざとあんな動かしまくってんだろ」

一回目と同様、セックス後の独特の痛みが腰を襲う。

「そーだよ。俺の抑え切れない性欲を旭に刻みこんでやりたかったん…げほッ」

俺はゲンコツを作り、慎也のみぞおちに食らわしてやった。

「それくらい痛いんだよ、こっちは!!」

いや、いやぁ…そんなことは無いか?

ちょっとやりすぎたかな…。

ちらっと俺は慎也を見た。

両手を腹にうずくまらせているかと思うと、ゆっくり自分の目の前に持っていき、じっと見つめていた。

「今の…良い」

「は??」

「今の殴り方、燃えた。旭、もっと俺を殴ってください!」

「はぁ??」

さっきまで鬼畜キャラ貫き通していたヤツが言うセリフか!?

「切って、殴って、弄って! 撲殺天使のように!!」

慎也のきらきらした目がギャグではないことを物語っていた。

「旭ぃー苛めてーじゃないと俺が苛めるぞー」

ガシっと俺の腰にまとわり着く。

「や、や、やめろおおおお! 公ッ道ッだっつーの!!」

と、慎也の長い腕を必死で振りほどこうとする俺。


今日学んだこと。

慎也はやっぱり、どのジャンルも持ち合わせる真性の変態だった。


「ただいまー」

疲れきったような声で俺は玄関の扉を開けた。

ホント疲れたよ、色々。

「旭くんだー! おかえり!」

家に入るや否や、みぞれが出迎えてくれた。

「あのね、今からみぞれテレビに出るよ」

と、俺の手を取り早く早くといった様子で急かす。


『はい、雪代霙ちゃんです。どうぞー』

食卓のある部屋に入ると、テレビ画面がちかちか光っていた。

『今回のドラマですが、どんなところが見どころですか?』

インタビュアー的な人が、テレビの中で椅子に座っているみぞれに聞いた。

それに対し、みぞれは一昨日くらいに練習してた内容を答えていた。

『じゃあ、みぞれちゃん、テレビの前の誰かに向って一言!』

インタビュアーが自分(カメラ)に向って手を差し伸べる。

『えっとぉ、旭くん!』

画面越しのみぞれに名前を呼ばれて、俺はドキッとした。

『旭くんって誰ですか?』

『あたしのお兄ちゃんです。旭くん、あたし頑張ったから、ドラマ見てね!』

みぞれは手を振った。

その横で本物のみぞれはこちらを向いてにこっと笑っている。


悪い気はしないんだけど…。

俺は妹が子役タレントであることを学校の友達には言っていない。

知っているのは現在、おそらく慎也だけだ。

なぜ言わないかというと、まぁ自慢になるのがイヤだって言うこともあるんだが、

それにかこつけて他のタレントのサインとかをせがまれたりしたら、みぞれが困ると思ったからだ。

みぞれは本名で売っているが、芸能人と同じ名字なんてザラにあると思ったから大してバレる心配していなかった。

けど、自分の名も出たとなると…なぁ。

満面の笑顔で笑っているみぞれとは裏腹に、俺はフクザツな気分だった。


明日はとうとう合宿ですか。

着替えやタオルをキャリーに詰め込み、長いめの溜め息をついた。

点呼の時だけ自分の部屋戻ってーその後は隙を見て逃げてー、桜田の部屋にでも行っておこう。

着いてから彼に頼めば良いか。うん、よし。

明日の夜の俺の作戦が脳内を過ぎる。


「旭くん、お風呂空いたよ」

みぞれがドア越しに俺を呼んだ。

「あ、おう。わかった」

適当に返事をし詰め終わった荷物の仕上げにチャックを閉める。

二泊三日にしちゃちょっと少ないかな。まぁ、こんなもんか。

出来上がった荷物を前に俺は適当に自分を納得させた。


脱衣場で俺は服をするりと脱ぐと、目の前にある鏡を少し見た。

と、同時に腰にズキンと痛みが襲う。

(あのやろぉ…)

そういえば、慎也はあんな性癖であるにも関わらず、キスマークっつーモノをつけたことが無い。

今日のは明日の入浴の時のためなのか、…いや、あいつはそんなことは構わずつけそうだし。

俺は、肌色のままの首筋にそっと指を当てた。

…ん?

そこで我に返る。

待て、なんかおかしいぞ。

何で俺はキスマークがどうのこうのっていう心配してるんだ??

つけられなかったらそれでいいじゃねーか。

まさかつけてほしかったなんて、思うわけが無いし。

…俺マジで、マジで何考えてるんだ…ッ。


慎也の変態具合に毒されかけてきている自分に恐怖を感じ、頭を抱えた。


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最終更新:2010年05月20日 01:25
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