※短編だらけ※ 続き8

337: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆11/22(日) 18:11:25
【にんまり顔に舌打ち】




「ホント、オマエって可愛いよな」


 そんな称賛の声が恭悟の鼓膜に届いたのは少し肌寒くなってきた休日の昼だった。
 リビングのソファに座り雑誌を捲る自分を、それこそ穴が開いてしまいそうな程に見つめてくる龍に恭悟は器用に片方の眉を僅かに吊り上げる。


「頭も良いし、家事も出来るし、なんたって床上手だ」


 最後のに至っては、臆面も無く言い放った龍に少しカチンと来たものの、ここまで褒められれば誰だって嫌な気分はしない筈だ。しかし、恭悟は龍の激賞ににこりともしなかった。あくまで無表情を保ち、龍の言葉に視線は手元の雑誌に向けたまま耳のみを貸す。


「オマエの少し天然入ってる所もスゲェ可愛いし、素直じゃない所も嫌いじゃない」
「……それは褒めてるのか」


 当たり前だろう、と頷いた龍についに恭悟の無表情の仮面が崩れた。あからさまに呆れたと言わんばかりの表情で溜め息を吐く。


「言っておくが、小遣いは上げないぞ」


 溜め息を吐いた後、顔はにこやかなのに単調すぎる声色で龍の先手を打った恭悟。
 さすがと言うべきか、自分の思惑を見抜かれていた龍はチッ、とわざとらしく恭悟にも聞こえる様に舌打ちをした。




 その夜、せめてもの仕返しと営みを張り切った龍が翌日小遣いを減らされたのは仕方のない事だと思う--。








※※
まさかの小遣い制(笑)←
や、本当は違うんですよ? なんとなく、無性にこんなのが書きたくなったんです←
今回も龍。ごめんな←
ていうかこの二人って既に熟年夫h(ry←



338: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆11/23(月) 13:15:29
【注ぐ、溢れ出す】




「あっ、あ、あっ……!」
「ッ……!」


 もう何度目か解らない情交、極み。
 柔くそれでいて俺のものを離したくないと言わんばかりに締め付ける媚肉に欲望の飛沫を注ぎ込む。


「あぅ……も、無理、ぃ……」


 何度も俺のものを受け止めたそこからは収まりきらなくなった俺の出した白濁が溢れ、腿を伝っていた。
 俺の下に居るそいつの腹は異様なまでに膨らみ、まるで孕んでいるかの様。
 さぞ苦しいんだろうな、なんて昂ぶる身体とは裏腹に冷めた思考で思った。


「でも、気持ち良いだろ? 中ぐちゃぐちゃでうねってる」


 軽く中で旋回すればぐちゅ、と粘着質な音が鼓膜に届き、またも白濁が溢れる。
 貪婪な媚肉は俺を何度も誘い、飽きる事なく快楽を貪ろうとする。


「あ……あ、あぁ……」


 絡み付いてくる内壁を自分のもので擦れば下にある細い腰と腿がびくびくと震えてか細い喘ぎが零れた。それに冷めやらないでいた熱を再度煽られ、腰の奥に滾る情欲を放出する為に蠕動運動を開始した。


「あっ、あ……あぁっ--」




 注ぐ、溢れ出す。
 解放してやりたい筈なのに乖離する心と身体。




※※
み じ か い ^p^←
駄目だ。
トランプ (←)未だに脱出出来ない…orz←



339: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆11/24(火) 19:20:14
【獣の情愛】




 所謂“男女の営み”とやらをするのが目的のこの場所。
 目に痛すぎるピンク色の部屋。これまた目に優しくない色、デザインのベッド。
 ま、コトに及ぶのに部屋の色もベッドの色、デザインもどうだって関係ないか。


「あ、ああっ、やあっ!」


 四つん這いで後ろから俺のモノを銜え込むのはつい数分前に初めて出会った名前も知らない青年。
 暇で適当にふらついていた所を誘われたから手近にあったホテルでこうしてコトに耽っている。
 思えばコイツは俺の嗜虐性を見破っていたのかもしれない。じゃなきゃ俺がこうして半ば一方的に犯す様な性行為を強要した時に素直に受け入れたりはしないだろう。


「嫌? 嘘吐くなよ。俺に虐げられて悦んでるくせに。ほら「私は卑しい雌猫です。イヤらしい私のお尻の中に種を植え付けて下さい」って言ってみな?」


 そう耳元で囁いてやれば下に居る青年が身体を震わせる。弱々しく頭を振って拒否の意を見せるけど身体の方は正直だ。嬉しそうに俺のモノが締め付けられた。
 もう一度、「言えるよな?」と低く囁けば小さく嗚咽を洩らすのが聞こえた。


「わ、私は、卑しい雌、猫です……。イヤらしい、私のお、尻の中に……っ、種を植え、付けて下さ、ひああぁっ!?」


 全てを言い切る前に奥を突き上げる。油断していたのか、青年は一際甲高い嬌声を上げて背を撓らせた。同時に中に埋まる俺のがキツい位に締め付けられて俺の方も更に昂ぶっていく。
 俺は上半身を前に倒して、猫科の獣のソレまんまに目の前の汗が滲むうなじに噛み付いて腰を使いだした。


「あ、あ、あっ! や、こんな、っあぁ!」
「っ、は……獣[けだもの]だな。俺達」
「こんな、こんなのだめ、あぁっ! も、もうオレ、イッちゃ……っ」


 俺のモノに絡みついてきていた媚肉が俺に、青年の絶頂が近い事を教える。俺の方もこの滾る欲望の解放を求めて半ば一心不乱に腰を打ち付けた。


「あっ、あ、あぁっ--んああぁっ!」
「っ……クッ」


 二人ほぼ同時に極みに達し、ベッドに崩れ落ちる。
 俺のモノが青年の中から抜け出た後からは、俺が出した欲望の証が零れた。ソレが青年の肉付きの良い太腿を伝ってベッドのシーツに染みを作る。
 乱れたシーツに腰のみを高く上げた状態で突っ伏し、荒い呼吸を繰り返しながら植え付けられた男の種を零す。かなり扇情的なその姿に俺はたった今、欲を吐き出したばかりだと言うのに当てられそうだ。


「そういえばお前、名前は?」
「え……?」


 怠そうに身体を横たえて、青年がこれまた気怠そうな視線を向けてくる。


「俺のペットになる気、ねぇ?」
「恋人じゃ、なくて?」
「あぁ、ペット。恋人は昇格の可能性が無くもない」


 青年が俺の言葉にぷっ、と吹き出す。クスクスと鈴でも転がしたような笑い声をあげて「なにそれ」だって。


「良いよ、オレを飼ってよ。ご主人様。名前は--」




 獣の情愛。
 本能のまま交わってから愛を探せ。








※※
くっ……←何
受けの台詞は私の趣味丸出しですね←
性描写ってなんでこんなに難しいんだ…!!


342: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆11/25(水) 21:50:00
【終わりの音が聞こえる(あの人の足音)】




 部屋には窓から差し込む月光以外の光源が無かった。
 部屋の隅。月光が差し込む窓の側には全裸の肢体を曝した男--智也が立ち、自らの正面にある姿見にその姿を映している。智也の身体には所々に鬱血痕が散らされ、智也の男にしては細い指がそれらを一つ一つなぞっていった。


 --此所と……あ、こんな所にも……。


 一つ鬱血の華を見つける毎に、これを自分に刻んだ相手の事を思い描いて智也の顔が綻ぶ。
 智也がこうして己の身体に刻まれた証を一人、鏡の前で確認するようになったのは今に始まった事ではない。


「隆成……」


 かの彼の名前を呟き、束の間の充溢感に浸る。昨夜の恋人との身も心も溺れてしまいそうになった情事を頭の中に描き智也は自分の身体に散った華に爪を立てた。


「痛っ……」


 皮膚を突き破ってしまいそうな程に力を込める。
 恋人への配慮で爪は切られてはいたが、それでも結構な痛みがあったらしい。智也の顔が歪めらる。だが相変わらず爪を立てるのをやめる気配はない。加えて、表情はどこか恍惚とさえしていて、正面にある姿見にはうっとりとした顔で自らの身体に傷を付けようとする智也の姿のみが映し出されていた。


 --こうすれば暫くは消えない……。


 鏡の中の智也が満足そうな笑みを浮かべる。
 智也が爪を立てていたそこは赤いその証から更に上書きでもするように赤く腫れてしまっていた。
 智也にとってこれは誰よりも、言ってしまえば自分自身よりも愛しく大事な彼に愛されている痕跡であり、同時に自分がこれからも生きていくのに必要な証であった。


 --僕が生きてるのは隆成が居るから。隆成の証があるから生きていける……。


 ふと、智也の耳に聞き慣れた足音が。
 途端に自分の今の格好も関係ないと言うように智也が部屋と廊下を隔てる扉に駆け寄る。すぐに廊下へと繋がる扉が向こう側から開けられ、そこに居た、自分が待ちわびていた訪問者の姿に智也は弾んだ声色でその訪問者の名前を呼んだ。


「隆成っ!」




 愛しい彼の足音は、
 自傷行為の終わりを告げる音--。








※※
はい病み~←
今回は三人称単数という(らしい)書き方で書いてみました!!
以下コピペ↓
三人称単数(主人公のみの視点で描かれるが、地の文は主人公を客観的に描写する)
だそうですww←


345: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆11/26(木) 21:10:30
狂ってます。
意味不注意ですよ!!←
突発的に書いたのでなにこれ状態です←
ていうか…BLじゃなくね?←
男しか出て来ないけどラブ要素なくね?←
※※




【右手にナイフ、左手に心臓】




 本道から一つ裏へ入った場所。街灯はもはや無く、所々白っぽい月明りが照らしている以外には闇が広がるそこを、一人の、違法な薬をしているかの様に濁った眼の少年が歩いていた。
 良く見ると少年の右手には鋭利な光るもの。左手には滴を零す何かの塊の様なものが握られている。


「んー……?」


 ザリッ、と地面の砂利かなにかを踏んだ音が少年の耳に届く。ゆっくりとした動作で少年が己の正面を見ればそこには少年よりも幾らか年上であろう男が驚愕の表情で少年を見つめていた。
 少年がニタリ、と黄ばんだ歯を見せ、男はすぐにこの少年が“普通”では無い事を悟った。そして少年の手元に視線をやり息を呑む。


「お、お前……それ……っ」


 右手には鈍色に光るのはナイフ。そして左手には赤い滴を垂らす臓物--人間の心臓が握られていて、信じられない思いで漸く絞り出した声は酷く震えていた。
 少年が歯を見せたままゆっくりな動作で首を傾げる。


「お兄さんもー……心臓ー……俺にーくれるー……?」


 スローペースの声が更に遅い早さで男の脳に伝えられ、少年の言った言葉の意味を間を置いて理解した男は当たり前だが逃げようとする。が、何故だか足が地面に縫い付けられてしまったかのように少しも動かせない。
 頭では逃げなくては、逃げないと殺される、と思ってはいるものの身体が言う事をきかなかった。
 男の背を冷たい汗が伝う。


「や、やめ、て、くれ……っ」


 少年がふらふらとした足取りで少しずつ男との距離を詰めていく。
 ナイフの握られている右手が振り上げられ、殺られる、と男が目をぎゅっと瞑りこれからくるであろう衝撃に身を固くした。


「--……っ?」


 しかし何も起こらない。意を決し、おずおずと瞼を持ち上げた男はすぐ目の前までやってきていた少年の姿と、至近距離にあるやつれた顔に息を詰める。
 少年の方はといえば男の顔をじっと見つめており、ふと、くるりと反転。男に背を向けた。
 男はただただ呆然と立ち尽くし、少年の背中を見つめる。少しずつ本来の働きを取り戻し始めてきた男の脳が自分がとりあえず助かった事を認識するが、何故寸前になって少年が手を止めたのかが不可解で仕方なかった。
 しかし声に出して少年に尋ねる事はおろか未だに身体がいう事をきかない。


「お兄さんはー……あんまりー……おいしそうじゃー……ないからねー……」


 危うく悲鳴染みた声を上げそうになりながらなんとか飲み込んだ男は、暗闇に消えていく小柄な背中をやはりただ、見つめる事しか出来なかった。




 左右の手に“キョウキ”を握った少年は今宵もまた食事を求め自らの手を汚す。


352: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆11/27(金) 21:46:01
結構皆さん病み系好きなんですねw
良かったですww
今回も病んで…るよね?←
※※




【君の眼球抉り出したいくらい素敵(最大級の褒め言葉さ)】




 紫苑は所謂クォーターで、母方の祖母がヨーロッパ系の血を引いていた為に紫苑の瞳は澄んだ空色をしていた。
 二重の大きな空色の瞳は紫苑の自慢で、紫苑の恋人である燈も紫苑の綺麗な瞳が好きだった。もちろん、紫苑自身もだが。


「ほんと、紫苑の目は綺麗だよね」
「でしょう? ボクの自慢だから」


 燈の家のテーブルに向かい合う形でそれぞれ座る紫苑と燈。
 にっこりと、お日様のようにキラキラと輝いて見える笑顔を浮かべた紫苑は本当に嬉しそうで、燈はそんな紫苑に眩しそうに目を細める。
 ふと、燈が紫苑の頬に手を伸ばした。撫でるように紫苑の頬に触れ、柔らかく微笑む。


「燈? どうしたの?」


 首を傾げた紫苑にううん、と燈が紫苑の瞼を親指で軽くなぞった。


「ほんと、綺麗だよね……。このまま指突っ込んで抉ってしまいたいくらい……」


 表情はうっとりと、声はどこか熱を含んだ燈にそう言われた紫苑は、触れられていない方の目をその空色が零れ落ちてしまうんではと思う程に見開いた。しかし相変わらず燈はうっとりとした表情で紫苑の閉じられる瞼を親指の腹で撫でている。
 紫苑はこの指にこのまま力が込められてしまうんでは、と恐怖に駆られた。
 しかし燈が紫苑の頬に触れていた手をスッ、と引く。


「冗談だよ。それくらい素敵だって事。怖がらないで?」


 そう苦笑した燈は普段の、紫苑が良く知るもので紫苑はホッと胸を撫で下ろした。


「びっくりしたじゃん。もうー……」


 照れたように頬を僅かに上気させた紫苑がくすくすと鈴を転がした様な声で笑う。
 そんな、当たり前に自分に対して無防備な紫苑に燈は苦汁を嘗める思いでいた。




 最大級の褒め言葉は
 禁忌的な真実--。


358: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆11/28(土) 17:04:59
だからBL要素なくね?←
ホント、突発的に書いちゃう癖なんとかしないとな…orz
主人公、妄想が激しい子w←
狂ってます。
※※




【脳内殺人】




 --あいつは絞殺。


 人目を引くような美麗な容姿をしているでもなく、秀でた頭脳を持っている訳でもない、どこにでも居るような、極々平凡な青年の安易に人に話せない変わった趣味。それは目についた人間を様々な方法で殺害する事。
 もちろん実際に実行してしまえば刑務所行きだ。


 --あの女は刺殺。


 だから殺すのは自分の頭の中でだけ。
 実際殺人を経験した事の無い青年にはそれだけでも十分な満足感を得られていた。
 休日の午後。特に予定も無く適当に街中をふらふらしていた青年は朝から歩き回っていたお陰で疲労の溜まってきた足を休めようと、たまたま見つけたベンチに腰を下ろした。
 ベンチに深く腰を掛けふと、車道を挟んだ向こう側にある喫茶店に居た一人の人間に青年の視線が固定される。自分とあまり歳の変わらなさそうな男。
 青年はその男を次の標的に選んだ。


 --あの男は……。


 向こうが気付かないのを良い事に、じっと男を見据える青年の頭の中は、すでに視線の先にいる男をどんな風に殺すかで一杯だった。
 青年の目に捕らえられている事など露も知らない男は、大勢の人で賑わう休日の喫茶店のオープンテラスで文庫本を片手に洗礼された優雅な動作でカップを口に運んでいる。


 --車で轢き殺す……。


 暫く思案してから殺し方を決めた青年は僅かに唇の端を吊り上げた。しかし青年は車の免許を持っていない。
 まぁ、そこは青年の妄想だから細いことは気にしない。
 それを見計らったかのように男が席を立った。会計を済ませ、青年の方に向かい歩いてくる。
 青年は身を強張らせたものの、自分の頭の中でだけの事で実際は何の関係も無い事を思い出し、横断歩道を渡ろうとしている男を遠くを見ている振りをして見つめ続けた。


「っ……な、っ!?」


 青年が勢い良くベンチから立ち上がる。と同時に一瞬時が止まってしまったかのように回りがシン……と静まった。
 どこからかの絶叫に近い悲鳴を耳が拾い青年がハッとする。
 目の前の横断歩道の中間辺りに倒れる人間。その回りにはその人間から流れているであろう赤が広がっていった。
 その側には電柱にぶつかり無残にも大破して煙を立ち上ぼらせる車が。
 現状は何も知らない人間でも見ただけですぐに事故が起こったのが分かる程。


「嘘だ、違う……。俺は関係ない……っ」


 そしてその事故にあった人間が自分が先程頭の中で殺害した男だったものだから、青年は酷く狼狽した。
 実際は青年に何の罪も無いのだが、青年の頭は一杯一杯で、あらぬ妄想が勝手に膨らんでいく。


 --逃げないと……っ!


 青年は駆け出した。事故現場から離れようと、人目も憚らずに全力疾走する。
 どれくらい走ったのだろうか。ふと青年の背後から女性のものかと思われる甲高い悲鳴と、誰かを引き止めようとする大声が聞こえた。
 青年が立ち止まり、状況を確認しようと辺りを見回す。そして左を見た瞬間、青年のすぐ目の前には自分に向かってくる車。運転席にいる男の驚愕の表情が脳内にこびりつく。


「っ…… え?」


 世界が暗転した。




 脳内殺人。
 貴方も殺されているかもしれない--。


369: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆11/29(日) 20:03:22
え? 今回も病んでますよ?←
あ、意味不注意報発令です。これだから思い付きってやつは…(●ーωー)=3 ←
次は病んでないのあげたいな…←
最近キャラ名考えるのが辛いです←オイ
聖(ひじり)と希望(のぞむ)です。きぼう、じゃないですよw
※※




【胸を焦がす憎悪(それを愛と君は言う)】




 --強すぎる愛は時として相手や自分自身すら滅ぼす、とか何とか。そんな様な言葉を誰かから聞いた事がある。


 キングサイズのベッドに仰向けに寝ている聖は酸欠になりかけで霞んだ思考の中そんな事を考えていた。
 聖の身体の上には聖の恋人である希望が身体を跨いだ格好で陣取り、その手は聖の細い首をベッドに押さえ付けていた。
 足りなくなった酸素を求めて開いた聖の口。声を出そうとしてもひゅーひゅーと喉が鳴るだけで、聖の顔は徐々に苦しげに歪んでいく。


「苦しい?」


 眦をさげながら首傾げに希望が問う。
 聖は今にも保っている事を放棄してしまいそうな程に薄れた意識の中、なんとか希望の言葉を理解した。当たり前だろ! と喉が張り裂けんばかりの大声で叫んだつもりだったが、聖の喉から発せられたのは低い呻き声。
 力の入らない手で自分の首を絞める希望の手の甲を掻き毟ろうとする。
 そんな聖の姿に希望は唇の端を吊り上げ不気味に笑った。


 --クソが……っ!


 眉間に深い皺を何本も刻みながら声に出せない代わりに心の中で悪態をつく。


「聖ー。俺はね、聖を愛してるんだ。大好きな子の一番イイ顔を見たいって思うのは当たり前の事でしょう?」


 本格的に霞んできた視界と思考。聖はそれでも尚、希望に反論しようともがくが、身体が自由に動かない。
 意識が遠のき、身体から力が抜ける。


 --もう、だめ……だ……。


 聖が暗転していく世界でそう思った瞬間聖の肺に一気に新鮮な酸素が入ってきた。久し振りのそれに聖が盛大に咳き込み、眦には涙が滲む。


「死なれたら困るからね。可愛い聖」
「勝手な、こと、言うな……っ」


 希望の顔が歪に見えるのは生理的な涙で視界が霞んでいるせいではない筈。聖は先程までの事といい、本能的に希望に対して畏怖の情を覚えていたが、おくびにも出さずに気丈にも希望を睨み付けた。
 聖の胸の内で焦げ付くのではと思う程に煮え滾るこれは希望に対する嫌悪と憎悪。


「どうして? 俺は聖を愛してるんだよ?」
「ブッ殺す!」


 聖が希望に飛び掛かる。意外にもあっさりと希望の身体に跨がる事が出来た。
 形勢逆転。それぞれ先程とは真逆の立場に置かれ、聖は自分がされたように希望の首に手をかける。
 聖が希望の首にかけた手に力を込めれば希望は一瞬苦しげな表情を見せた後、口許を歪に吊り上げた。思わず聖が力を緩めてしまう。
 気道への圧迫がなくなり、希望が口を開く。


「嬉しいな。聖にこんなに愛されて……」
「や、やめっ……ぐっ」


 俺を愛してあげなきゃね、と、どこか恍惚とさえした嗜虐的な笑みを顔に張り付けながら聖の細首にかけた指に力を込めた。
 希望の首から聖の手が完全に離れてしまう。
 先程とは違い、自分が優位に立っている筈の体勢での屈辱感。聖はギリッ、と奥歯を噛み締めた。


「俺が憎い? だったら嬉しいんだけど」


 希望の言葉と笑みに聖の表情が苦痛と訝しげが混ざり合った様なものになる。


 --なにを……言ってるんだ……?


 戸惑っている聖の心の内を読んだかのように希望が腹筋を使って上半身を起こす。まるで対面座位のような格好で聖は相変わらず希望によって気道を塞き止められていた。
 そんな聖の耳元に、希望が聖の首を絞めあげたまま湿った唇を寄せ囁く。


「憎悪と愛は紙一重でしょう--」


 希望の囁きに聖は奈落の底に突き落とされたような感覚を覚え、自分の首にかけられた手にぐっ、と力が込められたのを最後に聖は意識を保つ事を無理矢理放棄させられる。
 意識を失う瞬間、希望の唇が何かを紡いだ気がしたが聖には希望が何を言ったのか解らなかった--。




 胸を焦がす憎悪。
 それはきっと愛なんだ--。



370: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆11/30(月) 19:24:17
今回は病んでないですよー!!
こいつらは所謂無自覚バカップルってやつですね、きっと←
※※




【たかが夢。されど夢。】




「…… 最悪」


 空が白み始め、外では小鳥が囀りだした頃。
 敦哉はベッドから裸の半身を起こした状態で眉間に皺を寄せていた。
 隣りではつい数時間前まで熱を分け合っていた男が自分と同じ全裸でシーツにくるまり規則正しい寝息を立てている。どこか満足そう、幸せそうな寝顔がまた、敦哉を苛立たせる要因となった。


「お前ばっかり良い思いしやがって」


 八つ当たりもいい所だが、敦哉が男--慎の鼻を摘む。暫くして呼吸が苦しくなった慎が小さく呻いて目を開けた。眠そうなとろりとした目が敦哉を映し、寝起きで虚ろだったそれに光が宿る。


「どうした……?」


 気怠そうな掠れた声。すぐに敦哉の異変に気付いた慎が重そうな腕を伸ばし敦哉の頬を撫でる。
 敦哉は自分の頬を撫でる優しい手に目を細め、その姿は猫を思わせた。慎がくすりと小さく笑う。


「笑うな。馬鹿」
「はいはい。で……どうしたんだ?」


 慎に再度尋ねられて敦哉は少し思案する様子を見せてから小さく夢……と呟いた。


「夢? 怖い夢でも見たのか?」


 心配しているのが滲みでた慎の声色に敦哉が首を振る。
 思惑が外れた慎は首を傾げた。


「怖いっていうか……その夢のせいで眠かったのに目が冴えた」
「どんな夢?」
「……お前が事故った夢」


 少し躊躇いながら間を置いて答えた敦哉に慎がは? と目を丸くさせる。恋人が夢とはいえ事故にあったのに冷静、というより眠りたいという事まで言った敦哉に慎が自分の耳を疑った。


「十分怖くね? その夢」
「どこが? ただの夢だろ?」


 おずおず尋ねた慎に敦哉は心底不思議そうな表情で首を傾げ、その様に慎はガクリと肩を落としてうなだれてしまう。
 そして相変わらず首を傾げている敦哉の腕を引き、突然の事で成すがままにベッドに倒れた敦哉を慎は自分の腕の中に閉じ込めた。
 素肌同士が密着し、互いの体温が溶け合う様な感覚を覚えさせる。


「ちょ、離せよ……っ」
「眠いんだろ。寝ろ。それとも、疲れる事してから寝るか?」
「なっ……! ふざけんな!」


 慎の言った“疲れる事”の意味を敦哉が即座に理解出来たのは慎の手が敦哉の尻を撫でたから。敦哉は冗談じゃない、と慎の腕の中でもがくが、ガッチリとホールドされているせいで無駄な労力を使っただけだった。


「大体、次は俺がお前を抱く番だろ!? 交替制の事、忘れたとは言わせねぇ!」
「おやすみ」
「こらっ! 慎!」


 自分の分が悪くなった途端、強制的に会話を終了させた慎。だが敦哉を抱く腕は相変わらずで、敦哉は少し身を捩ってから諦めたのか慎の裸の胸板に身を寄せた。




 たかが夢。されど夢。
 あわよくば次こそ良い夢を--。



371: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/01(火) 20:14:32
いくらタイトル思い付かなかったからって最低過ぎる…orz
フ ○ラ描写、今までで一番頑張った気がします!!←
※※




【口内性器】




 眼前にある怒張に凪は口の中に溜まった唾をごくりと嚥下した。
 おずおずと手を伸ばし、どくどくと脈打つそれに触れる。ただでさえ自分以外の男の雄に触れる機会などそうそうある筈もなく、触れた指先に感じた熱さに思わず手を引いてしまった。
 頭上から隆昌の苦笑する声が聞こえ、凪は自分の耳が赤くなるのを感じながら再び目の前のそれに触れる。
 軽く握り込み、初めはゆっくりと手を上下させた。


「熱いし硬い……」


 思わず本音が洩れる。
 手の中のそれはそれまでも十分すぎる程だった硬度を更に増し、頭を擡げた。さもすれば蜜口から豊潤なそれが滴り初め、ぬるついたそれが凪の手を汚す代わりに手をスムーズに動かせる様になる。
 これが自分の所為だと思うと凪の方も堪らなくなった。
 意を決し、隆昌の怒張に尖らせた舌先を伸ばす。無理しなくてもいい、とも言われたが、したいと思った。


「ん……っ……」


 隆昌のだからなのか、不思議と嫌悪感は無い。
 裏筋を下から舐めあげれば雄がぴくりと揺れ、溢れた滴が裏筋を伝った。


「っ…… 銜えられる?」
「うん……」


 官能的に掠れた隆昌の低い声にふらふらと凪が隆々とした雄に顔を近付け口を大きく開ける。まず先端を食み、普段自分がされているのを思い出しながら、舌で蜜を溢れさせる鈴口をつついたり、張り出した部分に舌を絡めた。
 奥まで銜えれば口の中に苦味が広がり、息苦しくなる。飲み込めない唾液が口の端から零れたが、凪は気にせず頭を動かし始めた。


「上手い、よ……っ」
「っ……ん、んっ……」


 凪の髪を隆昌の男らしい骨張った大きな手が撫ぜ、指が髪に絡められる。その気持ちの良さに凪が目を細め、それから嘔吐かない程度に奥まで銜えた。
 快感の色を滲ませた低い声を凪の耳が拾ったのとほぼ同時に頭を撫ぜる手に力が込められる。髪を引っ張られる痛みに眉を寄せながらも凪は奉仕をするのを止めようとはしなかった。


「んん……っ、ふ……」
「っ…… 凪、出すよ……!」
「んぐ!?」


 隆昌が低く呻いたと思えばいきなり頭を押さえられ、息苦しさに眦に涙が滲む。
 喉の奥に熱い飛沫を浴びせられ、吐き出す事も出来ないままドロリの粘着質なそれを数回に分けて嚥下した。


「ぐぅ、……ぅっ……っん」


 口内で隆昌のそれが力を失っていくのが分かる。漸く押さえ付けていた手が退き、凪が咳き込んだ。飲み切れなかったものが口の端から垂れ、染みを作る。


「あぁ……ごめん、凪。つい……」
「ん、大丈夫……。ちょっとびっくりしたけど……気持ち良かった?」


 凪の窺うような視線に隆昌が微苦笑を浮かべ、凪の口の端から零れる己のものを指で拭う。


「すごいヨかったよ。ありがとう」


 そう、前髪を上げられた額に接吻けが落とされて、凪は頬をほんのり染めながら嬉しそうに微笑んだ。




 口内性器。
 自分だけじゃなく相手も悦ばせたい。



372: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/02(水) 18:59:10
前にも心臓がどうの~って書いた気がしますが違うタイプです。
色んな意味で二人共可哀想です←
私の中で相川は杉田さん(銀魂の銀さん、涼宮ハルヒのキョン)ボイス…←だから何
※※




【僕の心臓ごと差し上げます】




「いや、要りません」


 喫茶店でバイトをしていた奏は、お客の一人の訳の分からない申し出を秒殺した。


「どうしてですか!?」


 週末の昼間に三つ揃いの、見るからに上等なものだと判るスーツを着たこの男は、女性客の割合がただでさえ多いこの喫茶店に居るのが不自然過ぎた。それに加え、端正な顔の美丈夫とくれば良い意味でも悪い意味でも人目を引いてしまう。
 ここ数日、ほぼ毎日のようにこの喫茶店に通い詰めていたこの男は、その目を引く容姿のお陰か女性店員の間で良く話が持ち上がっていた。毎日、とは言っても奏のバイトがある日は毎回、という話だ。
 今は奏が他の客に迷惑がかかるからと、特別に店長の許可を貰い従業員専用のロッカー室に居たが、時折他の店員が興味本位で覗きに来る程。
 奏は表には出さずに心の中で小さく息を吐いた。


「それより、えっと……」
「あ。申し遅れました。僕は相川 俊幸と申します。樋山 奏さん」


 店員は胸にネームプレートを掲げているから相川が奏の名前を知っていたのは良いとして。一介の客の名前を知る筈がない奏に相川はスーツの内ポケットから名刺を取り出し、営業さながらに背筋をピンと伸ばし両手で丁寧に差し出した。


「どうも。それで相川さんはお仕事良いんですか? スーツ着てますけど」


 奏の、あからさまに隠すつもりのない訝しげな表情や刺々しい物言いにも相川は気にする様子は見せない。むしろ、奏に名を呼ばれ高揚とさえしていた。
 普段なら自分よりも年上相手にこんな態度をとらない筈の奏だったが、奏には相川はこれくらいでは怒らない、という根拠の無い自信があった。


「奏さんに心配して貰えるなんて感激だなぁ。大丈夫ですよ。今日は休みなんで」


 だったら何故スーツを着ているんだ、と半ば反射的に問い掛けそうになりさすがに失礼だと思った奏は開きかけた唇を一文字に噤む。
 しかし相川はそんな奏の考えを読み取ったのか爽やかな笑みを浮かべた。


「スーツの方がここでは目立つし、奏さんに覚えて貰いやすいでしょう?」


 子供の様に屈託のない笑顔を無防備に見せる相川に奏は一瞬目を奪われたが、すぐにハッとして目を逸す。
 何故だか、先程までは全然気にならなかった自分の心臓の音が今では煩いくらいに高鳴っていた。その原因は間違いなく己の正面に居る男の所為で。奏は劇的な心境の変化に戸惑っていた。


「な、なんで僕になんか。僕は男ですよ」
「性別なんて僕には関係ありません。僕は貴方のひたむきな姿に惹かれてしまったんです」


 切れ長の涼しげな瞳で、まっすぐに見つめられて奏は言葉を詰まらせる。そんな奏の手を相川がとり己の両手で包み込むように握った。


「なので、奏さん。僕の心臓ごと受け取って下さい」




 いや、だから心臓は要りません--。



373: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/03(木) 20:50:45
【膝を貸します】




 連日の徹夜で棗はうつらうつらとしていた。
 棗は現役の高校生で、ほんの数時間前まで大学受験の試験会場に居たのだ。
 試験を終え、漸く張り詰めていた緊張の糸が解けた棗に一番に襲いかかったのは壮絶な眠気。


「出来る限りの事はやった。大丈夫」


 そう自分に言い聞かせ、棗は数日振りの惰眠を貪ろうと自宅のドアを開けて真直ぐ二階にある自室へと急いだ。


「--うん?」


 ふと、二階への階段を上ろうとした棗はリビングの方に人の気配を感じて足を止める。
 この日は両親は共に外出していて、今の時間この家には今帰宅した棗以外に誰か居る筈が無いのだ。
 初めは気のせいだとも思った棗だったがもしもの事があったら、と自分の携帯を握り締め、足音を立てない様にリビングへと向かった。


「あ。棗お帰りー!」


 嬉嬉としているのを隠そうともせず、リビングのソファに腰掛けながら棗に向かって手を振るのは、棗の一つ上の幼馴染み郁人。
 棗はあからさまに不快だと言わんばかりに眉を顰めたが郁人はそんな棗の様子も気にする素振りも見せず、こっちにおいで、と座っているソファの空いているスペースを叩いた。


「なんでお前が此所に居るの? どうやって入った? 警察呼ぶぞ?」
「一気に聞かないでよー。えっと、棗が今日試験だって聞いたからさ。鍵はおばさんに借りた。だから警察はやめて」


 郁人の話を聞いている間も訝しげな表情の棗に郁人は困った様に微苦笑を洩らす。


「俺これから寝るから。帰れ。鍵は閉めたらポストの中入れといて」
「えぇっ!? せっかく心配して来たのに! 棗酷い!」


 郁人の大声はただでさえ寝不足な頭に響く。堪らず棗が眉間を押さえると、郁人が大丈夫? と棗に近寄った。


「煩い。頭に響くだろ。寝不足なんだよ」
「あぁ、ごめんごめん。ちょっと失礼」
「え? うあっ、!?」


 身体が浮く感覚に棗が素っ頓狂な声をあげる。慌ててすぐ側にあった郁人の服にしがみつく。
 暫く間を置いて、今の自分の状態を認識した棗は一瞬固まってからバタバタと足を動かして暴れだした。


「ふざけんな! 降ろせ!」
「暴れないの。落ちたら危ないでしょ」
「だったら降ろせ! お姫様抱っことか有り得ねぇ! 俺は男だ!」
「はいはい。そーだねー」


 人には大声を出すなと言っておきながら怒鳴り声をあげる棗を軽い口調で窘め、郁人は男一人抱き上げているとは思えない程しっかりとした足取りで、先程座っていたソファまで歩く。


「眠いんでしょう? 寝て良いよ」


 所謂棗に膝枕をする形でソファに腰掛けた郁人。自分の膝に無理矢理乗せた棗の頭を撫でる。
 棗はといえば、初めこそは抵抗していたものの次第に眠気に耐えられなくなっていく。正直男の膝なんて硬くて仕方なかったが、頭を撫でる郁人の優しげな手に棗は眠気を余計に誘われた。


「帰る時、起こせよ……」
「分かった。おやすみ、棗」


 郁人の声に小さくおやすみ、と返して棗が身体から力を抜く。
 規則正しい寝息が聞こえてきても相変わらず棗の頭を撫でるのをやめない郁人は、棗の無防備な寝顔を眺めながら小さく笑った。


「今ならキスしても分からないよね? 棗が大学受かってますように--」


 そうして額に落とされたキスと、キスした後の郁人の自嘲的な笑みも、棗は知る由も無かった。




 膝を貸します。
 少し硬いだろうけど我慢してね。








※※
無性に膝枕が書きたくなった結果です←
ホントは攻めがもっとアホっぽくなる予定だったのに…(´・ω・`)あれぇ?←



374: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/03(木) 21:21:56
そういえば今日でピコ森デビュー(笑)2ヵ月でした!!
いやいや本当にお世話になってます。これからもどうかよろしくお願いしますm(_ _)m
久し振りにお兄ちゃんズですw
あぁ…思いきり恭悟を啼かせたい←オイ
※※




【朝日と腕枕】




 昨夜も所謂“夜の営み”に精を出して、クタクタになりながらオレは半ば意識を飛ばす様な感じで眠りについた。
 そして今、暖かな朝日を感じて目を覚ませば、すぐ目の前には昨夜遅くまで熱を分け合っていた張本人のドアップが。
 二人共生まれたままの姿で、身体はきちんと綺麗にされている。しかもどうやらオレは腕枕をして貰っていたようだ。
 長時間なんて腕痺れてるんじゃないか?


「龍?」


 試しに小さく呼び掛けてみる。
 寝起きがあまり宜しくないこいつだ。これくらいじゃ起きないのは分かっている。


「ンッ……」


 もう一度呼び掛けようとすれば龍が小さく呻く。眉間に皺が寄って、少し身動いだかと思えば--


「ぅ、あ……!?」


 抱き寄せられた。


「ン……恭、悟……」
「っ!?」


 普段の地声よりも更に低く、加えて掠れた艶のある声。まるで“コト”に及んでいる時のそれの様なその声は、オレの腰を的確に痺れさせた。
 ただでさえ素肌同士が密着しているのにこんな声で、しかも名前を呼ばれたらそんな気力は残っていない筈なのに変な期待をしてしまう。


「しかも寝言……」


 恥ずかし過ぎる。
 寝言で名前を呼ぶなんて、一体こいつはどんな夢を見ているんだ。


「龍? どんな夢を見てるんだ?」


 答えが返ってこないのを承知の上で尋ねてみる。もちろん龍からの答えは無い。
 とりあえずせっかくの休日なんだから、オレは二度寝をする事にした。




 もう暫く腕枕、よろしくな?

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最終更新:2010年05月20日 18:28
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