378: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/04(金) 20:25:21
まさかこんなに長くなるとは…
ベタなネタですw
※※
【ひとりになるくらいなら貴方といた方がマシ】
「ここって出るらしいぜ?」
同じ大学の友人五人と小旅行にやって来ていた柚希は、友人の一人の言葉に見ている方が心配してしまう程に顔を真っ青にさせた。
出るって何が? なんて事は怖くて聞けない。
ここは柚希を含めた六人が泊まる事になった旅館の大部屋。
夕食を終わらせてから、この旅館の目玉である大浴場にみんなで行こうという話になった。そして、その大浴場を満喫してから部屋に帰ってきた所で柚希はこの話を聞かされたのだ。
「な、なんで今更そんな事言うんだよ!」
幽霊やそういう類のものが苦手な柚希は真っ青になりながら必死な表情で自分に情報を与えた友人に掴み掛かる。
「だって一応教えておこうかな、ってさ。これから俺達肝試し行ってくるし」
「えぇっ!? オレ聞いてないぞ!」
「だから今言ってるんだよ」
柚希に激しく揺さぶられて真っ青になりかけている友人の代わりに他の友人が答えた。
柚希は揺さぶっていた友人を解放して、ついには頭を抱えてしまう。友人達は柚希が苦手なのを知っていて今まで言わないでいたのでそれぞれ苦笑を洩らした。
「やだやだ! オレ絶対行かない!」
「そう言うと思った。だから柚希待っててよ。一人で」
「ひ、とり、で……?」
柚希の身体から血の気が引く。
なにか出るかもしれないのに、そんな所に一人で居なくてはいけないなんて柚希には耐えられなかった。
「で、でも今風呂から帰って来たんだぞ? また外に出るのか?」
どうにかして友人を引き止めたい柚希はそれっぽい事を言って、縋るような視線を友人達に向ける。
恐怖から潤んだ大きな瞳は何かの小動物を思わせたが、友人達はやはり苦笑を洩らすだけだった。
「……だったら俺残ろうか」
そんな中、柚希にとっては神の声にも等しいそれに柚希が声の方を振り返る。当然喜ぶだろうと思った残りの友人達の予想は次の柚希の一言に見事裏切られた。
「お前なんか残んなくていい! むしろお化けに憑かれちまえ!」
先程までの殊勝な様子とは打って変わって目尻を吊り上げて叫んだ柚希。そんな柚希と、柚希に言われた本人以外の友人四人は揃って目を丸くさせた。
「おいおい柚希。どうしたんだよ。せっかく室町が残ってくれるって言ってんのに」
「柚希、室町にベッタリなくせに」
「喧嘩でもしてんの?」
「え、痴話喧嘩? 丁度良いから仲直りしちゃえば?」
面白がるように好き勝手言う友人達に柚希は真っ青だった顔を今度は真っ赤にさせる。
違う! と思わず叫べば、なら良いじゃないか、と友人四人は柚希と室町の二人を残してさっさと部屋を出て行ってしまった。
「人でなしー!」
そう言うものの、四人を追いかけることはしない。追いかけて行った先で怖い思いをしたくないからだ。
一通り柚希は四人に対しての暴言を吐いてから、ハタと自分とこの部屋に残っている男の存在を思い出す。
「ゆ、ゆゆ、幸哉! 変な事すんなよ!」
口調は強いものだったが動揺しているのが丸判りの柚希に室町は顔には出さずに苦笑した。
男にしては線が細く身長は百七十にギリギリ届くかどうか。顔も比較的可愛らしい部類に入る柚希と、それとは対称に百八十を優に超える長身。服の上からも見て取れる厚い胸板に精悍な顔つきの室町は、大学内でも凸凹コンビとして有名だった。
「変な事?」
回りからは柚希の方が室町にくっついている様に見えているらしいが、実際は室町の方が柚希を溺愛している。
「こ、この間みたいな事だ!」
今の柚希は言うなれば毛を逆立てた猫の様だった。
胡座をかいている室町に対して完全に立ち上がっている柚希。風呂上がりに着た旅館の浴衣の裾からは大きく開かれた柚希の生足が覗いている。
「あぁ、俺がお前キスした事か?」
「そうだ! お前がオレにキ、キ、キ--、ん? どこ見てるんだ?」
今思い出したと言わんばかりの、柚希にすれば不本意極まりない反応の室町。再度怒鳴ろうとしてふと、柚希が室町の視線が他に向いている事に気付いた。
柚希が室町の視線を辿る。そして行き着いたのは露になっていた自分の太腿。
「こんっの、変態!」
ゴンッ、と重く鈍い音がしたかと思えば浴衣の裾を手で合わせ握り拳を作っている柚希と、呻き声を洩らしながら頭を押さえる室町が。
さすがに我慢ならない柚希は赤くなってしまった拳を再び振り上げる。が、それは室町を殴り付ける前に呆気なく室町によって掴み止められてしまった。
「離せバカ! --っ!?」
しかもそのまま腕を引かれ、室町の胸に倒れ込んでしまう始末。柚希はワンテンポ遅れて状況を理解し、室町の腕の中から逃れようと室町の胸板に腕を突っ張った。
しかし体格の差もさる事ながら、柚希は力でも室町には到底及ばない。しっかりっ抱きすくめられてしまう。
「や、だ……っ。幸哉……!」
「大人しくしろ。それに、いい加減返事をしてくれないなら俺も強行手段にでる」
“返事”と言われ柚希は室町の腕の中で身を固くさせた。数日程前に、室町に好きだと告白され熱烈なキスを受けた事がまざまざと思い出された。
「や、だって、オレもお前も男だし……」
「お前は知らないみたいだけどな、あの四人それぞれ付き合ってるぞ」
「えぇっ!? 嘘だっ!」
「本当だ。今頃だって暗くて人気がないのを良い事に楽しんでるんじゃないか?」
開いた口が塞がらないとはこの事だ、と柚希は室町を見つめながら思っていた。あまりに衝撃的すぎて頭がついていかない。
友人達がゲイだったのもショックだったが、室町が知っていたのに自分だけが知らなかったのが柚希にとってはかなりショックだった。そりゃ初めは戸惑ったかも知れないが大切な友人達。応援してやろうと思う。
「な? だから俺達もさ--」
室町がポカンとした表情で柚希が固まっているのを良い事に顔を近付けていく。もう少しで唇同士が触れそうになった所で漸く柚希が我を取り戻した。ハッとして室町を渾身の力で押し返す。
「だ、だからってこれとは関係ないだろ! 本当はお前に四人の後を追って出て行って欲しいけどそーゆー事情があるなら仕方ない。ここに居ていいぞ! ただし、そこから動くなよ!」
「別に、今からでも外行って良いけど?」
どうにか室町の腕の中から逃れられた柚希。偉そうに踏ん反り返り言うが、室町が柚希を残して外へと出ようとして、思わず抱き付いて引き止めてしまった。
「こ、こんな所でひとりになるくらいならお前といた方がマシだ!」
ひとりになるくらいなら貴方といた方がマシ。
お願いなんで一緒に居て下さいっ!
379: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/05(土) 16:21:26
とりあえず乳首責め←
※※
【二つの甘味】
服を着込んだままの状態でベッドに放られた真琴は、背後から抱きすくめられる形で、朔弥に上から三つか四つ程ボタンが外されたシャツの中に手を入れられていた。
「ちょっ、と……っ!」
真琴が己の身体をまさぐる腕を退かせようと両手で掴み離そうとするが朔弥の方が力が強く、びくともしない。
その間にも、朔弥の節の目立つ指が真琴の、男にしては肌理の細かい肌をまるで愛撫でもするかの様に滑る。
「っ……ん、ん--」
弱い刺激に小刻みに震える肩と時折洩れ聞こえる噛み殺した様な喘ぎに朔弥が楽しそうな笑みを口許に浮かべた。
控え目ながらも自己主張をしていた胸の尖りを朔弥の指が掠める。
「ふっ……く……、っん!?」
「なんだよ。もう乳首勃たせてるのか?」
身体を巡った甘い痺れに一際大きく真琴の肩が揺れた。
深みのある官能的な朔弥の声が真琴の耳朶をくすぐる。朔弥の指に、しこった乳嘴を胸の上で転がすように嬲られ、たまに思い出したように指で摘まれ引っ張られるのが真琴には堪らなかった。
背中が反り、朔弥が眼前に曝された真琴の白い首に吸い付く。
「あぁっ……! や、あ……っ」
ツキンとした痛みに真琴が眉を顰める。朔弥が吸い付いた部分には、赤く艶めかしい、朔弥の所有痕が刻まれていた。
「やあ、ぁ……離し、てっ……」
朔弥の拘束から逃れようと頭では思っていても身体の方が、朔弥から与えられる甘美な快楽を求めてしまう。無意識に腰を揺らせば背後で朔弥が笑う気配がした。
「離してとか言う割には、乳首だけでこんなに感じて。ここだけでイケるんじゃないのか?」
「や、むり……できな……っ」
真琴がいやいやをするように頭を振るが朔弥は胸の尖りを苛める手を止めようとはしない。
今まで朔弥の腕を掴んでいた真琴の手からも力が抜け、あまつさえ両足の狭間で張り詰め濡れている果実に伸びてしまう。
僅かに残っていた理性すらもかなぐり捨てて、真琴は己の解放を求めた。
その様子に朔弥も気付いたが、敢えて何も言わず胸の果実の方を嬲り続ける。
「ぁ、ぁあっ……ふ、ぅん」
震える指先で時間を掛けて漸くベルト抜き取りファスナーを下ろす。性急な動きで下着の中に手を入れた。
「あ……あっ、あ……」
「俺に乳首弄られて、自分で下も扱いてるのか?」
「ひ、っ……あ、あぁ……気持ち、い」
口の端から涎を垂れ流しながら自分の身体に巡る享楽に真琴は我を忘れて夢中になる。もはや自分がどんな事を口走ってしまっているのかすら分からなくなっていた。
「ヤらしいな? くちゅくちゅいってる」
言いながら朔弥が真琴のシャツの残りのボタンに指を掛けるが、ついには忌々しそうにシャツを左右に力づくで開く。ブチブチと糸が切れる音がして、留まっていたボタンが弾け飛んだ。
しかし真琴はそんな事を気にする余裕もなく、一心不乱に濡れそぼち、ぐずぐすに熟れる果実を扱き、更にその下の双果の方も空いていた手で揉み込む。
「いいっ……あ、あぁ……イク、っも」
「イク?」
ガクガクと真琴が頷き、雄を扱いていた手の早さを上げた。
朔弥の手は乳嘴から一時的に離れ、その付近の乳暈を柔く揉んでいる。
「乳首も真っ赤だ。引っ張ってやるよ」
「ひっ、! あ、あっ……」
ふと熱を含んだ声で囁かれたと思えば、両方の乳嘴を、取れてしまうんではと思ってしまう程にキツく引っ張られた。皮膚が引きつる痛みと、それを上回る快感に真琴は身体を強張らせ極みに達した。熟れた果実から潤沢の果汁を放出する。
はぁはぁ、と肩で息をして、徐々に冷めていく思考で己の放埒さを目の前にして真琴が消え入りたくなった。
「濃いな? 溜まってたのか?」
「も、なにも……言わないで……っ」
真琴の耳殻にぬるりとした感触。朔弥の濡れた舌が耳の形を確かめるように這う。
「いっそ、乳首を触らないとイケないようにするか?」
二つの甘味。
それは胸の上で男を誘う砂糖菓子。
384: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/06(日) 18:31:28
【君の知らない誓いのキス】
大人の男二人が寝てもまだ余裕のある我が家のベッドの上には今、あられもない姿の恭悟が一人寝息をたてている。
それはといえば、世間一般的に “情事”なんて呼ばれるソレで恭悟に無理をさせてしまったから。
ただでさえ受け入れる側に負担が大きい行為なのにも拘らずまたやってしまった。
「ごめんな……」
聞こえていないのを判っている上でシーツ一枚でベッドに寝る恭悟に謝罪。
少し皺になっているシーツに艶やかに散る長い髪を梳いてやれば僅かにだが眠っている筈の恭悟の口許が綻んだ。無防備そのものの柔らかい表情はいとも簡単に俺の理性をか細くする。
けどさすがにこれ以上は無理をさせられない。
腰の辺りでだまになってるシーツをしっかり肩まで引き上げてかけてやる。それから自分も隣りに入って、恭悟の頭を自分の腕に乗せた。
「恭悟。愛してるぞ」
「ん……」
サラサラの髪を梳く様に撫でれば恭悟が小さく呻いて俺の手に擦り寄ってくる。そんな様子は猫を思い起こさせて、勝手に頬が緩んだ。
俺は今きっと、見てられない顔をしているなと他人事の様に思った。
「何があっても俺が守ってやるから--」
薄く開く唇に触れるだけの接吻けを落とす。
恭悟が目を覚ます様子のない事に安堵して俺は恭悟の隣りで深い眠りについた。
これは俺自身への戒めだから、
オマエは知らなくて良い誓いのキス。
※※
だれ^p^w
龍ですよ龍←
これでもあの龍さんですよ←
龍でもシリアスにいけるんです←
ちなみに
374
の前の夜だったりします。
とりあえず書いてて恥ずかしかったです←
387: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/07(月) 19:44:49
【こいつらの場合】
ただいま、龍、爽、涼、の兄弟三人の目の前にはなんやかんやで丸い形の缶に詰められたとある有名店の紅茶菓子が置いてあった。
綺麗な柄の缶の蓋を開けてみればそこには様々な種類のクッキーが。甘い物があまり得意ではない長男と三男は顔をしかめたものの、甘い物が好きな次男は目を輝かせた。
「うっわ! 美味しそう!」
「爽。コーヒー淹れてこい」
小さな子供の様にキラキラとした表情でクッキーを見つめていた爽に龍がさも当たり前の様に言い放ち、涼がついでに俺も、と便乗。今度は爽が顔をしかめたが、上と下の二人は見て見ぬ振り。
はぁー、と長い溜め息を吐いた爽が席から立ち上がる。
「コーヒーも良いけど、クッキーにはやっぱり紅茶でしょ?」
ねぇ? と首傾げに爽が言えば、あからさまに面倒臭そうな表情が向けられた。
「じゃあ、ストレート。砂糖も何も入れんな」
「俺、レモンな。砂糖は要らない」
「……で、俺が砂糖たっぷりのミルク。うわぁ、見事に分かれたよ」
口では大変だ、などと言いつつも素直に台所に向かっていった爽の背中を眺めながら、龍と涼は揃って同じ事を考えていた。
「アイツ、将来絶対相手の尻に敷かれる」
「だな。……つか、兄貴。これイケるぞ」
「マジ? ……ン。ホントだな」
好き勝手言ったかと思えばそれっきり。しかも爽が帰ってくる前にクッキーを食べ始めてしまう始末。
爽が帰ってきた頃には大きめの缶の三分の一が空になってしまっていた。
「ちょっ、えぇっ!?」
帰ってきた途端、明らかに食べられた形跡のあるクッキーの缶の中を覗いて奇声を発した爽。危うく手に持っていた三人分のティーカップとソーサーが乗ったトレーを落としそうになる。
それでもなんとか持ち直した爽は紅茶をそれぞれの前に並べてから文句を言い始めた。
「おかしくない!? 待っててくれたって良いじゃん!」
「別に待っててくれ、なんて言われた覚えねぇし」
「…… あ。これも美味い」
「お。どれだよ」
ベタに頬を膨らませて怒る爽に、偉そうに座っていた椅子に踏ん反り返る龍と、あからさまに無視をしてクッキーを摘む涼。
爽が怒った所で二人には痛くも痒くも無い。
それにこのままでは自分の分まで食べられてしまうと爽がさっさと自分の席に着いた。
「……オイ爽。なんだコレ」
「え? だって兄貴はストレートでしょ?」
カップに一口つけたかと思えばすぐさま渋い顔をした龍に爽が口の中にあったものを咀嚼しながら答える。そんな爽に「飲み込んでから喋れ」と涼までもが不愉快そうに眉を顰めた。
「薄くねぇか? コレ」
「兄貴。恭悟の淹れたモンと比べんなよ。これでも爽にしては上出来だ」
「悪かったね。紅茶の一つもまともに淹れられなくて」
本格的に拗ね始める爽だが、龍と涼は相変わらずそれぞれ紅茶の香りを確かめたりクッキーを摘んだりと、好き勝手やっている。
正直、そんな兄弟達に爽は泣きそうになったが、クッキーをザクッと噛み砕く事でぐっと耐えた。そのせいなのか爽の正面のテーブルにはボロボロと屑が零れている。
口許にももちろんクッキーの残骸が。
そして気付けば、クッキー缶の中にはチョコレート味のクッキーが残り一枚に。
しかも同じタイミングでその一枚に三人の手が伸びた。
部屋に微妙な空気が流れる。
「…… オマエら長男を敬え」
「兄貴は弟を可愛がってよ」
「大人気無いよな、二人共」
更に微妙な。加えて重苦しい空気が。
互いが互いを視線で牽制しあいながら、目の前の一枚を自分が手に入れる事を考えた。
「大体、この中で俺が一番食べた量少ないんだから譲ってくれたって良いじゃん!」
「自業自得だろ。つか、涼も大人気無いとか言って爽とは双子--」
ついには言い争いの様な事も始めてしまった龍と爽。不意に、涼の方を向いた龍が言葉を途切れさせる。
気付けばいつの間にか残り一枚だったクッキーが無くなっていて、明らかに何かを咀嚼している涼の顔。
涼が口の中の物を嚥下したのに合わせて喉仏が上下した。
「…… 末っ子は可愛がれよ。兄貴達」
こいつらの場合。
末っ子が一枚上手。
※※
龍+双子の兄弟の話でしたw
そういえば名字出て来てませんが“速水”です。え? 理由? 語呂が良いでしょ?←
この兄弟は末っ子が影の実力者だったり←
とりあえず爽が一番立場弱いです。だって爽だもの←
次回は恭悟と恭介の“雅”(って名字なんです)の兄弟Ver.を上げたいと思います(笑)←
ではでは、ここまで読んで下さってありがとうございました♪
388: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/08(火) 20:49:11
【この子らの場合】
「兄さん。これどうしたの?」
久し振りに実家に帰ってきた大好きな兄にベッタリ引っ付いていた恭介は、その兄が帰ってきた時に持っていた紙袋の中身に首を傾げた。
「あぁ、お土産だって貰ったんだよ」
「仕事関係の人? これって結構高いやつだよね?」
有名な高級店のロゴの入ったそれに“お土産”という事はこれと同じものを他の人にも配ったりしたのだろうか、と首を傾げた恭介。なんとなく嫌な予感がした恭介はそれとなく聞いてみる。
「顔見知り程度なんだけどね。くれる、って言うから貰った」
「……これくれたの男の人?」
「そうだけど?」
どうして恭介がこんな質問をするのか判らない恭悟は首を傾げながらも、お土産の中身がクッキーだった事もあって台所の方へと二人分の飲み物を淹れに行った。
そんな兄の背中を見つめながら恭介は自分の嫌な予感が当たっていた事に小さく息を吐いた。
どこまでも龍の独裁政治に従順--ただ怖くて逆らえない--な恭介。
後で自分の幼馴染みでもあり、兄の恋人でもある龍に連絡しなくては、と心に決めていた。
そして二人分のティーカップとソーサーが乗ったトレーを持って戻ってきた恭悟が見たのは、クッキー缶の蓋を開けた状態で中身を凝視する弟の姿。
思わず恭悟が微苦笑を洩らす。
「先に食べても良かったのに」
「やだよ! 元々は兄さんが貰ったんだし、それに兄さんの淹れた紅茶と食べた方が美味しい!」
力説する恭介にありがとう、と柔らかく微笑んだ恭悟がティーカップの乗ったソーサーを並べた。
フルーツ系の爽やかな香りを肺一杯に吸い込んで、自分と良く似た顔を綻ばせた弟に恭悟もまた笑みを零し二人で笑い合う。
「ティータイムにしようか」
「あ……」
歓談をしながらクッキーを摘んだり紅茶に口を付けていた二人の声が不意に重なった。
最後の一枚を残したクッキー缶を覆うように重なった自分達の手に、それまでの談笑も止み、これまた二人同時に手を引いた時には顔を見合わせてぷっ、と噴き出してしまう。
「恭介が食べな?」
「兄さんが食べなよ」
再び辺りに笑い声が響く。
ふと恭悟が最後の一枚を手に取り、それを真ん中で半分に割った。そして割った半分を弟に差し出す。
「半分こしようか?」
「なんか小さい頃に戻ったみたいだね」
この子らの場合。
ほのぼのと兄弟二人で破顔。
※※
こっちの兄弟の方が書いてて和んだのは言うまでもありませんねw←
もう皆様判ってるかと思いますが、この二人は重度のブラ○ンです←
速水さん家とは真逆ですね(笑)
追記
387に書き忘れましたが、爽は料理等の家事が全く出来ない子です。紅茶だって後から台所に行ったらめちゃくちゃになってます←
じゃあなんで行かせたのか? 二人共自分でするのが面倒だったからです←
396: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/09(水) 22:07:47
【探るような動きの指】
自分の一番恥ずかしい場所から洩れ聞こえる濡れた音に陸は林檎の様に真っ赤な顔を振る。
本当は両腕で隠してしまいたかったが、生憎と両腕は頭上で一纏めに括られて動かせないようにされていた。
「陸の中熱いな? それにくちゅくちゅ音がする」
「いうな、ぁ……っ」
揶揄するようにそう言われ、陸は裕人の視線から逃れようと顔を逸らす。一緒に足も閉じようとしたが、裕人が間に陣取っている為に閉じる事が出来ない。
裕人の眼前には陸の全てが曝されている状態だ。
「や、あ……みな、いで……」
陸の果実はすでに熟れ、豊潤な果汁を零し陰毛や腹を濡らしていた。その付け根にある重そうな双果も引きつり、中に溜まる種を吐き出すのを今か今かと待ちわびている。
「見ないと出来ないから我慢しろよ」
苦笑する裕人の指は陸の内壁を探るように蠢く。
陸の負担を出来る限り減らそうと配慮して塗り込められている潤滑油のお陰で、あるのは多少の違和感ともどかしい快感。
イケるにイケない快感に、陸は悩ましげな表情。
「陸。腰揺れてる」
そう裕人に揶揄するように言われ、陸は唸るような声を洩らす。
不意に、裕人の指が陸のもっとも感じる部分に触れた。
「あっ……!」
途端に強制的に射精を促される様な感覚に襲われる。
シーツを握り締め、頭を振って激しすぎる快感をやり過ごそうとするが、裕人の指は今までの探るような動きが嘘みたいに陸の感じる部分ばかりを苛めた。
「あ、あっ……や、ああっ」
きゅうきゅうと裕人の指を締め付ける陸の内壁は火傷しそうな程に熱く、裕人はこの中に己のを挿入るのを想像してゴクリと喉を鳴らす。
中に入った指はそのままに更に指を足せば、陸のそこは容易く受け入れた。
「あっ、ひあ…… あ、あ」
中の裕人の指がぐるん、と陸の内壁を擦りながら一周する。
「あぁっ! あ、や、あぁ……あ」
「陸のもうイキそうだな。イキたい?」
まだ後ろの刺激では極める事が出来ないのを知っている裕人は意地悪く聞いた。
腰の奥で滾り、燻る熱を持て余していた陸は間髪を入れず裕人の言葉に頷く。早くこの熱を、狂おしい程の欲望を放出してしまいたかった。
すぐさま頷いた陸に裕人は分かった、と一言告げてから陸の快楽の塊を指で弄び、先程から絶えず果汁を溢れさせていた果実へも手を伸ばす。
溢れて止まらない潤沢の果汁を指に絡め先程から解放を望んでいたそれを、果汁を絞り出すかのように扱きだした。
「あっ、あっ、ああ……あ、ああっ」
巧みに快楽のツボを二点同時に突いてくる裕人に陸は早くも陥落する。
爪先がピンと反り、足の指が開ききる。甲高い嬌声を辺りに響かせ陸は灼熱の種を迸らせた。
探るような動きの指。
狭隘な道を押し広げ進む。
397: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/10(木) 20:13:58
195の龍目線です。
もっと前に上げれば良かったσ(^◇^;)
※※
【歩道側、少し不服気の君】
休日に恭悟と買い物に出て来た。
別にどこに行きたい、って言うのは二人共無くて適当に色々な場所を回る。
そして今、次の店へと歩いてるんだが、なんでか恭悟の機嫌が悪い。
「どうした? そんないかにも不服だ、って言わんばかりの顔して」
聞いた途端余計に恭悟の機嫌が悪くなった気がする。
端正な眉を寄せて何か思案してる様だった。
「別に。そんな顔してるつもりなんてないけど?」
嘘吐け。
そんなあからさまにソッポ向きやがって隠す気すら無いだろソレ。
第一恋人で幼馴染みの俺が判らない訳無いんだよ。
「嘘吐くなよ。『なんなんだこいつは』って顔してるぞ?」
因みに今は『なんで判るんだ』って顔してる。
「俺なんかしたか?」
「何でもない。少し気になっただけだ」
「何が?」
歩く歩調はそのままに会話を続ける。でもここまで来たら誤魔化そうなんてさせない。
さすがと言うべきか、恭悟もそれを判ってる様子だ。
「どっかの誰かはいつも車道側を歩くな、ってな」
「あぁ、そんな事か。言っとくけど意識してんのはオマエだけだぞ? てか、もう癖になってる」
「は?」
なんて言うか今更だな。
そんな滅多な事は無いだろうけど、少しでも危なくない方を歩かせようと俺が車道側を歩く様にしてたら、それがいつの間にか癖になってて、今じゃ当たり前になってる。
そう説明すれば恭悟がなんだか微妙な顔をした。
「そうか……」
「ン。やっぱそーゆーモンだろ。ソイツが大事な奴なら尚更」
恭悟の指先に一瞬だけ触れる。
傍から見れば偶然ぶつかった様にも見えるけど俺達にはそれだけで十分だ。
しっかり伝わったのか隣りで恭悟が小さく笑う気配がして、俺も笑う。
それから気が付けば辺りは暗くなってて恭悟と二人で家への帰路を歩く。
俺達以外には人の気配も無い。
ふと、隣りを歩く恭悟の手が俺の手に当たったと思ったら手を繋がれた。
「恭悟?」
「今日だけな。今までのご褒美だ」
普段なら絶対有り得ないだけに少し気恥ずかしそうなその声。きっと顔赤くしてんだろうな、なんて思いながら繋がれた手を握り返した。
取り敢えずこの癖は直さない方向で。
404: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/11(金) 19:48:59
400のお礼です(*^_^*)
少しでも楽しんで頂ければ幸いですw
赤頭巾パロ第二弾!! 今回は赤頭巾が攻めですww
※※
むかしむかし、あるところに赤頭巾ちゃんという、名前の通りいつも赤い頭巾を被っていたそれはそれは可愛いらしい女の子が居ました。
……間違えました。
赤頭巾という、名前の通りいつも何やら茶色や黒色に近い赤で染まった頭巾を被っていたそれはそれは凛々しい青年が居ました。
【お花の代わりに猟銃を】
人里離れた森の中。そこでも、普通の人間ならば知らない様な入り組んだ場所に狼は居ました。物陰に身を潜め息を殺しながら目的の人物がやって来るのを待って居るようです。
「遅いですね……そろそろ来ても良い頃なのですが……」
待っても待ってもやって来る気配のない目的の人物に狼が首を傾げます。
狼は野蛮と言われている狼の中でも珍しく比較的紳士的でした。狼に紳士も何もないのでしょうが、それでも他の狼に比べると利口ではありました。
「誰かお探しですか?」
「えぇ。もうすぐ来る筈ですので、申し訳ありませんが静かにして下さい」
背後から声をかけられ、普段からの癖で丁寧に応対してからはたと気付きます。
声からして自分の背後に誰かが居るのは間違いありません。しかも狼の自分の背後に気付かれずに立つだなんて余程の手練れの可能性があり、狼が恐る恐る背後を振り返ります。するとそこには、茶色や黒に近い色の赤い頭巾を被った青年が居ました。
狼がその姿に瞠目するのと同時に狼の額に何か硬いものが当てられ、至近距離で焦点が合わない中でもそれが猟銃である事が自分を見下ろす青年の手元の引き金で判りました。
狼は思いました。これは殺される、と。
しかし青年は引き金をすぐに引く事はありませんでした。
「狼さん。誰かお探しですか?」
先程と同じ質問を繰り返したのです。狼は思案した挙げ句、額に擦り付けられた猟銃の銃口を動かされ慌てて早口に青年に答えます。
「あ、赤頭巾を探していますっ」
「そうですか。で、俺に何か用ですか?」
「は、?」
狼に向かってにこやかに微笑んだ青年。
狼は一瞬、目の前の青年に言われた言葉が理解出来ませんでしたが、さすがに利口と言われるだけにすぐに状況を理解しました。
一気に青ざめた顔で目の前の青年、もとい、赤頭巾らしき青年を凝視します。
「あ……赤頭巾、ですか?」
青年が頷きます。狼は心の中で話が違う事に憤りを通り越して呆然としました。
ついには自分を赤頭巾だと言う青年は、笑みを絶さないまま未だ呆然とする狼の首根っこを掴み引き摺りだしました。漸く我に返った狼が抵抗を試みますが、赤頭巾がそんな事を許す筈がありません。
結局狼は赤頭巾にずるずる引き摺られ、当初自分が赤頭巾を連れてくる筈であったお花畑に連れて来られてしまいました。
「は、離して下さい!」
「「離せ」なんて言われて「はい、そうですか」って離すとでも思ってんのか?」
赤頭巾の口調が先程の丁寧なものから一変しています。その口調にもまた、狼は呆然としてしまいました。
そしてお花畑の中心辺りに来たところで不意に赤頭巾が足を止めました。
「狼さん。もし逃げようなんて思ったら容赦なくその両足打ち抜くからな?」
その時狼は見たのです。赤頭巾の背後に闇よりも深い“黒”を。それは狼を本能的に恐れ慄かせました。
狼の身体が、寒い訳でも無いのに震えだし、歯同士がぶつかりガチガチと音を鳴らします。
赤頭巾の言葉は決して冗談などで無いのは見るからに明らかで、狼は「判ったから殺さないでくれ」と言わんばかりに何度も頷きました。
「逆らいさえしなきゃ殺しはしない。狼さん、俺の好みだし」
「は、い? ちょ……え?」
気付けば狼の目の前には、今の狼にとっては嫌味にしかならない程に澄んだ青空をバックにした赤頭巾の顔がありました。
そして狼の後ろには良い香りを漂わせる色とりどりの草花が。漸く狼が、自分が赤頭巾に押し倒された事に気付きます。
赤頭巾の名前には似合わない程に男らしい大きな手が狼の身体を這い、狼の抵抗も虚しく狼の身に着けているモノを全て脱がし去ってしまいました。
そして露にされた狼の素肌に赤頭巾は狼に見せつける様にして舌なめずり。それはまるで獲物を目の前にした捕食者そのままで、狼は先程自らが思った事を訂正しました。これは食われる、と。
「いや、あの、普通これは逆なのでは?」
「なに。狼さんは俺を犯してぇの?」
「犯っ……!?」
狼はここで初めて自分の貞操の危機を感じました。
そして、自分が食われるの意味をある意味履き違えていた事にも気付きます。しかし狼は気付くのが遅過ぎました。
すでに捕食者側は捕らえた獲物の調理に取り掛かろうとしていたのです。
「ひゃっ!? な、なに!?」
「ン? 味見」
味見、と首筋を舐められた狼。ペロリと自らの唇を舐めた赤頭巾のそのセクシャルな仕草にドクン、と自分の心臓が大きく脈打つのを感じます。
狼の頭の中はもう真っ白で、そんな狼を尻目に赤頭巾は着々と狼を犯す為の準備を進めました。
「ちょ、と……ほんとに、やめっ……ン」
「やめない。狼さんイイ顔するし、声もヤらしいからさ」
「そ、んな、っ……ひぁっ!」
赤頭巾の愛撫に緩く勃ち上がっていた狼のそれが握られ、狼から鋭い声があがります。ハッとした狼が自らの口を塞げば、狼が両手を使えないのを良い事に狼の身体を余すとこ無く、無遠慮に這い回る赤頭巾の手。
「ひっ!? や、なに……?」
「乳首気持ち良いの? 可愛い。それじゃ、頂きます--」
狼が赤頭巾に組み敷かれ、毒牙にかかってしまってから数時間。
未だ、狼は赤頭巾に良い様にされておりました。
「んぁ…… は、ぁふ……あ、あぁっ!」
狼の中を赤頭巾の硬い雄が容赦無く蹂躙していきます。それにも拘らず、狭く熱い狼の内壁は赤頭巾の熱り立っている雄をまるで離したくないとでも言う様に締め付けていました。
「狼さんの中、熱くて気持ち良いな?」
どこか揶揄いを含んだ赤頭巾の声色。しかし今の狼には自分の事が精一杯で、そんな事を気にする余裕がありません。今までに体験した事が無い程の快楽を一度に与えられ、自分はどうすれば良いのかさえも全く見当がつきませんでした。
「あっ、あぁ……あん、っ」
今や狼の身体は赤頭巾から与えられる快楽を享受するだけになっていました。閉じる事は忘れられた狼の口からは、苦しそうな喘ぎと涎だけが零れます。
「あ…… あ、あっ、だめ、また、出……」
「出る? ン。俺も。一緒に……イこうか」
「ひっ……ぁああっ!」
赤頭巾の雄が狼の最奥を抉ったのと同時に狼が欲望を放出。
「ッ、ン……!」
遅れて赤頭巾も狼の中へと己の種を植え付けました。
「狼さん、俺のモノになってよ。俺、狼さんの事気に入っちゃった」
極度の疲労感から意識を今にも手放そうとしていた狼は、最後に赤頭巾のそんな声を聞きながら堕ちていった--
お花の代わりに猟銃を。
狼なんて怖くない!
405: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/12(土) 18:57:40
ベタすぎるネタです^p^
そして短いw
※※
【入門書通りにすれば問題ない】
「ひぁっ……あ、そこ、そこいいっ……」
「ここか?」
そっと宛てがわれていたのがぐっと押し込まれる。自分の望んでいた場所に与えられた刺激に、勝手に歓喜の声が洩れた。
ぴんっと伸ばされた爪先が宙をかく。
「そこ、そこもっと強く……っあぁ、いいっ……!」
「はいはい」
「んぅっ……! すご、気持ちいい……っ」
自分の身体の上に陣取る男から与えられるそれに背中が反り、快感の滲んだ声が洩れるのを止められない。
瞼が閉じられていてもその恍惚とした表情は隠せなくて、上からそれを見下ろす男も自分がこうさせていると思えば口許が自然に綻んだ。
「にしても、お前ばっかり良い思いするのはずるくないか?」
「あ、んんっ……ごめっ、でも……っん」
「“でも”じゃない」
“イイ”場所を突いていたそれが、更に強めにその場所を押し込む。
自分の体内でごりっ、と音がしたかと思った瞬間、全身に僅かな痛みと強い快感が走った--。
「いやー、本当に久徳のマッサージは気持ち良いねー」
「そらどうも。だからってあんあん言う必要は無いだろ」
「ムラムラした? なんなら今からソッチもシちゃう?」
入門書通りにすれば問題ない。
同時に二人、それぞれの初級をクリア。
413: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/13(日) 21:05:11
【猫二匹と駄犬が一匹】
「龍。見ろ、可愛いだろ?」
帰宅して早々、そんな事を言った恭悟の腕の中には黒い毛玉--もとい、黒い子猫が抱かれていた。
ふわふわの長毛種らしい子猫はピンッと立った耳を小刻みに動かせ、すんすんと鼻をひくつかせている。
龍は何故そんな物を抱いているのかと一瞬思考を停止させたがすぐに持ち直した。
「オマエが猫耳着けた方が可愛い--」
「知り合いが実家に不幸があって暫く預かる事になったんだが良いだろ?」
「無視か」
当たり前の様に龍の戯言を無視して、腕の中の子猫に嬉しそうに笑う恭悟のそれは幼い子供の様なもの。
元々恭悟が小さな生き物などに弱いのを知っている龍は、その笑みが自分に向けられてではない事に少々自棄になりながらも仕方ないな、とそっと息を吐いた。
「どれくらい預かるんだ?」
「一週間程だが……だめ、か……?」
龍が尋ねれば、子猫を更にしっかりと抱き抱えながら恭悟が上目遣い気味に龍に聞き返した。
ただでさえ恭悟に弱い龍が恭悟の上目遣いでの“おねだり”に反対が出来る筈もなく龍は呆気なく陥落。
こうして暫くの間住人--住猫が一人、いや一匹増える事となった。
一時的とはいえこの家に慣らす為に自由にさせていると、子猫は何故だかソファに座る龍の膝の上で必死に毛づくろいを始めた。
「…… ちっこいなオマエ」
恭悟が連れてきた手前、邪険にする事も出来ずにいた龍はふと膝に乗った子猫の首根っこを掴み目の前にぶら下げた。身体を縮こまらせぶら下げられる子猫。
程なくして部屋着に着替えた恭悟が戻ってきて、龍と龍にぶら下げられた子猫の姿に恭悟が思わず頭を押さえてしまう。
「なにをやってるんだ」
「コイツ雄だ」
子猫の抱き変え、両脇を持ちながら龍が恭悟の方へと子猫の腹を向ける。
子猫はといえば相変わらず大人しく抱かれていて、本当だ雄だな、と龍の手から取り上げられた恭悟の腕の中でもされるがままになっていた。
「猫が二匹……」
龍の隣りに腰掛け子猫と戯れる恭悟の姿を眺めながら龍がポツリと洩らす。
「誰が猫だ。駄犬」
「……ソレの飯とかトイレとかどうすんだよ」
恋人に駄犬呼ばわりされた龍は自分は何も言われて、聞いていないと、話を逸らせた。現実逃避である。
恭悟はそんな龍に内心苦笑しながら玄関近くに置きっ放しの荷物を指差す。そこにはキャリーバッグと大きめの紙袋があり、龍がアレか、とぽんっと手を打った。
「猫用の缶詰とかトイレシートとか必要な物はあれに全部入ってるらしい」
「とりあえず出すもん出しと--」
玄関の荷物から恭悟の方へと視線を移した龍は言葉を詰まらせる。
そこには先程みたいに腕の中の子猫をしっかりと抱き直した恭悟が上目遣い気味に龍を見遣っていた。
しかも子猫の方も何も知らないが故の無垢な瞳で恭悟と共に龍を見遣っている。
「っ……分かったよ。俺がすれば良いんだろ。ったく……」
「悪いな」
眉を寄せながらソファから腰を上げた龍だったが、上機嫌に笑いながら膝に乗せた子猫を撫でる恭悟に龍が毒気を抜かれた。
溜め息を吐きながらも柔らかい表情で玄関の方で荷物の整理を始める。
チラリと恭悟と子猫の様子を盗み見れば抱き上げた子猫の鼻と自分の鼻をくっつけている恭悟の横顔が。
たかが子猫相手に龍の中で嫉妬の炎が確かに揺らめいた。
そして更に不安も。
「一週間後、アイツが猫を欲しがるのが目に浮かぶな……」
大きな溜め息と共に龍の幸せが一つ、逃げていった--。
猫二匹と駄犬が一匹。
それから一週間後、恭悟の“おねだり”に必死に首を左右に振る龍が見られた。
※※
猫が黒いのはウチの猫が黒いからd(ry←
多分暫くお兄ちゃんズが続くと思います!!
でも最近スラン…トランプ(←)気味だからなぁ……
最終更新:2010年05月25日 21:14