どうして変態なんですか 続き4

「ぅわっ、なんでこっち来るんだよ」

夕食時。

さっきの昼飯の時と殆んど同じように、俺らは座っていた。

葵は向こうの方にいる。

たぶん、同じクラスの友達と一緒にいるのだろう。

…なぜか周りは女子ばかりだけど。

で、俺の隣に座った慎也が、俺の斜め前(つまりは慎也の前)の桜田に嫌悪されたというわけだ。

「そりゃ、旭の隣が良いからな」

慎也が肩に腕を回して俺の身体を引き寄せるのを、俺は全力で阻止した。

「俺は良くない!」

俺ら二人の行動を見ている桜田と岸はにやりと笑う。

「お前ら仲良いよな」

「二人がくっつけば、周りの被害がなくなるのにな~」

双方が続けて言った。

「俺はそれでも良いぞ」

慎也も、俺の方を向きながら桜田たちと同じようににやにや笑っている。

「じょーだんじゃねえよ。俺はホモじゃない!」

普通に女子を好きになる体質だぞ、俺は。

「…さっき中田が"旭なしでは生きていけねぇ"って言ってたぞ」

岸が、慎也のセリフ部分は声色を変えて俺に言った。

「あっそ」

ファンクラブの方々から聞いたので、既に知っていることだ。

俺はそう思ってそっけなく返事をする。

慎也だって本気でそう思っているわけではないはずだ。

大体は"旭とセックスしなければ"、"旭に触れていなければ"っていうそういう感じの意味が込められているに違いない。

誰でも良いんだ、俺じゃなくても。

そんなことは百も承知。だから別段、食いつくような話題でもない。


やっと午後8時が来た。

ここからは時間割が決められていない。

自習室を使って勉強している優等生もいるようだが、大半はそれぞれの部屋で各々のことをするだろうと思う。

「っし、風呂行くかぁ」

大浴場から上がると、部屋に戻らず、桜田と岸の部屋に行こうと思ったので、そのための準備に勤しんだ。

慎也はいない。どこへ行ったのかも良く分からん。

ま、あんなヤツはどうでも良いんだ。うん。


一階の入浴場へ向かっていると、進行方向とは逆に多数の男子生徒たちがやって来た。

もう入り終えたのかな。…もしかしたら空いてるかも。

だが、みんな少し不満そうな顔をしている。

あまり気にはならないが。

脱衣場の扉を開けると、案の定、見る限りスリッパはなかった。

ちなみに一般の客はいない。学校が貸し切っているらしい。


やった、と俺は心の中で叫んだ。

どちらかというと温泉は、みんなでワイワイと騒ぎながら入るより、一人でのんびり寛いでいる方が好きだ。

服を全部脱ぎ終えると俺は、タオル一枚だけ持って浴場へと入った。


おおッ、マジで誰もいない!

広い広い風呂場の中、いるのは俺だけ。

奥の方には露天風呂に続く扉もある。

俺はそれを目前にして一人、テンション上がっていた。


とりあえず、賭け湯を済ませ、先に身体やら頭を洗うべく、シャワーがついている一区画に座った。

すると、後ろでカラカラと扉の開く音が聞こえ、人の気配がした。

誰かが入ってきたのか? せっかく一人だったのに。

と、俺は少しガッカリしたが、それは違うようだった。

露天風呂から、室内風呂に戻ってきただけのようである。

知らない生徒だとまじまじ見るのも変だし、俺は後ろを振り向かないことにした。


その人物は、俺の背後にしゃがむと横から手を伸ばし、備え付けのシャンプーのポンプを押す。

「よう、旭」

「っぎゃ!!」

驚きのあまり俺は身体に泡をつけたまま悲鳴を上げた。

紛れもなく慎也の声だ…。さっき男子生徒ががっくりした様子で戻ってきていた理由が分かった気がする。

「な、ななななんだよ、脅かすなっ」

心臓が壊れそうなくらい高鳴る。ホント、寿命が縮むよ。

「ケツの穴洗っとけよ」

慎也はわざとのように身体を接触させて、耳元でそう囁いた。


「は、あ? 何言ってんだ、お前」

「後でヤるからな」

「ふっざけんなぁッ」

俺がそう叫んだのも束の間、慎也はシャンプー液がたっぷり付いた自分の指を、身体に沿って滑り込ませた。

「…ああぁ、な、なに…ッすんだ」

ヂュグ。水音がして、俺の中で冷たい液体が泡立つ。

ぬるぬるしてとても気持ちが悪い。

「…あ、あぁッ…なんてことっ、」

俺は立ち上がると内部の泡を洗い流そうと、シャワーを秘腔部にあてた。

シャワーの水圧で、その部分は刺激されて少しの快感が襲う。

「ん…ぁ、ふ…ッ」

「ふふ、旭の火照った顔をみてると興奮する」

「んなぁッ! …の変態がぁぁ!!」

「頼みもしないのにシャワーでオナってくれるとはな。しかも俺の目の前で」

「お、お前のせいだろ!」

自慰していると捉えられていることに俺は最大の羞恥を覚え、まだ泡が残っている感覚はするものの、シャワーを止めた。

だが、慎也は俺の身体を抱き寄せると、シャワーの水を再び出して、

「ちょ、慎…也ッ」

俺の下半身にあてた。

それだけじゃなく、先程よりも蛇口を大きくひねり、しかもシャワーのレボルバー(っていうのか?)をマッサージモードに切り替えやがった。

真ん中に集結した水は更に圧力を増して俺の下に降り注ぐ。

「や、やめ…っ。ぁあッ…おね…が、だから…」

こっちは必死で頼んでいるというのに、慎也は聞く耳を持とうとしない。

「旭がイッたらやめてやるよ。俺は可愛い獲物を前にしてヤるの我慢してるんだぞ? ま、焦らされるのも良いけどな」

知らねーよそんなこと!!!

そっちの都合だろうが!!!

俺は静かに一人でのんびり温泉に入って寛ぎたかっただけなんだぁーーー!!


慎也は俺を離そうとはしないし、シャワーを止めようともしない。

結果、俺は慎也の腕の中でただ喘ぐ以外のことはできないでいる。

「し、慎…ぁッあぁ、はな…せ」

イきそうだ…。

「ばーか、離すかよ」

俺と慎也の肌は接触しあっている。

湿度の高い風呂場で、水滴が付いてしっとりしている彼の身体はいつもに増して熱く感ぜられる。

俺に刺激を与え続ける慎也の下半身は結構勃起していた。

…ったく信じらんねー。

性対象として見るんじゃねーってさっき、言ったばかりだぞ。

聞いてなかったのかよ。


「あ、ぁあ…ん、も…止め…」

白濁とした物が陰茎の先端部から飛び出てきた。

これでもかと言わんばかりに紅潮したからだと頬。

膝はがくがくしていて、上手く立つこともできない。

「慎…也っ、たッ…のむ、あ…ぁ」

これ以上下半身を刺激されると頭がおかしくなりそうだ。

必死の懇願あって、慎也はやっと蛇口をひねってシャワーを止めた。


「…はぁ…はぁ…お前マジで…死ね」

這ってでも俺は、なるべく慎也から遠ざかろうとする。

「さっきさ」

そんな俺とは逆に、慎也は距離を狭めようとしている。

俺の手を取ると、慎也は伏せ目がちに話し始めた。

「そういう対象で俺を見るなって旭は言ったけど、それは無理」

「…はぁ? 何言って…」

「だってこんなに可愛いんだぞ? 旭の顔見るだけで俺、妄想して勃ってしまう」

「な、な! 信じらんねッ」

慎也はどんどん俺に近づいてくる。

ちょっとだけ動けば唇同士がかすれるくらい。

「今も旭を犯したくて仕方がない。コレでも抑えてる方なんだ」

「ちょ、顔…近ぇよ!」

俺が慎也を押しのけると、慎也は立ち上がって、入り口の扉に向かった。

「後で続きするから。…それまで処理せずに待ってる」

と言い残して去っていった。


あーー気持ちよかったぁ。

ん? ち、違うぞ。慎也にされたこと言ってるんじゃねえぞ。

温泉のことだから! ユーシー??

本当に温泉はいいな。

まさに日本の象徴だ。

一番最初に掘り起こした人は天才だな。うん、尊敬する。

途中で邪魔が入ったけど、この合宿で一番楽しみにしていた温泉をこれほど堪能出来たんだから、まぁいっか。

な、老人みたいだなんて思うなよ??


…あれ、さっきから俺、誰に向かって喋ってるんだろ。


「何だ、もう風呂入ってきたのかよ」

自分の部屋には戻らず、当初の予定通り桜田と岸の部屋に俺はいった。

髪の毛が濡れている俺を見て、桜田が言う。

「あとでみんなで行こうと思ったのにー」

既に敷かれた布団の上で、桜田はPSPで遊びながら寝転がっている。

部屋には二人以外にも何人かいた。クラスメート。女の子もいる。

「隼人ぉ、雪代くん来たし、やろーよ」

女子の一人がテーブルの上に置いてあったカードの束を取った。

「やるかー」

PSPをしていたヤツ全員がそれを一時停止する。

モンハンのオンラインやっていたんだろう。音的に。

桜田は女の子からカードケースを受け取ると、カードを取り出して何度か切った。

「なにすんだ?」

俺は聞いた。

「UNOだよ。最後まで負けたヤツが全員のアイスおごりな」

カードをシャッフルしながら彼はニッと笑った。


アイス、と聞いて俺は俄然やる気が出た。

アイスクリームは美味いぞ。絶対勝ってハーゲンダッツおごってもらお。

入浴道具をたたみの上に置き、俺は布団の上に座った。


「っっしゃーーー!! 悠樹、んじゃアイスよろしくな。俺、チョコレート系なら何でも良いぜ。ハーゲンダッツで」

最後に残った岸以外、みんなケラケラと笑っていた。

岸は悲惨なほどカードを持っている。ドローツードローフォーは全部彼が当たったってくらい。

「あーあ、俺やっぱダメだこういうの」

「言い訳してもダメだよ。岸くん、あたしはイチゴのやつね! …もちろんハーゲンダッツで」

「なんでみんなしてハーゲンダッツ!? 高いのばっか注文しやがって!!」

財布をカバンから取り出しながらも岸は嫌々そうにしていた。

俺はそんな岸を宥めながら言った。

「まーまー、岸だけじゃ全部持てないと思うし、俺も行くよ。あ、俺はティラミスな。ハーゲンダッツの」

「雪代、お前もか」

買いに行く用意を済ませた岸は、哀愁漂わせながら部屋を出ようとした。

その時、だ。

バタンッ!

激しい扉が開く音と共に、俺を激しい悪寒が襲った。

ゾクッと背筋が凍りつくような。

危険を感じた俺は、障子の後ろにそそくさと隠れた。

わかる。見なくとも。

扉を開けたのは慎也だと、直感で分かってしまった。


「悠樹、隼人、旭はいるか!?」

やっぱり慎也の声だ。…ったく何で来るんだよ。

室内にいた全員の周りの空気が、一気に凍りつく。

俺は桜田の方を向いて、思いっきり首を横に振った。

いないって言ってくれと、視線のみで伝える。

「ゆ、き、代は…いな、いけど…」

挙動不審になって顔を引きつらせながら、桜田は慎也を押し返そうとした。

「嘘は吐くもんじゃない」

「はい?」

「旭の匂いがするけど?」

なんでだよ! お前は犬か何かかッ!!


慎也は押し返そうとする桜田に逆に迫り、部屋に入り込んだ。

桜田の頬に手をあてると、

「旭を返さないと、お前を全裸で亀甲縛りして直径3センチのバイブをアナルに突っ込んで明日の朝食ん時に学年全員の前に放置するぞ?」

と、不敵に笑った。


「ぎゃーっ、やめろ触んなーッ! わかったよ、そこにいるから!!」

青ざめた顔で、柱を指差す桜田。

「桜田ぁぁぁ!! 裏切んのかッ!? 俺ら友達じゃねーのかぁぁ!?」

障子の裏から出てくるや否や、俺は桜田と同じような表情で彼にしがみつく。

「ご、ごごごめん雪代、ハーゲンダッツおごるから…な?」

「いや、いやいやいやいや、ハーゲンダッツは岸にもらうから。二個も食ったら腹壊すから、い、いいいらねーよ…」

「お前この前ケーキバイキングで8個くらいケーキ食ってたじゃねえかよ!」

「け、ケーキは冷たくないじゃん!? アイスはダメだよ、アイスは」

「もういいじゃん…、潔く中田に食われれば良いと思うぜ、俺は」

良くねえ!! 

ちくしょー他人事だと思いやがって、この薄情者がーッ!


「相談は終わったか? 部屋帰るぞ、旭」

答えは聞いてない。という風に慎也は強引に俺の腕を引っ張った。

「うわあああ、バカやろー、お前なんか嫌いだー! バーカバーカ! 亀甲縛りくらいさせてやりゃーいいじゃんかよ!!」

申し訳なさそうに俯く桜田に、そう捨て台詞を吐くと、俺は慎也に引き摺られながら部屋を出た。


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最終更新:2010年05月22日 15:37
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