どうして変態なんですか 続き9

番外編④
冬休み中の話。
旭の追試はクリアしたって前提でお願いしますm(__)m



あああああああ。暇だ暇すぎる。

勉強はものの10分でやる気失くすし、どこかに行く予定もない。

みぞれは正月の特番に出るために収録場所に行っちゃったし、父さんと母さんは…この年にしてデートらしい。

こんなに暇な元旦はないなぁ。

いつもは母方の実家に帰るんだけど、今日は家で俺一人だ。

昨日引っ張り出してきたロクヨンをしようと思い、カセットの入ったケースをクロゼットの中から出した。

カセットの一番上に載っていた"バンジョーとカズーイの大冒険"。

「お、なっつかしーな。バンカズ」

パッケージを一瞥して俺は、差込口にそれを入れた。

電源を入れ、セーブデータを確認する。

1、2、3 全てが全て、音符900個でジグソーピースが100個。

全クリしてある。

青とピンクのタマゴと氷のカギのイベントもクリアしたし…。

まったくプレイする必要がないので、俺は電源を切った。

コントローラーを投げ出して床に横になったとき、携帯が鳴った。

「もしもし…」

相手を確認する前に出ると、受話器の向こうから慎也の声が聞こえた。

「旭か? 俺だけど。今からそっち行ってもいい?」

「ん…、別に…親も居ないし良いけど」

俺がそういうと、慎也は電話を切った。

何の用だろう。正月だってのに。

…まあどうでもいいか。慎也でも暇潰しにはなるからな。


10分もしないうちにドアチャイムが鳴った。

と、俺は玄関のカギを開けに行く。

「あけましておめでとう」

紙袋を持った、にこやかな慎也がいた。

「旭、こんにちは。あけましておめでとッ」

慎也の後ろから、葵がひょこっと顔を出した。

「いらっしゃい…だけど、お前ら正月なのにいいのかよ?」

家族団らんで過ごすもんじゃねーのかな、元旦って。

「僕はすぐに帰らなくちゃならないけど…」

よく見たら葵も何かを持っている。

「俺は大丈夫。父さんと母さんは一昨日からアメリカに帰ってる」

「お前は一緒に帰らなかったのか?」

「まぁな。どうしてもやらなきゃいけないことがあったからさ」

「…あっそ」

どうせ取るに足らないことだろうけどな。

「まぁ…とりあえず入れよ」

と、俺は家の中に慎也と葵を案内した。

「で、何の用?」

自分の部屋に入るなり、俺は二人に聞いた。

「用ってお前…。わかんねーの?」

「わかんねー」

正月の挨拶しにきたって雰囲気でもないし…。

いったい何の用なんだろ。

「今日は旭の誕生日でしょ?」

葵が微笑んでそういった。

「…え?」

確かに俺の誕生日だけども。

「え、ちょっと待って、え? どういうこと?」

「僕たちお祝いしに来たんだよ。はい、プレゼント」

葵は持ってきた袋を俺に渡した。

戸惑いながら俺はその袋を受け取る。


「…何で知ってんの??」

別に誕生日がいつだとか、誰かに教えたことはない…はずだが。

「僕は慎也くんに聞いたよ」

葵はちらっと慎也の方を見た。

「何で知ってるかって? 俺に旭についての知らないことがあるわけないだろ」

と言って慎也は不敵に笑った。

「なんじゃそりゃ…」

「そんなことより、ケーキ作ってきたから食えよ」

慎也は紙袋の中からケーキ用の箱を取り出した。

そしてその箱を開けると、すっごくおいしそうなイチゴムースが出てきた。

「お、お前が作ったの?」

「そーだけど?」

普通にサフランとかで並んでそうなケーキだ。

表面のゼラチンに光が反射してとても美味しそうに見える。

こんなことまで出来たとは。…慎也ってマジ何者?

「慎也くんすっごいねぇ。僕ももらっていい?」

「いいに決まってんだろ。そのために3つあるんだから。ほら、旭も食えよ」

わーいありがとー、と言って葵はそのケーキの一つを取った。

あ、このままじゃ食えないな。フォーク持ってくるか。

キッチンに向かい、俺はフォークを三本持ってきて葵と慎也に渡した。


「ありがと。俺の誕生日なんか祝ってくれて」

親ですら何もしてくれないまま旅行に行っちゃったってのに。

二人に祝ってもらって、素直に本当に嬉しい気持ちでいっぱいになった。

「ねえねえ、プレゼント開けてみてよ」

天真爛漫に葵が言う。言われたとおり、俺は葵からもらった包みを開けた。

「うわッ、すっげぇ」

見るからに高価そうな腕時計が出てきた。

アナログ式で文字盤が黒、針が白、周りは銀色。一瞬だけ見るとブランド物じゃねーか?って思うくらいカッコイイ。

「高くなかったの?」

「うん。たぶんパチ物だと思う…」

葵は申し訳なさそうに言った。

しかし、パチ物だったとしても全然嬉しいぞ。

「ありがとう、葵。めちゃくちゃ嬉しい」

俺は笑顔でそういった。

俺がその時計をじっと見ていると、葵が、

「ごめん旭! 僕もう帰らなきゃならないんだ」

と立ち上がった。なので、玄関まで送っていくことにする。

「じゃあ…ね。いきなり来てごめん」

「全然! ありがとう。本当に嬉しかったよ」

葵は笑って扉を開けると、

「慎也くんと上手くやってね」

と俺に囁いた。

「なッ、はぁ??? どういう…」

びっくりして、焦りの表情を浮かべると葵はにこにこ笑って家から出て行った。

…葵って、慎也のことが好きなんじゃなかったっけ。

そんで以前、俺に応援してって言ってなかったっけ。

なんで立場が逆転してるんだろう?


「んじゃ、俺もな」

部屋に戻ると慎也が再び紙袋の中から、何かを取り出した。

ピンクの包装紙でラッピングされている。大きさは、少し小さめ。

「あり…がとう」

と言って受け取り、包装紙を剥がした。

「…え?」

中からでてきたのは、ネックレスだ。

ダイアモンド(小さいけど)みたいなものが埋め込まれてある。

「こ、これ…って本物?」

バカか俺。ホンモノなわけねーだろ。

言った直後にすごく後悔した。慎也に馬鹿にされるに決まっている。

が、慎也の答えは予想に反するものだった。

「よく分かったな」

「えッ!?」

ほ…本物…。だとしたらめちゃくちゃ値段高いんだろうな。

「何で…?」

「何でってそりゃ、旭の誕生日だから」

慎也は何故か、俺の名前の部分を強調して言った。

「こんなん俺、もらえないよ!」

いらない訳じゃなけど! こんな高価なもの、どうすればいいかわからない。

俺はそのネックレスを慎也に返した。

「旭にもらってもらわないと意味無いの」

だが慎也はそういって受け取ろうとはしなかった。


慎也は再びネックレスを俺に渡し、

「旭にこれやるためにアメリカにも帰らなかったし、バイト頑張ったんだぞ? 受け取らないと承知しねえからな」

と冗談っぽい声で言った。

慎也がさっき言ってた、"どうしてもやらなきゃならないこと"って、これなのか?

だとすれば、取るに足らないって思った俺は最低だ。

ごめん。それは誤る。

だが何故、どうして俺にこんな高価なものをくれるんだろう。

いったい慎也は何考えてるんだ? まったくもってわからん。

「何でダイアモンドのネックレスなわけ? 俺、mono消しゴムでも普通に喜ぶぜ?」

あれ、消しやすいし。ま、それはそれとして。

「さーなぁ。それくらい自分で考えろ」

いや、考えてもわからねえよ。

普通、友達(しかも未成年で男同士だぞ?)にはダイアモンドが付いているアクセサリーなんてあげないと思う。

恋人、主に男性から女性への贈り物じゃねーのかな?

まぁ…でも、せっかくの慎也の気持ちを無駄にするわけにもいかないし、もらっておくとする。

俺はアクセサリーを入れる用の箱にそのネックレスを入れた。

すると慎也が、

「しまうなよ。付けろ」

と命令口調でこういった。

わけが分からなかったが、別に疚しいこともないので首につける。

つけた直後、慎也は立ち上がって俺を抱きしめた。

「な…?」

いきなりのことで身体が強張る。

「今年初セックスやろうぜ」

と、慎也は俺の耳元でそう囁いた。


「へッ!? 何言ってんの??」

驚いて後ろを振り返ろうとしたけど、慎也の顔は見えなかった。

「セックスしようって言ったの」

いやいや、そういう事を聞いてるんじゃあないんですけどね。

俺が何も答えないでいると、慎也は右隣にあるベッドの上に寝転がるように俺を軽く突いた。

「…旭」

名前を呼ばれると、今からアレ的なことをされようとしているのに、心臓がバクバク鳴った。

「ちょ…マジで?」

俺の家なんだけど。

「マジで」

慎也は俺の上に乗っかる。体重がかからないように両手をベッドに付きながら。

シングルのベッドに二人の男が乗ったためか、ベッドの木製部がギシッと鳴った。

「冬休み入ってからずっと我慢してたんだ。旭とヤるの」

顔…近い。

慎也と目をあわすと、何故かドキドキする。大丈夫か、俺。

これじゃまるで、慎也のことが好きみたいじゃねーか。あ、いや違う絶対ない。コレはあれだ、いわゆる条件反射ってヤツ。

「お、お前さ、好きなヤツいるくせによくもそんなこと言えるよなッ」

「それとこれとは別」

…なんじゃそりゃ。やっぱり誰かとヤることしか考えてないんじゃん…変態だ。

そんでもってコイツにちょっとときめいている自分がすごく嫌だ。落胆する。

「…ぁッ」

慎也はシャツの上から俺の身体に触れた。

でも…いいか、受け入れて。抵抗するのももう虚しいだけだし。

ていうのは建前で、慎也とヤりたい気持ちは少し…0.1%くらいはあったりする。

「もう一つお前に誕生日プレゼントだ」

「な…んだよ、それ」

この期に及んでどういうことだろう。

「俺の下半身」

「なッ…」

本当に卑猥な言い方するよな!!! 慎也だからしょーがないかもしれねえけど。

「お前だけは…マジで信じられん…」

自分が言った訳でもないのに、俺は恥ずかしさが込み上げてきた。

「信じられなくても、現実だからなぁ」

慎也はひょうひょうと笑顔で言った。

こんな現実誰も望まんっつーの。


慎也って…何考えてるのか、…誰か分かりますか。

何で俺ばかりに(俺だけじゃないと思うけど)こんなことして来るんだろ。

なんなの? 俺でガス抜きしてる訳??

だとしたらすっげー惨めだぞ、こっちは。

慎也は遊びのつもりなのかも知らんが、俺は…いちいち余計に感じたりして情けないんだ。

「あ…慎也…ッ」

が結局はこうなる。いつになったら慎也はやめようと思うのだろう。

「ッく、ぁ…」

触れられるとすぐ反応してしまう。我ながら嫌な身体だな…。

そんな俺を馬鹿にしてるのか慎也は、

「ふふ、可愛いなやっぱり」

と笑う。

「可愛い…って、言うな…」

このセリフ、何回慎也に向かって言ったことか。

慎也は構うことなく俺の身体に触れ続けた。

「ぁ…、ぁあ…!」

尖った蕾をきゅっと抓まれると、魚か何かのようにぴくんと身体が仰け反る。

「や…やぁん…ッ、し…んや…」

俺が喘ぎ声を出すたびに慎也は"可愛い"って言ってくるから、ホントに鬱になりそうだ。

かといって嬌声を我慢することは出来ない。そんなスキル無い。

「…んぅ…、ヤるッ…なら、…早く挿れろ……ぁっ」

もう焦らしプレイはこりごりです。気持ち悪いことこの上ない。

「…へえ? 珍しく素直なんだな」

「う…うるさ…っ」

「可愛いよ、そういうお前も」

「だッ、だから…」

「"可愛いって言うな"って言うけど、可愛いものに可愛いっていわなきゃどーするんだよ」

俺は可愛いものじゃねーッ! 仮にも男だぞ!!?

くそっ…ムカつく…ムカつくッぐぁあああぁぁっ!!!

はーっ、はーっ。

落ち着け俺。こんなヤツに取り乱されてどうするんだ。


「…あ、ああッ」

慎也は指で俺の秘胱部を撫でた。

指が触れると、そこはくちゅくちゅ音を立てる。

「バ…カ…っ、楽しんで…んなッ!」

俺はいっぱいいっぱいなのに、慎也は気持ち悪いくらいニヤニヤ笑いながら俺のそこを弄る。

「…じゃ、慣れてきたし望みどおり挿れてやるよ」

「んぁ…っん、ん」

中指と薬指で、慎也は穴を広げる。ぐちゃ…っと音を立てた。

外気が中に当たり、気持ちが良い。

「は…ぁ、ッん」

俺が嬌声を出している間に慎也はベルトを外し、チャックを下ろして下半身を俺の穴に充てた。

「あ、…ぁあ」

感じて甘く蕩けている顔を慎也に見られたくなくて手で覆い隠す。

「別に…隠さなくても、いい…のに」

何か嫌なんだよな。"慎也にこんな顔にされた"って思いたくないっていうか。

「…やッ!!」

ズプッズプッとゆっくりではあるが慎也の物が俺の中に挿入ってくる。

「ぁ、ん…んんッ」

「可愛い…旭」

またそれかよ。

って思ったけど、反論できないほど俺は頂点に達しそうだった。


ツプン。遂に根本まで完璧に挿入りこんでしまった。

すると慎也は俺の上半身を、自分の胸により寄せた。

「旭…俺、」

名前を呼ぶとぎゅっと俺の身体を抱きしめる。

慎也の生肌をモロに感じた。温かくて気持ちいい。

「お、れ…」

"俺"の続きを、慎也はどうしても言おうとしない。

言えないのか、言わないのか俺にはわからない。何かを伝えようとしてるっていうのはわかるけど。

「あ…っ、慎也…ッ」

慎也か俺が動くたびに、奥に慎也の下半身があたる。

それがなんとも言えず気持ちよい。

「や…! ゃあ…ッあ!!」

何かがはじけると同時に、それを知らせる白い液体が出た。

「……ふぅ」

息を吐いて動くのをやめると慎也は下半身を抜いた。

「気持ちよかっただろ」

セックス後には必ずそれ聞くよな。

頷くを得ないほど気持ちがいいのがまたムカつくけど。


「ま、あらためて誕生日おめでとう」

慎也はケーキを頬張りながら言った。

「うん…」

適当な返事を、同じくケーキを食べながら返す。

にしても…美味いなこれ。

「…ほら」

いきなり慎也が、ムースをのせたフォークを俺の前まで持ってきた。

「何?」

「"あーん"だろ? そこはやっぱり」

「嫌です」

「まーまー、今回は媚薬入ってないし」

「そういうことじゃない! それも重要だけどッ!」

俺が嫌がって慎也の手を払おうとすると、フォークからケーキの一欠けらが零れ落ちた。

「あーあ、旭が拒否るから」

「お、俺のせいじゃないじゃん」

ケーキは俺の鎖骨に落ちた。一瞬、冷たいと思ってぴくっとなる。

ふき取ろうとすると慎也が、それをペロッと舐めた。

「…ひぁッ!」

いきなりの事での驚きと、身体を舐められた事で変な声を上げてしまった。

慌てて俺は自分の口を押さえる。

「ごちそーさん。旭、美味しかったぜ」

「ッ!!」

口を押さえたまま、不覚にも赤面してしまった。

…あー…。

こんな屈辱にまみえた誕生日はもう一生来てほしくない。



番外編④終了のお知らせ。
もうネタをバラしましたが、旭の誕生日が元旦の訳は、
"雪"で"冬"の意。
"代(白)"で"新しい"の意。
"旭(朝日)"で"日の出"の意。
冬の日の新しい日の出、つまりは元旦、って感じなのです。
どうでもいいこだわりすみません←
そういうのアホみたいにこだわるのが好きww(←アホ
ちなみに慎也がダイアモンドをあげちゃったので、石言葉とか考えてみようと思いましたww
ダイアモンドは"永遠の絆"って意味らしいです♪
永遠の絆…ちょっとネタバレかも(←
そして、皆さまの御コメントを参考いたしました(お前
ケーキプレイ。プレイとまではいかなかったですけど…;;;
いつも読んでくださってありがとうございます☆



番外編⑤
三学期に入ってからの話です。
みぞれちゃん視点の話です。




☆みぞれちゃんの長い一日☆


あたし、雪代みぞれ。

本当は漢字で"霙"なんだけど、難しいから平仮名表記ね。

今日も朝の生放送の番組があるから、ママと一緒にスタジオへお仕事に行った。

「じゃあ、気をつけて帰るのよ。ママいなくても大丈夫?」

帰りの電車の駅で、あたしにきっぷを渡したママはこう言った。

「うん、だいじょーぶ! いつも帰ってるもん」

おうちまでたったの一駅。それに朝だからたっくさん乗客がいる。

あたしは笑顔でママに大丈夫だと告げると、改札口に切符を入れた。

今日は、いつも持ってきてるランドセルを持ってきていない。

なぜなら、学校が創立記念日でお休みだから。

いつもはこのまま学校に行くんだけど、今日は真っすぐに家に帰った。

「ただいまぁ」

誰もいないけど、何となくあたしは言った。

リビングに入ったところの壁にカギをかけるためのコルクボードがある。

そこにカギをかけると、あたしは机の上に置いてある宿題の残りをやろうと椅子に座った。


鉛筆を持ち、さあやろうかって思ったときに、ぱっとキッチンの方を向くと、

「あれ…、旭くんのお弁当」

紺色の巾着袋に入ったお弁当がちょこんと置いてあった。

今日はママがめずらしく早く起きたから、って言って、旭くんのお弁当作ってたんだっけ。

いつもはコンビニとかで済ませている旭くんだから、きっと忘れて行っちゃったんだ。

「よーし、良いこと考えたっ」

あたしはせっかく握り締めた鉛筆を筆箱の中にしまい、旭くんのお弁当を取った。

これから、旭くんの学校にこのお弁当届けにいこっと。

「うふふ、旭くん、喜んでくれるかなぁ」

時計を見ると、まだ9時だ。

学校までの道のりは覚えてる。…と思う。

歩いてたったの十分くらいで着くところ。例え迷っても、ぜーんぜんお昼までには間に合う。

コルクボードにかけた家のカギを再び取って、あたしは家を出た。


確か、あそこの信号曲がったところだったよね…。

曖昧な記憶を頼りにあたしは旭くんの学校へ向かった。

あ、やっぱり!

学校が見えてきて一安心する。

校門から入ると、体育をしている高校生のお兄ちゃんやお姉ちゃんたちが見えた。

えっとー、旭くんて確か、2年B組だったよね…。

教室、どこかなぁ。それとも先生に渡した方がいいのかな。

きょろきょろ校舎を見渡していると、お兄ちゃんたちがあたしの方をじっと見ている気がした。

何か、ひそひそと話している。

どっ、どうしよう。もしかして、勝手に入ってきちゃダメだったのかな。

あたし怒られちゃうかなぁ…。

そう思うと急に旭くんがとても恋しくなった。

旭くん…どこぉ? お願い、出て来てぇ…。

「あれ、雪代みぞれじゃね??」

お兄ちゃんたちの会話が聞こえだした。

あたしはきょとんとして、声の聞こえるほうを向く。

「やっぱりそうだ」

「そいえば、この学年にみぞれちゃんの兄貴がいるって…」

「ああ、B組のヤツか」

そ、それって旭くんのことかな。

あのお兄ちゃんたち、旭くんのこと知ってるのかな。

あたしは、それを聞こうと思ってお兄ちゃんたちの方に歩き出した。

すると、向こうの方が走ってあたしの方に来た。

「みぞれちゃん、サインちょうだい!」

「俺もー」

「あたしも!! ってかさ、みぞれちゃんて水嶋ヒロと知り合いだったりする!?」

「握手してー」

お姉ちゃんたちも走ってきた。

みんなが騒ぎ出して、先生は必死でそれを止めている。

「え…あ、あのっ」

どうしよう…あたしのせいで、こんなことになっちゃった…。

体育の授業中断させちゃうし、先生にも迷惑かけて。


その時、あたしの後ろから一人の男の人が姿を現した。

「げッ…あいつ、B組の中田慎也…」

その男の人をみると、今まで笑顔だったお兄ちゃんやお姉ちゃんの顔が一気に曇りだした。

「合宿の時も言っただろ? みぞれちゃんは俺のものだから、手出したら…全校生徒の前でヤるぞって」

「お前っ、授業中なのに何で居るんだよ!?」

「何か言ったか?」

その人がそういって睨むと、みんなは走って逃げていった。

「あ…ありがとうございます」

前にも駅で会った、慎也お兄ちゃんだ。

「みぞれちゃん、どうした? 旭に用なのか?」

「うん、あのね…お弁当、旭くんに届けようと思ったの…」

持っていたお弁当を、慎也お兄ちゃんの前に差し出す。

「そっか。もうすぐ休み時間だから、ちょっと待ってて。旭呼んでくるよ。…うーん、ここ座ってて」

慎也お兄ちゃんは校庭にあるベンチに案内してくれた。


5分くらいしてチャイムがなると、旭くんと慎也お兄ちゃんが来てくれた。

「みぞれ!」

旭くんはあたしを見つけると、こっちに向かって走ってきた。

「何だよ、弁当なんかのために来てくれたのか?」

「だって…せっかくママが旭くんのために作ったんだもん」

やっと旭くんに会えた嬉しさで、あたしは泣きそうになってしまった。

ぎゅっと旭くんを抱きしめる。旭くんも、抱きしめ返してくれた。

旭くんは、慎也お兄ちゃんの方を見ると、

「…さっきの授業で"トイレに行きます"とか行って抜け出したの、このためだったんだな。ありがとう」

と言った。

「まーなー。女子の体育してるとこ観察してたらみぞれちゃんが見えたんだよ」

「うん。そんなこと言うお前だから、トイレに抜きに行ったのかと思ったよ」

「は? オナニーなんか別にトイレ行かなくても教室ですりゃあいいじゃん」

「あーそうだね、お前はそういうヤツだったね。ごめん俺、全然わかってねーな」

二人はあたしには分からないことを話している。

抜きに行ったって、どういうことかなぁ? おなにーってなんだろう…?

何か、あたしだけ分かってないのって悲しいな。

でもまあ、旭くんに会えたことだし、いっかぁ。

「旭くん、じゃああたし帰るね! 勉強頑張ってね」

そういってあたしは旭くんに手を振った。

「おう」

旭くんは手を振り返してくれた。

「みぞれちゃん、今度会ったらきっちり調教してあげるからね~」

同じように慎也お兄ちゃんも手を振ってくれた。

ちょーきょー?

あたしが首をかしげていると、旭くんが慎也お兄ちゃんのことを叩いていた。

何だかワケが分からないけど…とっても楽しい一日だった。



番外編⑤終わりです☆
みぞれちゃんって何か好きw(←
小学二年生にしては大人びてる気がする…こんなもんなのかな。
そんでもってまとめ方が(ry
とりま番外編終わりです。
だらだら続いてごめんなさい;;;
本編続き書きますww
次は、旭くんたちが進級してからの話になります。


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最終更新:2010年05月22日 16:46
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