とりあえず疲れた。
空港の近くにある、慎也が予約していたホテルの一室のソファに俺はなだれ込んだ。
「ていうか俺なんか来て良かったのか?」
荷物も全部放り出して俺は慎也に聞く。
普通のシティホテルだけど、ベッドが二つ、キレイなままであるとそれは豪華に見える。
「そのために二人って予約したんだぞ?」
にこやかに答えると俺がいる隣に慎也は座った。
…さっき俺にどこ行きたいか聞いたとき、俺が違うところ言ってたらどうするつもりだったんだろう、と少し思った。口にしないけど。
雀華さんと葵は仲良く二人で帰っていった。
初対面であれほどまで仲良く出来るのは、雀華さんの能力だと思う。
「やっぱり付けてくれてるんだな、それ」
慎也にネックレスのこと指摘されると少し照れる。
何でしつこくこれをつけるのか分からない。けど付けていたい。
彼がいない間、手放したことはなかった。
「旭、キスしたい」
「…ふうん」
「旭は?」
何で聞くんだよ。したいって言わせたいってか?
よし、ここは慎也を驚かせるようなこと…予想外のこと言ってやろ。
俺の言葉にたまには動揺するが良いさ。
「キスで足りんのか? 四年間分抱いてみろよ」
慎也は目を見開いた。
あっはっは、ホントに驚いてやがる。愉快なことですね。
って違うだろおおおおお!!
何慎也を挑発するようなこと言っちゃってんの俺!
バカだよバカ。前から知ってたけどやっぱ俺バカだよ!
「…へえ。旭がそんなこと言うとはな。それってちゃんと責任もって言ってる?」
やっぱ突っかかってきた! あああ当たり前だろアホかよッ!!
ずいずい俺に顔を近づける慎也と、彼の言葉に当惑する。
「ごッ、ごごごごごごめんなさ……」
慎也から顔を遠ざけると自然にソファの上に寝転がった状態になった。
その俺の上を慎也はまたぐ。
…や、やば。来ちゃったよ久々のセックスフラグだよ。
「まぁ旭に言われなくてもヤるつもりだったけどな」
服をするっと脱がされる。
かと思いきや、慎也は立ち上がって俺の腕をぐいっと引いた。
反動で俺の身体はもちろん起き上がる。脳内にクエスチョンマークを浮かべていると慎也にそのままどこかへ連れて行かれた。
素直についていく。
え? いや、もうヤられることは間違いないから抵抗することに体力を使いたくないだけですよ。
「さ、服脱げ」
つれてこられたのはシャワー室だ。
シティホテルのシャワー室だから、二人入ると結構狭い。
脱衣場に放り込まれると慎也は入り口のドアを閉めた。
「え、何?」
「まずはお前のアナルきれいにしてやる。セックスはそれからな? ついでに身体も洗ってきれいにしよ」
「ちょ、ちょっと待っ…」
「高2の合宿以来だな、一緒に風呂入るのは。覚えてるか? あの時も洗ってあげたよな?」
うん、覚えてるよ。いやいやいやいや違うぞ何言ってんだ。
シャワーでアナ…ゴフッ…。
わー慎也の目がマジだぁ。これって俺、身を任せるしかないのかなぁ?
………。
「四年間分抱いて欲しいんだろ?」
俺が四苦八苦していると来ていたシャツのボタンに慎也は指をかけた。
指が長くてキレイでさかむけ一つない手だ。漫画で言えばあのキラキラトーンが背景に貼ってある感じ。
「や…、自分で…脱ぐよ」
何か人に脱がされるのって嫌だ。何か嫌だ。
パッと慎也の指を払うと代わりに自分でボタンを外そうと試みた。
「ズボンも…?」
脱ぎながらしどろもどろ聞くと、
「当たり前だろ。そのまま浸かって何着て帰るつもりだ?」
はい、その通りですね。
普通にすぐ帰ると思っていた俺は着替えなんて持って来ていない。
慎也は恐らく何枚か替えがあるだろうが、俺が慎也の服合うわけないし。
…てことは下着も……。恥ずかしくて今なら俺、死ねるかもしれない。
ゆっくり、確実に肌が露になる。変態慎也はその様子を余すところなくじっくり見ていた。
だから見るなよやりにくいだろが。
慎也に目を合わせられなくて、自然を装って後ろを向いた(つもり)。
「ぬ、脱いだ…ぞ」
衣服を全部、備え付けてあったかごに入れると俺はようやく振り返った。
うっわ俺、慎也の目の前で全裸なんだ。何か想像すると鳥肌が立つ。
ふと、首につけてあるネックレスに気付いた。これ付けて風呂に入るのはさすがにちょっと。
「取るなよ」
俺が外そうとすると慎也は腕を掴んでそれを阻止した。
「っ、でも錆びるかも…」
「錆びない。大抵のアクセサリーは錆びないようになってるだろ」
腕を掴まれたまま、慎也は俺の唇を塞いだ。
「ん…んッ」
いきなりの、懐かしい慎也のキスだ。
舌を舐められるとその感覚が脳まで行き渡る。最初、第一波はくすぐったい。
「ぁ…はぁッ」
徐々に口のなかが潤いだすと、慎也の舌はスムーズに奥まで入りこむ。
俺はどうしていいかわからず、ただ口を開けっぱにしているだけだった。
第二波。気持ちよくて色々痺れそうだ。
「んふッ、ふぁ…」
お互いの唾液のせいでくちゅ、と何度も聞こえた。
すっかり口内を這いずりまわせた後、慎也は唇に触れるだけのキスをしてやっと開放してくれた。
束の間の休息を与えてくれたあと、慎也は俺の頭を撫でながらこう言った。
「じゃ、お前が俺の服脱がせてくれ」
脱がせる。脱がせんのかよッ!?
じゃ、ってなんだよ。何のついでだよ??
うわぁ目がマジだ二回目。断るとどうなるんだろ。うん、想像したくない。
「…じゃあ、手あげて」
慎也が着ているのはTシャツだ。脱がせにくいんだ、前にボタンが付いてる服にしろよ。
俺が言ったとおり慎也は両腕を上げた。
シャツをめくり上げてそのまま脱がせようとするけど、身長が高いのでなかなか脱がせ辛い。
…俺なんでこんなことしてるんだろ。
「早くしてくれ。俺のおかれてる状況分かってないだろ。全裸の旭が目の前にいるんだぞ?」
「んなこと言うなら自分でやれよッ! お前デカイからやりづれーんだよ!」
そういうと半分だけ肌蹴たTシャツを慎也は脱ぎ、衣服をいれるかごに投げ入れた。
「下は出来るだろ?」
すみませんが逆に下の方が難しいかもしんない。
俺は意を決して中腰になり、ベルトを外してチャックを下ろすとそのまま一気にズボンをずり下げた。
説明するのが恥ずかしいから一息で言ったのではありませんよ…。
「ありがと。よし、じゃあ入るか」
全部脱がせ終わると慎也は俺の頬を撫でた。
温かい。流石平熱37℃。それだけが原因じゃない気もするけど。
バスタブの前にかかっているビニール製のカーテンをシャッと開ける。
もちろんだが湯は張っていない。
シャワーの蛇口をひねった。最初は水。段々水温が上がっていく。
「まず身体、洗ってやるよ」
と言いながら慎也はにっこり笑った。
「あ、あッ…もういいよッ、くすぐった…」
ソープで泡立ったスポンジを何度も俺に押し付けてくる。
慎也も俺も泡だらけだ。
「…ぁ、何でそこばっか…ッ」
チクビ周りを重点的にこすり付けやがる。わざとだろ。絶対わざとだろ!
他のところも触られるとくすぐったいけど、そこは特にだ。
「旭感じすぎ」
身体をぴくぴく反応させて顔が赤らんでる俺を見て慎也はくすくす笑う。
「あッ!!」
遂に彼は下半身に手を伸ばした。
「そ、そこ…洗わんでいいッ、っぁ」
スポンジを俺の陰茎に充てたまま慎也は後ろに指を滑り込ませる。
「んッ、や……しん、やッ」
泡だらけの慎也の指は音を立てて俺の内部へ入った。
「や…ぁ、あッぁあ」
指は奥まで達しないが、中で動くたび泡がグチュグチュ音をたてる。
高2の時の合宿で味わった感覚だ。
前も後ろも慎也に攻められて気が狂いそうだ。
泡が自分の体内に残る感触は抜きにして、気持ちがいい。
「あ、ぁん…ッん…」
ダメだイきそう。こう少し思ったとき、慎也は手を止めた。
「はぁ…はぁ…」
「旭だけ気持ちよくなるなんてダメだからな。洗い流したら俺のも扱いて?」
シャワーのトップから出る水を俺に当てながら慎也は言う。
水圧でイっちゃいそう。
「旭、後ろ向いて?」
慎也は俺の腰に手を添えて言った。
「い、やだ…」
ケツを他人に向けるなんてそんなAV女優みたいな真似できない。恥ずかしくて。
「大丈夫。俺しか見てない」
「それがイヤなのっ恥ずいだろ」
「恥ずかしがんなよ。俺は恥ずかしがってなんかないぜ?」
「お前と俺じゃ違うんだよ! 自分基準で考えんなッ」
「でもこのままじゃ穴の奥まで洗えないぞ」
うっ、それは…。
確かにアソコが泡でぬるぬるして気持ち悪い。
ていうかそれって慎也がやったことなんですけどね!?
「じゃあさ、このまま俺にもたれて?」
俺が行動を起こす前に慎也は身体を引き寄せた。
すとん、と慎也の肩に倒れこむ。
…あったけー。体温プラスシャワーの湯の温度でカイロみたいに温かい。
成程雪山で遭難した時にハダカで抱き合うのもわかるよ。
これなら生き延びられそうだからな。
「ちょ、慎…っ」
慎也はシャワーのトップを俺の背後に持って行った。
そして、泡が塗りたくられているソコに湯をあてる。
くすぐったいが気持ちいい。何か腑に落ちないけど。
「あ……慎…也ッ」
ぐいぐいと慎也はトップを押し込む。先だけ少し、穴に入ってきた。
「ッや、あ…ぁん」
内部で圧力の強い湯があたって、泡が流されると共に快感が襲った。
でも、イクほどの強さじゃない。
…もっと、欲しい。快感が。
"旭だけ気持ちよくなるなんてダメだからな"
ふとさっきの慎也の言葉を思い出した。
確かに、俺ずっと(絶頂に達してないものの)気持ちいい思いしてるけど、慎也は俺に構ってばかりで何も施してないよな。
慎也のことだからまた焦らしプレイと称して我慢してるだけなのかもしれないけど。
シャワーが止まった。
今までシャーシャー水の音がしてたのに、一気に静かになる。
俺は不意をついて慎也の下半身に触れた。
「…あ、」
ぴくんと彼の身体は反応する。
「何だ…いきなり?」
「…扱けってお前が言ったんだろ」
もう一度それに触れる。というか今度は指を滑らせてみた。
「……ッ」
いくら攻めポジションだからって、慎也もここを触られると感じるだろう。
それは俺と同じだと思う。
顔を見ると目は閉ざされ、頬が赤らんでいる。
やはり、感じてるんだな。
俺の施しで慎也がその表情を浮かべているのだと知ると、途端に嬉しくなってきた。
しゃがみこむと、慎也のモノを口に含んだ。
「あ、…さひ」
やばい。慎也…俺に感じてるんだ。嬉しい。
なるほど、これが攻めキャラが感じてる優越感か。
こんなこと常に感じやがって!
全国の受けキャラの皆様、俺がリバというものを慎也(攻めキャラ)に見せ付けてやります!!
「ん…ッ」
舌で俺はそれを弄った。
その度慎也は反応してくれる。いい気味だぜ。
「あ、旭…ちゃんと、…剥けよ」
はぁ、余裕かましてくれちゃって。
こっちが"ムカつく"っていう感情を抱くことわかってねぇなコイツ。
「ん、ふ…ひんぁ」
銜えたままだと喋りにくいと判断した俺は一旦、口に含むのをやめた。
ぴちゃっと音を立て、唾液でその先端はべとべとだ。
「慎也、…俺のも…やれよ?」
なーはっはっは! このセリフ、ちょっと言ってみたかったんだよね!!
こう、こっちが上下関係としては上だぜ?的な。そういう体験が夢だったのだ!
…まったく自分でも虚しい夢だと思うけどな。
俺のその言葉に慎也は微笑みながら頷いた。
ああ、いい気持ちだ。優越感とは素晴らしい。
慎也のモノを俺は再び扱き始めた。
「ん…ぁ、」
施しに忠実に嬌声を上げてくれる。まぁ俺もそうなんだが。
「あさ…ひ、出る…」
そう告げた直後に、彼の下半身の先端から精液が飛び出した。
ビニールのカーテンにべっとりかかる。
束の間の優越感をあとで後悔するとは、この時はまだ思わなかった。
「…もうそろそろ上がろうか」
バスタブを綺麗に掃除し終わると、慎也はカーテンを開け、新品のバスタオルを取った。
「え…」
下半身の処理やってくれないのかよ。
少し思ったが言葉に出すのはあまりにも恥ずかしすぎるので黙っておくことにする。
「イきたいって思ってるだろ? 心配しなくてもベッドの上でたくさんいじめてやるからな」
慎也はくすっと嘲笑して続けた。
「旭のことだから俺の、抜いてくれた時優越感に浸ってたんだろ。お前が、俺より"上"だと思うなんて許さない」
得意の下あごを持ち上げる仕草をすると、くちゅ、と一方的にキスをした。
「ん、な!?」
「まぁ営む前にせっかく成人したんだから酒でも一緒に飲もうぜ、な?」
営む言うな。ホントに下ネタ好きだな!
下半身が脳内支配してるよ。特上カバチで言ってたよ。
まぁでも、慎也と酒を酌み交わすのは悪くない。
俺はそんなに酒を飲むほうではないが、やはり大人になった以上その付き合いは必須だ。
増してや…ゴホン。す…好きな人となら。
バスローブを棚から取ると慎也は俺に渡してくれた。
ていうかホテルで男二人でバスローブなんて思い切りゲイカップルじゃねえかよ。
…と突っ込みたいがそれはちょっとやめておく。
「ワインとか頼もうぜ」
「え、頼むのか?」
頼むってもちろん、ホテルのボーイさん的な人に"注文する"ってことだよな。
で、持ってきてくれるときはもちろん部屋に入らないまでも姿は見られるわけで。
……ってこんな姿見せるわけにいくかあああああ!!
俺が慎也に諌言する前に、慎也は既にフロントに電話していた。
「スパークリング2本欲しいんですけど持ってきてくれますか? 部屋? あ、704ですけど。
はい、グラス2つ。…わかりました、じゃあお願いします」
「頼んでんじゃねえええ!!」
慎也が受話器を置いたのを確認すると俺は平手で彼の頭を叩いた。
「何で? 飲みたくないのか」
「飲みたい飲みたくないの問題じゃねーよ! ボーイさんがこの状況見たら苦笑するしかねーじゃねえか!!
お前はもうちょっっっと世間体っつーもんを気にしろバカ!!」
「…はぁ、じゃあ俺が部屋の外で待ってるよ。それじゃ問題ないだろ?」
うんざり、って感じで溜め息をつく慎也。
まったく溜め息つきたいのはこっちだよ。
神様は確かに慎也に顔も頭も極上のモノを与えたけど、性格だけは今ひとつだな。
やっぱり完璧な人間は製造不能だよ、うん。
俺が妙な納得をしていると、慎也はほぼ裸に近い、バスローブ姿で部屋の外に出ようとしていた。
「ちょ、ちょっ」
びっくりして慌てて慎也を引き止める。
「何だよ、今度は?」
「お前その格好で外出るのか!? 結局ボーイさん苦笑じゃねえか」
「何がいけないの? …旭の考えてることはよくわからん」
お前に言われたくないよ!
俺の中では世界で一番思考が読み取れない人物だよ慎也は!
あああダメだ。突っ込みどころが満載すぎて頭痛がしてきた。
重い頭を抱え込んでいると、ドアチャイムの音が部屋内に響いた。
はい、最悪のパターン来ました。慎也と争っているうちに従業員の方がスパークリングを持ってきてくれた、っていう。
「もういいじゃん。旭、見られるのが嫌なら隠れてれば? 俺が受け取るからさ」
うん、そうだな。そうするよ。っていうかそうするしかないようだ。
本当に慎也は半裸のまま酒を受け取った。
…しかも相手の従業員さん、女性じゃねえか。まったく信じられない。
「……慎也」
「何?」
慎也はスパークリングを俺に注いでくれた。
炭酸の泡が上ってく、赤紫色をしたワインをグラスの側面から見つめながら俺は呟く。
「慎也ってさ、…裸を他人に見せることに何の躊躇いもないんだな」
ワインを一口呑み込んでから言ってやった。
言うとすぐにまた二口三口とワインを飲む。あ、言っておくが俺は21歳だ。
酒は二十歳になってからだぞ。
「どういうことだ?」
慎也も同じようにスパークリングを嗜みながら俺に聞き返した。
「さっきだってさぁ」
一旦アルコールを口にすると、どんどん進む。
グラスの中は一気に空になった。
もうない、と分かった俺はボトルのワインを注ぎ足した。
「あの女の人から半裸でワインもらったじゃん」
俺はまるで麦茶を飲むようにグラスのワインを一気に飲み干した。
「そーいうの、平気なんか? …俺は」
三杯目。だけど普段はこんなに飲まない。
先輩からのみに誘われたとしても、せいぜい生中一杯だけで終わったりする。
「俺は、俺はだなぁ。他人がお前を見るの、嫌だ」
「…何て?」
「だーかーら。慎也は俺だけが見てればいい、っつーことだよ」
「何て? もう一回」
「だからぁ、俺だけが慎也を見ていたいの。他の人には見せたくない。っていうかお前コラ。わざと言わしてるだろ!?」
完全に酔ってるな、俺。
そんな俺と言った言葉に慎也はくすくす笑っていた。
最終更新:2010年05月22日 17:33