1: 名前:海☆07/13(火) 14:42:26
『シンデレラ』
それは、
灰まみれの子と呼ばれた惨めな一人の少女のお話。
あなたは、シンデレラのラストを知っていますか?
皆様が知っている『シンデレラ』
その『シンデレラ』のもう一つの悲しい物語。
[シンデレラ]
2: 名前:海☆07/13(火) 14:59:33
これは古い物語…
むかし、ある身分の高い男の人が、
2度目の結婚をしました。
1度目の結婚相手は原因不明の死亡。
2度目の奥様は、
大変自惚れ屋なうえ、いばりや。
その奥様の二人の娘も母親そっくりで性格が悪かった。
3: 名前:海☆07/13(火) 15:04:13
男の人にも娘が一人いました。
その娘は、心の優しいおだやかな娘でした。
1度目の奥様が、素晴らしく上品な方だったので、
娘は、その母親に似たのでしょう。
4: 名前:海☆07/13(火) 15:16:28
二人の結婚式がすみ、
数日の日にちが過ぎたころ…―――
「シンデレラ、シンデレラっ!」
家の中で、そう叫ぶのは奥様でした。
『シンデレラ』、つまり『灰まみれの娘』
奥様は、シンデレラの気立てのよさが、
かんにさわっていました。
理由は簡単な事でした。
5: 名前:海☆07/13(火) 15:37:18
自分の子供の性格の悪さが
性格のいい娘がいることで、
ひときは目立つからでした。
「シンデレラ、そんな所にいたの。邪魔よ!」
広い家の廊下を一人で掃除していました。
「あの…けれど、お母様が廊下を掃除しろと言うものですから…」
そうシンデレラが言うと奥様は、
シンデレラの長い茶髪をひっぱりあげました。
「…っ痛いわ……離してお母様…!」
「口答えするなんて許さないわ…」
そう言う奥様は、
シンデレラの髪をひっぱったまま。
奥様が手に持っていた裁縫道具から、
針を出しました。
6: 名前:海☆07/13(火) 15:49:58
そして、その針を
シンデレラの人差し指にさしました。
「痛いっ痛いっ痛いっっ痛いわ…!!お母様、針を離して」
必死にもがくシンデレラに奥様は、
ささやくのでした。
7: 名前:海☆07/13(火) 15:51:52
「シンデレラ。
あなたなんて、死んでしまえばいいのよ。」
8: 名前:海☆07/13(火) 15:56:02
指に刺さった針を思いっきり押し、
指を貫通させました。
「おっ…お母様、許してください……痛いわ…」
抜こうにも貫通した針を触ると
指の神経からビクビク痛みが伝わって抜けませんでした。
9: 名前:海☆07/13(火) 16:00:17
髪を引っ張っていた手をスッと離し、
裁縫道具を持ち奥様はどこかへ行ってしまいました。
「お母様……」
指から伝わる痛みは恐ろしく、
シンデレラは静かにそこで涙を流すのでした。
10: 名前:海☆07/13(火) 16:05:11
それから、何日も。
同じような日々を繰り返しました。
何度も、
何度も。
奥様だけではなく、奥様の娘達からもいじめを受ける。
シンデレラの痛みはとてつもなく、
つらいものでした。
11: 名前:海☆07/13(火) 16:11:55
そんなある日。
シンデレラがいつものように、
奥様から命令され掃除をしている時のことです。
奥様の娘達がシンデレラが掃除をしている場所の前に
たちました。
「…?なんですか、お姉さま達」
キョトンとした表情で言うシンデレラ。
すると、お姉さま達
「シンデレラ、靴をお磨きなさい。」
「…え」
12: 名前:海☆07/13(火) 16:17:23
お姉さまの中の上のお姉さまが、
自分の足を差し出しました。
「…はい」
嫌なのを抑えて、シンデレラは差し出された靴を磨こうとします。
が、
この出来事が、
心の優しいシンデレラを黒く染めるのでした。
15: 名前:海☆07/14(水) 20:31:18
差し出された靴に、
シンデレラの手が触れた。
その時、
16: 名前:海☆07/14(水) 20:55:43
「ちょっと!!ふざけないでっっ
あんたの、その汚い手で私の靴を触らないでよっっ!!」
そう上のお姉さまが言いました。
その言葉を言った次の瞬間の事です。
ガンッッッ…
何かを地面に叩きつけるような音が、
廊下に響きました。
17: 名前:海☆07/14(水) 21:04:12
「っ……」
その音の先にあったものは…
シンデレラの頭が、
上のお姉さまの高いヒールに踏みつぶされていました。
シンデレラの後頭部からは、
赤いものがジワジワと
流れていました。
18: 名前:海☆07/15(木) 21:26:03
「あ……あぁ…」
うまく声がでないシンデレラ。
それを見た上のお姉さまが、
捨て猫にでも話しかけるように吐き捨てた言葉。
「醜い灰は消えなさい。」
19: 名前:海☆07/15(木) 21:36:01
得意げに、不気味に。
そっと笑うお姉さま達。
近くでシンデレラとお姉さま達のやり取りを見ていた、
執事達もメイド達も
シンデレラのあまりにも痛い現実に、
ただ、一緒に笑っていました。
「今のは、痛いわよねぇ」
クスクス
「絨毯の色が赤で良かったよなぁ、目立たないよ」
ハハハッ
「かわいそうな、シンデレラぁ」
20: 名前:海☆07/15(木) 21:38:18
『カワイソウな…』
『ミニクイ……』
『ハイまみれの、シンデレラッ……………』
21: 名前:海☆07/15(木) 21:44:43
シンデレラは動かぬまま、
立ち上がるのが怖いまま、
ただ同じ言葉が流れていた。
そして、心の中で思うのでした。
「私が何をしたと言うのですか。
お父様に言いたくても、
お父様はママ母のいいなりで…
言いたくて、けど言えなくて。
こんな私に、なぜこんな仕打ちがくるのでしょう。」
涙を流して、シンデレラは誓います。
22: 名前:海☆07/15(木) 21:48:30
「私を苦しめた人々に、天罰が下るといい…」
シンデレラの中に、そっといた悪魔が
優しい心を貫いて
シンデレラを黒く染めたのでした。
23: 名前:海☆07/15(木) 22:21:16
「おい、お前ら何してる」
鋭い声が辺りを静める。
その声の主は、お父様でした。
「お…お父様なのですか……」
シンデレラが黙っていた口を開いた。
「誰だ?誰がこんな事をしたんだ!えぇ?!」
お父様は怒りを撒き散らした。
誰も、
何も言えない。
見ていただけの人も、助けなかったから同罪だからです。
そして、誰かが呟く。
「転んだだけです……」
そう、呟いたのは
「私が、躓いて転んでしまい皆様が心配してくれていたのです」
なんとも微笑ましい表情で、
シンデレラが、そう言ったのです。
27: 名前:海☆07/16(金) 20:33:16
「な…転んだだけで、そんなに血がでるか?!」
お父様は、シンデレラの言葉を疑った。
それに対しシンデレラ。
「打ち所が悪ければ血だってでるわ…お父様」
血のでた頭を押さえながら、
大丈夫と言いその場からいなくなりました。
28: 名前:海☆07/16(金) 20:44:07
こんな事になっても、
誰にも家庭内でのイジメの事を言わなかった。
その理由、
あなたは分かりますか?
シンデレラが「優しい子」だからでは、ありません。
シンデレラの「お父様がお母様の言いなり」だからでは、ありません。
今までは、そうだった。
そう『今までは』……
今のシンデレラには『復習』の二文字。
善の心は、ないのでした。
29: 名前:海☆07/16(金) 20:52:43
さて、ある日の事です。
いつもの用に仕事をおえた後、
暖炉の隅の灰にすわり冷えた体を温めていたシンデレラ。
いつもなら、
『また、灰まみれのシンデレラがいるよ…』
『汚いわぁ…』
など、家のものから批判の声が
ヒソヒソと飛び交うのに、
今日はそんな事が、ありませんでした。
心まで冷えてしまったシンデレラに、
お姉さま方から、
ある『お願い』をされます。
それは…
30: 名前:海☆07/16(金) 21:05:39
お城の王子様が舞踏会を開くことになったのです。
おもだった友人が大勢招かれました。
お姉さま方もです。
二人とも、一用身分の高いお嬢様でしたから。
そして、
「ドレスは何を、来て行ったらいいかしらぁ」
「どれが一番美しくみえるかしら」
とシンデレラに相談を持ちかけました。
シンデレラの趣味がいいことを知っていたからです。
シンデレラは快く相談を聞き、
おまけに髪を結ってあげました。
31: 名前:海☆07/16(金) 21:14:46
「ねぇ、シンデレラお前も舞踏会に行きたい?」
そう下のお姉さまは聞く
「まぁ、からかわないでください。私なんかが行けるはずないじゃないですか」
「そうよねぇ!灰まみれのシンデレラが舞踏会に現れたら、皆の笑いものよねぇっ!!」
高い声をあげて笑うお姉さま。
それをシンデレラは二コリと笑い見ていました。
そして、他の人ならお姉さま達の髪なんて
おもいっきり見っとも無くするでしょう。
でも、シンデレラは思いっきり綺麗にしてあげました。
32: 名前:海☆07/16(金) 21:16:53
でも、その理由も一つなんです。
すべて……
一つの事を目的として。
35: 名前:海☆07/17(土) 16:23:38
そして時は過ぎ、
とうとう待ちに待ったその日がやってきました。
お姉さま達は、
ウエストをできるだけ細くしめ上げようと、
コルセットの紐を十二本も切り、
上のお姉さまは赤のビロードのドレスを。
下のお姉さまは金の花の模様のマントと緑のドレス。
どちらも華やかで美しいドレスを身にまとっていました。
最終更新:2010年07月25日 20:27