評価と贈与の経済学
自分の気持ち至上主義
岡田氏によれば、私たちは戦後民主主義のもと、「自分の気持ちを大切に」、「自分らしく生きなさい」と教わり続け、障害を乗り越えて自分の気持ちや自分らしさを貫き通す生き方を「カッコいい」、「美しい」と感じる価値観を刷り込まれて育ってきた。つまり、行為を「自己決定」するに際して、「自分の気持ち」を至上の判断基準とするような、生きる上での態度(エートス)のことです。
情報社会の現代では、この世界にはたくさんの人がいて自分はその中のちっぽけな一個人にすぎないんだということに、誰もが嫌でも気づかされる。そしてそのことによってかえって唯一無二の自分の個性を、気持ちを大切にしようという「自分の気持ち至上主義」が立ちあがってくる、というのだ。これは自 分の気持ちに現実を妥協しないということであり、ひと言で言ってしまえば、みんなわがままになってしまったってことを意味する。
昔は貧しかったから、自分が「何が好きだ」とか「やりたいことを探す」よりも、生きるためにさっさと一人前になることが大事だった。豊かになると、やりたいことをやるのが幸せなことだと考えられるようになって、それで「自分の気持ち至上主義」になってしまった。
「気持ち」というのは常に変化を続けながら、苦痛を避けて快楽を求めようと動くものなので、それを満足させ続けようとするのであれば、「気持ち」を喜ばせる新鮮な「刺激」を、不断に与え続けるしかありません。
要するに、「自分の気持ち至上主義者」は、最終的には「刺激ジャンキー」になるほかはないわ
けですが、それで一生を満足して過ごすことができるのは、「気持ち」に(刺激という)「ドラッグ」を与え続けることに成功した、ごく一部の人たちだけなの
であって、多くの人たちは、「気持ちいいことが幸福であり、よいことである」という意識だけはもちながらも、実際にはそれが達成できないことも多いですか
ら、むしろ多くのフラストレーションを抱えながら、日常を過ごすことになりがちです。