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伊坂幸太郎『砂漠』


 「みんな必死だな」と思う僕を、鳥井は「学生は近視眼型と鳥瞰型に分類できる、北村は鳥瞰型だ」と断定する。「近視眼型は目の前のことしか見えない、鳥瞰型は上から全体を眺めて周囲を見下している」。仙台の繁華街にある、全国チェーンの2階だ。法学部の学生が八十人、集まっていた。鳥井は「よし行くか。女の子と親交を深めないで、何が、大学生だよ」と僕の肩をたたき、立ち上がった。南はちょっとした超能力が使える。東堂は誰が見ても美人だった。そして遅れてきた西嶋は「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」と演説した。何事にもさめている僕とその大学生活が、もしかすると彼らによって、劇的なものになるのかもしれない。そんな予感とも期待ともつかない気配を、その時の僕は感じていた。なんてことは、まるでない。

 僕はできる限り講義には出席しようとしていたから、朝一番の講義室に空席が増えていく様を見ながら、なかなか興味深いな、と思っていた。西嶋に「四者会談。確率と中国語の勉強」に誘われる。平和を築くのを止めない西嶋が4位で麻雀は終わり、帰り道、東堂が西嶋に惹かれていると告白。東堂は、新入生歓迎のボウリング大会で、下手なのに臆さない、自分を信じる西嶋を見る。翌々日、本を見ながら練習する西嶋も見る。悔しかったのだ。ボウリングが出来なかった自身を。自分を信じているから。「北村だったら絶対やらないでしょ。わたしもそう。でも、じゃあ何の事なら必死にやるのか、って思わない? 結局さ、いざという時はやる、なんて豪語している人は、いざという時が来てもやらない。西嶋はさ、どんなことも真剣勝負なんだよ、言い訳しないで、逃げずに、克服しようとする」。

最終更新:2014年12月21日 15:49