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東浩紀『弱いつながり』概略


 ネットは見たい情報しか目に入らないので、自由にはしてくれない。なら、リアルな身体を変えるしかありません。あなたは、環境の産物だからです。多くの人は、「自分が求めること」と「環境から自分が求められること」が一致するときこそストレスフリーに活動することが出来ます。自分を変えたいと願うなら、環境を意図的に変えること、環境が求める自分の姿に定期的にノイズを忍び込ませること。

 

 「弱いつながり」という概念があります。パーティでたまたま知り合った人。つまりあなたのことを何も知らない未知の繋がりの人の方が、あなたが考え付かない未知の環境を教えてくれやすいということです。人生の充実には強い絆と弱い絆の双方が必要です。世の中の人生論は2つに分けられます。ひとつの場所にとどまって、いまある人間関係を大切にして、コミュニティを深めて成功しろという村人タイプと、一つの場所にとどまらず、どんどん環境を切り替えて、広い世界を見て成功しろという旅人タイプのもの。でも本当はその二つとも同じように狭い生き方なのです。だから、観光客タイプの生き方をお勧めします。村人の役割を忘れず、人間関係を大切にしながら、自分の世界を広げるノイズとして旅を利用すること。旅に自分探しのような期待をせず、検索ワードを拡げる経験としてクールに付き合うことです。もっというと、旅の目的地にある情報は何でもいいのです。出会うべきは、新しい人間関係、新しい欲望に妬かれること。いまや情報なんて大した価値はありません。その価値のない情報に感情のタグをつけることです。

 強い絆は計画性の世界です。だから計算高い、慎重なひとは、強い絆をどんどん強めることを望みます。いま自分が置かれた環境の中で、統計的に考えて最適なパフォーマンスを出そうと努力します。ビジネス書やライフプランのマニュアルには、その方法がたくさん書いてあります。けれども、そもそも人生がいつまで続くのか。自分が死んだら終わりです。そのとき、統計的に基づいた計画に従い、リスクヘッジをすることが本当に正しいのでしょうか。他方で弱い絆は偶然性の世界です。人生は偶然でできています。本書で「新しい検索ワードを探せ」という表現で繰り返しているのは、要は「統計的な最適とか考えないで偶然に身を曝せ」というメッセージです。最適なパッケージを吟味したうえで選ぶ人生、それは、ネット書店のリコメンデーションにしたがって本を買い続ける行為です。外れはないかもしれませんが、出会いもありません。リアル書店でなんとなく目についたから買う、そういう偶然性に身を曝した方がよほど読書経験は豊かになります。偶然っでやってきたたったひとりの「この娘」を愛すること。その「弱さ」こそが強い絆よりも強いものなのだと気づいたとき、ぼくは、ネットで情報を収集し続ける批評家であることをやめて、旅に出るようになったのでした。


 

 日本人は、会社や町内会など、自分が所属している狭いコミュニティの人間関係を大切にしすぎていると思います。人間関係は少しおろそかにするぐらいがちょうどいい。 ぼくが推奨するのは観光客でいることです。所属するコミュニティがたくさんあるのはいいことです。ただ、そのすべてにきちんと人格を合わせる必要はない。話も全部は理解する必要はない。一種の観光客、「お客さん」になって複数のコミュニティを適度な距離を保ちつつ渡り歩いていくのが、もっとも賢い生き方だと思います。

 偶然性に身を委ねましょう。そんなに将来ことを考えなくてもいい。計画性のある人生は、予想外のできごとに対応できません。むしろ重要なのは、やってきた運命に身をゆだねること。全力で楽しむこと。人生において失敗とはありません。

 

 

最終更新:2014年12月20日 03:34