魔なる柱雷のごとく出で◆A23CJmo9LE
悪魔の襲撃に、即座に反応をとれたものはいなかった。
操祈がこれまで出会ったサーヴァントは殆どが人間であった。
前田慶次や纏流子はもとより、
モンキー・D・ルフィも言わずもがな。
モリガン・アーンスランド、一方通行、
垣根帝督は人間離れしていたが、それでも人の形は保っていた。
目前の青い肌のサーヴァントは、紛れもない化生の類だ。
刑兆が会ったサーヴァントはみな怪物ではあった。
吸血鬼
レミリア・スカーレット、夢魔
モリガン・アーンスランドも翼を生やし、ニューゲートを翻弄する怪物だった。
しかし、そのどちらも気品と美しさに満ちていた。
貴族然としたレミリアも王気を発するモリガンも美しく、敵ながら魅せられるものがあった。
今現れたこの悪魔からは、ひたすら戦いにだけ生きた獣の匂いしかしない。
コウモリのような黒い翼で空に浮く
不動明。その小脇に抱えられた
美樹さやか。
さやかの存在が少しだけ雰囲気を和らげはする絵だが、美女と野獣というには青い野獣の獰猛さに比して少女では役者が些か落ちる。
圧倒的な戦力差がそこにはあった。
ニューゲートがいない現在、刑兆たちにデビルマンに立ち向かうすべはない。
恐れ、気圧され、それでもさすがにサーヴァントか、操祈が一歩前に出る。
「なぜ私たちに
鹿目まどかさんのことを聞くのかしらあ?」
「金髪に白い手袋をした女サーヴァントに攫われたと聞いた。お前のことだろう?」
肉食獣の眼光が操祈を貫く。
冷や汗が操祈の背中を滝のように流れるが、ここで引いては全滅だ。
唾をのみ必死に話し続ける。
「その情報古いわよ☆もう彼女は麦わら帽子の仲間の手で助けられたから私は知らない――」
「空とぼけるな。そのあと人形が彼女を攫って行った。お前のところに届けると言っていたぞ」
ここで操祈の知らない情報が出てきて驚きが内心を満たす。
全く心当たりがない。人形という単語にも覚えがない。
「それ、誰に聞いて」
「誰でもいい。俺たちの協力者だが、それ以上教える必要性は感じないな」
取り付く島のない明の様子に操祈はこれ以上の追及をあきらめる。
有利な立場の者がみだりに情報を明かさない判断をするのは当然だろう。
誠意がない、と弾劾できなくもないが、生殺与奪を握られている状況で生きているだけ御の字と言われればそれまでだ。
「私たちは人形を使っての誘拐なんて覚えがない。人形を使う技能なんてない、と言っても聞いてもらえないわよねえ」
「そうだな。二つの情報に矛盾があるときどちらを疑うかといえば、味方の発言より敵のそれを重んじるわけがない」
それもまた当然の判断だ。
操祈たちの潔白の証明には
鹿目まどかがここにいないと示すか。あるいは邪道だが情報提供者の信用を損なうかしかない。
徹底的にまどかを探すか、矛盾を追求するための議論をするか。
(あの娘、マスターよね。鹿目さんの記憶で見た
美樹さやかさん……?魔女になったんじゃないの?
そこはよく分からないけど、鹿目さんを助けようというのは納得。となると情報源は
暁美ほむらさん、かしらあ?)
思考は刹那に纏める。
会話は少しでも冗長に時間を稼ぐ。
「あなた
美樹さやかさんよね?話を察するに情報提供者っていうのは
暁美ほむらさんだと思うんだけれども、あなた彼女のことをそこまで信用できるの?」
「え?なんで私とあいつのこと――」
ここまで会話に入っていなかったマスター、
美樹さやかに話を振る。
うまく会話を誘導できれば優位に立て直せると操祈はたくらむが
「マスター。奴の問いに答える必要はない。質問するのは俺たちだ。奴に主導権を譲ってやる義理はない」
当然それは明が許さない。
圧倒的な武力で議論のテーブルをいつでもひっくり返せる彼の発言は当然この場で最も力を持っていた。
その言葉で少し慌てたさやかも自身を取り戻して言葉を口にできる。
「ああ、うん、そうだね。でもさ、これだけは言わせて。キャスター、あんたなんかよりほむらの方がずっと信じられるよ」
強制的に議論の段階は進む。
あとはもう見苦しくやったやっていないの不毛な議論を繰り返すくらいしかできない。
明は実のところ内心悩んでいる。
彼は未だに
暁美ほむらを心底信用したわけではない。
さやかには悪いと思うが、
鹿目まどかを利用する手を打とうともしないキャスターを見ていると、ここにはいないのではないかと思えてしまうのだ。
(人を操る力があるといっていた。それが正しいならそれこそ
鹿目まどかを操り、俺たちを追い返すこともできるだろう。
鹿目まどかに何らかの耐性や操りたくない事情があるにしても、誰か別の人間を使って逃げるための囮に位はできる。
俺の沙汰を待つような行儀のいいやつには思えんというか、そんなやつが誘拐など企てるわけもなし)
恐らく犯人ではないだろう。
人形に攫われた
鹿目まどかは恐らく別のところにいる。時間を浪費しないで、急いで捜索に戻るべきだ。
となると人を操れるというこのキャスターの手を借りて効率的に探すという選択も出てくる。
ただ探すだけならそちらの方が効率的だ。しかし当然問題もある。
(そもそもコイツをそれだけ信用できるのか。真面目に探すとも限らんし、寝首をかかれないとも限らない。
……いや、無理だな。余計な心労を抱え込むだけだ)
ならば選択肢は二つ。
彼女たちを見逃して捜索に集中するのか、倒してから心置きなく探すのか。
敵対するキャスター、そのマスターらしき少女、もう一人の男を明は観察する。
(キャスターと比してもあの男の方がまだやれそうだが、纏めて10秒もいらんな)
そもそもが聖杯戦争の敵。
見逃す理由があるとしたら時間と体力の消耗を惜しむかどうか。
どちらの浪費もないというならわざわざ見逃してやる道理もない。
明の全身の筋肉に力ある緊張が走る。
目の前の敵を片付けて、
暁美ほむらと合流するか単独で探すか改めて相談しようと――
「バーサーカー!前、前!なんか飛んできてる!」
さやかの声に前方へと注意を向ける。
どん!と音を立てて巨大な斬撃が飛んできていた。
手刀で弾けるか、とも思うが震動するその刃にはかなわないだろうと判断し、身を大きく躱す。
それによって操祈たちからは少し離れてしまった。
「何者だ…!?」
デビルマンの認識能力でもって刃の出どころを探る。
するとサーヴァントの感知能力の外に巨大な影があるのが見えた。
それが大きな薙刀のようなものを振るうと再び斬撃が飛来する。
「ちぃッ!」
さやかを抱えているため人外の速度で動くことはできない。
仕方なく余裕をもって大きく躱すざるを得ない。
その間に攻撃を仕掛けている大きな影との距離は詰まり、襲撃対象である三人との距離は広がる。
『おい、刑兆おれは狙撃手じゃねえぞ!』
『それ言うならおれだって観測主じゃねーよ!てか逸れてる右に五度修正!』
攻撃を放ったのは当然、刑兆のサーヴァントである
エドワード・ニューゲートだ。
霊体化して向かってはいたが、刑兆からの念話で間に合わないと判断して遠方からの攻撃に移った。
残念ながら弓兵でないニューゲートに遠見の技能はなく、刑兆と視覚を共有し、マスターに誘導される形で斬撃を飛ばす。
大雑把な狙いではあるが、バッド・カンパニーの操作で多少は馴染みがあるのか刑兆の指示は悪くない。
飛来する斬撃に翻弄され、明は今一歩攻撃に移れない。
明単身ならばそうでもないのだろうが、いまさやかを放り出せばキャスターの脅威にさらすことになる。
それでも少しづつ射程圏内に刑兆たちを捉えていくのだが
「間に合った、な!」
大きな足音を立て、ニューゲートが合流する。
刑兆たちの前に仁王立ちし、その背には一歩も通さんと構える。
こうなれば一方的な虐殺ではない、対等の闘争へと場は切り替わる。
再び明は選択を迫られる。撤退か、戦闘か、協力要請か。
「ダメもとで聞いてみるが。俺たちに協力し
鹿目まどかを捜索するか、それができなくとも俺たちが退くのを黙って見逃すつもりはあるか?」
「無理だな。喧嘩吹っ掛けといて協力なんざ論外だ。見逃せってのもな、周りにバーサーカーだのセイバーだのよくわからんカブトムシだの敵が多い。ここらで少しばかり減らしておきたい」
ニューゲートは薙刀を送還し、空手で構える。
その様子を空から明は観察している。
(右手に…あれは矢傷か。薙刀は十全には扱えんと。それにバーサーカーに、セイバー。どうやらずいぶん混迷としているようだ)
ゆっくりと明も戦意をニューゲートへとたぎらせていく。
「た、戦うの?バーサーカー?」
「逃がしてはくれないそうだからな。仕方あるまい」
「それはいいんだけど、私はいつまで抱っこされ、わぷっ!」
声をかけたさやかを明が翼で覆う。
そこに操祈がリモコンを向けていたのだ。
心理掌握がさやかを庇った明に機能することになる。
「…なるほど。体液を弄るのか?それで脳の機能に影響をもたらすわけか。些か気分が悪くなったが、大して効かんな」
超能力の力をまともに浴びて少し気分が悪い、で明は済ませた。
コウモリや山羊などを吸収したデーモンの勇者アモン、彼と合体した明の体は生物的にも人間ではない。
対人間に特化しすぎた操祈の宝具では僅かの影響を与えることしかできなかった。
だがそれもさやかに対しては厄介な能力だろう。まさかこのままさやかを抱えたまま白ひげのサーヴァントと戦うわけにはいかないが、さやかと別れるのも避けたい。
「……仕方ない。マスター、少し悪いが協力してもらうぞ」
「え?バーサーカー、何を、ああぁぁぁぁぁっ!!!」
バーサーカーの肉体が白く輝き、その光が剣のようになってさやかの体を貫いた。
その切っ先に触れたところからすさまじい痛みと快感が同時に流れ込み、さやかに艶やかな悲鳴を奏でさせる。
仲間割れか、と周囲は観察していたが。
光が晴れるとそこには一つの影があった……否、一つしか影がなかった。
ファンタジー世界の軽装な剣士のような服装。左右非対称なスカートにビスチェ風のトップ、フォルテッシモを模った髪飾りといつもの魔法少女の装い。
それに背中から生えた翼で空を飛ぶ、青い鎧のようなものを纏った
美樹さやかの姿があった。翼を扱うためかマントは取り払われていた。
体を駆け巡っていた感覚の余韻に上気しながらも己の変化を確かめる。
「これって……」
『デーモンアーマー、いやデビルマンアーマーといったところか』
さやかの脳裏に念話が明から送られてくる。送り主は鎧だった。
『バ、バーサーカー!?あたしの体になにしたの!?」
『端的に言うと君の体と俺の霊体が合体している。能力は説明したし、昼に見せたな?ソウルジェムとは合体していないから君が主導権を握ることもできる』
デーモン族の合体能力により二人の体は一つになった。
鎧は完全に肉体と同一化し、
美樹さやかの体も人外たらしめていた。これでもう操祈の精神操作も効かない。
『キャスター対策だ。それにあのサーヴァントによると、どうやら
暁美ほむらとそれを襲ったバーサーカー以外にも敵はいるらしい。
奇襲を避けるためには俺が君の身を守る騎士になるよりも、こうして鎧となった方がいい』
『あ、うん。それは、まあいいんだけどね』
戦術的な意味は納得できたが、それに伴う作用を思い出してさやかの頬が再び熱を持ち出す。
体の感覚は消せるといっても程度はあるし、また何度もやられるとクセになってしまわ……
『ない!それは超えちゃダメなやつだから!』
『…気にするな。俺はアモンを拒絶したから分からないが、大きな意思と一体化するのは心地のいいものだそうだ。
とにかく今は戦う時だ。さやか、今更だが君の体と力を俺に貸してほしい』
『……前半は聞かなかったことにするよ。で、あとはオッケー、任せるよ。やっちゃって、バーサーカー!』
その声と共にさやかの表情に意図しない獰猛な笑みが浮かぶ。
そして鎧がどんどんと体の表面を覆っていき、そして巨大化していく。
そして青い鎧が改めて、魔神と謳われたデビルマンの形へと変じると、ニューゲートの前に並び立つ。
巨大化はしたが、それでもまだニューゲートより一回りは小さい……いや、建物を見下ろすサイズのニューゲートと一回りしか違わない巨体となっていた。
言葉もなく二人は組み合う。
がっぷり四つでの力比べ、はじめのうちは拮抗していたそれだったが
「ここにきて、サイズで拮抗するのも力負けするのは初めてだな……!」
ニューゲートが押され始める。
この聖杯戦争では吸血鬼やサキュバスといった人外、生前は巨人すら力で捻り潰した男が悪魔を相手に力で劣る。
右手の負傷もあるが、2万年以上の神秘を積み重ねたアモンの魔性がそれだけ優れていると言えよう。
咄嗟に頭突きを喰らわせいったん体制を整えようとする。
だがそれを見越したように明が口腔から火炎を放射した。
「ぐぁっ!」
顔面が焼かれる。
咄嗟に武装色の覇気を鎧とし、突き飛ばして距離をとろうともするが、掴んだ腕を明は放さない。
ならばとニューゲートが膝蹴りを繰り出す。
明は容易にそれを受け止めるが、膝からグラグラの実の力が放たれ、あえなく吹き飛ばされる。
「妙な能力を持っているようだな!」
「口から火ィ吹く化け物がほざきやがる!」
距離が空いた拳を振るい、続けて震動をニューゲートが打ち出す。
先刻までのように避けるだろうと予測したが、明はそうは動かない。
何かを握った右手を振るうと、震動が切り裂かれる。
そしてそうして開けた突破口を真っすぐ駆け抜け、ニューゲートに斬りかかった。
明が手にしたのは合体したさやかの魔術で生み出した刀剣だった。
さやかが握れば長剣といったサイズになるが並外れた巨漢となったデビルマンの手にあってはせいぜいがジャックナイフのように見える。
今のニューゲートは薙刀を振るえず、力では明が勝る以上まともに受けるわけにはいかない。
武装職で硬化しても止められるかは未知数のそれを回避しようとはするが、翼も用いた機動で明の方が速度でも優れる。
刃がニューゲートに届くその刹那
「バッド・カンパニー!」
小型の戦闘ヘリからありったけのミサイルが飛んだ。
それがジャックナイフに着弾すると、震動を受けてダメージの蓄積していたためにあっけなく折れる。
「よし、いけるぞライダー!」
「おう、よくやった刑兆!」
ナイフで斬りかかっていたのが空振った隙をついてカウンター気味に震動を纏った拳を打ち込む。
顔をもろに捉えたそれは明の首を大きく揺るがせ、乾いた木が砕けたような音を立てて吹き飛ばす。
人がしてはいけない領域にまで顔をのけぞらせ、柳のように揺れる。
首をへし折られた魔人が地に伏せた。
「やったか」
刑兆が息を漏らす。
戦闘に介入できたのは奇跡的だ。同じことをもう一度やれと言われても無理だろう。
あの吸血鬼やサキュバスよりも強いかは分からないが、恐ろしさでは勝るなと内心ぼやく。
「とっとと行こうぜ。ただでさえ連戦だ。追い打ちなんざ御免こうむる」
そういって歩き出そうとする刑兆をニューゲートが制した。
何だよ、と言いそうになるがそこで気づいた。
サーヴァントの死体が消える気配がない。
……倒れていた明が幽鬼のように立ち上がった。
グキリグキリと音を立てて首の骨が繋がり、真っすぐにこちらを煌々と光る目で見つめていた。
「やってくれたな。顔を狙ったのはさっきの炎の意趣返しか?」
「はっ。あんな程度、ウチの息子の方がよっぽどいい火加減だったぞ」
強気な言葉を吐くがさすがにニューゲートも不気味な感覚を覚えていた。
人間兵器パシフィスタも、他にも生前あったあらゆる怪物どもも、さっきまでやりあっていた垣根なる怪人も首を折ればさすがに絶命していた。
そこからの復活も生理的に嫌悪感を示すような音を立ててのものでは、いかな武人と言え完全に平静を保つのは難しかろう。
『ちょ、大丈夫なのバーサーカー!?』
『問題ない。首が折れても生き延びるデビルマンの生命力と君の回復力の賜物だ。感謝する。
確認するが痛みはないな?ソウルジェムにまで伝わらないよう気は配っているのだが』
『いや私は大丈夫だけど!バーサーカーは!?首が折れるとか痛くないの!?』
痛いに決まっている、という言葉をぐっと飲みこむ。
そんなものは些末事だと。そんなものより痛いことがあると。
内心でさやかには慈愛に満ちた笑みを向け。
外面で敵に対して獰猛な笑みを浮かべる。
それに敵が気圧されたのを見て改めて手中に剣を生み出そうとする。
そこへ飛来物。そして言葉。
「キャスターさまぁ~!いざ首実検をぉ!ひゃっはははあははははは!!!」
歯車の軋む音。不愉快な笑い声。
キャスターに向けて何かを掲げて突撃する人形だ。
長い棒のようなものの先に何かが刺さっている。
それは
美樹ちゃん 小柄な
死臭 怒り
憎悪 キャスター 人形が
血
が
首から 出て
死 うそ ここで
ぬ の?
―――――まどかぁっ!!!
巻き起こった混乱を最後に二人の人間的な思考が失われていく。
美樹さやかの心中を絶望が満たす。ソウルジェムが穢れていく。
不動明がかつてのトラウマを刺激される。人の善性に、自らの弱さに失望していく。
魔神が、生まれる。
それはある魔術師の策謀の結果。
□ ■ □
「さて、お久しぶりでございます。目の離せない活劇に再度、この道化の登板をお許しくださいませ」
「なぜ人形が少女の首を高らかに掲げ、現れたのか。賢明な皆様ならお気づきの方もおられるかと思います」
「歴史の影に女あり。では人形の影には誰がいるのでしょうね?」
「答えは、これより語られます演目に。どうかお見逃しのありませんよう」
□ ■ □
「おい、
間桐雁夜。だいぶ離れたし、いい加減起きてくれ」
「ぇ、ああ……?」
消耗し、侍に投げられ意識をなくしていた雁夜に声がかかる。
どこかで聞き覚えのある声に疲労で霧のかかった頭を必死に巡らせて答えを出す。
「
人吉善吉か?」
「おっ、そうだよ。分かってくれたか。助かるぜ」
「それじゃあもう降ろしても構わないかしら?」
どうやら自分は女性に背負われているらしい、と気づく。
さすがに普通なら
人吉善吉と役割が逆だろうから、彼女がサーヴァントなのだろうかとそちらに意識を向けると、見覚えのある姿に度肝を抜かれた。
「お前、セイバーのマスター!?」
「ああ、違うんだ。話せば長いんだが彼女も人形なんだよ」
「な、人形?これでか」
背負われ、密着している相手には体温や鼓動も感じる。
首筋からは女性特有のいい香りも
「ぐぇっ!」
「おい、アプ・チャー、何してるんだ!重症人だぞ!」
「ごめんなさいね。
暁美ほむらの体を再現しているから身体データは完全に彼女のものだけども、それでもセクハラというものを私が主張してもいいものかしら?」
え、と男二人の声が揃う。
雁夜は消え入るように小さくなる。
善吉はあの時の感触は、などと思い出して悶々とするが
「っだ、大丈夫か雁夜!?立てるか?」
「いや、まあ厳しいが何とかする。ありがとう」
善吉が誤魔化すように地面に転げ落ちた雁夜に手を伸ばす。
その手を雁夜が弱弱しくとる。
「うゎっ!」
「な!?」
二人の間に電流のようなものが駆ける。
そして走馬灯が雪崩れ込むように脳内を犯す。
禅譲葵への想い。黒神めだかへの想い。
遠坂時臣への憧憬と嫉妬と失望。めだかと渡り合うあらゆる人への些細な嫉妬。
蟲に体を蝕まれる苦痛と快楽。しろがねへと体が変えられていく恐怖。
互いの経験が、
間桐雁夜のPSIを通じて交換された。
「うわぁ、今のは……?」
「大丈夫かい、人吉君?」
「な、何とかな」
突然の事象に混乱する。
雁夜自身もこの現象についてはまだよく分かっていないのだから当然と言える。
「以前もこんなことがあったが、まあお互いをより深く知ることができたということでここはひとつ、ね?」
「制御できねえのかよ……まあ俺もあまり人様のこと言えたもんじゃねえが」
未だに脳裏に巣食うフェイスレスの残照に怯える身としては笑えない。
アプ・チャーたちを維持するだけでも怪物のことを『理解』し続けなければならないのは人吉にとっても厄介な状態だった。
「どうやらお互いほぼ身一つになってしまったようだね」
「ああ、そうだな……」
「一応私を忘れないでもらいたいのだけども」
アプ・チャーが僅かに口を挟むが、それでも苦しい現状は変わらない。
その欠けを補いたいと
間桐雁夜との合流を、そして何か惹かれるところのあった白いサーヴァントのことも求めてきたのだがより追い込まれた事態になっている。
「人吉君、人形を作ったりはできないのかい?」
「人形造りか」
そう。
たしかにそうすれば手ごまは増やせる。
仮に人吉が作れずとも、自動人形の中に自動人形を作れる固体は少なくない。
「一応私が低級のなら作れるけれども。体液も血液があれば私から増やせるし」
しかし、まず材料の問題に突き当たる。
人形の体液を機能させるには人間の血が必要であり、
NPCの被害が出る。
あまり積極的に取りたい方策ではない。
それにあまり多くの人形を維持するのは人吉の精神が持つかどうかも自信がなかった。
あまりにも自らをフェイスレスと『誤解』させていては、自分自身がいつかフェイスレスこそが自分だと誤解してしまいそうで恐ろしかった。
「できて一体、位が限界だと思う。それ以上は俺がもつかどうか……」
「そうか。それじゃあもしその時は極上の一体を作らないとね」
雁夜が力づけるように笑みを浮かべる。
善吉もつられるように笑った。
「じゃあしばらくは僕が蟲を飛ばして周囲を探ろう。そしてどこかで休みながら方策を練ろうじゃないか。お互い疲れているようだし」
そう言って手を振ると数匹の蟲が飛ぶ。
同時に何度も咳き込むが、それを何でもないことのようにゆっくりと歩き始めた。
「ちょ、大丈夫なんすか!?」
「気弱なことは言ってられないよ。あまり時間もない」
サーヴァントを失くしたものは6時間後に灰になる。
二人はそのリミットにも怯えなければならないのだ。あまり呑気にはしていられない。
「最低限の休養をとったら動こう。少なくとも一騎はサーヴァントを確保しなければ」
「一騎?」
「ああ、そうだ」
雁夜の顔が自信のある表情へと変わる。
「まず君が3時間そのサーヴァントと契約する、それから僕が契約しなおす。そのリレーでどうにか命を繋げるんじゃないかな」
盲点だった。
誰かとサーヴァントを共有するようなその同盟には極めて密な協力関係が必要となる。
サーヴァントの同意も必要となると、容易く行くとは思えないが、二体を確保するよりはまだ現実味があるように聞こえた。
「ろくに眠れなくなるという欠陥はあるがね。だからこそ少し休養が必要だ。
時間がたてば、さっき僕のバーサーカーを倒した戦場も動く。あそこを蟲で見ておくからその間休むと言い」
最初に話した時とは打って変わって頼れる調子の雁夜に善吉は感心する。
さすがに年の功だろうか。
「ああ。頼りにさせてもらうぜ」
深く頷き、少し気が楽になったように感じながら。
改めて前を向き善吉は歩き始める。
【
人吉善吉@めだかボックス】
[状態]中度のしろがね化
[令呪]残り一画
[装備]箱庭学園生徒会制服
[道具]銃人形のリボルバー(6/6)
[思考・状況]
基本行動方針:キャスター(操祈)を討伐し、最後には優勝する
1.
間桐雁夜と協力し、打開策を練る
2.モニター越しに見えたどこかで見たような気がする、しかし知らない男(垣根)が気になる。
[備考]
※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。
※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています。
※屋上の挑発に気づきました。
※学園内に他のマスターが居ると認識しています。
※
紅月カレンを確認しました。
※キャスター(操祈)を確認しました。
→加えて操祈の宝具により『
食蜂操祈』および『垣根帝督』を認識、記憶できません。効果としては上条当麻が
食蜂操祈のことを認識できないのに近いです。これ以上の措置は施されていません。この効果は未だ続いています。
※セイバー(
リンク)を確認しました。
※朽木ルキア、ランサー(
前田慶次)を確認しました。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※フェイスレスと再契約しました。
※フェイスレスの血液を飲んだことでしろがね化が進行、記憶や知識も獲得しています。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』による操作と『欲視力』により得た他者認識力により、フェイスレスの乗っ取りに抵抗しています。現状精神は乗っ取られていませんが、キャスター(操祈)が脱落し、宝具の効果が消滅した場合は精神が乗っ取られる確率が極めて高くなります。
※バーサーカー(
一方通行)陣営と残り主従が6騎になるまで同盟を結びました。
※現在フェイスレスの記憶を利用し、自動人形に自らが造物主だと誤解させ魔力供給することで維持しています。
ただしそのせいで記憶の浸食はフェイスレス消失以前と同等以上の脅威となっています。
※サーヴァント消失を確認(二日目夜)これより四時間以内に帰還しない場合灰となります。
(ああ、もっと僕の力に頼ってくれてもいいんだぜ。元マスター)
雁夜の顔にどす黒い太陽のような笑みが浮かんでいた。
目覚めたPSIにより、雁夜は善吉の記憶の一部が流れ込んだ。
そう、生命の水に溶けていたフェイスレスのものさえも。
一部とはいえ膨大な年月の重なったそれは雁夜の生涯の記憶よりも重く、大きい。
人吉善吉は欲視力という規格外の千里眼に近しい異能により獲得した強靭な自我と、
食蜂操祈の能力の影響によってかろうじて凌いだ。
だが
間桐雁夜にそんなものはない。
蟲により人より軟になった体と心があるばかりだ。
幸いだったのは生命の水と、PSIという二つのフィルターを介していたことくらい。
疲弊しきった雁夜の表層に浮き出る第二の人格程度に今はとどまっている。
(まあ雁夜くんの人生は僕と同じ失恋の悲劇だし、そこまで話が合わないということはないだろう。夢の中で、ゆっくりお話でもしようじゃないか)
道化師は再び目覚め、今は時を待つ。
だが起き抜けの運動が一つ。
雁夜は確かに蟲を使ったのだ。
アポリオンという蟲の使い方を彼は誰より『理解』している。
フェイスレスが消失し、人吉がその後を継ぎはしたが、ディアマンティーナのように誤解をせずに止まった人形も多数いた。
ケニスと
鹿目まどか人形もそうだった。
彼らは一時機能を停止することで、偶然にも完全に明たちから姿も気配もくらましていたのだ。
そして今フェイスレスの意識の目覚めと共に再び動き始めた。
蟲を通じてフェイスレスの指令を受け、
鹿目まどかを模した人形の首を高らかに掲げて金のキャスターのもとへと駆ける。
あたかもそれが金のキャスターの指示であるように。
道化師は夢半ばの存在であっても戦場をかき乱すのだ。
だが、もう一人の死にぞこないが知らず脅威となる。
今はまだ誰も気づいていない、
一方通行の負の遺産。
(
一方通行ァ…!!どこ行った。あのマスターの行ったほうか……!?)
垣根帝督が最期に放った未元物質のカブトムシの欠片が、舞い落ちた未元物質を喰らい再生しつつある。
未元物質のネットワークは独立している。
聖柱テイトクとは別の存在を確立している未元物質の中に、未だに
垣根帝督は生きている。
一方通行が消えたときには意識が確立していなかったが、再生する過程で意識を生み出した。
彼は未だにアサシンである。
再起した時、聖柱テイトクとは別の思惑を持って動き始めるだろう。
【
間桐雁夜@Fate/zero】
[状態]肉体的消耗(中)、魔力消費(中)、PSIに覚醒、第二人格フェイスレス
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。
0.夢の中でいい協力関係を築けるといいなぁ
1:間桐桜(NPCと想われる)を守り、救う。
2:バーサーカーに代わるサーヴァントを手に入れる
[備考]
※ライダー(ルフィ)、
鹿目まどかの姿を確認しました。
※バーサーカー(
一方通行)の能力を確認しました。
※セイバー(
纒流子)の存在を目視しました。パラメータやクラスは把握していません。
※バーサーカー(
不動明)、
美樹さやかを確認しました。
※PSI粒子の影響と
一方通行の処置により魔力量が増大しました。
※PSI粒子の影響により身体能力が一般レベルまで回復しています。
※生活に不便はありませんが、魔術と科学の共存により魔術を行使すると魔術回路に多大な被害が発生します。
※学園の事件を知りました。
※セイバー(
リンク)の存在を目視し能力を確認しました。
暁美ほむらの姿を写真で確認しました。
※キャスターのマスター(
人吉善吉)と残り主従が6騎になるまで同盟を結びました。善吉に対しては一定の信用をおいています。
※
鹿目まどか、
美樹さやか、
暁美ほむらが知り合いであること・魔法少女であることを知りました。
※
暁美ほむらの魔法の鍵が「盾」であると予測しています。
※PSI能力「トランス」が使えるようになりました(固有名称未定)
頭部に触れた相手の記憶を読み取る、相手に記憶を流すことが可能です。
※サーヴァント消失を確認(二日目夜)これより六時間以内に帰還しない場合灰となります。
【バーサーク・アサシン(
垣根帝督)@とある魔術の禁書目録】
[状態]魔力消費(大)、ダメージ(大、再生中)
[装備]天使の装い
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:
一方通行を殺す。
0.
間桐雁夜を追う。
1.
一方通行を殺す。それ以外もはやどうでもいい。
2.もし浅羽が裏切るか、食峰などに操られたら切り捨てるのもいとわない。
[備考]
※鬼龍院皐月がマスターでは無いと分かっています。
※屋上の異変に気付きました。
※
夜科アゲハがマスターであると断定しています。
※
リンク、犬養、食峰を確認しています。
※アサシンのころの記憶はほぼ全て覚えています。
※審判者ゼレーニン@真・女神転生STRANGEJOURNEY のような衣装になっています。
なぜか未元物質が翼の形になってしまうのと同様、デザインを変えることはできないようです。
※ステータスはアサシン
垣根帝督のものとほぼ同様です。
ただし狂化の属性が付与されたことで、知性は保ちつつも、
一方通行への復讐に囚われていた時期以上に狂暴化し、思考も短絡化しています。
※未元物質で唱える魔術(真・女神転生STRANGEJOURNEYのもの)を扱えるようになっています。
※雁夜の暗殺失敗から雁夜が投げられる間の出来事は一切把握しておらず、狂化に伴う視野狭窄で
間桐雁夜と
一方通行のことしか意識していません。
(待って待って待って待って待って待って、何よあの人形!?あんなの私の知識力に一切ないんですけどお!)
人形の技術自体は学園都市でいくらでも見られそうなものだが、やってることがあまりにいただけない。
鹿目まどかの首を掲げて駆け寄るなど、どう見ても自分が黒幕のようではないか。
(これ最悪ライダーたちにも愛想つかされかねないじゃない!いくら何でもマズいゾ)
「ちょっと、あんなの私知らない――」
「■■■■ーーーーーー!!!」
獣の声が響き渡った。
恐ろしい風貌に似つかわぬ知的な振る舞いをしていた青い悪魔が雄叫びをあげ、一瞬で人形を歯車に還す。
ニューゲートにも目をくれず、人形の掲げていた首を検めるように手に取った。
フェイスレス渾身の人形は巧であった。
月明かりしかない夜とはいえ、半ば理性を喪失していたとはいえ、
不動明と
美樹さやかの二人を欺きとおしたのだから。
鎧の内側で輝いていたソウルジェムが穢れに満ちた。
美樹さやかの性質が反転する。
彼女と一体となっている明の体内で、先刻呑み込んだ穢れが鈍く反応する。
ソウルジェムに満ちた穢れとは、インキュベーターが地球の生命に見出した負の感情である。
それをエネルギーとするのが彼らの技術。
では、そもそも穢れとは何なのか。
地球の生命のみが持つもの。地球の生命全てを生み出した母なる存在がもたらしたもの。
原初の母ティアマトがあらゆる生命の基とした土壌にして母なる海の名残。
魔術王は、その土と水の混ざった泥をケイオスタイドと名付けた。
美樹さやかの魂に、
不動明の霊器にケイオスタイドが満ちていく。
塩基契約(アミノギアス)を起こしたように、二人の体が反転し溶けて混ざり合う。
より巨大に。より強力に。より醜悪に。
現れたのは肉の柱だ。
バベルの塔のように聳え立つ、雄々しく禍々しい怪物の柱。
千を超える眼が全身至る所から敵を睨む。
これにより彼らは名と姿を変えることとなる。
魔女Oktavia von Seckendorffも、大悪魔アモンもいまや偽りの名。
その名を魔神柱アモン。
七つの人類悪が一つ、憐憫の理を持つ獣の一端である。
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語 合体】
【不動明(アモン)@デビルマン 合体】
【魔神柱アモン 出現】
伊介も。刑兆も。操祈も。ニューゲートですら。
目前の異様に対処しきれずにいる。
青い悪魔が先ほどまでのように姿を変えただけ……ではないのだ。
(感じる魔力がサーヴァントのそれじゃあねえぞ……!くそ、せめて見聞色がマシに使えれば)
ひとまず攻撃をしかけようと構えたニューゲートを、肉の柱が『見下ろす』。
それだかで、ニューゲートの体に衝撃が走る。
瞬きもなく、何かを放ったわけでもないのに、発生した攻撃にさしものニューゲートも対処しきれず負傷する。
「くっ…!」
それでも倒れることはなく、必死に堪えて忠告を飛ばす。
「お前ら逃げろ!奴の視界に入るな!」
「視界に入るなって…こんな多くて目も多い奴相手にどうやって!?」
そう言っている間にもアモンが視線を走らせる。
その眼に映るものが片っ端から焼き払われる悪夢のような光景。
ニューゲートが仲間の前に立ち塞がって決死にそれを防ぐ。
「なんなのよもうこれぇ!」
「あれは魔神柱と呼ばれるものだそうだ」
疑問のような伊介の悲鳴に律儀に答える声があった。
美しい金髪の少女がうっすらと笑みを浮かべて、新たに現れていた。
「あんた、だれ?いつの間に……?」
「失礼。私はルイ・サイファー。そこの魔神柱になってしまった彼とはいささか複雑な関係の者さ。
で、あれが何かという話だが……魔術王の持つ術式が変異したものらしいよ。私も詳しいことはよく分からない。何やら獣の匂いもするしね」
魔術王と獣という単語に操祈の顔色が目に見えて青くなる。
それを愉快そうに眺めながらルイは言葉を続けた。
「まああれ単体なら冠位級のものじゃあない。トップサーヴァントであれば単騎で相手取れるし、並のサーヴァントでも数騎がかりなら渡り合えるだろう。数騎がかりなら、ね。
視線そのものが攻撃となっているあれは恐らく『邪視』だな。視線に呪いが宿るというやつだ。
極めた指差しの呪いが物理威力を伴うように、究極の邪視は見ただけでそのものを焼き尽くす。ガンドの究極がフィンの一撃と呼ばれるなら、あれはさしずめバロールの一瞥といったところかな」
巧みに視線を躱しながら、ルイは朗々と語った。
そして操祈はその言葉の意味が分かるだけに戦力差に絶望を深める。
「……おい、ライダー」
必死に逃げながらも刑兆はまだ諦めない。
真っすぐ己がサーヴァントに期待を向ける。
「聞いたか?たかがサーヴァント数騎でいいんだってよ。だったらお前なら大丈夫だろ」
負傷した体で悩むようなニューゲートに檄を飛ばす。
「迷ってんじゃねえ。さっき失敗したんなら今度こそやり遂げろ。黙って死ぬ気かよ」
「そうよ!!伊介まだこんなとこで死にたくないんだからーーー!!!ないかあるならやりなさいよダメ親父ーー!!!」
「……グララララ。言うじゃねえか、クソガキどもが」
叫ぶ二人の若者に背を押されるように、呪いの中へ一歩踏み出す。
「感謝するぜ、キャスター。お前がここらから人を払ってくれたから全力でやれる。そしてお前たちにもだ、刑兆に伊介。ガキどもに急かされてちゃせわねーよなァ!」
潮風が吹き抜けた。
海が近いとはいえ、それでもあまりにも濃い潮の香り。
世界が歪む。
かつて世界の頂に手をかけた男の力で、今再び世界が傾く。
「おれは、白ひげだ!おれこそが、この時代の名こそが、白ひげだァ!!!」
アモンも、ルイも、その場の全員が新たな世界へと導かれる。
歴史上で数えるほどしかない、その中でも唯一初代海賊王の息子が参戦した白ひげ海賊団の総力を結集した戦の地。
そこは崩落した正義の砦、マリンフォード。
正義の代わりに自由の旗印を掲げる荒くれ者どもが集う。
「来たぜ、おやっさーん!」
「また会えて嬉しいぜお前らぁ!!」
「いくぜ野郎どもォ!!!」
空気を震わす鬨の声が響き渡る。
異形の化け物を前にしてなお気圧されぬ、何より誇らしい大海賊白ひげの息子たち。
不死鳥が飛んでいる。
魚人が泳いでいる。
炎がいきり立っている。
金剛石が闊歩している。
魔神柱に勝るとも劣らぬ巨大な戦士がいる。
「すげえ……これが全員サーヴァントか」
「おれの息子たちよ」
宝具、『海征し陸駆ける白鯨(モビーディック号)』を展開して刑兆、操祈、伊介とともにそこで悠然と構える。
懐かしい仲間の姿に目頭を熱くしながら、船にある小電伝虫で指示を下す。
海賊団が一斉に、魔神柱へと攻撃を開始する。
砲撃が飛び、カトラスで斬りかかり、魔神柱といえど耐えきれないと思われた。
だが突如、魔神柱は姿を消した。
消滅したかと思うがあまりに早すぎる。
そして再び魔神柱が出現する。
『海征し陸駆ける白鯨(モビーディック号)』の浮かぶ海面のすぐ近くに。
それはアモンが新たに得た力。
合体した魔女Oktavia von Seckendorffの持つ、水から水へと転移する能力。
白ひげの固有結界は海の上を主に再現するものであったため、ニューゲートにとってのホームはアモンにとっても得意な戦場へとなってしまったのだ。
一斉攻撃の隙をついて背後に回られ、もはや出せる札はニューゲートたちにはない。
固有結界の内部では助けも望めない。結界を破り侵入するなど、できるものではない。
だがここに例外が存在する。
マリンフォード頂上戦争という未曽有の嵐に飛び込むことのできる規格外の男が歴史上に恐らくはただの一人だけ。
はるか上空から勇ましい雄叫びが響く。
その男は間違っても頭脳明晰とは言えない。善人でもない。
だから目の前で誰かが危機に陥っているのなら、きっと。
「ゴムゴムのぉーーーー!!!」
雄叫びを上げて、男が上空から落ちてくる。
男の右腕が黒く染まり、同時に巨人のように大きく肥大する。
その声を聞いて、先ほどまで前線にいたはずの男が飛んで戻る。炎へと姿を転じ、父と慕う男のもとへ。杯を交わした弟のもとへ。
「“火拳銃”!!」
「“火拳”!!」
二つの拳が魔神柱を吹き飛ばす。
「なんとなく殴っといた!」
「変わらねえなあ、ルフィ!」
戦場はより自由に、混沌になっていく。
【A-4/南部、白ひげが固有結界展開/二日目・未明】
【
美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]魔神柱アモン、魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備]ソウルジェム
[道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ、財布内に通学定期
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
0:まどかの死に絶望
1:■■■ーーーーーーーーーーー!!
[備考]
※
浅羽直之、アーチャー(穹撤仙)を確認、フェザーと名乗られました。
※
暁美ほむらが昔(TV版)の存在である可能性を感じました。
※
暁美ほむらが何かしらの理由で時間停止に制限が掛かっていることを知りました。
※まどかへの連絡先を知りません。
※ほむらと連絡先を交換しました。
【
不動明(アモン)@デビルマン】
[状態]魔神柱アモン、魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
0:マスターの友人を守れなかった無力さとその死に様に絶望
1:■■■ーーーーーーーーーーー!!
[備考]
※穢れの溜まったグリーフシードを『魂喰い』しました。今のところ影響はないですが今後何らかの影響があるかは不明です。
→ケイオスタイドとして内側から明を侵食し、霊器を魔神柱に変えるきっかけとなりました。
※キャスター(フェイスレス)に不快感を覚えています。
※世界改変の力を持った、この聖杯戦争の原因として魔法少女(まどか、ほむら、さやか)とサタンを想定しています。
[共通備考]
※
マップ外に出られないことを確認しました。出るには強力な精神耐性か精神操作能力、もしくは対界宝具や結界系宝具が必要と考えています
※
マップ外に禁人種(タヴー)を確認しました。
不動明と近似した成り立ちであるため人間に何かがとりついた者であることに気付いています。NPCは皆禁人種(タヴー)の材料として配置されたと考えています
※
間桐雁夜(名前は知らない)、バーサーカー(
一方通行)を確認しました。
※セイバー(
リンク)陣営との同盟を結びました
※キャスター(フェイスレス)の真名を獲得しました。
※学園の事件を知りました。
※聖杯戦争の会場を作ったのも、願望器自体も世界改変の力と予測しています。
※キャスター(食蜂操折)の外見と能力、そのマスター(犬飼伊介)の外見の情報を得ました。
※現在合体して魔神柱アモンになっています。
【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……?
1:目の前の悪魔染みた怪物に対応。
2:天戯弥勒、またはその関係者との接触を予測。その場合聖杯について問い詰める。
3:バッド・カンパニーの進化の可能性を模索。能力の覚醒に多少の期待。
4:公衆電話の破壊は保留。
[備考]
※バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。
→アーチャーとの交戦を経てサーヴァントにはほぼ効かないものと考えています。
→キャスター(操祈)がほむらと交戦してダメージを受けたのを確認し、対魔力が重要な要素であると確信。
※サーヴァント保有時に紅いテレホンカードを使用しても繋がらない事を確認しました。
※サキュバスなどのエネルギー吸収能力ならばおやじを殺せるかもしれないと考えています。
※学園の事件を知りました。
※麒麟殿温泉の下見は済ませました。なにかあったか詳細は後続の方にお任せします。
※夢を通じてニューゲートの記憶を一部見ました。それにより17歳の頃のルフィの容姿を把握しました。
【ライダー(
エドワード・ニューゲート)@ONEPIECE】
[状態]ダメージ(小、右腕は戦闘に支障)、魔力消費(小)、『手出しを許さぬ海の皇のナワバリ(ウィーアーファミリー)』発動中
[装備]大薙刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける
1.魔神柱なるものの撃退。
[備考]
※NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカの
ルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。
※キャスター(操祈)と垣根が揃っていたのと同様、ルフィと自身が揃っているのにも意味があるかもしれないと考えています。
※宿およびその周辺をナワバリとしました。
※浅羽、バーサーク・アサシン(垣根)、ほむら、セイバー(
リンク)を確認しました。
【犬飼伊介@悪魔のリドル】
[状態]疲労(中)魔力消費(微小)微熱、PSIに覚醒
[令呪]残り三画
[装備]ナイフ
[道具]バッグ(学習用具はほぼなし、日用品や化粧品など)、ベレッタM92F(残弾12発)、コンビニで買った着替え
[思考・状況]
基本行動方針:さっさと聖杯戦争に勝利し、パパとママと幸せに暮らす
0:
食蜂操祈に心を許さない。
1:目の前の悪魔染みたサーヴァントに対応。
2:学園と家にはあまり近付かない。
[備考]
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によってキャスターに令呪を使った命令が出来ません。
※一度キャスターに裏切られた(
垣根帝督を前にしての逃亡)ことによりサーヴァント替えを視野に入れました。
※PSI粒子の影響と食蜂の処置により魔力量が増大。今後能力に覚醒するかは後続の方にお任せします。
→症状は現在完治とはいかないまでも小康状態にあります。
※操祈の過去を夢に見ましたが、その記憶は消去されました。
[共通備考]
※車で登校してきましたが、彼女らの性格的に拠点が遠くとは限りません。後続の方にお任せします。
※
朽木ルキア&ランサー(
前田慶次)を確認しました。
※
人吉善吉、アサシン(
垣根帝督)を確認しました。
※
紅月カレン、セイバー(
リンク)を確認しました。
※
夜科アゲハ、セイバー(
纒流子)の存在を知りました。
※洗脳した生徒により生徒名簿を確保、欠席者などについて調べさせていました。
紅月カレン、人吉善吉、
夜科アゲハの名簿確認済み。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※ランサー(慶次)への絶対命令権を所有しています(宝具による)
【キャスター(
食蜂操祈)@とある科学の超電磁砲】
[状態]ダメージ(大)、魔力消費(大)
[装備]
[道具]ハンドバック(リモコンが一つ)、アッシュフォード学園の制服
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残る。聖杯に託す願いはヒミツ☆
1:目の前の悪魔染みたサーヴァントに対応。
鹿目まどかとか今更……?
2:犬飼の体調が安定したら能力を試してみたい。
3:図書館でサーヴァントや聖杯、世界改変について調べてみたい。
4:犬飼には一応警戒する
[備考]
※高等部一年B組の生徒の多くを支配下に置きました。一部他の教室の生徒も支配下に置いてあります。
※ルキアに対して肉体操作が効かなかったことを確認、疑問視及び警戒しています。
※
垣根帝督が現界していたことに恐怖を抱きました。彼を消したことにより満足感を得ています。
※
人吉善吉に命令を行いました。後始末として『
食蜂操祈』および『
垣根帝督』のことを認識できなくしました。現在は操っておりません。
※ランサー(慶次)とセイバー(流子)の戦闘を目撃した生徒を洗脳し、その記憶を見ました。
それにより、慶次の真名とアゲハの能力の一部を把握しました。流子の名は聞いていませんでした。
※まどかの記憶を見ました。少なくともインキュベーターのこと、ほむらの容姿、タダノとの同盟、ルフィの真名と能力を把握しています。他にどのようなことを知ったかは後続の方にお任せします。
※超能力を目覚めさせる因子の存在(PSI粒子)に気づきました。アッシュフォード学園、麒麟殿温泉の近くにあるとほぼ確信しています。
※ほむら、またはそのサーヴァントは情報収集の能力があると推察。重要事項は胸の内に秘めるつもりです。
※赤いテレホンカードの完成形はオティヌスの用いた『主神の槍(グングニル)』に近いものと考えています。
※伊介の能力を心理系(PSIでいうならトランス系)のものと予測しています。
※以下の情報を刑兆、ライダー(ニューゲート)、操祈は共有しています。
•アゲハ&セイバー(流子)、ルキア&ランサー(慶次)、善吉、カレン&セイバー(
リンク)、タダノ&アーチャー(モリガン)、まどか&ライダー(ルフィ)、ほむら、ウォルター&ランサー(レミリア)の容姿と把握する限りの能力(ルフィについては伏せた点有)。サーヴァントならパラメータも把握。
•アゲハ、ルキア、善吉、カレンのこの地での住所、連絡先。
•アゲハはタダノを一撃で倒す程度の能力者である(暴王の月の存在)。
•ルキアは稲妻のような物を放つ能力者である(白雷の存在)。
•善吉の技能と『欲視力』。
•カレンは能力者ではないが、それなりに戦える人物である。
•まどかは強力な魔法少女となり得る才能がある。
•ほむらも魔法少女であり、操祈にダメージを与えることができる。
•タダノはサキュバスのようなものに耐性があるかもしれない。ただし耐久はアゲハに倒されるくらいで、人並みか。
•ウォルターは能力者ではないが、腕の立つ戦闘者。吸血鬼と何らかの因縁がありそう。
•ランサー、真名は
前田慶次。巨大な刀が変形(真名解放?)して朱い槍になると予測。逸話、もしくは技能系の宝具持ちと予測。
•セイバー(流子)は『鋏』と『糸』がキーワードになる英霊。文明への反抗者と予測。二刀流の可能性を警戒。
•セイバー(
リンク)は剣技や騎乗スキルに加えて結界、炎などの多芸さから『勇者』がキーワードになると予測。
•アーチャー(モリガン)は『サキュバス』と『分身』あるいは『もう一人の自分』がキーワード。
リリム、あるいはリリト?それなら海、出血、原罪、天罰などが弱点で、子供は注意が必要。
何かを撃ち出す宝具を持っているはず。
•ランサー(レミリア)は『吸血鬼』がキーワード。ただしその吸血鬼としての在り方はあまりにベタすぎる。無辜の怪物や幻想上のものの様な迷信に近い存在と予測。宝具であろう槍を警戒。日光は弱点になると予測。
•ライダー、真名はモンキー・D・ルフィ。ニューゲートの知り合いで能力者。キーワードを上げるなら『麦わら帽子』、『ゴムのような体』、『覇気』あたりか。
•刑兆はスタンド使い(バッド・カンパニーと言い、ビジョンも見せた)であり、多くの人物にスタンドを目覚めさせた経験がある。そのリスクなどについてそこそこ詳しい。
•ライダー(ニューゲート)とルフィは知り合い。能力者。
•キャスター(操祈)はアサシン、
垣根帝督と同郷の超能力者で、垣根の方が上位。宝具(能力)は心を操ることで、対魔力で抵抗可能。
•能力を覚醒させる何か(PSI粒子)が学園、温泉近くにあり、それにより犬飼が学園都市の超能力に近いものを身に付けつつある。
•麒麟殿温泉は能力獲得時に頻発する体調不良を和らげる効能がある。
•魔力供給、対魔力、獲得のリスクに見る超能力、犬飼の能力(PSI)、スタンドの近似性。
•天上、天国に見る魔術、超能力、スタンドの近似性。
•アゲハ、ルキア他多数のスタンドでも超能力でもなさそうな能力者の存在。
•魔法少女という人型の願望器の存在。その才能を持つ
鹿目まどかに、魔法少女である
暁美ほむら。
•スタンドを目覚めさせてきた刑兆、学園都市の超能力者で『絶対能力進化』のことを知る垣根と操祈、『フラスコ計画』に関与した善吉など能力覚醒に関する参加者が多い。
•幻想御手(レベルアッパー)、虚数学区などの複数の能力者を束ねてなる超常の存在。
•不明金属(シャドウメタル)という、複数の能力者と天上が関わるであろう存在と、謎の磁性体である赤いテレホンカード。
→以上よりこの聖杯戦争はマスターを能力者として進化・覚醒させ絶対能力者(レベル6)『天之杯(ヘブンズフィール)』とし、サーヴァントも含めぶつけ合わせることで不明金属(シャドウメタル)を獲得。
それによって『元いた世界へ行くテレホンカード』を『平行世界へ行く霊装』、『天上、あるいは根源へ行く霊装』、『英霊以上の超常の存在を連れて来る霊装』などに完成させようとしている、という予測。
【ルイ・サイファー@真・女神転生STRANGEJOURNEY】
[状態]健康
[令呪]???
[装備]???
[道具]???
[思考・状況]
基本行動方針:神々との闘争に勝利し、混沌に満ちた世界を
1.基本的に観客に徹する
2.受肉したアモンこと明を同胞の待つ地獄に送る
3.聖杯戦争を通じて明たち同胞に神を敵としてもらいたい
4.神々との闘争に備えて準備
5.戦力増強のため了と子を産むことも考える
[備考]
※ルシファーの女性としての面を強く顕現した分身です。
両性具有の堕天使としての特徴を失うことで神々の一派の目を欺いています。
最終更新:2018年12月25日 00:15