恋見てせざるは愛無きなり◆A23CJmo9LE
◇ ◇ ◇
金のキャスターが、消えた。
唐突にその事象を理解したのは様々な記憶が濁流のように押し寄せてきたからだった。
召喚した相棒の姿。名。素姓。能力。
食蜂操祈が己に繋がる可能性として封じた記憶が
人吉善吉の脳によみがえる。
記憶の回帰に僅かな爽快感は覚えた。
だがそれはまるでパンドラの箱のように。
底にある希望以上に多くの絶望が、封じられていた匣から這い出てくる。
――――――視界が、銀に染まる。
裡から湧き出る悪鬼の記憶が善吉を染めていく。
だからきっと。
その瞬間に再会できたのは幸運なのだろう。
不気味に輝く銀色に変わり果てていたとはいえ、死んだはずの相棒を認識できたのは。
「――――――アサシン……?」
◇ ◇ ◇
「アァ?お前……あれか。人吉、か」
狂気を付与され、復讐に視界を曇らせても召喚に応じたマスターを前にすると僅かに理性の光が灯った。
サーヴァントであるがゆえか。あるいは善吉の持つ、異常者へのある種の魅力か。
だがそれも一瞬でしかない。
羽を震わせ、宿敵一方通行のマスターである男に牙を剥こうとする。
が
(……どこだ?野郎、逃げるにしてもマスターを放り出すわけがねえ)
サーヴァントはサーヴァントの気配を感知する。
不倶戴天の敵であり、これまで幾度も刃を交えたのもあり、一方通行の気配を垣根が見逃すはずもない。
だがその気配を全く感じない。
バーサーカーとしての召喚では気配遮断などできるはずもなし。マスターを放っておいては逃げる意味もない。
何かの策かと警戒を深める。
「おい、一方通行はどこだ」
マスター、
間桐雁夜を睨みそうすごむ。
出さなければ殺すとそう言葉にせずとも伝わるだろう殺気も纏い。
だがその問いに対する答えは怯え以上に困惑の混ざったものだった。
「な、何を……?あんたが。アイツを…バーサーカーを殺したんじゃないか」
その言葉に、垣根は放心してしまった。
怒りでもない。呆れでもない。ましてや悲嘆などであるわけもない。
理解はできる。納得もできる。
あの第一位を倒せるなど、幻想殺しでなければこの
垣根帝督以外に誰がいるのだ、と。
だが実感はまるでない。
未元物質の意識に主体はなく、ミサカネットワークのように一つの意思のもと制御・統一されているわけでない以上全ての端末の行動を把握できるわけではない。
自分とは別の自分が殺したのだろう、というはありえなくもないしすぐに思いつく仮説だ。
一方通行を殺した固体が何をしているのかという追及も、この問答がブラフである可能性も抜け落ちるくらいに、垣根は寄る辺を失ってしまった。
そこに真っすぐ手が伸ばされる。
「助けてくれないか、アサシン」
人吉善吉が真っすぐと見据えて問うたのだ。
「何でお前が生きてるのかは分からないけど。お前とのつながりを失って俺はここで一人ぼっちになっちまった。
厚顔無恥と言われてもしょうがねえ。お前にしたことの代償を払えと言われるのも当然だ。
……それでも!俺はまだ生きている。だから戦うことを諦めるつもりはない」
垣根はそう述べる善吉の顔をじっくりと眺める。
そして伸ばされた手に残った令呪が残り一画しかないことも確かめる。
それから大天使とやらに引き合わされた少年のことを思い返し…………数秒の沈黙を経て垣根は善吉の手を取った。
「バーサーク・アサシンの名に懸け誓いを受ける。今一度、お前を主と仰ごう」
契約がなされ、二人の間にパスがつながる。
―――――瞬間、垣根が白い翼を纏い、その一部を善吉の腕に滑り込ませる。
それは浅羽に仕込んだサンプル・ショゴスと同じように、人の肉の下に潜み、魔術回路に干渉する未元物質。
だが今度のそれは魔力の流れを妨げるものだ。
「まだ第五位に操られてんのかと思ったが違うな。誰だ、お前」
令呪は一画しか残っていなかった。サーヴァントと契約もしていない。
ならば窮地にあるのは事実。
サーヴァントとの契約を求めているのは偽りではない。
だが。この男は一時友誼を結んだかつての主ではないと垣根は直感した。
「科学者だ。超能力者をモルモットにしか見てないあのクソどもの匂いがする……!
その髪もイメチェンなんて可愛いもんじゃねぇよなァ?」
また別の精神系の能力者か。
あるいは肉体変化≪メタモルフォーゼ≫のような能力。
それらに近いスキルや宝具、あるいは魔術か。
あらゆる可能性を想定し、ますは魔術回路をショゴスで犯し、令呪や魔術を封じた。
その行動、その問いに善吉の姿をした名伏しがたきものは笑みを浮かべて対応する。
「抑えろ、アプ・チャー」
人吉の口から発せられた命令によって、アプ・チャーは何が起きているのか『理解』する。
ここにいるのは誤解でも何でもなく、紛れもないフェイスレスなのだと。
「テメェ、この…!」
人形の機構露わに垣根へと控えていたアプ・チャーが組み付く。
人外の異形も相まってだろうが、上物として設計された彼女は垣根の動作を毒づく程度に抑えることに成功した。
その一瞬で人吉は銃人形のリボルバーを引き抜き、即座に発砲。
銃口の先は間桐雁夜の右腕……令呪の宿るその部位だ。
そして出来た傷口へと指を伸ばし、雁夜の体内からあるものを奪った。
数体の刻印虫、間桐雁夜の魔術回路を代替していると言って過言でない生命線を。
フェイスレスは錬金術師としてはともかく、メイジとしては雁夜にも劣り令呪の移植などの霊媒術は専門外である。
もし彼が他者から令呪を奪うとすれば宿った部位ごと奪う以外にほぼ選択肢はない。
しかし外科医としての優れた知見と、雁夜の魔術特性が少しだけ幸いした。
現在の雁夜は瀕死の上にPSI粒子の影響を受け、ほぼ機能を止めた魔術回路ではなく刻印虫が生成する魔力によって命を繋いでいる。
刻印虫は唯一残った魔術師としての特性であり、魔術回路に宿る令呪も実質刻印虫に依存している状態だ。
腕ごと奪わずとも、令呪に巣食う刻印虫を奪うことでフェイスレスはその機能を手にした。
雁夜と善吉の手と口が動く。
「「令呪を以て命じる。お前も僕の記憶を受け入れろ」」
己の令呪を封じられたなら、外付けの魔術回路で代用する。
銃創から流れる血をそのままに雁夜の手が垣根を掴み、PSIを発動した。
それが契約した善吉から下される命令によって強化されて垣根の脳髄を犯していく。
「アサシンのサーヴァント、垣根帝督。人吉善吉は君に詳しくないが、白金は多少なり君のことを座よりの知識で知ってるよ。
例えばそう、独立したネットワークで発生した自分以外の人格に主導権を奪われた逸話とかねェ!」
そしてフェイスレスは親族の少年や無関係な一匹の犬の意識を奪った逸話を持つ英霊である。
令呪と超能力による助けも加えれば、勝てると彼は見積もった。
「何にでも名前はある。聖書の一節にもあるだろォ、垣根くん。『言葉は初めに神と共にあり、総てのものはこれによってできた』のさ。
魔術に依るサーヴァントならなおさら大事なことだよ。真名の解放、知名度による補正……名前というのは力を与えてくれる。
だからこの能力にも名前を付けよう……ダウンロード。そう、転送≪ダウンロード≫だ。さあ白金を受け入れろ、新たなる垣根帝督!」
雁夜が左手も伸ばし垣根へとより深く潜ろうとする。
令呪による縛りがそれに抗うことをを許さない。
だがそれを安穏と受け入れるような諦めのよい性格を垣根がしているはずもなく。
善吉の腕を捉えていた未元物質が頭部へと伸びた――――
◇ ◇ ◇
「よォ、邪魔するぜ」
そこは扉がぽつぽつとあるだけの空虚な部屋だった。
垣根帝督はまるで今あつらえましたよ、と言わんばかりに真新しくミスマッチなデザインの扉をくぐり、そこに入場した。
「……君とこの記憶の部屋で会うのは二度目かな」
「あ?どっかで会ったかオッサン」
「いや、こっちの話さ」
垣根は我が物顔で部屋の中心に君臨する髭の男の話に鼻を鳴らし、軽く部屋を見渡す。
死にかけたフードの男、一方通行のマスターがいるがそれは無視。
目を付けたのは半ば放心状態となっている人吉善吉だ。
「男の一人暮らしにしても殺風景すぎるだろ。少し俺好みに模様替えしてもいいよな?例えばそうだな……そこの髭と死にかけを生ゴミに出すとかどうだ」
部屋で一番の新参ながらこちらもまた我が物顔で闊歩し、髭の男と睨み合う。
「お前がフェイスレスだな。俺は垣根帝督。じゃ、自己紹介も済んだところで早速出て行ってもらおうか」
「記憶の転送が順調なようで何よりだね。ところでどうしてここに?」
フェイスレスの手に工具が握られる。
垣根の背に白い翼が表れる。
「“生命の水”とかいうものの原理はよく知らねえが、体液が記憶に影響するってのなら第五位の液体操作と似たようなもんだろ。なら俺の未元物質で似たようなことができない訳がねえ。脳味噌にアクセスして記憶を弄るくらい、体液を利用せずとも電気やベクトル操作で似たような真似できる奴はいるしよ」
「手段に興味はあまりないかなぁ。招かれざる客に、何をしに来たと聞いてるんだけども」
「招かれざる客はテメエもそうだろうが。人吉の方に重きを置いてるみたいだから来てみれば案の定だ」
令呪が潤沢な雁夜ではなく一画しか持たない善吉に契約させたのは、それが話の流れとして自然というのもあったかもしれない。
だが雁夜の肉体にダメージを与えて令呪を移すリスクを負ってまで従うほどのものだったか。
さらに一度垣根との契約を失ってからすでに6時間以上経つ善吉が今も残っている以上、何らかのサーヴァントと契約をしていたはずだ。
そこからフェイスレスの大本は現在善吉に根付いていると考え、それを排除できればダウンロードも無効化できるかもしれないと乗り込んできたのだ。
翼が振るわれる。
工具がそれを受け止める。
そしてそれを合図にしたように、寂れた空間がそこら中から湧いて出てきたフェイスレスと垣根帝督によって埋め尽くされていく。
善吉の脳髄を犯すフェイスレスの記憶、雁夜の能力によってダウンロードされるフェイスレスの記憶、それらを未元物質によって削除や隔離していく垣根の戦いを可視化したものがそれだ。
本来ならばサーヴァントの戦闘に只人ができることなど殆どありはしない。
だがこれは善吉という器を奪い合う特殊な戦い。鍵を握るのは善吉の強さになる。
それの助力をする垣根に対抗してはいるものの、生命の水という有限の兵力に対してフェイスレスが追加で期待できるとしたらそれは雁夜の転送≪ダウンロード≫のみ。
故にこそニ騎のサーヴァントは
「「マスター」」
と二人をそう呼び、戦場へと誘う。
「俺は、一方通行に勝つために聖杯なんてものまで求めた。何の因果か、あいつもサーヴァントになって召喚されてたんだ。それを知った時の喜びったらなかったぜ」
二人が初めて会った時に語った願い。
狙い定めた仇敵との再会が、善吉との別離の後に叶ったのを報告する。
奇しくもその相手が善吉の協力者だったのは偶然か必然か。
「これであいつと戦える。今度こそあいつに勝てる。そのためならなんだってしてやるってな……で?俺は勝った?本当に勝ったのか?」
幾度にもわたる闘争、攻防。
過程はどうあれ結果だけを見れば一方通行は消え、垣根帝督は残っている。勝ったと言えるだろう。
――――――だがそれに納得がいくかは別の問題だ。
「覚えてねえとかそういう話じゃねえ。狂化して、獣に堕ちてアイツの喉笛を食い破った記憶がねえとかそういうんじゃねえんだ」
今の垣根帝督は生前死後合わせて最も穏やかだ。穏やかで、純粋に、妄信的に、狂的に……ただ勝利を追い求めている。
「アイツに勝つってのは……アイツが負けるってのは何だ?俺もアイツも死んでもやりたいことがあるから、聖杯戦争に来たんだ。ならそいつを殺したところで、何のこともねえじゃねえか。アイツの死んでもやりたかったことの上を行かなきゃ勝ちにはならねえだろ」
では何をやりたかったのか。
一方通行は何をしに来たのか。
…………何をするために召喚に応じたかは分からないが、それでも最期に何をしようとしたのかは察しがつく。
――これが悪党だ――
いつまで経っても変わらない、死んでも治らないバカだ。
僅かでも気を逸らせば致命的な隙となる戦場でなおも誰かを守ることに力を費やすのが一方通行だった。
ならばそれの上を行かねば。
「なぁ人吉。お前はどう思う?ああ、いややっぱそれはどうでもいいわ。
だが、お前は何しに来たんだ?そこで寝っ転がりにきたのか。負けたまんまじゃいられねえんじゃなかったのか」
激励の言葉で善吉の眼に光が灯った。
やおら立ち上がって垣根に並び立つと、それに応えるように垣根もまた眼光を鋭くする。
「お前は俺たちを邪魔するんだよな?」
「君も善吉君もまだ僕に染まりきってない以上、雁夜君は唯一の砦だ。渡せないなァ」
「なら、やっぱお前は俺の敵だよ」
その言葉を引き金に戦端が加速した。
無数の垣根が形をカブトムシに変え、数多のフェイスレスを砕いていく。
増殖するフェイスレスよりも、それを駆除する垣根が優りだした。
「俺を、マスターと呼んだのか……?」
消耗とショックに朦朧としていた雁夜がフェイスレスの声にゆっくりと答える。
「そうさ。恐らくキミが一番、僕のことを理解してくれるだろうからね」
垣根と刃を交えていたフェイスレスの一人が戦場を離れ、雁夜のもとへと戻っていく。
「さて、直接話してはいなかった。先ほど盟を結んだキャスターが僕だ、真名はフェイスレスでも白金でも何でもいいさ」
サングラスも外して雁夜の顔を覗き込む。
その表情は今までにないように真面目なものに映った。
「僕たちが結んだ条件では人形の目と足を提供する代わりに、狂戦士の戦力を貸すギブアンドテイクが成り立っているはずだった。だがお互いサーヴァントは失い、その前提が立ち消えてしまった。
生憎と僕は最早ただの残渣で、同盟なんて何の意味もない関係に成り下がってしまった訳だ」
顔無しという異名に相応しくない、苦渋に満ちた表情を浮かべて現状を口にする。
反省のような……あるいは非難するような言葉を。
「それでもまだ善吉君との敵対は後ろめたいのかい?忘れていないと思うが、あの同盟には時間制限がある。残りサーヴァントが半数になるまでというね。
あれから脱落したのは、そう……僕に、君のバーサーカー。
それから僕が面に出ている間に
美樹さやかちゃんの悪魔がちょいと暴れていた。その戦火でもう一人のキャスターが脱落したのは確実だ。でなければ僕はここにいない。一緒にいた大柄なサーヴァントも無事ではないだろう。
そして君のバーサーカーが敗れた戦場に残ったサーヴァント二騎は、あの怪物相手にいつまで生きていられると思う?」
「ぅ…それ、は」
雁夜が最強と信じたバーサーカーの脱落は記憶に新しい。
惜敗などと呼べるものではない、惨敗。それを相手にしてステータスでバーサーカーに劣った二人のサーヴァントで勝てる相手とも思えない。
雁夜のその考えが表情から透けて見えたか、フェイスレスの笑みが厭らしく深まる。
「…ああ。半数、落ちたね。同盟は終了だ」
義理だてるものはなくなった。
間桐雁夜に残っているのはフェイスレスからの言葉と、垣根帝督からの害意。
そして
「僕はね、愛する人がいるんだ。ある男に奪われた人をこの手にかき抱くため絶対に負けられないのさ。共に戦ってはくれないかい、間桐雁夜」
■■■への想い。
それを想起するサーヴァントの言葉に、間桐雁夜は久方ぶりとなる闘争心を燃やすことになった。
「ぅ、ああああああああァァァァァあ!!!」
雁夜の周囲に虫が蠢く。
アポリオンのような銀をした、翅刃虫のようなフォルムの獰猛な虫。
善吉の記憶を犯す雁夜の転送≪ダウンロード≫がそのように視覚化されて、記憶の部屋を穢していく。
転送≪ダウンロード≫と未元物質≪ダークマター≫、二つの能力が脳内の記憶を食い合う様が蟲の争いとして再現されている。
カブトムシの砲撃を翅刃虫が躱し、装甲を刃が抉る殺し合い。
フェイスレスや垣根帝督の人型も入り混じり、戦況は凄惨の一言だ。
やはり戦場として記憶の部屋を提供させられている善吉はそれだけで負担が大きいのか、言葉を発することもできずただその行く末を見つめるだけ。だがその眼に諦めの色はない。
……最初に表れた変化は兵の種類が増えたこと。
「ゴイエレメス!」
黒髪の人形遣いが巨大なゴーレムモチーフのマリオネットで、カブトムシを打ち砕くのが散見され始めた。
それが何者かを垣根も善吉も流れ込んだ記憶で知っている。
才賀貞義と呼ばれる男、顔無しの顔の一つ。
未元物質による対処が追い付かなくなっていることの表れか、あるいはより深くフェイスレスの記憶が根付いている証拠か、新たな形で善吉の脳内でフェイスレスが猛威を振るう。
それはまるで病原体が変異や進化をするよう。
次に表れた変化はカブトムシの動きに統一性がなくなってきたこと。
フェイスレスの軍団や転送≪ダウンロード≫の蟲に規則的に攻撃を加えていたのが乱れ始めたのだ。
チカチカと緑色の複眼を光らせ、首をひねるような所作を見せたかと思うと、羽を振るわせて音を発し乱れの原因となった疑問の答えを求める。
「現時点での口頭オーダーを再確認。『一方通行への勝利』。同一行動中の全機へヘルプオーダー。自立作戦オーダーの目標設定に関する情報が不足しています。情報の穴埋めをお願いします」
周囲のカブトムシが戦闘行動を続けながらもそれに応答する。
何を分かり切ったことを。
そんな軽口のように異口異音に言葉を紡いだ。
「一方通行が守ろうとしたマスターを殺害することが勝利です」
「一方通行の成せなかった聖杯の獲得こそが勝利です」
「一方通行に優るサーヴァントを倒すことが勝利の証明になります」
「一方通行に代わってマスターを保護することで彼奴の無力さを知らしめることができます」
「一方通行を殺害した個体を降すことで一方通行以上であることが示せます」
「あk 」
「勝利を 」 「 殺 」
幾つかは重なるものもあった。だが、意思の疎通は成されていなかった。
カブトムシの軍団が僅かに動きを止める。
直後、ターゲットが激しく切り替わる。
引き続きフェイスレスと戦うもの、総て跳び越えて雁夜に攻撃を加えるもの、他のカブトムシを妨害するもの、あげくの果て垣根や善吉にまで砲口を向けるものもいる。
一瞬、戦場は激しい混乱に包まれた。
だがそれを指揮官が放置するはずもない。
独立したネットワークを築くカブトムシだが、それでも結局は垣根帝督のスレーブだ。
垣根帝督が改めて命令をプログラムすることで暴走する危険な兵器は忠実な兵団へと戻る。
すぐに全てのカブトムシがフェイスレスとの戦いに傾注する……はずだった。
一体のカブトムシが垣根の命令に抗うように身を震わせ、戦闘行動を中断する。
その蟲の登場を待っていた男がいた。
「――――――私は」
動きを止めたカブトムシが声を発する。
フェイスレスとの戦闘命令を受けてなお動かず、砲門をふらつかせて抵抗を示す。
「私は」
スレーブである以上、垣根帝督の一部である以上、その命令には抗えない。
抗うためには垣根帝督以外のパーソナリティーを獲得するしかない。
だがスレーブでしかないカブトムシは垣根帝督という柱を失えば即座に自己崩壊してしまう。
故に命令を拒むことはできない。
「私、は……!」
ビキリ、とカブトムシの体表にヒビが走る。
何かに抗う代償というように。
緑色だった複眼も危険信号のように赤く染まっていく。
……そして、その光も消えた。
機能停止、ではない。
「私は、垣根提督など関係ない!」
羽化、だった。
蛹が体だったものを打ち破り世に出でるように、カブトムシの体内から新たな人型が生まれた。
銀色の髪。銀色の瞳。
全身全て銀色だが、なぜだかその二ヶ所の銀色が目に付いて見えた。
「私はフェイスレスだよ~ん」
そう。
新たにフェイスレスという柱が部屋を乗っ取り、垣根帝督という柱を引き抜いてしまったのだ。
無限の可能性を持つ未元物質であるがゆえの未来の一つ。令呪に破れ、霊基を犯された可能性の具現がそこにあった。
そしてそれをきっかけに己をフェイスレスの一部と認識した未元物質が続々と産まれ出でる。
まるで一つバグを起こすと次々に増えていく癌細胞のように、善吉の脳内からフェイスレスを排除するはずの存在が害をなす存在に転じたのだ。
それをきっかけに情勢は大きく傾いた。
ゴイエレメスの拳が、キャプテン・ネモの剣が、そして未元物質の砲撃が、フェイスレスの武器となって垣根を排除していく。
対抗して垣根も未元物質の増産ペースをあげるが……数が増えた分だけ、一定の割合で混ざる不良品が敵に回る。
いや、すでに数で論じるならば垣根帝督とフェイスレス、どちらが主でどちらが従かは逆転していると言えるだろう。
僅かに残った垣根制御下のカブトムシも兵力の差に蹂躙され、決着は間近。
…………僅かの時間で大勢は決し。
人吉善吉の記憶の部屋には無数のフェイスレス、そして人吉善吉と間桐雁夜、一人きりとなった垣根帝督を残すのみとなった。
「さあ、これでこの部屋も、君の部屋も僕のものだ」
フェイスレスの一人がゆっくりと前に出る。
あとは勝利宣言と、作業のような鏖殺。それだけだ。
――――――それだけだと思っていた。
「……?なんだ。何をしている?」
歩み出たフェイスレスの足が止まる。
取り囲む貞義や白金もまたエラーを起こしたように動かなくなった。
そうしてすぐに自分が保てなくなったようにして崩れ落ち、白い灰のようなものを残して消える。
「あァ、ようやくか」
納得したように言葉を発したのは垣根帝督だった。
勝ち誇った笑みも浮かべている。
例えるなら、そう。時限爆弾の起爆に成功した爆弾魔か。遅効性の毒を盛り、ターゲットの死を確認した暗殺者か。
垣根が指揮者のように腕を振るうと、灰のようなものが再び形を成す。
其れはカブトムシを経て垣根帝督へと。
そう。
フェイスレスに乗っ取られた垣根が主導権を取り戻した、いや
「白金、ディーン・メーストル、才賀貞義、フェイスレス司令。そして……『垣根帝督』。すべてこの俺だ」
未元物質は無限の可能性を内包する。
ならばフェイスレスという反英雄もまた、無限の可能性の一つに過ぎないということ。
「ば、か、な………………」
天秤の傾きはフェイスレスにも伝わった。
なるほど、この戦いの勝者はフェイスレスだ。
ただし、そのフェイスレスとは一体誰のことだ?
ディーン?白金?それとももしかして垣根帝督?
――――――もとより真名ではない偽りの名、誰が名乗ったところで不足はない。
「ば、馬鹿にするなあああああああああああ!!」
フェイスレスの顔が恐怖に歪み、悲鳴を上げる。
今まで数多の人生を乗っ取ってきた男が、死して初めて自分の記憶と人生を奪われる体験を味あわされていた。
「ぼ、くが……僕がフェイスレスだ!僕が、僕なんだ!
この記憶が、積み上げた人生が、英霊としての体験が!それが僕だ……!こ、んな。こんなことが、許されると――――――」
言葉を紡ぎ、抵抗する。
それでもそれは海水の中に純粋を垂らすような儚い足掻きに過ぎない。
「お前は記憶をアイデンティティーとして多くの肉体を渡り歩いてきた。
白金のパーソナリティーを維持し続けたのは大したもんだ、そこは褒めてやる。
だがな、サーヴァントってのはみんなそうだが、お前の場合生粋のスワンプマンなんだよ。白金の記憶を持ったものが白金であるという自己定義は、記憶を維持する限り己を維持できる、俺とは違った不死性ではある。
だがそれは同時に、白金の記憶を持った他者が産まれた瞬間に己の存在があやふやになる脆さも内包している。
ようするに、だ。お前の人生の記憶をそっくりそのまま手に入れた、俺が今から白金でも構わないだろ?ってことだよ。もっとも俺はフェイスレスだのディーンだのセンスのない偽名を名乗るつもりはないがね。今まで通り垣根帝督として生きていくさ」
言葉を紡ぐたびにフェイスレスの姿をとっていた未元物質か垣根帝督の姿へと戻っていく。
部屋の主が誰なのか、言葉にせずとも誰しもに理解できる形で示されていく。
「覚えとけ。レベル5を甘く見るな。『未元物質』はお前なんかにゃ勿体ねえ代物だ。制御できる範囲を大きく超えている。
転送≪ダウンロード≫とか言ってたか?強能力未満のおもちゃがお前にはお似合いだよ」
悲鳴を上げていたフェイスレスが最後の一人。
それもまた溶けるように崩れ、未元物質に還っていく。
それを確かめると無数の垣根も形を失い、記憶の部屋には垣根と善吉の二人が残るのみ。
だがそれでもまだ、善吉は脳髄を犯されるような感覚からは抜けられずにいた。
「待たせちまったな、人吉……お前がまだ令呪を一つ残していてよかった」
その善吉を慈しむように垣根が傍に立ち、声をかける。
「答えはでた。俺の中での……いや、今主導権を握ったこの垣根帝督なりの一方通行への勝ち方ってのがな」
善吉の手。
そこに宿った令呪を握り、善吉の視界へと掲げさせていく。
「サーヴァントとして、俺がアイツより優っていると証明してみせる。だから人吉、この令呪で俺に……自害を命じてくれ」
それは人吉にとっても忘れ難い罪、その再現。
苦しみながらも人吉は表情に驚きを浮かべる。
「俺は、垣根帝督だ。お前の体を流れる生命の水に溶けた記憶の主だ。
俺がいる限り、お前はその呪縛から逃れられない。
だが契約した今の俺なら。生命の水の中の俺まで一片残らず消し去れる。だから、命令をよこせ人吉」
できるわけがない。
必死に首を振り、それを拒絶しようとする。
だがそれも予期していたと、垣根は一つの真実を告げる。
「通常聖杯戦争に呼ばれたサーヴァントの記憶が座の本体まで影響を及ぼすことはない。
だがな、例外はある。今の俺は令呪で命じられ、フェイスレスであることを受け入れた。この事実が世界に記録されれば、俺は今後フェイスレスという悪性を抱えていくことになる」
サーヴァントは複数の聖杯戦争で記憶を跨ぐのもまれだ。
だが例外もある。
サーヴァントの在り方をゆるがすほどの何かであれば、それは座にまで記録されてしまうのだ。
良し悪しは別に価値観を書き換えるような経験を得た者であったり。あるいは獣の資格者たる根源接続者が関わった聖杯戦争で霊基に多大な損傷をきたしてしまったり。
「頼むよ、人吉。俺を、垣根帝督でいさせてくれ。令呪によって汚された霊基を令呪による攻撃で一掃できる可能性が残っているうちに」
その言葉が引き金となった。
涙を浮かべながらも善吉は唱える。
「令呪を以て命ずる、アサシン――自害してくれ」
その言葉によって、記憶の部屋の主は生き残った一人に決まった。
そして人吉善吉は意識を取り戻す。
◇ ◇ ◇
「起きたのね。気絶したのは記憶を取り戻した、それとも失くしたショックかしら?」
善吉の目の前にはどこかで見たような女性の姿。
それが間桐雁夜を膝に抱いて、たおやかに控えていた。
「あ。アプ・チャー?その姿は……えーと、えー。そうだ葵さん!」
「知らないわ。あのアサシンの翼を押し付けられたらこの姿になったのよ」
遠坂葵。間桐雁夜の焦がれた人で、罪と後悔の象徴。
雁夜の転送≪ダウンロード≫は記憶を共有する超能力だが、身に着けて短いその能力は熟達とは言い難くフェイスレスの記憶諸共に雁夜の記憶もまた垣根と共有することになった。
その知識を垣根が望まず得たときに、状況は変化した。
――フェイスレスなど、私には何の関係もないわ!――
垣根に組み付いていたアプ・チャーが糸を断ち切り、自らの足で歩んだ瞬間だった。
造物主への叛逆。
そこにある事情までは垣根には汲み切れなかった。
だが事態の変化を見逃すような愚鈍ではなく。
転送≪ダウンロード≫の手を止めるために、間桐雁夜の最大の古傷を最小限の手で抉ったのだ。
未元物質を材料に、フェイスレスの知識を用いた変装術。それによってアプ・チャーの姿は間桐雁夜の記憶そのままの遠坂葵のものになった。
それを目にした雁夜のショックは尋常のものではない。
いくら表層がフェイスレスに乗っ取られていたとはいえ、能力を行使できるような精神状態を保つことはままならず。
転送≪ダウンロード≫は停止し、援軍を失った記憶の部屋のフェイスレスは敗北を喫することになった。
そして流れるように垣根もこの世を去り、この二人と一機が残されたというわけだ。
アプ・チャーは記憶の部屋のやり取りを、善吉は現世での駆け引きを知らないためその全てを察することはできない。
それを踏まえて話ができるのは
「よう、フェイスレスはくたばったか人吉」
転送≪ダウンロード≫を受けていた只一人。
だがその口調には違和感を善吉は覚えた。
むしろこの雰囲気は……
「察しはつくか?俺だよ、垣根帝督だ」
転送≪ダウンロード≫。それにより雁夜も逆に垣根の記憶を得ていた。
加えて垣根がフェイスレスの主人格として己を定義したために、雁夜の表層でもまた支配権を獲得していたのだ。
だが目にも体にも力はなく、こと切れる間近なのだろうと感じられた。
無理もない。
刻印虫に巣くわれ、余命幾ばくもなく。
サー・ランスロットという一流のサーヴァントをバーサーカーとして従えること数日。
そのうえに今度は一日程度とはいえ一方通行というこれまた魔力食いのバーサーカーを従え。
PSI粒子と一方通行による肉体改造。
にわか仕立ての能力の行使。
魔術と超能力の反発。
サーヴァントの記憶を二人分体に無理矢理に流し込まれ。
健常な人であっても命を落としかねない激動の運命に晒され、今生きているだけでも奇跡と言えよう。
その肉体に自害を命じられたサーヴァントの残渣が宿っている、死にぞこないの結晶体。
そんな無様を晒しても最期に伝えなければならない言葉があると、この世にしがみついているのだ。
「人吉。お前は聖杯戦争に何をしに来たって聞いたよな?その答えと本当の意味が、今なら分かるんじゃねえか?」
召喚時にも、記憶の部屋でもした質問。
黒神めだかに『勝つ』ということ、その意味するところ。その動機。
……善吉も自覚はしていた。させられていた。
無理矢理に重ねられた人生経験が、善吉に教えてくれた。
それは、善吉には認めたくないものだったかもしれない。
それを察しているのだろう、垣根の表情が変わる。垣根帝督のものから間桐雁夜のものへ。
「僕は、本当に好きだった。葵さんのことを心から愛していたんだ。でもその結末は……」
――あなたなんか……誰かを好きになったことさえないくせにッ!――
言葉にしなかったから。伝えたことがなかったから。
分かってもらえなくて当然なのだけれども、それでも文字通り命を削り人生を懸けた果てに得たものがその言葉と拒絶ではあまりにも報われない。
フェイスレスもそうだった。
――フランシーヌは僕が最初に好きになったんじゃないか…――
ああ、それは真なのであろう。
しかしフランシーヌに最初に愛を告げたのは銀で。
きっと二人の差はそれだけだった。
「だから、君が命を懸けるのはきっとここじゃあない」
人吉善吉は、黒神めだかを愛している。
その想いも能力によって共有され、周知のものとされている。
その事実にも、自らの想いにも恥らいを覚えるのが正しい人吉善吉のリアクションなのだろう……が。
今の彼は羞恥以上に嫌悪を覚える。
なぜならば、一人の女性の面影を200年以上追いかけた男の妄執と、それによってもたらされた悲劇を知ってしまったから。
生命の水は、未元物質によって排除されているが自前の脳細胞に焼き付いた記憶まで抹消されるわけではない。
だから反射的にその想いも否定しようとして―――
「何を恥じることがあるの?」
その必要はないと諭される。
「人が人を愛することにおかしな点などないでしょう?」
そう告げるアプ・チャーの眼は真っすぐで、そう。
ここではないどこかを見てるかのよう。
「人間は変わっていくものだと、誰かを愛せる生き物だと言っていた…いえ、教えてくれた人がいたわ。
人は幸せになった時笑うのでしょう?なら笑顔になるにはきっと、愛が不可欠なのでしょう。
私のような人形でも人や主人を愛せたというのに、あなたのような人間が誰かを愛するのに何の不思議があるというの」
フランシーヌを笑わせるために感情の機微を学んだ人形の中でもアプ・チャーは極めて優秀な存在である。
そんな彼女が最期に学んだ愛。
短い触れ合いだったが、善吉が人を愛することのできる存在だと深く理解していた。
だから恥じる必要も、怯える必要もない。
だって
「フェイスレスなど、あなたには関係ないわ」
其れは彼女にとって大きな意味を持つ言の葉。
アプ・チャーの言葉には強い感情は乗っていない。
それでも、人吉にはその眼で分かる。彼女の真摯な言葉が、その愛が真であることが。
ああはならない。なるはず愛を得られないからと悲劇を起こす反英雄のことを知っても、いや知っているからこそああはならないと信頼を寄せてくれているのだと。
「だから、行きなさい。幸せになって、愛する人にいい笑顔を見せてあげなさい」
「おう、そうだ。帰れ帰れ」
アプ・チャーの激励に便乗するように力なく雁夜(かきね)も善吉の背中を押す。
その言葉に背を押されてようやくゆっくりと、迷いながらだが善吉は帰途に就いた。
不幸中の幸いか、現在地から僅かに南下すれば公衆電話があるのは確認していた。
そしてその目的地にたどり着いたときには彼の背には迷いなく、真っすぐに立っている。
例えるなら、凛という空気を纏うのが似合うような。
【人吉善吉@めだかボックス 退場】
「行ったわね」
「ああ」
残された二人は善吉を見送った姿勢のまま、力なく地に腰掛けている。
事実として二人はもうこれで限界だ。
間桐雁夜の肉体はもとより。
自害を命じられた垣根帝督の記憶も。
造物主に抗い、もう一人の造物主との縁も消えたアプ・チャーとて。
「私は作られた人形に過ぎないからまだしも。サーヴァントというのはそんなに諦めのいいものなの?」
アプ・チャーにとっては身近なサーヴァントの例として挙がるのがフェイスレスだ。
只では死なない。死んでも聖杯を諦めることなどないイメージで、垣根の行動には疑念を隠しきれなかった。
「目的は達したからな。一方通行には勝ったぜ」
そう言いながら間桐雁夜の体を検める。
「見ろよこいつのボロボロの様をよ。多少体を弄ったところでどうしようもねえ。レベル5の力でも治せねえくらいだぜ」
はは、と皮肉な笑いを浮かべる。
それは一方通行でもどうしようもなかったという蔑みで。
未元物質でもなにもできないという自虐でもある。
フェイスレスの医療知識を獲得してしまった善吉もまた、雁夜が助からないと確信してしまったからこそ帰路に就いたのだろう。何もできない無力さを垣根同様噛みしめて。
「だが、人吉は生還した。フェイスレスという邪魔者も取り除いて、俺のマスターは無事に帰ったんだ!」
一方通行は、マスターを助けることができなかった。
垣根帝督は、マスターの生還に成功した。
二人とも数多の害悪をまき散らし、聖杯を得ることは敵わなかったが、それでも決定的な悪としての差がそこにはある。
この垣根帝督はそれをもって自らの勝利を定義した。
「だから、いい。願いは叶った。助力感謝するぜ。
そういうお前こそなんでまあ入れ込んでたのか分からんもんだが。フェイスレスの人形じゃあないのか」
フェイスレスなど関係ない、と改めて口にしそうになるが。
今更そんなものに意味はないだろうと、一度目を伏せ、自分でもよく分からないところのある行動を振り返ってみる。
遊園地での問答の借りもあるだろうが
「……昔、ショートカットの似合うサイテーなお姫様がいたわ。今思い返すと彼女も人吉と同じ目をしてた。誰かを愛した人の目を」
アプ・チャーに只一人拳を浴びせた人間。
10年観察を続けたのに、一人のしろがねに恋をして変わった女。
アプ・チャーの最期に、愛を語った強く美しい女。
彼女と同じ、恋をする者だからだろうか。人吉に協力的だったのは。
「あるいは私のこれも……愛だったの、でしょうか?」
キリキリ、と音を立てて歯車の動きが鈍くなる。
思考も鈍化し、アプ・チャーもまた二度目の活動停止を迎えた。
「ああ、終わりか……俺も、だな」
アプ・チャーが遠坂葵の変装に用いていた未元物質が剥がれ落ちた。
そしてそれが間桐雁夜の肉体に触れると、その最期の命令を実施する。
「せめてもの情けだ。すっぱり逝こうぜ間桐雁夜」
未元物質も垣根帝督の一部……つまり令呪の命令に忠実だ。
垣根帝督の記憶を受け継いだ間桐雁夜も垣根帝督のスワンプマンならぬ本人とみなし、『自害』する。
そうして戦場には誰もいなくなった。
【バーサーク・アサシン(垣根帝督)@とある魔術の禁書目録 死亡】
【間桐雁夜@Fate/Zero 死亡】
【アプ・チャー@からくりサーカス 機能停止】
[全体備考]
※B-3北西部にアプ・チャーの残骸(
暁美ほむらの外見)が残されています。マスターであった人吉善吉の退場に伴い灰化などするかは後続の方にお任せします。
※B-3北西部にて間桐雁夜の刻印虫(令呪ニ画分の魔力あり)が放たれています。間桐雁夜の死亡に伴い灰化などするかは後続の方にお任せします。
最終更新:2018年12月25日 00:38