シナリオ制作者向けの知識


 CardWirthや派生エンジンの仕様で、あまり知られていないものをこれまで「スポイラー」に記載してきましたが、たとえば「背景継承の独特な仕様」などは秘匿されている必要が無く、むしろ明らかにシナリオ作者は知っておいた方がいい情報です。
 ここでは、そういったシナリオ制作に役立つであろう知識をページを分けて記載していこうと思います。



基本システム


「現在選択中のメンバ(選択メンバ)」にする方法

 CardWirthで特定のキャラクターを選択してメッセージを喋らせたり、効果を与えるには「現在選択中のメンバ」にする必要がある。選択メンバにするには複数の方法がある。(手動による検証結果
 1.50仕様では主に以下のコンテントで選択メンバにすることができる。

味方を選択したい!
  • カードの使用者……使用時イベント/キーコード発火時には自動で選択される
  • 「メンバ選択分岐」で手動orランダムに選択……味方
  • 「称号/カード/キーコード所持分岐」の「誰か一人」で選択……味方
  • 「能力・状態判定分岐」の「誰か一人」で選択……味方
  • 「ランダム選択(1.30以降)」で選択……味方/敵/同行NPC

敵・同行NPCを選択したい!
  • カードの使用者……敵・同行NPCがカードを使用した時は自分自身が選択メンバ
  • 「称号所持分岐」の「フィールド全体(1.30以降)」で選択……味方/敵
  • 「アイテム・スキル・召喚獣カード所持分岐」の「フィールド全体」で選択……味方/敵
  • 「ランダム選択(1.30以降)」で選択……味方/敵/同行NPC

選択状態を解除したい!(#mで空白が表示される状態)
  • 「称号所持分岐」の「パーティ全員」で「@レベル原点」を判定する※必ず成功


「パーティの誰か一人」では当然ながら味方しか選択できない。
「フィールド全体(の誰か一人)」ではバトル中の敵を含めて選択できる。同行NPCは選択できない。
1.50仕様で同行NPCを能動的に選択できるのは「ランダム選択」のみ。同行NPCのデータは元々オリジナル版(1.28以前)では保存もされていなかったため、エンジン間で挙動にかなり差があるので注意しよう。

1.50までの機能では、敵や同行NPCを選択することはあまり想定されてこなかったため、
直感的に選択しにくくなっている。
凝ったバトルイベントを作りたい場合、個体を区別する称号やカードを所持させる方法が一般的。


判定/適用範囲の名称と意味

 CardWirth 1.20の時に「フィールド全体」を「全体(荷物袋含む)」に仕様変更しようとして失敗したような経緯があったようで、配布系コンテントには実際の運用上さしたる違いがない適用範囲設定が多い。
 敵を選択できるのは「選択中のメンバ」と「フィールド全体」のみ。残りは味方専用。

名称 実際の検索系の範囲 カード獲得/喪失系の挙動
選択中のメンバ 選択メンバになっているキャラクター
(味方/敵/同行NPC)
選択メンバのみに配布/削除
パーティの誰か一人 味方の誰か一人 味方の誰か一人に配布/削除
パーティ全員 味方全員 味方全員に配布/削除
荷物袋 荷物袋 荷物袋に配布/削除
全体(荷物袋含む) 味方全員→荷物袋 荷物袋に配布
味方1人目から検索順に削除
フィールド全体 味方全員→荷物袋→敵全体 荷物袋に配布
味方1人目から検索順に削除

検索系…称号所持分岐、カード所持分岐コンテント
獲得・喪失系…称号・カード獲得/喪失コンテント

効果系カードの獲得コンテントでは「全体(荷物袋含む)」や「フィールド全体」を指定しても荷物袋に入るだけだが、「パーティ全員」のみ全員分(=複数枚)配られる。
検索は左側から数えて味方1人目、2人目と順に行われる。この仕様のため、CardWrthでは基本的に左側のキャラクターの方が目立ちやすい。


カード属性・命中属性・モーション属性の効果

1.20までの効果は解説が公式ヘルプに書いてあるのだが、クリック形式なので気づきにくい。

カード属性 物理無効 魔法無効 物理・魔法無効 使用例
物理属性 × × なぎ倒し
魔法属性 × × 魔法の矢
魔法的物理属性(1.20以降)
兼用属性(1.15)
× 居合斬り
物理的魔法属性(1.20以降) × × × 蜘蛛の糸
無属性(1.28以降)※ カード交換

 通常使うのは、物理属性(ゴーストに当たらない)・魔法属性(魔法無効化される)・魔法的物理属性(万能)の三種だけ。

命中属性(抵抗属性) 効果 使用例
回避属性 対象の回避力を参照して命中判定を行う。
回避に成功した場合、全効果が無効化される。
居合斬り
抵抗属性 対象の抵抗力を参照して抵抗判定を行う。
抵抗に成功した場合、ダメージモーションは
最大値処理を含めて1/2になり、その他の効果は無効化される。
魔法の矢
必中属性(1.28以降)※ 対象の能力や、カードに設定された成功率に関係なく確実に命中する。
成功率+5と同じ効果。
カード交換

無属性・必中属性について
 無属性・必中属性は、1.28以降に愛護協会のエディタ改造でユーザー側が使用できるようになったが、内部的には1.20以前から存在しているシステム属性。(カード交換は物理魔法無効でも使用できなければならないため)

 無属性は、「対象消去」のように「倒せないように設定された敵」を倒してしまう等、シナリオを進行停止させてしまうことがあるので、「プレイヤーが入手できるカード」に単なる上位属性と考えて設定するのは非推奨。
(とはいえこれらは非公式に導入され、公式・愛護教会でのガイドラインも敷かれなかった結果、既に無属性カードを想定した戦闘シナリオ等も存在しているので、制御するのはもはや手遅れ感もある。)

 必中属性についてはそのような不具合を生じさせることはないため、自由に使用して問題ない。


モーション属性 解説 使用例
🟡 全属性 カード属性で無効にならない限り、すべての存在に有効。 居合斬り
⚔ 肉体属性 「命を持たない」相手には無効・自動選択の対象に取らない。 双狼牙
👁‍ 精神属性 「心を持たない」相手には無効・自動選択の対象に取らない。 眠りの雲
神聖属性 「不浄な存在」のみを対象・有効とする。 亡者退散
魔法属性 「魔法生物」のみを対象・有効とする。
※紛らわしいがカード属性の魔法属性とは何の関係もない
魔法の矢
🔥炎属性 「炎に耐性を持つ」相手には無効・自動選択の対象に取らない。
「炎に弱い」相手に対して効果強化。
火の玉
🧊冷気属性 「冷気に耐性を持つ」相手には無効・自動選択の対象に取らない。
「冷気に弱い」相手に対する効果強化。
氷柱の槍
  • 複数のモーションの重ね掛け
モーションは上に設置したものから順次実行されていく。
回避/抵抗判定はカード単位に一度しか行われないが、防御力と効果強化判定はモーション単位で行われる。
このため、ダメージモーションを7個設置するとシルフィードを一度で削り切ることができる。
蓄積するモーションはダメージ/吸収/回復/中毒/麻痺/カードの配布予約。
その他は最後の有効なモーションが優先される。

  • 属性「効果強化」の内容
 弱点属性の場合、ダメージ系・中毒・麻痺はモーション毎に固定値+10点の効果。
たとえば一つのスキルカードで、炎固定値ダメージ1点のモーションを10個追加した場合、
通常の敵には10点しか与えられないが、弱点の敵に対しては110点相当になる。
持続時間系と召喚獣召喚モーションでは適性ランク+1分の効果。
効果がプラスかマイナスかは関係なく、「防御力増大」などのバフ効果を受けた場合でも持続時間が伸びる。


カードの効果目標/効果範囲


効果目標 解説 使用例
対象なし 誰も対象に取らない。メニューカードも対象に取れない。
カードに設定された効果は自分を含めてどこにも適用されない。
戦闘中に自動選択させるには使用時ボーナス/ペナルティが必要。
使用時ボーナス/ペナルティ・使用時イベントは自分が使ったように機能する。
闇に隠れる
硬気功
シルフィード
使用者 カードの使用者自身にだけ効果を適用する。メニューカードは対象に取れない。 賢者の杖
味方 カード使用者からみた自身を含む味方(プレイヤー側ならパーティメンバ)。
非戦闘時はメニューカードを対象に取れる。戦闘中エネミーカードを選ぶことはできない。
癒身の法
葡萄酒
敵方 カード使用者からみた敵側(プレイヤー側ならエネミーカード)。
非戦闘時はメニューカードを対象に取れる。味方を選ぶことはできない。
居合斬り
盗賊の手
双方 カード使用者からみた味方・敵の両方。同行NPCは含まれない。
非戦闘時はメニューカードも対象に取れる
破魔の印
効果範囲 解説 使用例
単体 効果目標で選んだグループの中から誰か一人。 居合斬り
全体 効果目標で選んだグループ全員。
1.20時点ではメニューカードは対象に取れなかったが、1.28以降取れるようになった。
薙ぎ倒し
火の玉

 カードの効果対象は戦闘中だけではなく、テーブルモード(探索時)にも関わってくる点に注意。
 たとえば「鑑定」を付けたカードに「対象なし」「使用者」を付けてしまうと探索中にメニューカードを選ぶことができず、役立たずなカードになるし、味方側を回復するカードについでに「鑑定」をつければ便利!という発想でつけてしまうと戦闘中、敵側を鑑定しろ!というシナリオが稀にあり、肝心な時に使えない!ということが起こる。

 「双方」ならそういったことは起こらないが、戦闘効果を両立させようとすると戦闘中に自動選択で敵を回復したり、味方を攻撃したりするので、使いにくいカードになる。あまり欲張らないこと。

対象に取れる範囲 エリア メニューカード 味方 自分
対象なし × × × ×
使用者 × × ×
味方 ×
敵方 × ×
双方

 エリア直下のキーコードイベントのみ、すべての範囲のカードのキーコード発火を優先してキャッチできる。
 たとえば「生命感知」などはエリアで対応して効果中断するのが推奨されているが、「生命感知」と「鑑定」を両方つけた欲張りスキルはここでキャンセルされてしまうため、メニューカードの方のイベントに到達できない、ということが起こる。


画像の取り扱い


CardWirthの背景変更/継承の仕組み

 CardWirthにおいて、「背景継承」で追加したセルは、隠れて見えない物も含めて内部的にすべて蓄積している。
このため、ミニゲーム系のシナリオで発生しやすいが、「背景継承」で画面にセルを置く処理を繰り返していくと処理が極端に重くなっていく。「背景削除」のない1.50以下では定期的に「背景非継承」でリセットしなければならない。

 CWEditorとWirthBuilderのUIではデフォルトで必ずMapOfWirth.bmpが指定されており、背景継承は明示的に指定しなければ行われない。しかし、CWXEditorでは1番目の背景も通常セル扱いするため、仕様を理解していないと不具合の元となる。

リセット条件
「位置0,0、フルサイズ(632x420)のイメージセル」が1番目に置かれた、背景変更コンテント or エリア移動。

  • フラグは指定されていても無視される。CWXEditorの仕様上の問題で従来のエディタでは背景(1番目のフルサイズセル)にフラグを指定できない。
  • 「フルサイズのカラーセル」では背景継承が行われるので、カラーセルがない時代に伝統的に行われてきたblack.bmpかwhite.bmpをフルサイズ表示する手法にも意味が残っている。


CardWirthのカード画像[格納]の仕組み(格納PNG問題)

 CardWirthシナリオの「貼り紙、エリアのメニューカード、キャストカード、効果系カード」には画像を[格納]することができる。格納した画像データは、Summary.wsmとwidファイルに直接書き込まれ、参照元の画像を削除しても表示されるようになる。
 この格納はBMPのみ対応しており、PNG等の圧縮画像形式は、Py系エンジン以外では一切サポートされていない。

旧CWXEditor製シナリオの問題
 8以前のCWXEditorでは、PNG等の格納を許容していたため、「クラシック形式なのにPy以外では動作不能になるシナリオ」が作られていた。この状態のシナリオはCardWirth 1.20-1.50/NEXTでは「シナリオ選択で貼り紙を読み込んだ瞬間」、またはエリアに入った途端に警告が表示されて、進行が止まってしまう。また、この状態のシナリオをWirthBuilderで開くと不正に格納されているカード・エリアは読み込まれない(無言で読み飛ばされる)。気づかずに上書きするとファイルが消失するので要注意。(シナリオファイルを一度全消去してから書き込むのがWirthBuilderの上書き仕様であるため)

 「1.50仕様」を目標としたシナリオが、意図せずそうなってしまった場合の簡単なリカバリー方法は、「CWXEditorで」カード画像の指定を一度解除(「イメージ格納」を「イメージ無し」に変更)し、「1.50付属のWirthBuilderで」格納し直すこと。しかしWirthBuilderにも後述する注意点があるので、面倒でも格納したいPNGは画像編集ソフトでBMPに変換する方が良いだろう。webで変換してくれるサービスもある。


WirthBuilderの仕様・不具合
 WirthBuilderのUI上では一見、「PNGの格納」に対応しているように見えるが、これは実際には格納時に自動でBMPに変換して保存しているだけであり、しかも保存時にデータを破損させてしまう。CardWirth1.30以降での表示上は問題ないが、[保存]で再度画像を取りだした場合、他の画像編集ソフト上ではバグった表示になるか、そもそも読めなくなってしまう。こうなった画像を修復するには画像のバイナリを修正しなければならない。以下で修復ツールが配布されている。

 なお、WirthBuilderのPNG→BMP変換では「透過(32bit)PNG」は「フルカラー透過BMP」、「16色/256色PNG」は「16色/256色BMP」として保存される。PNGは圧縮フォーマットなので、素材はフルカラーで配布されていることも多く、そのまま格納してしまうと、256色以下しか使われていなくてもフルカラーBMPで保存され、結果として容量が増加する。

94x74の画像 効果系カード1枚あたりの容量
16色BMP 4 KB
256色BMP 8 KB
フルカラーBMP 22 KB
フルカラー透過BMP 28 KB

 この程度の容量を気にする時代ではないが、シナリオを極限まで減量したい場合には、格納画像には「16色/256色BMP」を使い、参照指定できる画像はPNGで保存するといい。減色ソフトはYukari / xPadie Pro / Padieあたりがお勧め。



スキル/アイテム/召喚獣の「使用時イベント」

 効果系カード(スキル/アイテム/召喚獣カード)には1.20以降、「使用時イベント」と呼ばれる独自イベントが付けられるようになった。

 使用時イベントでは、比較的自由にイベントツリーを組む事ができる。たとえば「カードを使用したキャラクターに必殺技名を叫ばせる」だとか、「敵にダメージを与えるスキルで、自分にも技能カードを配布する」ということが可能になる。
 しかし、複雑な効果を作るための、肝心の効果コンテントには様々な制限が有り、カードをシナリオ外に持ち出す場合、フラグ系やカードの入手・喪失系コンテントは機能しなくなる。


使用時イベントのタイミング

使用時イベントは、キャラクターの行動順が回ってきて、実際に「カードを使用しようとした時」に発動する。

一次効果音を再生
発動判定
 技能レベル判定に失敗した時、「沈黙時使用不可」で沈黙・行動不能時、
 魔法属性のカードを魔法無効化状態で使用した時は、
 使用時イベントにいく前に効果が中断される。
使用時イベント
 使用時イベントで効果中断コンテントが使用された場合はカードの本効果は発動しなくなる。
効果系カード自体の本効果が発動 キーコード発火/二次効果音再生
 カードに付いた「キーコード」はここでチェックされるので使用時イベントでキーコードが必要な効果は厳禁。




シナリオ外で機能するコンテント、しないコンテント(1.50仕様)

 シナリオ内のみで一時的に使う特別なカードの場合には、これらを意識する必要はない。
だが、お店シナリオで販売したり、依頼の報酬としてプレイヤーに提供する効果系カードはシナリオ外に持ち出しても動作するように作る必要があるので、以下の使えない機能に注意しよう。

機能する 機能しない
Terminal スタート、敗北、シナリオクリア、効果中断、スタートへのリンク エリア移動、パッケージへのリンク
Standard メッセージ、台詞、BGM変更*1、背景変更*1、効果音*1、空白時間、効果*1、時間経過、スタートのコール パッケージのコール
Data なし フラグ系、ステップ系は全て使用不可
Utility メンバ選択、能力判定分岐、ランダム分岐、レベル判定分岐、状態判定分岐、人数判定分岐、バトル判定分岐、ラウンド分岐、ランダム選択(1.50) エリア判定分岐、バトル分岐
Blanch 所持金所持分岐、クーポン分岐、終了シナリオ分岐、ゴシップ分岐、キーコード所持分岐(1.50) キャスト分岐、アイテム所持分岐、スキル所持分岐、情報所持分岐、召喚獣存在分岐
Get 所持金増加、クーポン取得、終了シナリオ設定、ゴシップ追加 キャスト加入、アイテム入手、スキル取得、情報入手、召喚獣獲得
Lost 所持金喪失、クーポン喪失、終了シナリオ削除、ゴシップ削除 キャスト離脱、アイテム喪失、スキル喪失、情報喪失、召喚獣消去
Visual パーティ表示、パーティ隠蔽、画面の再構築 なし
※1 Dataフォルダにある基本素材の指定のみ。シナリオ内の素材を指定した場合、他のシナリオでは表示・再生されない。例として「BGMを宿やリューンに変える」というのは有効ではあるものの、戻す手段がないので、シナリオの演出を乱してしまう。ネタスキルぐらいにしか使い道はないかも。


「使用時イベントで効果コンテントを使う」際の注意点(1.50仕様)

PyのWSN仕様では以下の問題に対処する追加オプションが提供されている。

  • 効果コンテントでのレベル比モーション・命中率は「効果コンテントの対象レベル*全能力ALL6」で計算される。
 勘違いされやすいが、効果コンテントの使用者は「カードの使用者」ではなく「効果コンテント自身」
 この「効果コンテント自身」は筋力などの能力値は6、好戦性などの精神傾向値・行動力は0、レベルは「効果コンテントに設定した対象レベル値」相当の仮想的なキャラクターとして扱われる。なので、効果コンテントで吸収モーションを使ってもカード使用者は回復しないし、「使用者のレベル・適性・行動力」も一切反映されることはない。

 たとえば「レベル比2のダメージモーション、成功率+1」を持つ対象レベル1の効果コンテントは、実際には「対象レベル」を参照するので、レベル1相当、弱いままで固定で、高レベルの敵にはまず当たらなくなる。つまり、カードの効果コンテントではレベル比系モーション・命中率を「ほどよい感じ」にはできない。
 基本的には、固定値・絶対成功(必中属性or成功率+5)で調整するのが望ましいと言える。

 「所有者のレベルによって成長する、命中率を持つカード」をどうしても表現したければ、事前にレベル判定コンテントとランダム分岐や能力判定分岐でレベル・命中判定を行い、分岐ごとに対象レベルの異なる効果コンテントを設置する、という非常に面倒なイベントを組むことになる。素直にPyでやることをおすすめする。


  • 効果コンテントではキーコードが発火しない。
 カードに設定されたキーコードが発火するタイミングは、「使用時イベントが終わり、カードの本効果の目標に効果を適用する直前(通常キーコードイベント)/直後(キーコード名+◯×の成否イベント)」

 効果コンテント側の効果適用時にはキーコードが付けられないため、特に「ランダム選択コンテントなどで敵を選択して、ダメージ/吸収/麻痺/対象消去/中毒を与えるカード」は(死亡イベントが発火するNEXT形式であっても)基本的に作らない方が良い。本来、攻撃が通ってはいけない敵を倒してしまうなどの不具合が生じる場合がある。

 言い換えると「連続攻撃」「特定条件で威力が変化」「確率で状態異常を付与」というような効果コンテントを敵に使用するカードは、Py以外では持ち出し可能なカードにはできない(シナリオ内専用ならOK)。

 複数の効果を持つカードを安全に表現するには、目的の効果を発動する召喚獣をその分用意し、「召喚モーションを使用して、次ラウンド以降に召喚獣で行う」という方法がある。この方法であれば、即時には効果を発揮できないものの、召喚獣の本効果でキーコードが発火するので攻撃系にも利用できる。

モーションの即時解除テクニック


  • 中毒or麻痺緩和+中毒or麻痺
 中毒と麻痺は「蓄積する状態異常」なので重ねて与えるとボスも簡単に倒せてしまう。
そのため、さして強くする意図がなくても壊れの烙印を押されてしまうことが多い。
それを積めないように先に回復することで相殺するテクニック。
副作用として緩和系モーションは意識不明のキャストも対象に取ってしまうため単体対象では使いにくくなる。

  • 眠りキャンセル(睡眠+精神正常化orダメージ)
 一瞬でも睡眠/麻痺/呪縛/意識不明状態になると、ターゲットのそのラウンドの行動はキャンセルされ、カード消去モーションを行った場合と同じく手札が破棄される。
眠りはダメージを与えればどの道解除されるので、呪縛や麻痺と比べて安全に入れられる点がメリット。
デメリットは勇敢や恐慌など「他の精神系状態異常」を解除してしまうこと。

 1.50以降の「行動キャンセルモーション」との違いは召喚獣がそのまま動作すること。
召喚獣が動作しないとそれがトリガーとなるシナリオ側の時限戦闘イベントに数ターン誤差を生じさせてしまう例が少数ながら存在するので、「無属性」同様にスキルやカードの効果で使うならこれらの状態異常キャンセルを使う方が安全ではある。

  • 麻痺キャンセル(麻痺1点+麻痺緩和2点)
 麻痺状態になると死亡イベントが起きる上、召喚獣が発動しなくなるが、
同一効果の中で一瞬だけ麻痺状態になった場合は死亡イベントは発火せず、召喚獣も動作する。
メリットは他の状態異常と違って他のデバフを妨害してしまうような副作用がないこと。
デメリットというか、危ない点として、固定値1点は、実際には1~2点の揺らぎがでるので麻痺緩和を2点以上にしないと麻痺状態が残ってしまうこと。

  • 呪縛キャンセル(呪縛+呪縛解除)
 麻痺キャンセルや眠りキャンセルと大体同じ。
違いはカードの配布予約がそのまま維持されること。フェイントハメを阻害しないのはメリットとなるが、
既に呪縛状態の敵を解除してしまうので他の味方が呪縛スキルを持っていると干渉してしまう。

  • 死に戻り(最大値ダメージ+回復)
 一瞬でも意識不明になると行動キャンセル+手札・配布予約消去に加えて、中毒・麻痺以外の状態異常/能力変化が全てリセットされ、有限召喚獣も消滅する。
体力を計算して戻すこともできなくはないが、非常に面倒なので通常は他の手段を使った方がいい。

  • 暴露即解除(暴露+暴露解除)
  • 魔法無効化即解除(魔法無効化+魔法無効化解除)
 CWの自動選択AIはその状況で有効なモーションがなにもない場合、絶対にそのカードを自動選択しない。
このため、使用時イベントで本効果を組んでいる場合は、このような実質意味のない組み合わせを使って自動選択させる必要がある。また、全体回復スキル等で無効化音(カキーン)を鳴らさないテクニックとしても使える。
ただし自動選択AIには常に効果が有効だと認識されるので全員が健康な時も選択してしまうという副作用もある。

  • 意識不明者のみの回復(中毒等+使用時イベントで回復) Py推奨
CWの回復は意識不明者も無制限で起こしてしまうため非常に強い。
なので「生存者のみを回復できるスキル」が度々作られているが、CWの自動選択AIは意識不明者を優先して回復しようとするので使い勝手はよろしくない。

そこで意識不明者には無効のモーション「ダメージ/中毒/麻痺/カード消去/カード配布」をカード自体の効果にしておき、使用時イベントで状態判定分岐を行って生存者のみを回復、効果中断するようにすれば振る舞い上で多少自然な「蘇生効果なし回復スキル」ができあがる。(健康状態の対象に使ってしまうのはご愛敬)


数値のバランスの目安

CWエディタでは好きにパラメータを設定できるが、数値隠蔽で好きにしろと言われても困る。
カードの数値をどの程度に設定すれば良いのかの大体の目安。
統一的な指標はないので、参考までに。


報酬/クーポン
公式ガイドに目安が書かれている。
  • 報酬の金額は標準的には1000sp前後。
  • クーポンは短編で+1点、長編で+2点。ただしASK基準の長編/短編感覚なので、近年のユーザーシナリオの所要時間はASKの長編を遙かに上回っていて+1点を与える場合がほとんど。

エネミーカードのレベル・体力値
  • 敵のレベルは、対象レベルから±0~5が基準。CWではレベルが上がるほど命中率/回避力/抵抗力が上がるので、ボスだからと言ってレベルを無闇に上げると味方側の攻撃は必中攻撃以外当たらなくなってしまう。表現上高くせざるを得ない場合は、ペナルティを併用して調節すること。
  • 「モンスター図鑑」の雑魚エネミーの体力は1-3向けでは2~30、3-5レベルで~50程度の調整となっている。つまり強くても強攻撃3発で倒せるぐらいが目安。ボスは高めに調節して問題なし。

エネミーカードの能力値と手札カード(=使ってくる技)
  • CWにおいて適性値が高いカード=威力と命中率が高いカード=よく自動選択するカード。
    • 「筋力」「器用度」を高くしておけば攻撃アクションカードをよく使う強敵となり、敏捷度が高いと「見切り」で回避しまくる鬱陶しいキャラになる。精神力と知力は防御寄りになるのでスキルを持たせてバランスを取る。
    • 所持するスキルやアイテムを使わせたい場合、アクションカードや判定などへの影響の少ない「生命力/社交性」を15/+4にし、所持カードの適性にするのがオススメ。
    • ただし適性値を上げすぎるとレベル比ダメージの威力がその分高くなってしまうので直接値で調節する。
    • 敵の命中率だけを下げたい場合は所持カードの成功率を下げるしかないが、後述のように限度がある。

効果系カード/効果コンテントの成功率(命中率)
絶対成功(必中属性/成功率+5/自動成功)>回避/抵抗+10修正>自動失敗(成功率-5,回避/抵抗-10)
>通常の命中判定(成功率+4,回避/抵抗+9以下)
  • CWは必中優遇のゲーム。成功率+5=必中属性は絶対成功となる。完全回避/抵抗を破って必ず命中する。
    • 味方に回復/バフを与えたいときは基本的に絶対成功に設定する。命中判定は有利な効果でも関係なく発生してしまうため。
    • 逆に敵が絶対成功や抵抗属性の攻撃を多用する場合、味方の見切りや回避スキルは完全に無駄になるので注意しよう。
  • 成功率-5(自動失敗)は絶対失敗ではない。これは「命中判定があれば自動で失敗させる」という効果。必中属性や、麻痺や睡眠状態の目標に対する効果は「判定せずに自動成功」してしまうので注意。
  • 成功率+5/-5以外の補正は弱い。命中しやすい=+4/普通=0/命中しにくい=-4となるが、上記のレベル差などの影響で死んでしまうので微調整感覚で。

スキルカードの威力

  • 「交易都市リューン」が最小限の構成であったため、CWでは「技能レベルが高いほど威力が高くなる、同一適性での完全上位互換」のスキルというようなデザインはあまり行われない。
    • LV10でも「居合斬り」「魔法の矢」「癒身の法」「盗賊の手」を持つイメージ。
  • 性能の指標は「必中であるか」>「威力が十分か」>「汎用性が高いか」>適性その他。

  • 単体攻撃スキルは基本的に全属性LV比5(居合斬り)が基準。高威力の天井はLV比8程度。
    • アクションカードの効果がLV比2~4なので、特に筋力適性で同程度だと持たせる意味がない。
    • 知力・正直性は混乱しやすくなるデメリット適性なので一回り強くしても良い。
  • 全体攻撃スキルは全属性LV比2が基準(なぎ倒し)。高威力の天井はLV比5程度。
    • 「火の玉」は直接値30でこれは「使えばLVに依らず雑魚を一掃できる」魔法ということ。
  • 中毒/麻痺スキルは使う度に中毒値が上乗せされるので直接値2~5程度に抑えるのが無難。
    • 麻痺スキルはシステム上「一撃必殺」になる。ボスにはどの道無効化されるので調整は諦める。

回復/バフ
  • 単体回復スキルも基本LV比5だが、多少強かろうがあまり重要視されない。CWはPCのHPが低いため。
    • 一方で全体回復スキルはLV比1だろうが強力。安易には作れない。
  • CWのバフの重要度は行動力・防御力>>>回避力・抵抗力
    • 全体バフは「交易都市リューン」で各+5/10ラウンドが売られており、どうにもならない。
    • 行動力・防御力は強度が1上がるだけでも難易度が激変するので、たとえば+7/5ラウンドのスキルを作ったとして、リューンで調整されたバトルが楽勝となるぐらいの劇薬となってしまう。
    • 下手に個性を出すよりリューンのマイチェンが無難。
  • 1.28でボーナス関係の仕様や計算式が変更されたため、シルフィードなどの「消費型召喚獣」は大幅に弱体化している。消費型召喚獣は5~10の高ボーナスを設定しても許容される。

アイテムカード/永続召喚獣(付帯能力)
  • アイテムカードは持てば持つほど戦闘中手札を引ける枚数が少なくなる。このため、リューンの雑貨なども含めてアイテムはあまり使わないプレイヤーが多い。
    • せいぜい1-3枚に食い込まなければならず、ライバルとしてカナンの鎧や賢者の杖が存在する。
  • アイテムカードは行動力修正の影響を受けない。使用回数無制限の武器カードはアクションカード「攻撃」のLV比2程度のカードが多いが、数値が同じなら基本的には行動力修正で強化されるスキルやアクションカードを使った方が強い。
  • ペナルティは-1でも付くと「闇に隠れる」などの完全効果を潰すので、所有時修正でのマイナス修正は重い。たとえば防具アイテムに抵抗+2/回避-1と慎ましやかなつもりの設定をしても実用上は全然デメリットの方が大きい。ペナルティを付けるならリスクとメリットを大きくするなどメリハリを付けた方がいい。
  • 防御力修正は複数持つと無敵化(一切ダメージが通らなくなる)ラインに達してしまうという問題がある。防具アイテム/永続召喚獣に+5以上の所持ボーナスを与えるのは原則避けた方が良い。+4の防御修正を持つカナンの鎧は基準ではなく、最強格のカードの一つ。



アクションカードの効果

 概ねgroupASK公式サイトで公開されている通り。
 公式の公開情報である以上、隠す意味はないと思うので詳細と補足を載せておく。

カード名 適性 属性 成功率 効果目標 効果 キーコード
カード交換 知力+慎重 無属性+必中 5 使用者 全属性-カード消去
(優先度-6補正)
「カード交換」(1.28(07)以前)
「手札の交換」(1.28(08)以降)
攻撃 筋力+勇猛 物理+回避 0 敵一体 全属性-ダメージ[レベル比2] 「攻撃」(1.28(07)以前)
「一撃」(1.28(08)以降)
渾身の一撃 筋力+好戦 物理+回避 -2 敵一体 全属性-ダメージ[レベル比4] 「攻撃」
会心の一撃 器用+勇猛 物理+回避 2 敵一体 全属性-ダメージ[レベル比3] 「攻撃」
フェイント 器用+狡猾 物理+回避 2 敵一体 精神属性-「混乱配布」 「攻撃」
「撹乱」(1.28以降)
防御 精神+慎重 物理+回避 0 対象無し 使用時防御ボーナス+5
使用時抵抗ボーナス+5
「防御」(1.28(07)以前)
「守備」(1.28(08)以降)
見切り 敏捷+慎重 物理+回避 0 対象無し 使用時回避ボーナス+5 「防御」
混乱 知力+正直 物理+回避 0 対象無し 使用時回避ペナルティ-10
使用時抵抗ペナルティ-10
「ペナルティ」(1.20以降)
逃走 敏捷+臆病 無属性+必中 5 使用者 全属性-対象消去
(優先度ライフ依存)
「逃走」※

キーコード名の変更は愛護協会による改変。1.28の機能としてカード名のキーコード化が実装され、無意味になった「カード交換」「攻撃」「防御」のキーコードをキーコードイベントで正確に検知できるようにする目的で変更したものと思われる。

※特殊キーコード「逃走」の効果で、逃走したエネミーはこのカードの対象消去モーションが実行されても死亡イベントが発生しない。


その他公式で開示されている計算式


味方キャラクターの体力(自動計算)
(生命力/2+4)×(レベル+1) + 精神力/2
 敵/同行NPCの体力はエディターでの設定値が優先されるが、
 宿に連れ込んだ場合、次回レベル変動時にこの計算式で再計算される。
 計算式上、生命力はレベルが上がるほど体力が多くなる非常に強いパラメータ。
 精神力で上がる体力は微微たるもの。

技能カード、アイテムカードの所有数
レベル/2+2(少数切り上げ)
 レベル10で7枚、レベル15で10枚持てる。

召喚獣カードの所有数
(レベル+2)/4(少数切り上げ)
 レベル10で3枚、レベル15で5枚持てる。


ファイルの圧縮形式


 CardWirthではZIPと1.28以降のどのエンジンでも展開できるCABが主流となっている。昔のシナリオにはLZHも多い。

CAB形式のサポート

 CardWirth 1.28からWindowsの圧縮形式であるCAB(キャビネット)を扱えるようになった。
 これはシナリオを開始すると丸ごと「~Scenario」に展開するというものであり、ストレージの容量削減に役立つが、いくつかの問題がある。

  • CABが大量にあると貼り紙の読み込みが遅くなり、終了時「~Scenario」が消えないことがある
  • 構成ファイルを強引に一つのフォルダに突っ込むため、同一アーカイブ内に複数のシナリオが含まれると挙動がおかしくなる
  • エフェクトブースターの撮影機能はシナリオフォルダに保存する仕様のため、正常に保存されない
  • Pyではエフェクトブースターで撮影した画像は宿データに保存されるため、問題なく行える。ただしPyでもCABの展開はexpandで行うため若干重い。

ZIPとWSN形式

 ZIPは、事実上世界標準の圧縮形式。

  • Windowsではデフォルトの機能でZIP圧縮が可能。(右クリックメニューの「送る」>圧縮(zip形式)フォルダー)。一方CABはGUIでサポートしていないのでWindowsにおいてもこちらが圧倒的に普及している。
  • ZIPをそのまま読み込めるのは現状Py系エンジンとCWXEditorのみ。他は展開する必要あり。
  • CWXEditorで保存される拡張子が「WSN」となっているアーカイブの中身は無圧縮ZIPであるため、拡張子をZIPに直すだけで他のツールでも展開できる。



エンジンのバージョン判定方法


Py系

  • クーポン「@CardWirthPy Version5.1」
 Py系エンジンの5.1以降か。現行PyフォークはPyLiteを含めて全部これを持っているため、
 Py-Rebootだけを確定したい場合に使うことはできない。

  • クーポン「@CardWirthPy Lite」
 PyLiteかを確定したい場合はこちら。


NEXT系

NEXT系は「@MP3」以降、仮想クーポンを提供していないため、エンジンの仕様差・バグによる判定になる。

  • フラグ判定コンテント法 NEXTのみ
初期値TrueのフラグをFalse
 ┠フラグ判定
 ┃┗こちらが実行されればNEXT
 ┗こちらが実行されれば他のエンジン(~1.50/Py系)  

 NEXT(1.60)にはフラグ変更直後のフラグ判定コンテントで変更を検知できないバグがある。
 フラグ判定コンテントはFalseの時は無効になり、同列にある下のコンテントが実行されるので、これによって簡潔に判定が可能。

  • 同行NPC対象消去法 NEXT/Py5以降
 1.50では同行NPCをランダム選択コンテントで選択し、対象消去すると正常に対象消去が行われない(その後もランダム選択コンテントで選択可能だが、戦闘で動かなくなる)。一方NEXTでは正常に対象消去が行われるため、存在しなければNEXTと確定できていたが、Py5以降、PyはNEXT側に挙動を合わせたため、Pyを除外したい場合は更にPyを判定しなければならない。

groupAsk公式+改変系(1.50以前)

  • クーポン「@EP」※全角
1.28以降のプレイヤーキャラクターはこれを必ずデフォルトで持っているため、@EPを持っている=CardWirth1.28以降(Py/NEXT系含む)で確定。

  • クーポン「@MP3」※全角
1.29以降、このクーポン分岐は(実際にPCが持っているいないに関わらず)必ず成功するため、成功=CardWirth1.29以降(Py/NEXT系含む)で確定。

  • クーポン「@成長条件」
1.20で通常方式で作成したキャラクターが所持している。1.28以降へのコンバート時は自動で削除されるので、これを持っていればほぼ(意図的な偽装や連れ込みNPCを除けば)1.20エンジン。

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CardWirth
最終更新:2024年07月28日 23:09