5スレ164

「とーまっ、とーまっあのおっきいケーキ食べていいの!?」
「いやまてそれは夫婦初めての共同作業として切り分けるものであって決して花嫁が全部食べるものでは、ってあぁーっ!馬鹿、おま、次はおまえが主役のブーケトスだろうが!」

「・・・お姉様」
「なんて顔してんのよ」

美琴は苦笑して隣に立つ黒子の頭を軽く小突いた。ケーキを食べられないのなら代わりに、とばかり頭を噛み付かれている新郎は、かつて美琴が恋した男であった。心配してくれているのはわかるが、たいしたショックはない。

「さあ、次は花嫁によるブーケトスです!次に花嫁になりたいというかた、前へどうぞ!」
青い髪の司会の青年が言った。

「ねえ黒子」
「なんですの?お姉様」
「黒子は常盤台を卒業したら一年先に卒業した私が住むアパートに押しかけて来たのよね。それからずっと、二人で暮らしてきた。寮生活も入れれば、今年でちょうど10年」
「もうそんなに経ちますのね」
「うん。でもそろそろさ、ケジメ付けてもいいと思うんだ」
「・・・・・・は」
「ほら、ブーケトス。なんとしてでもとっておいで」


背中を押されて黒子はよろよろと前へ出た。
――ケジメ?お姉様と一緒に暮らして、心も・・・・身体も結ばれたと思っておりましたのに・・・。とうとう、追い出されるんですの・・・?
「いっくよー!!」
前へ前へ群がる、上条に関わった女性たち。黒子はとても前へ出る気にはなれなかった。これで美琴に、幸せになりなさい、とか言われると思うと。
銀髪の少女は思いきり振りかぶり、ブーケを投げた。これではブーケトスではなくブーケスローだ。
皮肉なことに前に群がる人の頭上を越え、ブーケは黒子の足元にぴったり落ちた。とても拾う気になれない黒子の後ろから手が伸び、誰かがそれを拾った。

「―ったく・・・確かに私の言い方も悪かったかもしれないけど」
ブーケを手にした美琴が黒子を覗き込んだ。こらえきれず黒子は涙腺を崩壊させる。
美琴はそんな黒子の手に無理矢理ブーケを押し付け、頭に手を置いた。少し強引に黒子は美琴のほうを向かされた。

「ケジメっていうのはさ・・・その・・・。今の私たち、なんとなく一緒にいるじゃない。それってやっぱり限界があるからさ。だからその、約束、しようよ」
ブーケを持っていないほうの黒子の手に、小さな箱が押し付けられた。
あけてみて、と言われて震える手で箱を開ける。銀色に輝く、控え目なデザインのリングがそこにはあった。

「お、お姉様、これ・・・」
「ブーケをもらった人は、次幸せになるんでしょ?結婚はできないけど・・・黒子、ずっと、一緒にいよう」
さっきとは違う種類の涙が黒子の目から溢れた。黒子の手から箱を取り、美琴は黒子の左手の薬指に指輪をはめてやった。自然とまわりから拍手が起きる。

「結婚式なのに主役より祝福されるってどういうことだぁーっ!不幸だーー!」
「まったく短髪ったら感謝してほしいんだよ。空気よんで1番後ろの変態まで投げたんだから」
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもないよとーまっ!それより早くケーキが食べたいんだよ!」

  • こういうインデックス大好き -- (2017-12-23 09:39:55)
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最終更新:2017年12月23日 09:39
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