二択の選択道
その道路の真ん中で、二人の少女が出会った。
こんな真夜中、殺し合いに呼ばれた二人が出会った。
それは開始して僅か数分後の事だったのだ。
冷静にこの場を理解して行動に出た者は落ち着いていられる。
逆に殺し合いに動揺して何をすればいいか分からないという軽い錯乱状態ならば、
出会った人間に対して即効で殺されると思い込んでしまうだろう。
開始に冷静であるか混乱であるかで、先ず運命は左右される。
◆◇
天才シンガーとも呼ばれる765プロのアイドルの一人、如月千早。
千早は同僚達の中でも比較的冷静な方だ。
ライブ中にトラブルがあっても、冷静に対処法を皆へと伝える。
皆じゃなくて、対処法を自分自身で実行することだってある。
その冷静さから、ムードメイカーである天海春香が皆を励ます。
それによって皆は落ち着き、最後にはライブを成功させる。
千早は765プロの中でも、かなり優秀な人だ。
だがその千早には、暗い過去がある。
事故で失った大切な人。それを忘れる事は出来ない。
一人での生活が、その寂しさを何となく表している気がした。
アイドル活動において、その過去は響いてきた。
こんな話題、昔の弱小プロダクションだった時なら何ともなかっただろう。
でも今は違った。大人気のアイドルだ。そんなアイドルの話題には当然皆が食いつく。
それを狙ってマスコミはアイドルの秘密を探ろうとする。
………そして、報道。どれだけ調子良くやって来ても一発で崩される一撃。
だが報道の前にも、その暗い過去はアイドル活動に響いてきた。
シンガーは歌手。歌手は歌を歌う。歌うには、声を出さなくてはならない。
その声を失いかけたのだ。声が出なくなり、その時の千早はもう諦めていた。
潮時と感じた。こうなっては、もう活動を続ける事は出来ない。
とにかく沈んでしまったアイドル。その姿は、本当に無様だっただろう。
それを救うかのように存在しているのがプロデューサーだ。
アイドル達のほとんどを理解しているのがプロデューサーだ。
秘密にでもしなければ、プロデューサーは自身の事を何でも知っている。
この過去は秘密にしていた。だけど、何故かそれはプロデューサーに暴かれた。
そして手を伸ばしてきた。アイドル活動を続けようという手だ。
勿論拒絶したが、それでも諦めようとしない。同僚のアイドル達も諦めようとしない。
皆が復帰を祈って―――そして、ついにステージへと復帰する。
が、声は戻らず歌う事はままならない。そんな千早を救ったのは同僚達。
皆から勇気をステージ上で貰った。それに答えなくちゃならない。
そうして、千早はついに声を出す事が出来た。完全な復帰が、ここに成った。
千早のアイドル活動はめでたく、続行という形を取る事が出来たのだ。
………なのに。
災難は、また訪れた。
そう、この殺し合いというゲーム。
撮影のカメラも回っていない、合図も無かったのだから。
打ち合わせも何も無い、ドッキリ?いやそれもあり得ない。
ハッキリ覚えている。会場らしき場所で起きたアレは見ていて実に不愉快だ。
これを放送する?断らせていただきたい。今にでも撮影中止して事務所へと帰りたい。
仕事だとしても、これだけは無理。プロデューサーがいるなら恐らく同じ意見の筈。
「……カメラ、止めてください!」
そう叫んでみた。でも、反応は何一つ無い。
これは完全に撮影でも何でも無い、本当の殺し合い。
冗談のつもりでも何でも無い、本当に命を奪われるゲーム。
千早はそんな事出来る訳が無かった。大切な者を失ってるから尚更だ。
亡くなった弟は、姉に殺人を要求する筈が無い。絶対にしてはいけない。
初めからする気なんて無い。人殺しは何があっても………。
でも、聞いた事がある名前があったような………。
961……確かプロダクションの一つ。
プロデューサーが気をつける様に言っていた奴。
アイドルを消す為のこの殺し合いをした?可能性は高い。
なら、この名簿も納得いく。………でも、それでもおかしい気がする。
765プロを潰したいからアイドルを潰す。なら、何故全員を呼ばなかった。
千早にとっては、全員いない事は嬉しいのだがそれでも自分含めて5人。
美希、やよい、雪歩、真。特に人気な5人……という訳じゃない。
確かに美希だけは格が違うようなぐらい人気だが、それでも後の4人は……。
まさに平等といった所だった筈。適当に選んだとでもいうのだろうか?
いや961は選ぶ事が出来た?忙しい中、バラバラとなったアイドル達を。
訳が、分からない。
自分には理解が追いつかない事態が起きている。
兎に角、千早は先ず同僚達との合流を急ぐ事にした。
後々、この場所から脱出して事務所へと帰るのが目的。
そしてこの事をプロデューサー達に話して、961を本格的に壊滅させる。
バトルロワイアルまでされれば、千早はそうしてやりたかった。
やり方が汚いのは気にくわない。実力勝負というのは、少しは頭を頷かせられるが。
そうとなれば、ここで突っ立ってる訳にはいかない。
先ずどちらに行こうか。いや、ここは何処だろうか?
目印となる地点へと向かい、それから地図を確認して
居場所を把握する。
千早は直ぐに、そこまで考えて行動をする事にする。
そして目印となりそうな建物を探す。道は二択。右か左か。
右方面には何も明りは無く、何も無さそうだ。
左方面には、少し光が見える気がする。なら、向かう方向は確定した。
行くのは左。そちらへと足を動かして、そこに誰かがいた。
その誰かは走っていて、こちらの存在に気付く事も無くこちらへと突撃してくる。
ドンッ、と二人がぶつかって互いにバランスを崩す。
お互いに、胸のむにゅっとした感覚も感じなかった。
ただ痛いだけだった。まさに鉄壁。
「っ………ご、ごめんなさい。怪我は無いかしら?」
「……えっ、ひ、人っ?!や、やめてください…!嫌です!殺さないでください!!」
相手は錯乱している。この場の状況に混乱している。
落ち着いてる千早とは違って、恐怖に怯えている。
当たった時の感じからして、前の子は小さい子なのだろう。
高校生の自分でこれなら、この子は中学生ぐらい?
なら、先輩としてもしっかり落ち着かせる必要がある。
「落ち着いて!私は誰も傷つけたりしないから!だから、落ち着いて!」
「ひっ………わ、わかりました。お、落ち着きます……すいません……」
少し怖がらせたのかもしれない。千早なりには優しく言ったのだが。
兎も角、前の子は落ち着いてくれたようだ。一先ず安心した。
もっと安心させるべく、千早は前の子の頭に手を乗せる。
「にゃっ!……な、何を……」
「えっ、あ……撫でたら落ち着いてくれるかと思って……」
「落ち着きませんっ!!」
「そう…じゃあ、中断するわ。……でも良かった、元気取り戻してくれたみたいね。」
「えっ?……確かに、ちょっと元気になったかもしれません」
結果、前の子はしっかり元気を取り戻してくれた。
千早の上手いやり方で、場の雰囲気は少々和やかムードとなった。
……だが、いつまでもそうしてる訳にはいかない。
同僚達を探す為、早く動かなくてはならない。
でも千早は鬼じゃない。しっかり、出会った人とは交流していく。
こんな危険な場所で独りなのはかなり危険だから。
だから、自分と相手の為にも、一緒に行動をする。
「名前、聞いていいかしら?私は、如月千早。歌を歌うのが仕事。
趣味は音楽鑑賞といったところかしら。」
「……!楽器とか、弾けますか!?」
すると相手は音楽に食いついてきた。
千早は生憎、歌一筋で楽器は弾けない。
「ごめんなさい。楽器は弾けないわ。私は歌だけ……」
「そうですか……じゃあ、一曲聴かせてください!」
「……その前に、貴方の事を聞かせてくれるかしら?」
音楽に食いつくから、何となくどういう事が趣味かは把握しているけど。
名前は本人の口とかからしか把握する事は出来ない。
千早がそう言うと、相手は失礼しましたと一言発してから、紹介を開始した。
「
中野梓です。桜ヶ丘高校の2年生で、軽音部所属で、ギターを担当しています!
ギターは小学4年生から始めたので自信ありますっ!」
千早は、前の子――梓の紹介を聞いて少々驚いていた。
年齢はほぼ変わらない。でもこの身長差は一体何だろうと。
千早の身長は162cmに対して梓の身長は150cm。(裏話ですが、体重は千早のが軽(ry
そんな事よりも彼女も音楽が大好きな人。ギターをやっているという。
何か面白い事が話せるかもしれない。千早には何故かそんな気持ちが高まってきていた。
「是非、演奏を聴いてみたいものね。」
「はい!喜んで弾きます!……でも」
「分かってるわ。今は、それ所じゃないってこと。私も同じ気持ち。
でも私には一緒に帰らなければならない人がこの何処かにいる。
私は先ずその皆を探す事にしてるのだけど、貴方はどうするの?」
千早の問いに、梓は少し答えにくそうにしていた。
………だが、決心したのか梓は答えてくれた。
「私も同じです!先に皆を……見つけます!」
決心しても梓の顔は少々暗かった。
千早はその顔を覚えている。弟を失った時と似た顔だ。
………だから、容易に予想出来てしまった。
梓も大切な人を失った。それも、ここ最近に。
思い当たる節なら、あの時の開催宣言をした会場。
あの時に死んでしまった女の子二人の内の一人は梓の制服と同じだった。
違うのはリボンの色ぐらい。そう、つまりは同じ学校の生徒。
しかもこの梓の落ち込み様からすれば、軽音部の部員だったのだろう。
これだけ暗い顔をするのも、それで納得がいく。
「無理しないで。辛い時は、思いっきり泣いて」
「えっ……如月さん………?」
「千早でいいわ。貴方は我慢しているでしょう?
顔で分かる。私が弟を失った時と似た顔……。」
「………!」
その時に梓は、気付く。
千早にも暗い過去があったんだと。
弟を失った。家族の一員を失った。
だから先輩を失って辛い梓を直ぐに見破った。
同じ境遇に立った事があるから、それを見破れる。
梓の目から、涙が零れる。
「千早……さん………!」
路の上に、涙が落ちる。
その量は時間が経つ度に増していく。
「うっ……っ、ムギ……せんぱぁい……うぅ…うゎぁぁぁん」
暫く、梓は泣き崩れていた。
失った先輩は二度と戻ってこない。
同じく千早の弟も二度と戻ってこない。
死者は戻ってこない。それが現実なのだから。
千早は梓を黙って、見守った。それが自分に出来る協力。
こうやって我慢を解かせるのも、協力の一つ。
千早の胸の中で、梓は泣き続ける。
◆◇
「もう大丈夫?」
「はい……いつまでも、泣いていられませんから」
「……そうね。まだ、大切な人は残ってるから……」
「はい………」
千早は、また予想していた。というより、考えれば簡単な事。
軽音部の人数が何人かは知らないが、確実に4人以上はいる。
その内の一人が亡くなってしまったなら、まだ2人は最低でもいる事となる。
その2人を見つけたいと、梓は恐らく思う。その通りに梓は思っていた。
「唯先輩、澪先輩、律先輩……それと、憂がまだいます」
名簿を見ながら、梓はそう言った。
4人。千早が探したいと思っている人数と同じ。
偶然か必然かは分からないけど、兎に角その者達も探す必要がある。
千早はしっかりその4人の名前が書かれてる所に印をつけた。
同じく同僚達の名前も印をつけ、梓の名簿にもそれをつけた。
「印つけた人達を重点的に探す。これが、一先ず私達の目的としましょう。」
「はい!わかりました!」
千早はそう言うと、やっとのことでこの場から動く。
961の事を考えていれば梓がやって来て、ここまでもう何分経っただろう?
スロースタートをした千早達に代償は訪れるのだろうか?
………いや、今、訪れたのかもしれない。
移動を開始すれば、前から誰かの姿が見える。
瞬間、梓は千早の後ろに隠れて言った。
「あ、あれです!私が一番目に出会った恐ろしい人……!」
梓がそう言うと、姿が明確に分かる。
確かに恐ろしくて、逃げ出したくなる。
凄まじい筋肉、あれで殴られでもすれば一撃でK,Oだろう。
だが千早は敢えて勝負に出た。
「わ、私達を攻撃するつもりなら承知しません!」
「あぁん、ひどぅい……俺は歪みあるこのゲームには反対だ」
その一言は、非常分かり辛いものの取り合えず殺し合いに乗っていないことは分かった。
梓に小声でこの人は大丈夫と言うと、梓は千早の横に現れた。
「俺はビリー・ヘリントン。数々の男と戦ってきたパンツレスラーさ。」
自己紹介が始まる。
◆◇
「本当に、ごめんなさい!」
「別に構わないさ。それに怯えてもらわないとこの肉体が泣くさ。
一目見ただけで強敵だと思われる方が俺にとっては嬉しい事だ。」
自己紹介が終わると、梓はビリーに頭を下げて謝った。
出会って直ぐ逃げてしまった事を謝罪しているのだ。
ビリーは笑ってそれを許した。案外、優しい人だと千早は思った。
それに頼りになる。あの肉体は嘘ではないから余程強いのだろう。
安心して人を探す事が出来そうだ。千早は運が良いと思った。
この殺し合いに呼ばれた事自体は最悪な運なのだが、頼りになる人に会えたのは運が良し。
黒のワイシャツとジーンズというオシャレなビリー。
本当に頼りのある歪みねぇ男は、この殺し合いを打開するつもりでいる。
直ぐに目覚めると殺し合い打開を決めた。参加者内でもそれは最速だっただろう。
人の命を簡単に奪おうとする主催者には怒りを覚えて、今もいる。
参加者達は被害者だ。それにビリーは救いをのべる。
本当にイイ男なんだね、仕方ないね。
彼も、千早と梓の大切な人を探す為に尽力してくれるそうだ。
天才シンガー、小柄な軽音部の癒し、歪みねぇパンツレスラー。
以上の3名が向かう先は、果たしてどっち?
【E-4 路上・一日目/深夜】
【如月千早@THE IDOLM@STER】
【状態】健康
【服装】私服
【装備】なし
【道具】基本支給品 不明支給品1~3
【思考】基本思考:先ずは同僚達と合流し、それから脱出する。
1、同僚達の他に、中野さんの大切な人達も探す。
2、ビリーさんは頼りになりそう。
※名簿に乗ってる名前の一部に印がついています。ついているのは、
美希 やよい 雪歩 真 唯 澪 律 憂 の8人です。
【中野梓@けいおん!】
【状態】健康 少し涙の跡が残っている
【服装】桜ヶ丘高校2年制服
【装備】なし
【道具】基本支給品 不明支給品1~3
【思考】基本思考:軽音部の皆と憂を探す、
1、千早さんの同僚達も探す。
2、ビリーさんは頼れそうです!
3、ムギ先輩の分も、頑張らなきゃ!
※名簿に乗ってる名前の一部に印がついています。ついているのは、
美希 やよい 雪歩 真 唯 澪 律 憂 の8人です。
【ビリー・ヘリントン@本格的 ガチムチパンツレスリング】
【状態】健康
【服装】黒のワイシャツとジーンズ
【装備】なし
【道具】基本支給品 不明支給品1~3
【思考】基本思考:主催者に怒り。殺し合いを打開する。
1、被害者である参加者は救う。
2、千早と梓の大切な人達を探す。
※名簿に乗ってる名前の一部に印がついています。ついているのは、
美希 やよい 雪歩 真 唯 澪 律 憂 の8人です。
最終更新:2012年01月03日 22:57