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有利不利の境界線




「……これは厄介なことになったな」

4th、来須圭悟はそう言った。その通り、厄介事に巻き込まれた、だからそう言った。
彼は警察だ。世の平和の為に動く団体の一員だ。
彼をそうさせたのは親父が原因だ。今は警察である彼は昔、万引きをした事がある。
その際に親父にボコボコにされた。その親父をボコボコにする奴は誰もいなかった。
だから来須圭悟は警察になった。そういう奴等をボコボコにする為に……。
この殺し合いの主催者は悪人だ。つまりはボコボコにしても構わない奴等だ。
同時にこれは事件。来須圭悟が知り得る事件、大事件のレベルだろう。
……つまり、4thの未来日記――『捜査日記』は機能する。

そう、来須圭悟は未来日記の所有者なのだ。
神の座を巡って相手を倒す12人の日記所有者によるサバイバルゲームの参加者。
1stから12thまでのうちの彼は4番目、4th。
その番号に深い意味があるかは解からないが、ともかく彼は4番目の日記所有者。
勿論、4thである以前に警察。3rdのような無差別殺人を行うような人物ではない。
実際に彼は宣言した。1stは俺が保護すると言った。そしてその通りに立ち回った。
………しかし来須圭悟は神の座を狙っていたのだ。
病人である子供の為、それを狙うしかなかったのだ。
だから警察という組織を利用して1stと2ndの撃破を狙った。裏切ったのである。
しかし1stと2nd、それに9thの抵抗に敗れて4th、来須圭悟はゲームからリタイアした。

それがこのバトルロワイアルへと参加する以前の物語。
……そして今、4thは別のゲームの舞台にて復活したのだ。
今度は50人による本格的な殺し合い。生き残った一人には願い事が叶えられる。
正直言って、優勝が難し過ぎる。以前と比べて確立は大幅に下がった。
人数は12人から50人。12分の1から50分の1へと、大きく確立は変動した。
それに支給品次第でそれは変動する。そんな自分の支給品は虚しかった。
捜査日記の他に入っていたのは食料や地図や照明器具(懐中電灯)といったもの。
他、ダーツセット(1stの持ち物だろう。ついでに矢は20本)しかない。
拳銃は没収されていた。されていなければ有利に事を運べたのだが……。
その拳銃も惜しいが、警察という団体を動かす事が出来ないのも非常に不利になった。
通報をしようとしても出来ない。ここが何処なのか分からないからだ。
だがもっと分かりやすい理由があった。単純に電話は繋がらなかったのだ。
一応この現状を伝えようと思ったが通じなかった、それだけで電話が使用不可なのは確定だろう。
ここが圏外であるという可能性はほぼ0だ。今いる地点は知らない学校の近く。
山の中である訳でもなさそうだ。でも都市という訳でもない、そんな微妙な所。
桜見市よりは田舎ってところか、しかし圏外になる程ではない。

となれば、何らかの細工が仕込まれていると考えるべきだろう。
この首輪が電波を妨害しているのか、この地域にだけ通信が届かないようにしてるか、
携帯電話に仕掛けを施し、通話が出来ないようになっているか。
その答えは捜査日記には書かれなかった。犯罪で無いと言うのか……?
いや違うだろう。この場合は管轄外で事件が起きた、と考えるべきなのだろう。
もしそうだとするならば、捜査日記は扱えなくなる。
自分の管轄内とは桜見市内、ここがその市内ではない別の場所。

………そうか、そうなるか。正直勝てる気がしないな。

1stと2nd、それと12thがこの殺し合いに参加しているのは名簿で確認済みだ。
後の者は分からない。日記所有者という訳ではないだろう。
火山のような殺人鬼もいない。これはどういった意図で集められたんだ。
捜査日記を見てみる。異常無しの四文字。DEAD ENDの記述も無い。
これが1stや2ndの未来日記ならばたくさんの文字が書かれているのだろうな。
一度、捜査日記が機能すると言ったがどうやらあれは嘘になってしまいそうだ。
この日記は自らのDEAD ENDしか予測出来ない。それにこれの破壊が敗北となる。
なんだか余計な荷物を背負ってる気がする。特に役立たない物を持っていなくてはならない。

まったく、参ったものだ。頼れる物は何も無しだっていうのか。
今の状態で警察だと言っても大した事は出来ないだろうな。
警察という肩書だけで、武器も無いし防弾チョッキも無い。
泣けてくるな。桜見市内でやれとは言わないが、捜査日記を扱える環境にはして欲しかった。
これでは雪輝達と大きな差がある。……そんな文句は通用しないが。
この殺し合いの支給品というのは一人一人違うとのことだ。
運が良ければ武器が、悪ければ俺が持ってるこんな玩具が。
これは未来日記も同じ、使える者は使えて使えない者は使えない。
以前のサバイバルゲームは未来日記が与えられるだけだった。
後は自由だ。俺の場合なら警察をどう動かそうが自由だった。
他の者には使えないが俺には使える警察、それに関して何も言われていない。
要はサバイバルゲームは平等に行われないということだ。
全ては開始時の支給品の運、ゲーム内での行動等が運命を左右させる。

即ち、これからの行動次第で俺の運命が左右されていく訳だ。
支給品が悪いから即死する、そんな訳じゃあない。
そうだ、まだまだこれからだ。まぁ、不安なスタートだが何とかなるだろう。
取り敢えず雪輝達を裏切った以上、再び協力関係を築くというのは不可能だ。
恐らく出会い頭に攻撃されるだろう。若しくは逃げられるだろうな。
よって俺がそういった関係を築ける相手というのは日記所有者以外の人物になるだろう。
日記所有者は互いに敵という関係だ。それがこの50人という殺し合いでもだ。
まさか50人全員に未来日記があるとか、そういう事はないだろうな……?

まぁ、この状況だ。協力なんて表面上だけとなるだろう。
現に俺は協力をしても後々裏切るつもりでいる。
何故なら俺は前のゲームと変わらずここでも優勝を目指すつもりでいるからだ。

以前のゲームの主催者は神だった。だが今回は神というような人物ではなかったように思える。
よって優勝者には願い事を一つ叶える、これが金とかで解決出来るものに限られてる可能性がある。
息子の病気はその程度で治るとは思えない。簡単に治せるような病気ではない。
神ならば余裕なのかもしれないが、ただ地位が高く金だけがあるような人物には難しい願い事だ。
そんな人物が約束したそれは正しいのだろうか?本当に何でも願い事が叶うというのか?
俺はとてもそうは思えない。あの主催者は出鱈目を言ってるのではないのだろうか?
何故、出鱈目を言うかなんて簡単な事だ。最後の一人を主催者がぶっ潰せば無かったことになる。
そう、優勝など仮想。優勝者など絶対に現れる事の無いサバイバルゲーム。
主催者がそんな予定でこの殺し合いを主催したとなれば、これは茶番に過ぎない。
どう足掻いても死ぬ、決められた死までの時間をどれだけ引き延ばせるかのゲーム。

俺はそう考えて、非常にイラッときた。ボコボコにしてやりたい感情が芽生えた。
結局、死ぬしかない。そんな絶望しか無いサバイバルゲームなどぶっ潰してやりたい。

………だから俺は迷っていた。
本当に、殺し合いに乗って優勝を目指すべきなのか。
優勝を嘘と信じ、主催者をボコボコにする為に立ちあがるのか。
勿論、俺は警察だ。民間人を危機に晒すなどという事は出来る限り避けたい。

かなり矛盾しているな。人を危機に晒したく無いが殺し合いに乗ろうと思っている。
殺し合いに乗れば、勿論民間人ですら容赦無く殺害する必要がある。
優勝出来るのはたった一人、その為に全員を殺さないとならないのだから。
逆に人を危機に晒したく無いというなら、殺し合いに乗る事は不可能になるだろう。
………いや、この殺し合いに参加した以上は嫌でも関わるしか無いのかもしれないな。

まあ二択だ。殺し合いに乗るか民間人を守るか。
おっと、どっちにしても俺は主催者をボコボコにするつもりだ。
それだけは乗ろうが乗るまいがやろうとする事は可能な事だからな。

さて、これは簡単に考えればこうなる。
人を殺して俺自身も殺人犯となるのか、民間人を保護して警察の立場を突き通すのか。
いや俺は警察としてまだ続いているのか?俺はあの時に捜査権限を失った訳だ。
まあ、警察としての心は失っていない………筈だ。多分だ、少し自信が無い自分をボコボコにしたいな。
前のゲームでは日記所有者に対しては容赦無く銃殺したりした、裏で俺はそうやっていた。
10th、月島狩人を殺したのは俺だがそれを雪輝達が殺ったものだとして警察を動かした。
以上から俺はゲームの参加者に対して殺害しようとする行為をしていた訳だ。
そしてこれは新たなゲーム、第二ゲームだ。そう、これもゲームだ。



―――そう、つまりは……………。



             ◆◇



あー、何でなんだよー!こんな事になるなんて、絶対におかしい!
私の前髪下ろした姿よりもおかしい!というかその姿はおかしくねーし!
………それにさ、ムギだよ。軽音部キーボード担当の琴吹紬さん。
どうして、どうして死んだんだ、何でムギが死ななくちゃならなかったのさ。
ムギは何も悪い事してないぞ。おかげで叩きずらい、突っ込みずらい。
でもそれがムギの良い所でもあった。そうだ、何も悪くなんかない。
なのにさ、あんな死に方……あの光景は死ぬまで忘れられない、いや死んでも忘れられない。
首輪が小さく爆発したかと思えば、ムギと首から上と下が別れて多量の血が辺りを染めた。
澪辺りはもう失神してしまってるんじゃないかと、そんぐらいのインパクトだ。

………いや、マジでヤバイよ。澪とか特に、アイツの事だとこの空気に耐えれない筈だ。
この私ですら、ショックだから。いやそれは軽音部員の皆なら、ムギと認識ある人なら当然か。
ムギを憎んでいる人物なんて多分、いや絶対に一人もいないだろうから。
それだけ、ムギがいなくなった事が皆、ショックで仕方ないと思う。
最悪、全員が精神的に不安定となってしまい関わった人物へと攻撃してしまうかもしれない。
その行為で殺し合いに乗ってると判断され、殺される。
そんなシチュエーションを考えてしまうと、とにかく動くしかない。

なんたって私は軽音部の部長、部員達の代表格。
ムギの事は悔むが、でもいつまでも考えていちゃダメだ。
そりゃ忘れる訳にはいかないけど、でも今は他の部員を救う事が大事だ。
恐らくムギだってそう願う筈だ。りっちゃん達だけはこっちに来ないでね、そう言ってる気がする。

「………ちくしょう」

ムギがそう言ってるのを想像して、尚更悔しさとか哀しみとかが増した。
あのムギはもう見る事が出来ないのか、本当に………。
今日はもう最悪だ。これが夢なら早く覚めて欲しい、多分皆もそう思ってる。

でもそうじゃない、そうであって欲しいのに。

………駄目だ、こんな所で暗くなってちゃ部長として駄目だ。
ここは直ぐにでも部員を探す為に行動すべきだ。
私、田井中律は軽音部の部長として部員の安全の確保致します。
りっちゃん隊員、いざ、前進!

「………あれ?」

と、そこで前方に人を発見した。
外見からして、警察っぽかった。そういう服、着てるし。
もし警察じゃなくても何だか頼りになりそうな感じがした。
助けを求めてみようか、そう思ってみたが思い止まる。
澪達は確実に信用出来る、でもそれ以外はどうなんだろう?
相手が警察っぽいからって本当に警察かなんてわからない。
仮にその人が警察としても私を守ってくれるかどうか、わからない。

暫く考えて結局、律は仕掛けてみることにした。
行動を起こさないと、逃げてばかりじゃ始まらない。
もしかしたら澪達の目撃情報が貰えるかもしれないじゃない。
しかし始まってまだ数分、たったこれだけの時間で出会ってる確立は非常に少ない。
それでも律は、話す事にした。協力を貰える、という事を祈って。


「あのー、いいでしょうかー?」


敬語で律は警察らしき人物に話し掛けた。
彼はこちらへと近付いて来る。そして前で止まった。
攻撃はして来ない、やっぱり安全な人だったみたい。
安心してる場合じゃない、取り敢えずこの事情を話して協力して貰おう。
そう思って律は情報を一方的に相手へと伝えた。

―――そして、最後。

「どうか、捜索にご協力頂けないでしょうか!」

そう言って、律は頭を下げてお願いした。
向こうからの返事は無い、やっぱり駄目だったのかな。
こんなの虫が良過ぎるのかな、確かにメリットはないけれども。
交渉失敗ともう頭の中で結論付けていたその時、返信は返ってきた。


「頭を上げろ」


その声を聞き、律は頭を上げた。
承諾してくれる期待も僅かには残っていた。
そんな希望だが、その希望は呆気なく折られる形となった。
頭を上げたその瞬間、腹に痛みが襲いかかったかと思うと意識が薄くなっていった。

前にいた男は、やっぱり敵だったのか。
私の考えは甘過ぎたのか、やっぱり甘過ぎたのか。
そりゃそうだよな、この話に協力してくれる方がおかしい気もする。

ああ、これからどうなるかな。やっぱり殺されるのかな。
結局、部長らしいことは出来なかったなー。非常に情けない…。
これから殺されるなら、もうムギと出会うのもそう遠くはない、か。
あの世でも一緒だ、軽音部の絆はそれだけ深いから。

……だから、澪達にはこうなって欲しくはないな。
なんだかムギの気持ちが分かる。いや、実際そう思っていたって証拠はないけども。
でも死んで欲しくない、自分達の同じ死人にはなって欲しくない。
そういった感情になるね。なんか斬新だなー。

えっと、唯と澪と梓、それに憂ちゃんが殺し合いに呼ばれてたんだっけ。
唯の奴は心配だな、でも唯も人に恨まれるような奴じゃない。
あれだけ天然なら守ってくれる人も既に傍にいるかもしれないな。
澪の奴は凄く心配だ。恐怖で錯乱してるんじゃないかって、凄く心配だ。
何とか落ち着いて……いや、もしかしたら意外と落ち着いて対処してるかもしれないな。
まあ結構やる時はやる、それが澪だ。アイツもアイツで大丈夫に違いない。
梓もだいぶショックを受けてそうだ。いつも少し強がってたけど実際はあまり強くない。
意外と澪よりも重症になってる可能性もあるな……大丈夫だと思いたい。
憂ちゃんなら少し安心出来るかも……よくできた子だし、姉の良い所を全部吸ったような子だし。


………まあ、とにかく生き残ってくれっていうのが私の願いだ。


「俺を優勝へと近付けてくれて感謝する」


最後にそんな言葉を聞いたかと思うと、大きな銃声が響いた。
それから律がこの会場内で聞いた音は何一つとしてなかった。
次に聞く音は、あの世にいる琴吹紬の声なのかもしれない


【田井中律@けいおん! 死亡】


【C-2 学校付近】
【来須圭悟@未来日記】
【状態】健康
【服装】スーツ
【装備】何かの銃器
【道具】基本支給品×2 捜査日記@未来日記 雪輝のダーツセット(矢×20)@未来日記 不明支給品1~3
【思考】基本思考:殺し合いに乗って、優勝を狙う。主催者はボコボコにする。
1、基本的に人と協力関係は築かない。
※捜査日記は会場内が管轄外の為、DEAD END以外の記述は書きこまれません。


※【捜査日記@未来日記】

4th来須圭悟が携帯電話につけていた通常の『捜査日記』に未来日記機能が付与されたもの。
未来日記化してからは、その日時に携帯が本人の手元に無くても、
自分の追っている犯罪事件の捜査情報をオートで詳細に記録してくれるようになっている。
管轄内の犯罪者に対しては最強のツールだが、犯罪に関することしか予知できないため、
「日記所有者が犯罪者でない場合」や「犯罪者であっても管轄内で事件を起こしていない」
場合はうまく対応できないという弱点がある。


※【雪輝のダーツセット@未来日記】

天野雪輝が身につけてるダーツの矢+的。
未来日記を破壊する程度の強さを誇る武器である。
勿論、一般人からすればただの玩具に過ぎない。
しかし雪輝のその技術と組み合わされば銃にも勝てる武器に成るのだ。



sm021:悪夢は終わらない 投下順 sm023:無能だって言ってるじゃん
START 来須圭悟 sm000:[[]]
START 田井中律 死亡


最終更新:2012年04月29日 21:02