催眠標準テキスト@Wiki
催眠とは何か
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匿名ユーザー
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前の章であげたいくつかの催眠に共通する部分は何でしょうか.一つあげるとするなら,催眠をかける人(以下,催眠者)がいて,催眠にかかる人(以下,被催眠者)がいて,そして暗示を言うと被催眠者が暗示の通りに行動するというところでしょう.大まかな言えばそれが催眠だと言って過言ではないでしょう.しかし,なぜ被催眠者は催眠者の暗示の通りに行動するのでしょうか.そのメカニズムを知ることが,催眠を知ることの一つのポイントであると考えます.
なぜ催眠では,被催眠者が暗示の通りに行動するのかというと,一般的に催眠状態であるからと言われています.つまり,催眠状態になると暗示の通りに行動してしまうというのです.さらに考えて,なぜ催眠状態になると暗示の通りに行動してしまうのでしょうか.それは,人間には理性や判断を司る意識(顕在意識)の部分と,本能や欲求を司る無意識(潜在意識)の部分があると言われています.誰もが,わかっちゃいるけどやめられない,という様な経験をしたことがあると思いますが,それは意識ではわかっていても,無意識の部分がそれをしたいからやめられないんだ,と言われています.つまり,催眠は催眠状態にすることによって,無意識の部分に暗示を伝え,わかっちゃいるけどやめられない,という状態を作り出すことだと,この説明からだと言えるでしょう.そうだとすると,催眠は,いかに無意識に暗示を伝えるかとも言えますね.それは,いかに催眠状態にするのかという事と同じ事なのかもしれません.そして,それが催眠誘導というテクニックになるわけで,その方法について解説していく事にしていきましょう.……と,今までの催眠のテキストならそういう流れになって行くのでしょうが,本テキストでは少しここで立ち止まろうと思います.
意識と無意識の説明,さらに言えば催眠状態で暗示を言えば催眠である,という話は今までの日本における一般的な催眠のもっともスタンダードなものでした.しかし,それは実のところ説明としては不十分であり,また心理学の立場からするとおかしい部分が沢山あるのです.
催眠というのは,心理学や精神医学の分野で研究されている学問としての流れと,催眠ショーなどの非学問的な流れと,大きく二つの流れがあります.一般的に目にすることができる催眠というのは,一見すると心理学みたいですがその実心理学ではない,非学問的なものなのです.テレビに出ている人も,一般書籍にある催眠術の解説書を書いている人も,それがどんな立派な経歴のある人に見えても,ほとんどが心理学から見るとおかしな催眠の理論で催眠をおこなっています.
その原因の一つとしては,心理学や精神医学で催眠を研究している人は,学会というものに属していて,大抵の学会では催眠をテレビでおこなったり,専門教育を受けてない人に催眠を教えてはいけないという倫理規定があるからです.つまり,学問的な催眠は,閉鎖的なところがあって,一般にその内容が知られることが少ないのです.実際の所,きちんと学問的な催眠の書籍なども出版されているのですが,その内容は心理学の基礎的知識がないと理解できなかったり,やはり専門書は一般向けではないのです.
では,非学問的な催眠は偽物かと言われれば,それは違います.テレビに出ている人の催眠は偽物でもなんでもなくて,れっきとした催眠です.問題は,その説明が矛盾があったりするところです.矛盾がある説明だろうが,とりあえず催眠は出来てしまうことが催眠の誤解が広がる原因の一つしれないですね.それは,スプーン曲げを超能力で説明するか,マジックで説明するかというような違いです.