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2.2.日本版Telic-Paratelic優位尺度の開発

動機付けスタイルの体系的な理論である反転理論(Apter2001)において、目標追求-覚醒回避のTelic モードと活動享受-覚醒追求のParatelic モードの対比は最も基本的である。個人におけるTelic モードとParatelic モードの優位性を測定するのが、Telic-Paratelic 優位性尺度である。Murgatroyd,Rushton,Apter&Ray(1978)はApter の理論に基づき、二者択一にどちらでもないを加えた三択によるTelic優位性尺度を開発した。Cook & Gerkovich(1993)はYes/NoによるParatelic 優位性尺度の開発を行った。Gotts, Kerr &
Wangeman(2000)は両者の比較を行い、Telic 優位性尺度は尺度として適切でないとしている。ただ、いずれの尺度も、真面目さ-遊戯性、計画性-自発性、刺激回避-刺激追求の三つの下位尺度の項目内容はやや不安定で、一部の信頼性も十分でない。本研究では、以上の先行研究を受け、日本で使えるTelic-Paratelic 優位性尺度の開発を試みる。

方法
質問紙:4 件法(非常によく当てはまる、やや当てはまる、あまり当てはまらない、まったく当てはまらない)を用いた。質問は90 項目である。内訳は、Cook & Gerkovich(1993)によるParatelic 優位性尺度30 項目をすべて日本語訳したもの、Murgatroyd, Rushton,Apter&Ray(1978)から予備調査に基づき選択した17 項目、反転理論研究会参加者6 名が発案した62 項目から選択した13 項目、それに覚醒追求-覚醒回避に関連の深い刺激希求尺度の20 項目(柴田2007Thrill and Adventure Seeking、Disinhibition、InternalSensation Seeking、Daily Novelty Seeking から各5 項目)を加えた。

予備調査:Telic 優位性尺度は選択形式による69 の質問をすべて日本語訳し、大学生184 名(男54 名、女130 名)に回答してもらった。どちらでもないを中間の値とし、3 段階の間隔尺度として主因子法により因子を抽出した。Scree基準により3 因子とし、Promax 回転を行った。因子負荷量0.35 以上の22 項目を再び因子分析し、因子負荷量0.35 以上の項目について回答率が50 %に近い方の選択肢を選び(いずれかの選択肢が80 %以上あった2 項目は除外)、単独で意味が通ずるよう表現を修正した(対の選択肢でないと意味が通じない3 項目は除外)。結果17 項目が残った。調査参加者:大学生213 名(男86 名、女127 名、平均年齢18.5 才)。

分析:主因子法により因子を抽出した。Scree 基準により3因子とし、Promax 回転を行った。因子負荷量0.35 以上の65項目を再び因子分析した。

結果
65 項目の因子分析の結果の固有値は、第一因子から順に11.27 、8.04 、4.88、3.36、2.79、2.36 である。Scree 基準により3 因子とした。3 因子までで全分散の30.25 %が説明される。各因子、12 項目を尺度として採用した。表1に、Promax回転の結果得られた因子負荷量を示した。α係数は、いずれも0.85 前後で高い。因子間相関は、第1 因子と第2 因子が0.217、第1 因子と第3 因子-0.186、第2 因子と第3 因子が0.068 である。

表1日本版Telic-Paratelic 優位性尺度36 項目の因子負荷量

F1 脱目標志向α=0.884
0.74 -0.01 0.05 毎日を自然の成り行きに任せて過ごすのが好きである。
0.70 -0.05 -0.06 なるように日をすごす。
0.67 0.02 -0.01 その時の流れで行動する。
0.65 -0.14 -0.12 流れにまかせて休暇をすごす。
0.63 0.08 -0.09 なるように人生を生きる。
0.62 -0.16 0.00 特別な目的を持たずに、余暇を過ごすのが好きである。
0.62 0.16 -0.09 たんに楽みのために何かをすることが多い。
0.59 -0.19 0.01 もし暇なら、とくに目的を決めないですごすほうがいい
0.54 0.03 -0.02 将来のことは、その時の成り行きにまかせれば良い。
0.53 0.14 0.05 休暇はそのときに面白そうなことをする。
0.53 0.15 -0.10 気楽に人生を生きる。
0.50 0.14 0.01 その時々の気分に基づいてどうするかを決めることが多

F2 覚醒追求α=0.844
0.02 0.75 0.05 スリルを求める。
0.04 0.74 0.06 スリルある活動や冒険的な行為は好きだ。
0.08 0.71 0.13 冒険好きである。
0.10 0.63 0.04 予期しないことや驚きがいつも起きる生活をしたい。
0.08 0.63 0.00 予想できない状況にいるのが好きである。
0.05 0.62 0.02 刺激のない生活は退屈だと思う。
0.14 0.47 0.08 色んな場所での生活を経験したい。
0.00 0.43 0.18 休暇をいろいろな場所ですごしたい。
0.01 0.42 -0.07 たくさんの異性と遊びの恋をしたい。
0.15 0.42 0.21 しばしばリスクを犯す。
0.15 -0.41 -0.01 住んでいる場所を変えないようにしたい。
0.13 0.41 0.04 知らない町を探索するのは、たとえ迷子になろうと楽し

F3 計画熟慮性α=0.868
-0.08 -0.13 0.69 人生をまじめに考えるタイプである。
-0.23 0.04 0.66 長期的な展望と到達目標に基づいて決定を下すことが多
-0.15 0.16 0.64 長期的な見通しを立てるのが好きである。
-0.05 0.03 0.63 ふだんから将来について考えている。
0.04 -0.04 0.60 自分の将来について計画を立てるのは重要であると思う
-0.21 0.16 0.56 人生の長期的展望を持っている。
0.01 0.04 0.54 自分がすることに目的を持つべきだ。
-0.15 0.19 0.51 長期的な展望に基づいて、到達目標を考えるのは楽しい
-0.03 0.15 0.51 ものごとを突き詰めて考えることが好きだ。
0.16 0.03 0.51 自分の心の中の動きに関心がある。
-0.04 0.03 0.51 これからの人生がどうあるべきかに基づき決定を下す。
0.15 0.02 0.50 あれこれ考え事をするのが好きだ。

第一因子を脱目標志向、第二因子を覚醒追求、第三因子を計画熟慮性と名付けた。第一因子、第二因子がParatelic方向、第三因子がTelic 方向である。全体としてのParatelic得点は、計画熟慮性の尺度得点を逆転してから脱目標志向と覚醒追求の尺度得点と加算する(α=0.847)。覚醒追求の尺度得点は、男子の方が有意に高かった(t(205)=2.58、p<.05)。他の尺度では有意な男女差は見られなかった。

考察
Telic-Paratelic 優位性尺度における、真面目さ-遊戯性、計画性-自発性、刺激回避-刺激追求の三下位尺度は、Telic モードParatelic モードの手段目的、強度、時間の三次元での比較から導かれている(Apter1982)。本研究で得られた脱目標志向、覚醒追求、計画熟慮性の三尺度は、Apter(1982)による手段目的、強度、時間の三次元での比較に対応して、Telic とParatelic の対比の三側面を適切にとらえたものといえる。
最終更新:2007年05月10日 11:15