一日目
アリス「リュカさん!」
リュカ「……なんだ?」
アリス「その、やっぱり気になって。」
アリス「どうしてリュカさんが
バサラの隠れ家のヒミツを知っていたのか…。」
リュカ「あんたには言えねえな。」
アリス「じゃあせめて、あそこでなにをしていたのかだけでも。」
リュカ「言ったろ? あんたには関係ねえって。」
リュカ「わりぃが、オレのことは放っておいてくれ。」
リュカが立ち去る
アリス「………………。」
二日目
セシル「ねえ、聞いた!? 大盗賊バサラの予告状!」
ルドミラ「もっちろん!」
ルドミラ「おとぎ話のヒーローが数十年の時を超えて復活だなんて!」
ルドミラ「わくわくが止まらないわ♪」
むらくも「しかも予告状を送ったのがとなり町の大金持ちのとこだろ?」
むらくも「弱い者からダマしやオドしで金品をまき上げる真っ黒なウワサだらけの悪徳商人だからな。」
むらくも「応援せざるを得ねえ!」
スカーレット「相手が誰であれ、ドロボウはよくないことです。」
スカーレット「Seedが警備を担当することになりましたし、私は仲間たちを応援します。」
セシル「あー、それもいいね! 伝説の盗賊のタイホで、ナゾの正体がついに明らかに!」
セシル「どっちが勝っても大事件だよ♪」
スカーレット「どうあっても楽しむのですね。」
三日目
シモーヌ「テリーのところにSeedから協力依頼がきたんだって?」
テリー「ええ、大盗賊バサラのタイホに協力してほしいそうです。」
ユキ「あら、タイホしちゃうの? せっかく伝説の義賊が復活するっていうのに。」
テリー「それなら心配いりませんよ。」
テリー「もし本物のバサラならオレに捕まることはないでしょうから。」
シモーヌ「タイホに協力する人間の言葉とは思えないな。」
テリー「もちろん全力は尽くしますが、心情的にはバサラを応援してるもんで。」
みささぎ「予告状を送り付けられた相手が相手ですしね。バサラに肩入れしたくなるのはわかります。」
みささぎ「ただ……ひながマネを始めそうなのがアタマの痛いところですわ。」
シモーヌ「うちの
ジュリアンもだな。ヘタするとルーシーも……。」
ユキ「ふふ、そのときはアリスちゃんにタイホしてもらわなくちゃね。」
アリス「あはは…がんばります。」
四日目
リュカ「やっべ…!」
アリス「どこかに行ってたんですか?」
リュカ「いや、まあ……ちょっと散歩にな。」
アリス「……なにか隠してます?」
リュカ「べ、べつになんも隠してねえよ。」
リュカ「つーか――オレのことは放っておいてくれって言ったよな。」
アリス「リュカさん……。」
リュカ「じゃあな、オレは帰って寝るから。」
セシル「ねえねえ、聞いた!? アリスさん!」
セシル「バサラが予告状どおりに盗みを成功させたんだって!」
アリス「そうなんだ?」
スカーレット「Seedの精鋭がみごとに出し抜かれました。」
スカーレット「犯人の影さえ見ることができずに予告されたモノを盗まれたそうです。」
ドグ「盗まれたのは人間国宝の金細工職人が手がけた黄金の宝冠だって話だろウ?」
ドグ「ぜひ一度、この目でおがんでみたいもんダ。」
スカーレット「アリスさん。」
スカーレット「もしまたバサラが予告状を出すことがあれば、今度は私たちの手でタイホしましょう。」
アリス「えっ……。」
ルーシー「あたしも参加したい! どっちがタイホできるか勝負しようよ!」
スカーレット「ムリに決まっているじゃないですか。一般の方にキケンなマネはさせられません。」
ルーシー「ちぇ~っ。テリーさんは参加させたくせに。」
セシル「テリーさんはトクベツだからね♪」
ルーシー「じゃ、あたしも予告状を出そうかな。怪盗プリティルーシー参上、なんてどう?」
スカーレット「これ以上、Seedの仕事を増やさないでください。」
アリス「………………。」
スカーレット「アリスさん? どうかしましたか?」
アリス「い、いえ、なんでもないです。」
アリス(……まさか、ね)
アリス「あの、パルモさん。」
パルモ「なんデスカ?」
アリス「パルモさんは怪盗バサラの事件のことなにか聞いていますか?」
パルモ「もちろんデス!」
パルモ「どんな類のものであれ、キラめく才能にはリスペクトしかありマセン!」
パルモ「伝説レジェンドの大盗賊がいかにして感動的なぬすみを果たすのカ!」
パルモ「当日の夜は楽しみで眠れなかったほどデス!」
アリス「その夜は……リュカさんもいっしょでしたか?」
パルモ「イイエ。あの日はワタシひとりデシタ。」
パルモ「あの子は夜になるとよくフラッといなくなるのデスヨ。」
アリス「そのころのリュカさんになにか変わった様子はありませんでしたか?」
パルモ「フム……。そういえバ――」
ふたりで紙の置いてある机へ移動する
パルモ「見てクダサイ。」
アリス「これは……設計図?」
パルモ「正確には、『意匠図面』と『構造図面』デス。」
パルモ「カンタンにいうと『意匠図面』は建物の見た目を図にしたもので、」
パルモ「『構造図面』は実際に建物を建てるときの部材や手順なんかを詳しく書いた図のことデス。」
アリス「えっと……これとリュカさんにどんな関係が?」
パルモ「これはどちらもリュカが描きマシタ。」
パルモ「ゴミ箱につっこんであったのをワタシが見つけたのデス。」
パルモ「アイデアは以前の物置小屋ほど感動的とはいえマセンが、」
パルモ「図面の精度はずっと高くなっていマス。」
パルモ「物置小屋のときの豊かな発想に今回の図面の精度……」
パルモ「両方をしっかり磨いていけばリュカはきっと素晴らしい建築家になれマス!」
アリス「あの、パルモさん?」
パルモ「おっと、シツレイ。」
パルモ「つい親バカなところがこんにちはしてしまいマシタ。」
パルモ「言いたかったのは、この図面を描きはじめたのが――」
パルモ「バサラの予告状がウワサになる数日前だったということデス。」
パルモ「まさにヒトが変わったような熱心さデシタ。」
パルモ「あのときは、いよいよ本気になったのだと大喜びしたものデス。」
アリス「そうだったんですね。」
アリス(……本気になったのは本当に建築家になるため……?)
アリス「パルモさん。この設計図、お借りしてもいいですか?」
パルモ「ええ、かまいマセンヨ。」
アリス「ありがとうございます。」
アリス(これを持ってリヴィア署長のところに行けば…私の不安に答えが出るはず)
アリス「リヴィア署長。少し、いいですか?」
リヴィア「んあ、どうした。」
アリス「怪盗バサラが予告状を出した家の間取りをおしえてほしいんです。」
リヴィア「ほう。スカーレットといい、ねっしんなことだな。」
リヴィアが書類を取って来る
リヴィア「これがSeedにくばられたひがい家屋のずめんだ。」
アリス「………………。」
アリス(やっぱり……!)
アリス(同じだ……リュカさんが描いた図面と)
アリス(リュカさん……あなたはいったい……)
リヴィア「エラくしんこくそうなカオだな。」
リヴィア「そのずめんになにか気になるところでもあるのか?」
リヴィア「たとえば……そう、ハンニンのめぼしがついた、とか。」
アリス「い、いえ。全然さっぱりです。」
リヴィア「ふうん…。」
アリス(ううっ……どうしてウソをついちゃったんだろう)
アリス(Seedの隊員としてこれでいいはずがないのに……)
アリス(だけど……もしリュカさんが事件にかかわっていたとして……)
アリス(私にタイホすることなんてできるのかな……)
アリス「………………。」
アリス(――信じよう)
アリス(もう少しだけ……決定的な証拠が出るまでは)
アリス(決定的な証拠は――盗まれた黄金の宝冠)
アリス(あそこに黄金の宝冠がなければ…これ以上クビをつっこむのはやめよう)
アリス(でも、もし宝冠があったら……そのときは――)
アリス「たしか、ここに仕かけが……。」
アリス「………………。」
アリス(お願い……! どうか入っていませんように!)
アリスがクローゼットを開ける
アリス「そ、そんな……。」
リュカ「おい! そこでなにやってんだ!」
アリス「リュカさん……。」
リュカ「またお前か…。なんだ?」
アリス「これ……。」
アリスは手に宝冠を持っている
リュカ「……見つけちまったのか。」
アリス「だって……。」
リュカ「……そいつをこっちに渡せ。」
アリス「イヤです。」
アリス「これはあなたのじゃないって言ってください。」
アリス「誰かが勝手にここへ入れただけで、自分はなにも知らないんだって。」
リュカ「わかってんだろ。」
リュカ「その隠し場所はオレたち2人だけのヒミツだ。」
リュカ「あんたが入れたんじゃなきゃオレしかいないだろ。」
アリス「…どうして……。」
アリス「どうしてバサラに手を貸すようなことを……。」
リュカ「なに言ってんだ?」
リュカ「手を貸したんじゃねえ。」
リュカ「オレが――怪盗バサラだ。」
アリス「は……え?」
アリス「えぇええええええっ!?」
リュカ「ちょっ、声がでけえ!」
アリス「だ、だって、バサラは何十年も前の伝説の大盗賊ですよね?」
アリス「リュカさんのわけが……。」
リュカ「それ、オレのひいじいちゃん。オレは4代目。」
アリス「ひい……4代……?」
アリス「えぇええええええっ!?」
リュカ「だから声がでけえって!」
アリス「す、すみません。」
リュカ「ま、驚くのもムリはねえけどな。」
リュカ「そんなわけだから、黄金の宝冠をこっちに渡せ。」
リュカがアリスから宝冠を取り上げる
アリス「あ……!」
リュカ「こいつはこれから、元の持ち主のところへ返す。」
リュカ「元の持ち主っていっても悪徳商人のとこじゃねえぞ。」
リュカ「あくどいやりかたで宝冠をおどし取られた本来の持ち主のところにだ。」
リュカ「そこまでやってこその盗賊バサラだからな。」
アリス「どうしてぜんぶ言っちゃうんですか。」
アリス「最後までリュカさんを信じていたかったのに……。」
アリス「聞いちゃったら、タイホするしかなくなっちゃうのに…!」
リュカ「……なんでだろうな。」
リュカ「………………。」
リュカ「これがオレにとって……すげえ大事なことだからかもしれねえな。」
アリス「私よりも……ですか?」
リュカ「そういうことじゃ――」
アリス「だって……私はSeedなんですよ。」
リュカ「うっ……。」
リュカ「と、とにかく!」
リュカ「オレにはやらなきゃいけないことがあるんだ!」
リュカ「オレはバサラをまっとうする! 止めてもムダだぜ!」
リュカが走り去る
アリス「………………。」
アリス「リヴィア署長に……報告しなくちゃ…………。」
アリス「署長、お話が……。」
リヴィア「ハナシ?」
リヴィア「おいおい、ずいぶんひどいカオをしているな。」
リヴィア「なんぞ大シッタイでもやらかしたか?」
アリス「………………。」
アリス(言わなきゃ……)
アリス(でも…………)
リヴィア「よほどのことらしいな。」
アリス「…………はい。」
リヴィア「だったら、きょうはかえれ。」
リヴィア「ジブンをみつめ、ココロをきめてからもういちどこい。」
リヴィア「オマエは大きなかっとうをへて、Seedの隊員であることをえらんだはずだ。」
リヴィア「そのセンタクに悔いをのこすようなことだけはするなよ。」
アリス「……はい。」
アリス(悔いのない選択……)
アリス(ちゃんと……リュカさんと向き合わなくちゃ)
アリス「リュカさん。」
リュカ「アリス……。」
リュカ「場所を移すか。」
二人でメロディ湖へ移動
アリス「……教えてください。」
アリス「どうして今になって盗賊なんですか。」
リュカは湖のほうを向いて語りはじめる
リュカ「今になってじゃねえ。」
リュカ「何年も前からずっと、バサラの隠れ家で修業を続けてた。」
リュカ「バサラの名を継ぐために。」
アリス「そっか……パルモさんの右腕になるのともう1つ…」
アリス「やりたいことがあると言っていたのがそれだったんですね。」
リュカがアリスのほうを向く
リュカ「そうだ。」
リュカ「ガキのころは……バサラの名を世に広めればばらばらになった家族が戻ってくると思ってた。」
リュカ「おふくろと兄貴たちが……親父が……迎えに来てくれると信じてた。」
アリス「バサラの名前で…家族が…?」
リュカ「前に、家族がばらばらになったのは親父が蒸発したからだって言ったろ。」
リュカ「正確には、親父はSeedにタイホされたんだ。」
リュカ「おっと、カン違いするなよ。ヘタを打って捕まったんじゃねえぞ。」
リュカ「自分から捕まりに行ったんだ。」
リュカ「……家族やナカマを守るためだった。」
リュカ「ひいじいちゃんのころは今よりずっと治安が悪かったらしくてな。」
リュカ「あくどいヤツやチカラの強いヤツが弱い者たちから奪うのが常だった。」
リュカ「それを奪い返して弱い者たちの元に戻したのが盗賊バサラだ。」
リュカ「バサラは、弱い者たちのヒーローだった。」
リュカはアリスに背を向けて数歩遠ざかる
リュカ「でも2代目――じいちゃんのころに、事情が変わりはじめた。」
リュカ「あちこちに自警団ができて、弱い者が守られる世の中になっていったんだ。」
リュカ「そうなれば、義賊といったところで盗賊は盗賊。」
リュカ「いつしか追われる身になり…世間様からも後ろ指をさされるようになった。」
リュカ「じいちゃんはバサラの名を汚さないように自分の代までで名前を封印した。」
リュカ「それでもやっぱり泣かされる弱い者ってのはいて……」
リュカ「じいちゃんと親父はそういう弱い者たちや行き場を失ったヤツらを集めて」
リュカ「バサラの意思を継いだ盗賊団を作った。」
リュカが再びアリスのほうを向く
リュカ「アリスからすりゃなんで盗賊団なんだって思うだろうけどさ。」
リュカ「誰かが作ったルールのなかでは生きられないヤツらもたくさんいるんだ。」
リュカ「けどSeedができたことで、そんな理屈も通用しなくなっちまった。」
リュカ「パッキリと正義と悪に分けられて、とうぜん親父たちは悪の側に置かれた。」
リュカ「それで親父は……バサラの役目は終わったと言って家を出た。」
リュカ「親父がSeedにタイホされたと知ったのはそのすぐあとだったらしい。」
リュカ「親父は、すべては自分がやったことでほかの者たちに罪はないと言ったそうだ。」
リュカ「そのおかげで、盗賊団の人間がSeedから追われることはなくなった。」
リュカ「それでもしばらくは、みんな盗賊団であろうとした。」
リュカ「一番上の兄貴を4代目ってことにしてバサラの意思を継ごうとしたんだ。」
リュカ「きっと、納得がいかなかったんだろうな。自分たちが悪だと断じられたことが。」
リュカ「けどさ、そんなのはいつまでも続かねえ。」
リュカ「1人抜け、2人抜けしていって……」
リュカ「いよいよ残ったのは家族だけになった。」
リュカ「そのときだよ、オレがパルモさんに預けられたのは。」
リュカは遠くを見上げる
リュカ「まだガキで盗みをやったことがなかったオレはかたぎの世界で生きろって。」
リュカがうつむく
リュカ「悲しかったし、悔しかった。オマエだけ違うんだって取り残されたみたいで。」
リュカ「だからいつかオレがバサラの名を継げば、また家族に戻れるんじゃねえかって思った。」
リュカ「今ごろはオリの外に出てるはずの親父も、気づいてくれるかもしれねえって。」
リュカ「そうしたらみんな元通りで、オレは1人ぼっちじゃなくなるんだって。」
リュカがアリスのほうへ歩み寄る
リュカ「でも……パルモさんがさ、」
リュカ「そういうのぜんぶ吹っ飛ばしちまったんだ。」
リュカ「あの人、ぜんぜんオレを1人ぼっちにさせてくれねえの。」
リュカ「1人がヤだからバサラになろうとしてんのにだぜ?」
リュカ「オマエは1人じゃねえって見せつけられ続けたらさ、」
リュカ「ああ、オレにはこの人がいるんだからもうそれでいいじゃんって思うだろ?」
リュカ「この人のために建築家になろうってさ。」
アリスがリュカに近寄る
アリス「だったらどうして?」
アリス「それでよかったじゃないですか。」
アリス「パルモさん、言ってましたよ。」
アリス「リュカさんはきっといい建築家になれるって。」
リュカ「………………。」
リュカ「くすぶってんだよ。」
アリス「なにが…ですか?」
リュカ「家族のこととか、バサラを継ぐって決めたガキのころの思いが。」
リュカ「どうしても割り切れねえままくすぶり続けてんだ。」
リュカ「パルモさんの右腕になりたいって思う一方で、バサラを捨てていいのかって声が消えねえ。」
リュカ「それは家族への思いも捨てることになるんじゃねえのか?」
リュカ「ガキのころの自分を否定することになっちまうんじゃねえのかって。」
アリス「そんなこと……。」
リュカ「ないよな。今ならわかるよ。」
リュカ「バサラになろうがなるまいが、オレはオレのままだった。」
リュカ「でもそれは、バサラをまっとうしたから気づけたことだ。」
リュカ「オレはバカだからさ。やってみなきゃわかんねえんだよ。」
アリス「だったら、もういいですよね? バサラは……おしまいですよね?」
リュカ「………………。」
リュカ「ほんと、バカなんだよなあ。」
リュカ「やっちまったらもう引き返せねえのにな。」
アリス「リュカさん……?」
リュカ「今のオレは、大盗賊バサラだ。」
リュカ「もう……引き返せねえんだよ。」
アリス「そんなことありません! 自首して罪をつぐなえば――」
リュカ「それはムリな相談だ。」
リュカ「オレが捕まるってことは、伝説の盗賊バサラが捕まるってことだぜ?」
リュカ「ひいじいちゃんが作り上げて、今日まで紡がれてきた伝説を…意思を――」
リュカ「オレが汚すわけにはいかねえ!」
視界が真っ白になる
アリス「なっ……!」
リュカ「それでも…どうしてもオレを自首させたいなら、バサラの隠れ家に来な。」
リュカ「もしオレを捕まえることができたらあんたの言うとおりにする。」
リュカ「……待ってるぜ。」
リュカ「来たな、アリス。」
リュカ「オレに指1本でも触れられればアリスの勝ち。」
リュカ「あんたに触れられずにここを抜け出せたらオレの勝ちだ。」
リュカ「タイホでも自首でも、アリスの言うとおりにする。」
リュカ「その代わり、オレが勝ったら今まで話したことはすべてヒミツにすると約束しろ。」
アリス「……わかりました。」
リュカ「よし。」
リュカ「それじゃあ、勝負開始だ!」
アリス(リュカさんは……いない?)
アリスがしゃがみ込む
アリス「つっ……!」
アリス(ワナ!? くっ……動けない――!)
リュカ「オレの勝ち、だな。」
アリス「リュカさん……!」
リュカ「約束は守ってもらうぜ。」
リュカ「オレはこれから、次のターゲットのところに予告状を出しにいく。」
リュカ「もう……戻らねえ。」
リュカは背中を向けて走り去る
アリス「リュカさん!!」
アリス「止められなかった……。」
アリスが立ち上がる
アリス「ワナがはずれた?」
アリス(でも……もう遅い……)
アリス(リュカさんはもう……)
リュカ「バカ! ぼーっとしてんじゃねえ!!」
アリス「リュカさん!?」
リュカはアリスの背後に現れたグリーンカイザーからアリスをかばい、倒れる
LV40グリーンカイザーとの戦闘
アリス「リュカさん! リュカさん!!」
リュカ「…う……っ。」
アリス(よかった、生きてる!)
アリス「すぐ病院に運びますから!!」
アリス「シモーヌさん! リュカさんは大丈夫なんですか!?」
シモーヌ「病院内で大声を出さない。」
アリス「でも!!」
シモーヌ「心配なのはわかるが、命にかかわるほどのケガじゃない。」
アリス「ほんとですか!?」
シモーヌ「私の診断が信じられないのか?」
アリス「い、いえ、そんなことはありません。」
シモーヌ「だったら安心して任せなさい。」
シモーヌ「念のため入院はしてもらうが、退院までそう時間はかからないだろう。」
シモーヌ「明日にはより正確な診察結果が出るから様子を見にくるといい。」
アリス「わ、わかりました。」
五日目
シモーヌ「まったく、あの子は!」
アリス「ど、どうしたんですか?」
シモーヌ「リュカだよ!」
シモーヌ「私の許可を待たずに夜中にこっそり逃げ出したんだ。」
アリス「ええっ!?」
シモーヌ「ケガの程度は軽いから外出しても問題はないけど、」
シモーヌ「医者のいうことを聞かないのは患者として大問題だ。」
シモーヌ「悪いが、アリス。」
シモーヌ「捕まえて私のところに連れてきてくれないか。みっちりと説教をしてやりたい。」
アリス「あはは……わかりました。」
アリス(また追いかけっこをすることになっちゃった)
アリス「リュカさん!!」
リュカ「あーあ、だから早いとこ連れてってくれって言ったのに。」
アリス「どういうことですか? シモーヌさん、怒ってましたよ。」
リュカ「だろうな。わりぃけど、謝っといてくれるか。」
リュカ「オレはこれからお縄につくから。」
アリス「お縄って――」
スカーレット「リュカさんが先ほど、自首を申し出てきました。」
スカーレット「盗賊バサラは自分だ、と。」
アリス「ど、どうしてそんな……。」
リュカ「約束したろ。」
リュカ「指1本でも触れられたらアリスの勝ち。」
リュカ「そのときはタイホでも自首でもあんたの言うとおりにするって。」
アリス「でもあのときは私を助けるために……。」
アリス「本当なら、リュカさんの勝ちだったはずです。」
リュカ「いいんだよ。」
リュカ「しょうがねえのさ、気づいちまったんだから。」
リュカ「前にアリスが聞いてきただろ?」
リュカ「私よりバサラが大事なのかって。」
リュカ「あのときはわかんねえって言ったけど、モンスターに襲われそうなあんたを見て気づいた。」
リュカ「いや……」
リュカ「ほんとはもっとずっと前から気づいてたんだろうな。」
リュカ「一番大事なものはなにかって。」
リュカ「だから……どこかであんたに止めてほしかったんだと思う。」
リュカ「土壇場まで意地はって、見栄はって、傷つけちまったけど……」
リュカ「やっぱりオレにとってはアリスが一番大事だった。」
リュカ「まったく……救いようがないよな。」
リュカ「取り返しがつかなくなるまでそんなことにも気づけねえんだからさ。」
アリス「リュカさん……。」
リヴィア「んあ~…スカーレット。わたしたちはナニをきかされているんだ?」
スカーレット「さあ……のろけ話…でしょうか。」
リュカ「なんでそうなるんだよ!」
リュカ「タイホされてもう二度と会えなくなる恋人に自分のバカさ加減をわびてるだけだろ!?」
リヴィア「さっきからタイホタイホ言っているが、ダレがダレをタイホするんだ?」
リュカ「こっちが聞きてえよ! オレ以外に誰がいるってんだ?」
リヴィア「んむう……それはこまったな。」
リュカ「はあ? なにがだよ。」
リヴィア「タイホをするからには、」
リヴィア「オマエが罪をおかしたというたしかなしょうこがひつようだ。」
リヴィア「しかしザンネンなことに、Seedはハンニンのすがたを見ていない。」
リヴィア「いや、それいぜんにひがいとどけが出されていない。」
リヴィア「きいたところによると、黄金の宝冠は元のもちぬしのトコロにもどったというではないか。」
リヴィア「ひがいしゃがおらず、モノはもちぬしの手もとにある。」
リヴィア「はて……?」
リヴィア「スカーレット、わたしたちはいったいダレをタイホすればいいんだ?」
スカーレット「悔しいですが……」
スカーレット「署長がおっしゃるとおり、証拠はなにもありません。」
スカーレット「被害届が出ていないのもそのとおりです。」
スカーレット「もともとの入手手段に違法性があったため、被害届を出すに出せなかったのでしょう。」
スカーレット「である以上、推定無罪の原則にのっとるしかありません。」
リュカ「無罪……?」
リヴィア「このあとどうするかは、オマエのじゆうだ。」
リヴィア「ツミのいしきがのこるというなら、」
リヴィア「わたしのカワイイ部下をきずつけたこともふくめて」
リヴィア「おおいにハンセイするがいい。」
アリス「リヴィア署長……。」
リヴィア「いっておくが、つぎはない。」
リヴィア「こんどはSeedの威信をかけてぜんりょくをもってソシする。」
リヴィア「わかったら、もういけ。」
リヴィア「これいじょう目の前でのろけられてもたまらん。」
リュカ「あ、ああ……。」
アリス「署長! スカーレットさん! ありがとうございます!」
リュカとアリスが退室
リヴィア「……あますぎると思うか?」
スカーレット「さあ、どうでしょうか。」
リヴィア「オマエもかわったな。」
スカーレット「私は原則にしたがったまでです。」
リヴィア「くっふっふ、そういうことにしておこう。」
アリス「リュカさん!」
リュカ「……まいったよなあ。」
リュカ「この展開は予想外だったよ。」
アリス「これから……どうするつもりですか?」
リュカ「とりあえず、シモーヌさんに謝りに行くよ。」
アリス「そのあとは?」
リュカ「そんなもん決まってんだろ。」
リュカが歩き去っていく
アリス(それって、どういう……)
六日目
リュカがパルモの背中に話しかけている
リュカ「パルモさん。」
リュカ「オレ……あっちこっち寄り道しちまったけど……」
リュカ「これからはパルモさんの右腕になるために必死こいて勉強するよ。」
リュカ「だから……」
リュカ「ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします!」
パルモ「……感動を生み出せないような十把ひとからげの建築家ならいりマセンヨ?」
リュカ「それなら安心してよ!」
リュカ「オレにしかできないことを思いついたんだ!」
パルモがリュカのほうへ向き直る
パルモ「聞かせてもらいマショウ。」
リュカ「これまでのオレのすべてを生かして――」
リュカ「ぜったいにドロボウに入られない、完璧パーフェクトなセキュリティの家を作る!」
リュカ「これはきっと、オレにしかできないオンリーワンのものになるよ!」
パルモ「………………。」
リュカ「あ、あれ? ウソだろ?」
リュカ「オレ……また間違えた?」
パルモ「グゥレーーーーートッ!!!!」
パルモ「それでこそワタシの弟子デス!」
パルモ「さっそく設計にとりかかりマショウ!!」
リュカ「ふう、焦ったぜ。」
リュカ「そういうわけだ。」
リュカ「オレはこれから、建築家1本で生きていくぜ。」
アリス「家族のことは……?」
リュカ「建築家としてオレの名が世にとどろけば、向こうから会いにきてくれんだろ。」
アリス「なるほど! きっとそうですね♪」
リュカ「だろ?」
リュカ「こんなふうに思えたのはアリスのおかげだ。」
リュカ「あんたがいてくれたから……オレは新しい人生を歩きはじめることができる。」
リュカ「ありがとな。」
アリス「どういたしまして♪」
リュカ「で……さ。その新しい人生にあんたも……。」
リュカ「ああ、いや。ちがうな。」
リュカ「オレが言っていいことじゃねえ。」
リュカ「でも、もし……いつかケジメをつけられたら……」
リュカ「そのときは、大切な話をさせてくれ。」
アリス「……はい。」
最終更新:2021年12月27日 22:03