〜 第一話 はじまり 〜 その空は、いつもレーサーたちを迎えてくれる。昨日の事などすっかり忘れさせるくらいに。その昨晩の夜、赤い月を見たというヴォルケンクラッツァー・ツィオン=ペルフェク、通称ツィオンは、赤い月の予言を思い出していた。 ツィオン「だけど、本当に赤かった…。どうして赤い月に…。」 と呟いていると、ふと考えるのを止めた。 ツィオン「そうだ、フォードGTの修理があったか。」 と、思い出すように語ると、その後ろにカー坊・クロイツ=ミルドラースがいつの間にかいたのだ。ツィオンはそちらに視線を向けたのだ。 カー坊「あの事故車をよく修理する気になれるな。」 ツィオン「そうですけど…。僕は、一つの事故を思い出せない人がいるのもありますけど、レダとリンクが目撃者で、リンクはその事を思い出せないから…。」 カー坊「そうか。それなら、警察官も努力している。今はリンクもレーサーだからな。」 とカー坊が語ると、後ろを振り返り、すたすたとどこかに歩いていく。 カー坊「そろそろ戻るわ。」 ツィオン「初めての舞台ですから、どうしましょう?」 と、不安げに語ると、カー坊はツィオンに向き直る。 カー坊「…私たちは、予備の車を所持している。まずはカービィを倒せ。一台は渡しておくが、すでにガレージにある。それは予備だからな。自分で愛用する車を、自分で探すのだ。」 ツィオン「わかりました。」 カー坊「因みに、私の愛用している車は、R34だが、馬力は偽りだ。特殊エンジンで今まで倒してきた。フォードGTが壊れたのもあって、一台取り寄せたのだ。」 ツィオン「…あのフォードGTは、カー坊さんの?」 カー坊「あとで見に行く。」 と、そう返事する。そして、そのまま歩いて去っていった。そして、涼しいのか、どうかわからないが、その風がツィオンに吹き付ける。 ツィオン「…カー坊さん…。」 カー坊は、ツィオンを目撃者にしてしまった事は、未だに誰も告げられていない。ツィオンは、カー坊の事故を目撃してしまったからである。事故で大破したフォードGTを修理してきたツィオンの知り合いも、「金持ちだな」とカー坊に絶賛していたらしいのだ。そして、その事故より数日後。知り合いには、修理は難しいと言われたが、そのまま修理してくれと宣言したのだ。 ツィオン「あの車の持ち主は…わかっていますよ。」 と軽く呟くと、誰かが上ってきたのだ。レダである。 ツィオン「あ、レダさん。すいません。でも、ここで少し休みましょうよ。」 と声をかけた。そして、ツィオンは、これからの戦いに、期待を寄せた。