第3話 試練
次の日、私はスモーキーさんに連れられて、兵士育成機関に向かった。
兵士育成機関に着くと、既に講義や実習の様な光景を目にした。
沙「あの、スモーキーさん。…もう授業は始まってるんじゃ?」
ス「ん?あぁ、他の奴らはな。でもお前は俺が指導するんだから、他の奴らとは違うぞ。」
スモーキーさんは笑いながら私を運動場の方へ連れて行った。
運動場には既に2人の人が待っていた。
他にも2名ほど指導すると言っていたので、この二人が一緒に指導を受けるのだろうと思った。
その二人を加えて、4人で運動場の隅にある休憩所まで行った。
ス「それじゃ、一人づつ自己紹介でもしてもらおうかな。」
休憩所の椅子に腰掛けて、一人づつ自己紹介するようにと言われた。
沙「初めまして、沙羅って言います。ウォリアーをやってます。これからよろしくお願いします。」
ゼ「初めまして、ゼノです。見ての通りスカウトです。これからよろしく。」
べ「ベルクと申します、ベルと呼んでください。これからよろしくお願いします。」
3人の自己紹介が終わると、スモーキーさんが立ち上がった。
ス「俺の名前はスモーキー、お前達の教官だ。呼び方は教官でもスモでもどっちでも良い。
これから1年間でお前達を一人前の兵士にしろという隊長の命令だが、
俺はそんな悠長な事はしない。
今この国は、戦力となる兵士を待っている。
…3ヶ月でお前達を一人前の兵士と呼べるまでに鍛えるつもりだ。
それなりの覚悟はしておくように。」
ゼ「ちょ、ちょっと待ってください。
正規の兵士の育成期間は1年を要すると講義でも言われてます。
それを3ヶ月なんて、無茶です!」
ス「無茶ならそれを可能にしてみせろ。」
べ「ありえない…。3ヶ月で新兵が精兵になると言うんですか?!」
二人が騒いでる中で、スモーキーさんがふと溜息をついた。
そして、私達を見ながらゆっくりと話しだした。
ス「…お前達は良いじゃねえか、3ヶ月も鍛えてもらえるんだから。
俺が初めて戦場に立った時に、どれだけ鍛えられたと思う?」
沙「…1年じゃないんですか?」
ゼ「そんなに言うんだから、1年以内…半年でしょう?」
べ「もしかして、3ヶ月ですか?」
その時、突然スモーキーさんがテーブルを拳で叩き割った。
ス「どいつもこいつも甘ちゃんばっかりだな!俺がお前達位の頃は、
カセドリアは独立戦争の真っ只中だぞ?
そんな時間があったとでも思ってんのか?!
…0だ。訓練も何も受けて無い子供に、武器を持たせて戦場に送ったんだッ!!」
沙「…そんな、そんな事信じられません!」
ゼ「そうだ、そんなの嘘に決まってる!」
私とゼノさんが嘘だと言っている横で、ベルクさんが一人頷いた。
べ「昔、母さんに聴いたことがあります。カセドリアが独立する時に、
子供も兵士として借り出されたと。
その時に死んだ子供も多かったから、今の1年という育成期間が設けられたって。」
ス「俺の指導を真面目に受けるなら、3ヶ月でお前達を一人前の兵士にする自信がある。
後はお前達のやる気次第だ。」
そう言って、スモーキーさんは何処かに行ってしまった。
スモーキーさんが居なくなって、3人でこれからどうするかを話し合った。
ゼ「無茶苦茶だ。3ヶ月鍛えただけで戦場に行くなんて、無理に決まってる。」
べ「でも、やってみないと分からないですよ。ウジウジしてても仕方ありませんよ。」
沙「それにしても、スモーキーさんは何処に行っちゃったんだろ?」
しばらく3人で待っていると、スモーキーさんは、
スモーキーさんにそっくりな人形の様な物を持ってきた。
沙「何ですか、それ?」
ス「これか? これはな、お前達の相手だ。」
そう言うと、スモーキーさんがポケットからクリスタルを取り出し、
人形の胸の部分に埋め込んだ。
すると、まるで生きているかの様に人形が動き出した。
ス「こいつを3人で相手をしてもらう。」
ゼ「3対1でしかも相手は人形って、教官は何を考えてるんですか?」
スモーキーさんが人形のスイッチを押した瞬間に、人形が私達に襲い掛かってきた。
ス「その減らず口がどこまで叩けるか、見せてみろ!」
ベルクさんが詠唱を開始し、ゼノさんが弓を構えた。
二人の戦闘準備が終わるまで、私は彼らの盾になろうと思った。
人形はどうやらモレクブロウを持っているようだった。
スモーキーさんに貰ったダークブランドと盾を構えて、迎撃の体勢を取った。
人形の初撃を盾で受け流して剣で斬りかかろう。
そう思った矢先、不意に私の視界から人形が消えた。
何処に行ったのか探していると、後ろの方から身の毛も弥立つ程の殺気を感じた。
人「…遅い。」
慌てて盾でガードしようとしたのだが、思った以上の衝撃だったため
そのまま5mほど後ろに飛ばされてしまった。
人形は私を追撃しようとしたが、ベルクさんのアイスジャベリンを避ける為、追撃を断念した。
ゼ「大丈夫?!」
ゼノさんとベルクさんが私の所まで来て、私が無事かどうかを確認しに来た。
その間、人形はまるで私達を待っているかのように攻撃して来なかった。
べ「様子見…という所でしょうか?」
ゼ「僕らが新米だから、手加減してるって感じだね。」
沙「どちらにしても好機です。 人形が油断している隙に、一気に倒しましょう。
私が人形の注意を引きますから、二人は隙を見て倒してください。」
ゼ「分かった。」
べ「沙羅さん、お気をつけて。」
私は人形の注意を引くため、盾で身を隠しつつ、人形目掛けて突進した。
二人は人形の様子を伺いつつ、何時でも攻撃できるよう構えた。
人「…面白い技だな。目には目を、技には技で返してやろう。
我の周囲の敵を吹き飛ばせ、ベヒモステイルッ!!」
人形まであと少しの所で、下から打ち上げられる様な衝撃を受け、
私は空中に吹き飛ばされた。
私が空中を漂っている間に、人形がゼノさんに接近した。
そして、ゼノさんの腹部を殴った。
ゼ「ぐッ!」
その場に倒れこむゼノさんを横目に、今度はベルクさんに殴りかかった。
ベルクさんはアイスジャベリンを放ったが、それを紙一重で避けて、
ゼノさん同様に気絶させられた。
それに要した時間は、瞬きを1回したか否か位だった。
沙「…そんな、強すぎる。」
空中に居る私には、ただ見ている事しか出来なかった。
そして感じた……明らかな力の差を。
私達が相手をするには、あまりにも強すぎる。
私は、着地すると同時に守りを固めた。
人形が渾身の力でモレクブロウを私に振り下ろしてくる。
もう駄目だッ!
しかし、モレクブロウは止まった。
スモーキーさんが、モレクブロウが私に振り下ろされる前に
フェンリルで受け止めてくれていた。
ス「…中止だ。まだお前達には無理のようだな。」
スモーキーさんが、失望したと言わんばかりの顔で私達を見た。
沙「・・だ。」
ス「ん?」
沙「嫌だ、まだ終わってない!」
失望されたくない!
スモーキーさんに私の成長した姿を見てもらいたい!
そう思った瞬間、不意に自分の中で何かが切れる音が聞こえた。
先ほどまで蓄積していたダメージが回復したような感じがした。
ス「そう言うなら、お前の本当の力を見せてみろ!」
私は盾を捨て、ダークブランドだけで人形に斬りかかった。
先ほどまでとは違い、体が羽の様に軽く、自分でも信じられないほど強い力を感じた。
圧倒される程に力の差を感じていたが、今はそれを感じなくなった。
人「面白い。やはりウォリアーはそうでなくてはな。」
人形相手に互角に渡り合っている…いや、むしろ押している。
しばらくの間戦っていると、人形が後ろの方に跳んだ。
そして、ニヤリッと笑った。
人「面白かったけど、飽きてきたから終わりにしてやるぜ。」
人形の姿が一瞬消えたかと思うと、いきなり目の前に現れた。
気付くと、私の体に当たる寸前でモレクブロウが止まっていた。
当たる寸前に、スモーキーさんが人形のスイッチを切った様だ。
私は意識が遠くなるのを感じ、その場に倒れてしまった。
最終更新:2008年03月25日 23:44