第6話 期待
…あれから、3ヶ月経った。
朝はスモーキーさん達と一緒に訓練し、朝食を済ませた後に兵士育成機関で修練を積んだ。
ゼノ君は、動いている的にも命中させる事ができるようになった。
ベルクさんも完璧とまでは言えないけども、魔法をコントロールできるようになった。
そして私は、3ヶ月前と比べると幾分剣の腕に自信をもてるようになった。
いつものように朝の訓練をし、朝食を済ませて兵士育成機関に向かった。
二「全員、今日はグラウンドに向かってくれ。」
ニッシンさんの言われた通りにグラウンドへ向かった。
すると、何時もは別の場所で訓練をしている別のクラスの人達も集まっていた。
ゼ「奇遇だね、沙羅もグラウンドで訓練?」
べ「あら、沙羅さん達も教官にグラウンドへ向かう様に言われたんですか?」
気付くと、ベルクさんとゼノ君が私の近くに居た。
今日はどうやら全クラスでの訓練らしい。
そう思っていると、やふやふさんや他の教官達も集まってきた。
二「グラウンドにお前達を集めた理由は他でもない、3人一組になって戦ってもらう。
これが、今日の訓練内容だ。」
3人一組になって戦う?
他の生徒達がざわざわしていると、やふやふさんが前に出た。
や「詳しくは私から説明します。
この3ヶ月間、貴方達はそれなりに修練を積んできたと思います。
しかし、それはあくまで一人での修練です。
戦場は一人で戦うのではなく、皆で力を合わせて戦うのです。
それを体で理解する為に、3人一組になって戦っていただきます。
組む人を決めて、夕方までに私か他の教官に申請してください。
戦う組み合わせは、本日の夜に発表いたします。
尚、これから夜までの間は3人一組なら何をしても良いです。
一緒に訓練をするもよし、夜まで体を休めるもよし、好きにしてください。
それでは、解散。」
3人一組で戦う……、やっぱりゼノ君とベルクさんと組みたいな。
二人も同じ考えのようで、すぐに組む事が出来た。
そして、これから夜まで何をするかを話し合った。
ゼ「これから、夜まで何する?」
べ「じっとしているのもなんですから、訓練しませんか?」
沙「訓練と言っても今度の相手は人だよ、訓練の相手にちょうど良い人なんて居る?」
べ「だから、スモーキーにどうしたら良いのか指導…じゃなかった訓練をしてもらうんです。」
なるほどね、スモーキーさんなら経験も豊富だから良いかも。
近くに居たタナティエさんにチームを申請し、私達はスモーキーさんの部屋に向かった。
宿舎の廊下に着くと、何処からか声が聞こえた。
その声はスモーキーさんの部屋に近づくにつれ、段々と大きくなっていった。
ノックをして部屋に入ると、スモーキーさんの他にやふやふさん達も居た。
この前のゲーム盤で、張文遠さんとのーくんでぃさんが戦っていた。
ス「どうした、何か用事か?」
私達が入ると、スモーキーさんが話しかけてきた。
沙「夜まで皆で訓練をしようって事になったんですけど、何をしたら良いのか分からなくて。」
ス「そうか、やっぱりお前は仲良し3人組とチームを組んだんだな。」
スモーキーさんと話していると、突然張文遠さんが唸りだした。
張「ぬう…、進退窮まったか。」
の「さあさあ張さん、どうするの?」
盤上を見ると、張文遠さんの駒がのーくんでぃさんの駒に崖まで追い詰められているようだ。
のーくんでぃさんの駒は歩兵が少ないけども、レイスが居る為に有利になっている様だ。
すると、盤上を見たスモーキーさんが、張文遠さんに何か囁いた。
そして、張文遠さんが駒に手を伸ばした。
張「門に対してパニッシングストライク発動ッ!門を破壊だ。」
門の形をした駒が崩れ落ちると同時に、レイスの駒が歩兵の駒になった。
の「そんな、警戒はしていたのに?!」
張「この戦、貰った!」
のーくんでぃさんの駒がどんどん退いていき、それを張文遠さんが追撃している。
それを見たスモーキーさんとやふやふさんが、やれやれと言った感じの顔をした。
ス「…張、お前の負けだ。」
や「ですね。」
張「何を言う、見よこの勝ち戦を!」
そう言って盤上を指差すが、何かに気付いたようだ。
ス「やっと気付いたか。」
の「張さん、私があんな無様な撤退をすると思いましたか?」
その駒は、どこかで見たことがあった。
…あの駒は、キマイラ?!
張「何、何時の間に?!」
言い終わるか否かのタイミングで、ファイナルバーストが決まり、張文遠さんが負けた。
や「さすがは机上の戦術家ですね、見事な囮作戦です。」
のーくんでぃさんが照れくさそうな顔をした。
それとは対照的に、張文遠さんは俯いていた。
私が慰めようとすると、スモーキーさんが張文遠さんの頭を殴った。
ス「俺たちはウォリアーだ。盤上では負けるが、戦場ではソーサラーに勝つウォリアーも居る。
盤上と戦場とは違うぞ!」
すると、張文遠さんが顔をあげた。
張「……そうだな。この張文遠、戦場で遅れを取った覚えは無いッ!
待っていろスモー、今夜の戦いでは、必ずお主を倒してみせる!!」
ス「楽しみにしてるぜ、張ッ!」
張文遠さん達が部屋を出て行くと、やふやふさんがスモーキーさんに近づいた。
や「スモーキーさん、貴方にはやって頂きたい事があります。」
ス「何だ、隊長とチームを組めと?」
や「それもですが、詳しくは剣心さんから。」
先ほどからやふやふさんの後ろに居た剣心さんが前に出た。
剣「スモさんにやってもらいたいのは、
訓練人形零番の調整と新型訓練人形の戦闘テストです。」
訓練人形…私達が戦った人形の事だね。
戦ったのは零番って聞いたから、あの人形の調整か…。
今でも思い出すのは、自分と人形との明らかな実力の差だった。
ス「分かった、夜までにはしておこう。」
そう言ってスモーキーさんが部屋を出ようとすると、やふやふさんが呼び止めた。
や「調整のついでに、沙羅さん達の指導もお願いできませんか?」
指導という言葉を聞くと、スモーキーさんが振り返った。
ス「俺に沙羅達の教官を辞めさせたのは隊長のはずだが?」
や「それは謹慎期間中の事です。
沙羅さん達と貴方が一緒に訓練している事は知って居ます。
今更言う事では無いじゃないですか。」
やふやふさんがクスクスと笑った。
いずれはバレるだろうと思ってたけど、最初からバレてたなんて…。
ス「…分かった、なら沙羅達も一緒に訓練人形の戦闘テストをさせるか。」
や「いえ、新型の訓練人形の戦闘テストは沙羅さん達にやってもらいます。」
剣「スモさんと戦わせると破壊されちゃうし、それに新兵さん用の人形だからね。
あ、零番の調整はスモさんがしてね。」
やれやれといった感じで、スモーキーさんが溜息をつく。
私達はスモーキーさんに連れられて、人形の倉庫に向かった。
言われた人形を取り出すと、グラウンドへ持って行った。
ス「先に新型の戦闘テストだな。さて、今回は誰をベースに作ったのやら?」
胸にクリスタルを入れてスイッチを入れる前に、スモーキーさんが私達を見た。
ス「もしも負けそうになったらすぐに退け、俺が止めるから。」
沙「私はウォリアーです。例え勝てないと分かっていても、退く訳にはいかないんです!
ゼノ君や、ベルクさんを守る為に。」
すると、スモーキーさんが私の頭を小突いた。
ス「味方の命も大切だがな、自分の命も大切にしろ!」
べ「そうですよ、沙羅さんが死んだら私は悲しいですし。」
ゼ「それは僕も同じさ。仲間が死ぬのは、僕には耐えられそうにないからね。」
ス「おら、お前ら準備しろ。スイッチ入れるぞ!」
「「「はいッ!」」」
三人の声が合わさった。
それぞれの準備が終わると同時に、スモーキーさんがスイッチを入れた。
三人で奮闘したが、結果は惜敗だった。
零番と同じとまでは行かないが、この人形も強かった。
……まだまだ私達の修練が足りないのかな?
1回でも良い、皆で一緒になって喜びを分かち合いたい!
その為にも、試合が始まるまでにできるだけの努力をしよう。
私はそう思った。
最終更新:2008年07月14日 22:51