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第11話 試験 後編





ニッシンさん達に連れられて、私達はグラウンドの中央にある巨大クリスタルに向かった。
そこには、他のクラスで試験を合格してきた人達も集まっていた。

べ「沙羅さん、貴方も合格していたんですね。」

私に気付いたのか、ベルクさんが私に近づいてきた。

沙「ベルクさんも合格してたんだね!」

べ「少し危ない場面もありましたが、何とか合格できました。」

何時の間にかゼノ君も近くに居た。

ゼ「この分だと、この最終試験も合格できそうだね。」

べ「そうですね。このまま皆で一緒に卒業しましょう!」

ベルクさんからレインさんが、ゼノ君からキルシュさんが共に合格してきていると聞いた。
やっぱり彼女達も合格してきてるんだね。
3人で次の試験がどのような物なのか予想していると、急に回りが騒がしくなった。

や「これより、最終試験を開始しますッ!!」

やふやふさんの一言で、周りの空気が変わった。
いったい、どんな試験なんだろう?

や「最終試験はこのクリスタル内部で行います。」

やふやふさんがそう言うと同時に、巨大クリスタルが眩く輝いた。
気がつくと私達は、クリスタルが作った仮想空間内部に居た。

べ「どうやらここが、最終試験場の様ですね。」

私の近くには、ゼノ君とベルクさん。
そして、キルシュさんとレインさんも居た。
どこからともなく、やふやふさんの声が響いた。

や「この仮想空間内部に居る私に触れる事……これが、最終試験ですッ!」

べ「見つけても簡単には触れられなさそうですね。」

最終試験なんだから、簡単には合格できそうにないね。

ゼ「そうだね。多分教官達が護衛してると思うよ。」

キ「ここは分かれて探すよりも、皆で協力した方が良さそうね。」

5人で固まってやふやふさんを探す事になった。

レ「べ、別にあんたと組みたいから一緒に行動する訳じゃないからね!
  勘違いしないでよ!!」

べ「はいはい、分かっていますよ。」

ベルクさんがやれやれと言った感じの返事を返した。
この二人、仲が良いんだか悪いんだか…。
5人でしばらくやふやふさんを探していると、倒れている生徒を発見した。

沙「どうしたの?大丈夫ですか?!」

倒れていた生徒を起こすと、弱弱しく何かを口にした。

「化け…が、きょう………。」

最後まで言い終わる前に生徒は光となった。
…化け?

べ「どうやら、私達の予想はちょっと甘かったようですね。」

化け……、化け物?

沙「化け物?」

ゼ「化け物ってなんだろ?
  仮想空間だから、モンスターがやふやふさんを護衛してるって事かな?」

なるほど、それなら納得できる。
けど、いったいどんなモンスターなのだろうか?

キ「皆静かに!」

突然キルシュさんが静かにするように言った。
すると、遠くから遠吠えの様な物が聞こえた。
皆で其処に向かうと、兵士と思しき人影と、その周りを走り回っている狼達が居た。
そして、その中央にやふやふさんが居た。

べ「あれは…、ファントムウルフ?!」

ファントムウルフ…、その姿と強さとから『冥界の猟犬』と言われるモンスターだ。

ゼ「でも、ファントムウルフは一匹しか居ないんじゃないの?!」

レ「あんた馬鹿?ここは仮想空間なのよ、何匹居たっておかしくないわよ。」

確かに、仮想空間だからあれだけの数が居てもおかしくは無い。
そんな事よりも私が気になったのは、狼達の中央にいる兵士だった。

沙「あの顔、どう見ても人間じゃないんだけど?」

体は人間のようだけども、顔はまるで……狼の様な顔だった。

キ「仮想空間だから教官の誰かがあんな顔をしてるのか、それともあれが化け物なのかしら?」

皆で思案していると、不意に兵士が吠えた。
それと同時に、狼達は私達に向かって走ってきた。

べ「気付かれましたね。」

レ「何悠長に構えてんのよ、あんな狼くらい私が倒して見せるわ!」

そういうと、レインさんはジャッジメントレイを唱えた。
しかし狼達は無数の雷に降り注ぐ雷を避けた。

レ「そんなッ?!」

キ「こうなったら徹底抗戦よッ!」

キルシュさんが短剣を構えて迎撃の態勢をとった。
狼達は私達に近づくと、私達を囲むように広がった。
そしてまた、さっき聞いた遠吠えが聞こえてきた。
すると、狼達は物凄い速さで私達を囲んでいた円を縮めてきた。
しかしそれは私達を攻撃する為ではなく、何処へ運ぶような感じだった。

べ「いったい、何処へ連れて行くんでしょうか?」

狼の背中に乗せられて、私達はやふやふさんの所へ連れて行かれた。

や「あら、やっぱり沙羅さん達でしたか。」

やふやふさんまで10歩程の所で降ろされた。

沙「やふやふさんまであと少し、一気に走れば合格できる!」

私がそう言うと、皆がやふやふさんに向かって走っていった。

「一気に走れば触れる事が出来るかもしれない、理には適っている。だが」

もう少しの所で護衛をしている兵士に私達は吹き飛ばされた。

「それはこの俺が居なかったらの話だな。」

や「…相変わらず、手加減無しですね。」

ゼ「もう少しだったのに…。」

後一歩位だったろうか、合格できると希望を持った瞬間だっただけに、絶望も大きいようだ。

「隊長に触れたきゃこの俺を倒してから行け。」

そう言って私達の前に仁王立ちした。
俄かに狼達が騒ぎ出したと思ったら、私達の後ろにスモーキーさんが立っていた。
そしてそのままやふやふさんの所へ近づいた。

ス「おいおい隊長、最強の護衛をつけるって言うから来て見れば……こいつかよ。」

や「最強と言えば最強でしょう?」

ス「いくら仮想空間とは言え…まさか、ここまでとはな。」

沙「あの、スモーキーさん。この人は教官の誰なんですか?」

私は疑問に思っていた事をスモーキーさんに聞いていみた。
するとスモーキーさんは、兵士を指差しながら答えた。

ス「こいつは俺だよ。しかも、3年前のな。」

や「顔とかは変えましたよ、でもあの時の私にはこう見えましたけどね。」

やふやふさんが笑いながら言った。

ス「悪いが隊長、こいつを護衛につけるってんなら俺は沙羅達に加勢するぞ。」

や「どうして?」

やふやふさんはスモーキーさんの言葉に対して、不思議そうな顔をした。
確かにやふやふさんが不思議がるのも無理は無いと思った。
教官達は私達を落す為に居るようなものなのに、それが生徒に協力するというのである。

沙「どうして私達に協力するんですか?」

するとスモーキーさんは、自分のかばんの中から何やら液体の入った瓶を取り出した。

ス「こいつはな、お前らが適う相手じゃねえんだよ。」

そう言うと、手にした瓶を開けて中の液体と飲み干した。
飲み干したかと思うと、スモーキーさんの目が変化していた。
それと同時に、護衛の兵士が臨戦態勢になった。

「誰だろうと隊長に危害を加える奴は許さねえッ!」

ス「かかって来いや雑魚がッ!」

二人が私達とやふやふさんを挟んで戦い始めた。

や「賭けませんか?」

不意にやふやふさんが言って来た。

べ「教官とこの兵士の勝敗ですか?」

や「そうです。もしもスモーキーさんが勝ったら、貴方達全員を合格にしてあげます。
  でも、スモーキーさんが負けた場合は…。」

沙「全員不合格って事ですね。」

ゼ「くやしいけど、僕達だけじゃ3年前の教官を相手に勝てそうに無いよ。」

ゼノ君の言うとおりだった。
スモーキーさんと兵士の戦いは、とても今の私達では出来そうも無いような戦いだった。
…まるで、本当の獣同士が戦っているような状況だった。
今の私達には、スモーキーさんが勝つことを祈る事しか出来なかった。



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最終更新:2008年08月10日 23:31