第8話 聖女王の思い
テ「貴女が、沙羅さんですね。」
特別な日でないと見ることができないティファリス様が、目の前に居る。
私は驚いてその場に固まってしまった。
テ「そう硬くならなくても大丈夫ですよ。」
沙「は、はいッ!」
私がカチカチになっていると、やふやふさんが肩に手を置いた。
や「頑張ってください。私達の命運は、貴女にかかっています。」
やふやふさん達の命運が私にかかっている?
テ「反乱を起こされた皆さんのお気持ちは分かりました。
しかし上層部を処罰するのと同じ位、各国との結びつきを修復する事も重要です。
二つの事を一度にできるならどんなに良いでしょう…。
私の他にもう一人欲しいのです。
私は上層部を処罰します。だから沙羅さんには各国の王を説得して頂きたいのです。
各国の王にこの手紙を渡してください。」
沙「え?!
…私にそんな事ができるでしょうか?
ベルクさんの方が良いと思いますけど…。」
や「いえ、貴女だからこそお願いしたいのです。」
テ「どうか、私を信じて強行策に出ることだけは慎んでください。」
や「分かりました。皆には私から説明しましょう。」
ティファリス様が帰って行かれた後、私はやふやふさん達と話した。
や「こんな事を貴女に託してしまって、本当にごめんなさい。」
沙「そんな、謝らないでください。」
や「これは大変な任務です。
シュリッツ国等は比較的楽に了承してくれるでしょう。
しかし、賊と内通していると噂されたシルヴァン国は容易く了承はしないでしょう。」
ス「そこで、お前の出番だ。」
沙「何故そこで私の出番なんですか?」
ス「お前はベルクを賊の大軍の中から守ったじゃないか。
それを各国の王が聞いてな、特にフレイヤ王が関心したらしい。
だからお前なら、あのフレイヤ王を説得できると信じている。
まあ、気楽にやれよ。無理だったらそれで良い、俺に考えがある。」
スモーキーさんの最後の言葉に危ない物を感じた。
考えがある…?
……何とか了承してもらわないと。
私が行こうとすると、スモーキーさんが呼び止めた。
ス「もしもフレイヤ王が了承しなかったら、このロケットを渡してくれ。
それでもダメなら、俺の所に来ると良い。」
そう言って、ロケットを手渡してきた。
沙「必ず説得してみせますから大丈夫です!
…でも、このロケットを渡したら必ず了承するというのはどうしてですか?」
ス「それは、お前が知るべき事じゃない。
まずはベルクが居るシュリッツ国から行った方が良いだろう。
シュリッツ城の前まで護衛する。」
沙「そんな、悪いですよ。」
ス「いや、これは隊長の命令だ。」
シュリッツ城まではモンスターも出ることなく辿り着いた。
ス「俺はここまでだ。これからどうなるかは、お前次第だ。」
それだけ言うと、スモーキーさんは元来た道を帰っていった。
シュリッツ城に近づくと、城門が降りてきた。
城内に入ると、ベルクさんが駆け寄ってきた。
私が戻ってきた事に驚いているようだ。
べ「何かあったんですか沙羅さん?!」
沙「何もあってませんよ。ただ、仕事を頼まれちゃっただけです。」
べ「仕事?」
沙「各国との結びつきの修復です。」
べ「つまり、父に会いに来た……という事ですね。」
沙「……うん。」
べ「分かりました、私も協力しますよ。」
沙「ありがとう、ベルクさん。」
さっそく謁見の間に通された。
ゲイル王は玉座に座っていた。
ゲ「おお、沙羅か。今日は何の用で来られたのかな?」
沙「お久しぶりです、ゲイル様。
本日は聖女王の使いとして参りました。」
聖女王の使いと聞くと、ゲイル王の顔が厳しくなった。
ゲ「ふむ。聖女王の使いが何か御用かな?」
沙「はい。カセドリアは各国に対し、和平を結びたいと思っています。
詳細はこの手紙にて。」
近くの衛兵に手紙を渡した。
その手紙をゲイル王が読んだ。
少しの間思案したかと思うと、了承してくれた。
ゲ「よかろう、わしもこの状況を打開しようとしていたところだ。
それに聖女王が講和を申し出ておる。
シュリッツ国のゲイルは了承したと伝えておこう。」
沙「ありがとうございます!」
ゲ「うむ。まこと、そなたが男ならベルの婿に迎えたいくらいだ。」
謁見の間を出ると、ベルクさんが待っていた。
べ「どうでしたか?」
沙「了承してもらえたよ。」
べ「そうですか。
それで沙羅さんは、他の国にも行かれるのですね。」
沙「うん。でも、これにはやふやふさん達皆の命がかかってるの。
だから、がんばるしかないんです!」
べ「そうですか…。でしたら、私も手伝います。」
沙「ありがとう。ベルクさんも一緒だと思うと、心強いよ。」
シュリッツ国同様、他の国も講和を快く了承してくれた。
そして残すは、フレイヤ王の居るシルヴァン国だけになった。
べ「そういえば、沙羅さんが持っているそのロケットは何ですか?」
ベルクさんは、私が持っているロケットを不思議そうに見てきた。
沙「これはスモーキーさんから渡されたんです。
フレイヤ王が了承しなかったら、これを渡せと言われました。」
べ「了承しなかったらですか?
フレイヤ王にとって大事な物の様ですね…。
こっそり見てみませんか?」
沙「だ、駄目ですよ!」
べ「チラッと見るだけなら大丈夫ですよ。」
駄目と言ったものの、実は私も気になっていたのだ。
沙「…それじゃ、チラッとだけですよ。」
そう言って、ロケットの中身を見ようとした。
しかし、どんなに力を入れても、ロケットは開かなかった。
ベルクさんに渡してみると、何かに気付いたようだ。
べ「これは、魔法によって封印されてますね。
しかもこの魔法は、私では解除できません。」
沙「さすがスモーキーさん。私が覗かないように対策をしてましたね。
しょうがないですね。早くシルヴァン国に行きましょう。」
シルヴァン城に着くと、数名の兵士に取り囲まれた。
「貴女が沙羅か?」
私に向かって、兵士の隊長らしき人物が話しかけてきた。
沙「…そうですけど?」
「ここから先は、貴女一人だけで行って頂きます。」
べ「……しょうがありませんね。私は街で少し買い物でもして待ってますね。」
ベルクさんは町の市場に歩いていった。
「それでは、城内へご案内します。」
兵士に囲まれながら、シルヴァン城に入城した。
謁見の間に通されると、玉座にフレイヤ王が座っていた。
フ「貴女が…沙羅ね。」
沙「はい。本日は、聖女王の使者として参りました。」
フ「そう…。他の者は外して頂戴。」
「了解しました。」
すると、謁見の間の兵士が全員外へ出て行った。
フレイヤ王が玉座から立ち、私に近づいてきた。
フ「貴女とはこうゆう形じゃなくて、普通に会いたかったわ。
しかし、聖女王の使者がいったい何の御用かしら?」
美女として名高いフレイヤ王。
すぐ近くで私をじっと見つめながら、私の返事を待っている。
沙「まずは聖女王の手紙をお読みください。」
私はティファリス様の手紙を手渡した。
しかしフレイヤ王はその手紙を少し見ただけで、私の方を向いた。
フ「それで、何の御用なんかしら?」
手紙を読んでおいて何の御用って…。
賊と内通していると噂された事を凄く恨んでるみたいだね。
沙「カセドリアは各国に対し、和平を結びたいと思っています。」
すると、不意にフレイヤ王が笑い出した。
フ「和平?興味無いわ。」
沙「そんな、この講和には、カセドリアに反乱した人達の命が掛かってるんです!」
フ「それで?反乱軍がどうなろうと、私には関係無いわ。」
やっぱり、私では無理なのかな…。
私は俯いてしまった。
フ「ご用件は以上かしら?それなら、謁見は終わりね。」
私が謁見の間を去ろうとすると、フレイヤ王が呼び止めた。
フ「貴女のポケットから魔力を感じるんだけど、それは何?」
そういえば、スモーキーさんから渡されたロケットを渡して無かったね。
沙「これは今、反乱軍に居る私の恩人から貴女への贈り物です。」
私はポケットからロケットを取り出した。
すると、フレイヤ王の顔色が変わった。
私に駆け寄ると、ロケットを受け取った。
そして、まるで何かに取り憑かれたかの様な顔になった。
しかし、すぐにその顔は元に戻った。
フ「……。」
やはり駄目なのかな…。
私が謁見の間を出る寸前で、またフレイヤ王が呼び止めた。
フ「……分かったわ。講和を了承したと伝えておくわ。」
沙「は、はい!ありがとうございます!!」
私は急いでベルクさんの居る商業区に向かった。
商業区に着くと、ベルクさんがたくさんの物を買っていた。
べ「さすがフレイヤ王の国ですね。美しい絹や可愛い服等がいっぱいです。」
沙「そんなに買って、大丈夫なんですか?」
べ「一応迎えは頼んでありますから、大丈夫だとは思いますけど?」
ベルクさんが買った服を見ると、確かに可愛い服がたくさんあった。
沙「これ全部ベルクさんが着るの?」
すると、ベルクさんは顔を横に振った。
べ「違いますよ。こっちの可愛いのはヌアージュさんに渡してゼノ君に着て貰うんです。」
……ベルクさんもそうゆう趣味があるのかな?
その内私も着せられそうだね。
私が悩んでいると、不意に周りが騒がしくなった。
「反乱軍とカセドリア軍がシェルン緑地で激突したらしいぞ!」
「シェルン緑地と言ったら、カセドリアの首都から目と鼻の先じゃないか?」
「いよいよカセドリアも終わりか。」
べ「どうやら、反乱軍との交渉が決裂したみたいですね。」
沙「交渉は決裂していないはずです。これはきっと、何かの間違いなんですよ!」
べ「沙羅さん、現実を見てください!
いまやこの大陸のほとんどを反乱軍が制圧しているのですよ?
もはやカセドリアに服従する気が無くなったのでしょう。
やはり、カセドリアは滅ぶ運命なんですね……。」
沙「そんな運命なんて、私が変えて見せますッ!」
私は急いでシェルン緑地に向かった。
運命は、変えられると信じているからだ。
しかしこの時の私はまだ知らなかった。
運命を変えた先にある運命を……。
声を変えてみました。それなりに満足してますw byスモーキー
最終更新:2008年11月01日 19:16