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第11話 沙羅の決断 前編




スモーキーさんの言葉が聞こえた瞬間、私は耳を覆った。
そしてそのまま、その場に膝をついてしまった。

沙「スモーキーさんが私のお父さんを殺したなんて……嘘だッ!」

ス「認めたくないだろうが、これは事実だ。」

話を聞く前から、多少の衝撃は受けると思っていた。
しかし、その衝撃は想像していた物よりも大きかった。
いや、大き過ぎた。

ス「今から話す事は全て事実だ。
  しかしそれを信じるも信じないもはお前の自由だ。」

沙「……聞かせてください。」

すると、スモーキーさんが一個のクリスタルを取り出した。

ス「俺が説明するよりも、これを見せたほうが早いだろうな。」

そう言って、私にクリスタルを渡した。

ス「そのクリスタルには、あの頃の俺の記憶が入っている。
  まともな人間がそれを見て、正気を保てるとは思えん。
  それでも尚、あの事件の真相を知りたければ、そのクリスタルを頭に近づけろ。」

私は少し躊躇した後、クリスタルを頭に近づけた。
クリスタルを近づけた瞬間、意識が吸い込まれるような感覚になった。
そしてそのまま、意識を失った。



意識が戻ったと思って目を開けると、先ほどとは違う景色になっていた。
…此処は何処だろう?
部屋を見回してもベッドが一つあるだけで、窓等は無かった。
そして、ベッドに子どもが一人腰掛けていた。

私が思案していると、研究員の様な人達が入ってきた。
私は慌てて隠れようとしたが、研究員達に私は見えていないようだった。
そう言えば、これはスモーキーさんの記憶なんだよね。
…という事は、この子どもがスモーキーさん?!
スモーキーさんは研究員達に逆らうことなく、部屋を出て行った。
後を追ってみると、何かの研究所の様な所に着いた。
其処には何台ものベッドが並んでいた。
その中の一つに、スモーキーさんは拘束されていた。
研究員達が薬品を他のベッドに拘束されている子どもに投与した。
すると、その子どもは急に何かを叫びだしたかと思うと、静かになった。

「…チッ、死んだか。」

「うーん…間違えたか?」

「まあいい、モルモットはまだまだ居る。」

酷い…、人間とは思えない。
しかし、これが事件が起きた時の記憶なら、この中に私のお父さんが…。
研究員の一人が、スモーキーさんに薬を投与した。
そして、先ほど同様にスモーキーさんも苦しみだした。
しかし、先ほどとは違い、じたばたと暴れ続けた。
すると、腕を拘束していた鎖が砕けた。
鎖が砕けた瞬間、目の前に居た研究員が悲鳴をあげた。
よく見ると、体には獣にでも引っ掻かれた様な傷が出来ていた。

「だ、誰かこいつをとりおさえ」

傷ついた研究員が助けを呼ぼうとしたが、言い終わる前に再度引っ掻かれた。
最初に犠牲になった研究員……、まさかこの人が…お父さん?!
私が驚いている間に、研究室に居た研究員達は全員切り刻まれていた。
そして、スモーキーさんがお父さんに近づいたかと思うと、お父さんの懐に手を入れた。
すると、手帳の様な物が出てきた。
その手帳を手にしたまま、スモーキーさんは部屋を出て行った。
これが…、あの事件の真相。
これが、私のお父さん……。
こんなの…こんなのお父さんじゃない!
私が頭を抱えていると、また意識が吸い込まれるような感覚になった。



意識が戻ると、どうやらスモーキーさんの記憶から戻ったようだった。
そしてそれを確認すると同時に、先ほどの記憶が蘇えった。
お腹の中から何かがこみ上げて来るのを感じた。
私は部屋にあるトイレに駆け込んだ。

ス「その行動はあの時の俺に対してか?それとも、あいつらに対してか?」

トイレから戻った私に対し、スモーキーさんが問いかけてきた。

沙「……。」

私が黙って俯いていると、スモーキーさんが近づいてきた。
そして、私の手にあったクリスタルを取った。

ス「これが、あの事件の真相だ。
  お前の父親がどんな人間だったか、俺達がどんな環境に居たのかも分かったか?」

私は無言で頷いた。
あれが…、あんな酷い人が私のお父さんだなんて……。
私はスモーキーさんの部屋から逃げ出した。
自分の部屋に戻ると、自分のベッドに倒れこんだ。
そしてそのまま、泣き出した。
その私を見て、ベルクさんが優しく背中を摩ってくれた。

べ「沙羅さんが泣き崩れる様な話だったとは…。
  やはり、止めるべきでしたね。」

泣き続ける私に、ベルクさんは優しく話しかけ続けてくれた。
一頻り無くと、気持ちが落ち着いたのか、眠気に襲われた。
そして、そのまま眠りについてしまった。



気がつくと私は、自分の部屋に居た。
しかし何処か様子がおかしい。
…これは、私が小さい頃の部屋だ。
そうか、ここは夢の中なんだね。
夢の中と分かると同時に、下の方が賑やかになった。
降りていってみると、小さい頃の私と、お母さんが居た。

母「さあ、夕食にしようか沙羅。」

幼沙「うん!」

二人で食卓を囲む。
やはりお父さんは居ない。

幼沙「ねえお母さん、どうしてお父さんは帰ってこないの?」

幼い私の質問に、お母さんは困ったようだ。
お母さんは、お父さんがどうゆう仕事をしていたのか知っていたに違いない。
しかし、それを私に話さない方が良いと思ったのだろう。

母「仕事が急がしいみたいね。でも、沙羅やお母さんの為に働いてるのよ。
  だから、お父さんの悪口を言っちゃ駄目よ?」

幼沙「うん。お父さん、早く帰ってくると良いね。」

お父さん…、あんなのお父さんじゃない!
あんなお父さんなら、スモーキーさん達に恨まれても仕方が無い……。
その時、私を呼ぶ声が聞こえた。

?「沙…さ…、沙羅……。」

誰だろう?


べ「沙羅さん!」

沙「はい?!」

べ「大丈夫ですか?ずいぶんと魘されていたようですが?」

どうやら私が魘されていたので起こしてくれたようだった。

沙「大丈夫です。ただ、小さい頃の夢を見てただけです。」

べ「小さい頃の夢で魘されるなんて…、何かあったのですか?」

沙「そうじゃないんです。」

べ「…そうですか。」

私の魘されていた理由を感じ取ったのか、それ以上詮索してこなかった。
外を見ると、朝日が昇り始めていた。

沙「…どうしてあの時、助けてくれたんだろう?」

私が呟いた言葉で全てを理解したのか、ベルクさんが思案し始めた。

べ「教官の話が、大体分かった様な気がします。
  しかし、教官は沙羅さんを何度となく助けて居ます。
  だから、沙羅さんに対して何か意識している事はあきらかでしょう。」

沙「例えば…、私を自分の手で殺すとか?」

ベルクさんは思案したあと、首を横に振った。

べ「そうだとするなら、3年前に沙羅さんを助けた時点でしているかと?」

確かにそうだ。
何故スモーキーさんは私を助けてくれるのだろう?
二人で暫く考えてみたが、答えは出なかった。
不意に外から素振りの音が聞こえた。
…こんな時間に訓練をする人。

べ「教官が早朝訓練を始めましたね。」

ベルクさん同様、私もスモーキーさん以外考えられなかった。
窓辺から外を見ると、スモーキーさんが素振りをしていた。

べ「危険かもしれませんが、教官に聞いてみては如何ですか?」

危険では無いだろうけど、素直に話してくれるとは思えなかった。

沙「多分、話してはくれないでしょう。」

べ「いえ、昨日は私や隊長さん達が居たからでしょう。
  沙羅さんと教官だけなら、きっと話してくれるはずです。」

沙「そうかな…。」

私は部屋を出て、スモーキーさんの所へ向かった。
宿舎を出て、スモーキーさんが素振りをしている所に着いた。
私が来たのを確認したのか、スモーキーさんが素振りを止めた。

ス「何か用か?」

沙「あ…。」

スモーキーさんは、私の方に向いた。
そして、口篭る私の言いたい事が分かったのか、溜息をついた。

ス「何故俺がお前を助けるのかって言いたいんだろ?」

沙「…はい。」

ス「それは」

「タマライア水源にネツァワル軍が侵攻中!カセドリア国軍兵士は至急集結せよッ!!」

伝令兵の声によって、スモーキーさんの言葉が聞こえなかった。

ス「…ったく、しかたねえな。」

スモーキーさんはそのまま、戦場に向かおうとした。

沙「スモーキーさん!」

ス「悪いな沙羅、この続きはまた今度だ。」

そう言って、スモーキーさんはタマライア水源に向かっていった。



少し経ってから、私も後を追った。
さっきの言葉の続きを聞く為に…。


SS書かずに絵を描いた(まて byスモーキー

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最終更新:2008年11月30日 21:04