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~首都アズルウッド~


ラウ君から裁判の結果を聞き、私は首都城門へと急いだ。
シュリッツ城の破壊については、証拠不十分という事でお咎めは無しだったらしい。
しかし、スモーキーさんは自分から首都を出て行くことにしたらしい。
城門を出ると、遠くにスモーキーさんの姿が見えた。
急いでスモーキーさんの所に向かった。

や「待ちなさい!」

スモーキーさんは振り返ると、いきなり頭を下げてきた。

ス「すまないな隊長、やっぱり俺は迷惑をかける男だったよ。」

や「意味がよく分かりません。納得のいく説明を要求します。」

私の追求に対し、スモーキーさんが苦笑いした。

ス「シュリッツ城の事件は、俺が起こしたんだ。
  理由は、俺達の研究をしてたからだ。
  そして何故首都を出るのかは、これ以上隊長達に迷惑を掛けられないからだ。」

や「…事件を起こした事は分かりました。
  しかし私達は、これまで幾度となく苦難を共にしてきた仲間のはずです!
  それに、前回首都を追放された時だって一緒だったじゃないですか?!」

私の言葉を聞くと、スモーキーさんは目線を反らした。

ス「…悪いな隊長。隊長の夢見てた平和な世界ってのを、一緒に目指したかったぜ。」

スモーキーさんの言葉が終わると同時に、後頭部に衝撃を感じた。

や「…ッ!」

意識がだんだんと遠のいていく。
最後に見たのは、スモーキーさんの涙だった。








第13話 繰り返す悪夢 後編




泣いている少女に幾つか質問をした。
自分の名前は覚えていないらしい。
そして、少女に家族は居ないらしい。
私は少女を連れてシュリッツ城に戻った。
事情を説明すると、ベルクさんは黙って頷いた。
ベルクさんが昔着ていた服を少女に着せた。
耳がばれないように、帽子も被らせた。

沙「私はこの子を連れて首都に戻ります。」

べ「…そうですか。」

そう言って、クリスタルを扉に当てた。
扉を開けると、そこは私達の部屋だった。

べ「私はこの事件の後始末をします。
  知らぬ事とはいえ、少女に酷い事をした事を心からお詫びします。」

少女「……私はこれからどうなるの?」

少女が不安そうな顔で私を見る。
私は自分の家に少女を住ませようと思った。

沙「私の家に来ない?」

少女は少し躊躇したようだが、私の目を見て頷いた。
扉を通り、部屋に戻った。



宿舎を出て、自宅に向かった。
自宅近くに来た時、お母さんの了承を得ていなかった事に気付いた。
大丈夫だとは思うけど…。
家に入ると、すぐにお母さんが出てきた。

母「お帰りなさい、沙羅。」

お母さんは少女と私を交互に見て、不思議そうに話した。

母「その子はどうしたの?」

沙「お母さん、この子を家に住まわせて良いかな?!」

私の言葉に、お母さんは驚いたようだ。
しかし少し考えた後、笑った。

母「何か事情があるみたいね。…良いわよ。」

少女「よ、よろしくお願いします!」

母「おや、元気が良いわね。沙羅の小さい頃にそっくりね。」

少女を空いている部屋へと案内した。

沙「ここが、これから貴方が住む部屋よ。」

部屋を見ると、少女は喜んでくれたようだ。
少女はベッドに寝転がったり、窓の外の景色を見たりしていた。

沙「私はちょっとお母さんの所に行ってくるね。
  少し待ってて。」

少女「はい!」

私は少女を残し、お母さんの所へ行った。
しかし私は、どう説明したら良いか悩んだ。
そんな私をお母さんは見ると、無言で頷いた。

母「無理に言わなくても良いわ。」

その言葉を聞き、私も無言で頷いた。

沙「お母さん、ちょっと宿舎まで行って来るね。」

少女を匿う為には、私がいつも傍に居る必要がある。
その為には、宿舎を出ないとね。



宿舎に着き、部屋へ向かった。
部屋に着くと、ベルクさんが荷造りをしていた。

べ「沙羅さん、私はここを出て行くことにしました。」

沙「…私もそう思っていたところです。」

べ「……そうですか。」

二人で荷造りをした。
先にベルクさんの荷造りが終わった。

べ「今回の事件は、元を糺せば私の父がアーシェスに研究を命じたのが発端でした。
  よって父であるゲイル王を処罰するよう、聖女王に要望しました。」

沙「それじゃ、シュリッツ国を治めるのは?」

べ「王が処罰されるのです。その罪が私にまで及ぶかも知れません。
  その時は…、シュリッツ国が消滅するだけです。」

沙「その時は、ベルクさんの助命を嘆願するだけです!」

私の言葉を聞くと、少しだけベルクさんが笑った。
そして、部屋の扉にクリスタルを取り付けた。

沙「ベル!」

扉を開けて出て行こうとするベルクさんを呼び止めた。
ベルと呼ぶのは、最初の自己紹介の時に言われた時から一度も呼んだ事は無かった。

べ「やっと…呼んでくれましたね。」

ベルクさんは振り返ると、また笑った。

べ「離れ離れになりますが、私と沙羅さんの心は…何時までも一緒です!」

そう言って、ベルクさんは部屋を出て行った。
目には涙を浮かべていた様に見えた。
私も急いで荷造りを終えた。
部屋を出ると、理奈さんに呼び止められた。

理「スモーキーさんが出て行く際に、これを沙羅さんに渡すようにと。」

そう言って、鍵を渡してきた。
どうやらスモーキーさんの部屋の鍵の様だ。
私はスモーキーさんの部屋に向かった。



スモーキーさんの部屋の前に着くと、張文遠さんが居た。

張「御主が持っているのは、この部屋の鍵か?」

沙「そうですけど?」

張「そうか。いや、何でもない。」

そう言って、張文遠さんは何処かに行ってしまった。
私は扉の鍵穴に鍵を通した。
鍵を回すと、鍵が開く音がした。
扉を開け、中に入った。
部屋の中は、綺麗に整理整頓されていた。
私は机の上にクリスタルが置いてあるのに気付いた。
私が近づくと、クリスタルが眩く輝きだした。

光が収まると、目の前にスモーキーさんが立っていた。

ス「よう。お前がこれを見てるって事は、俺はもう首都から居なくなってるって事だな。」

目の前に居るのに、何故首都から居なくなってる事になってるんだろう?
私はスモーキーさんに近づこうとした時、躓いてしまった。
スモーキーさんに向かって躓いたが、私の体はスモーキーさんを突き抜けてしまった。

沙「え?」

ス「ああ、言い忘れたがこの映像はクリスタルが生み出した幻だ。
  触れたり、話しかけたりしても俺には聞こえないから注意しろ。」

なるほど。
私が近づいたら、クリスタルが発動するようにセットされてたんだね。

ス「お前にはまだまだ教えたい事や、話したい事がたくさんあった。
  だがお前があの力に目覚めたのなら、もう俺が鍛える必要は無いか。」

あの力?
スモーキーさんと戦った時に出た力の事だと思った。

ス「いずれは俺は、世界に闇を齎す事になるだろう。
  だがお前が居る限り、世界が完全に闇に覆われる事は無いと信じている。
  これをお前に返そう。」

そう言って、机に置いてある手帳を指差した。

沙「これは…。」

スモーキーさんがお父さんから盗った手帳にそっくりだった。
手帳を開いてみると、一枚の写真が入っていた。
その写真には、幼い私とお母さんが写っていた。
…なるほどね。
これを見てスモーキーさんは、私のお父さんを殺したと確認したんだね。
しかしそんな事よりも、首都にはもうスモーキーさんが居ないんだね。
軍事裁判で、前回同様に首都追放という判決が出たのかあるいは…。
私は手帳を抱えたまま、その場に泣き崩れてしまった。

ス「泣くなッ!」

…え?
私が振り返ると、まだクリスタルの映像は続いていたようだった。

ス「泣いてなかったら今のは笑えるな。
  だがお前の事だから、きっと泣いてるんだろうな。
  最後に、もしあの力が何なのか知りたければユグドラの所へ行け。
  お前が本当に覚醒すれば、俺を越える事も可能だ。
  次に会うときに交わすのは、干戈かもしくは乾杯か…。
  願わくば後者である事を願うぜ。」

言葉が終わると同時に、スモーキーさんの姿が消えた。
そして、クリスタルも跡形もなく消えていた。
再び私はその場に泣き崩れた。

沙「甘ちゃんでいい、泣き虫でいいから…。
  だから戻ってきてよ……スモーキーさん。」



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最終更新:2009年01月04日 23:34