第11話 光と闇の狭間 前編
張文遠と名乗った兵士が斬りかかってきた。
鈍重そうな見かけとは違い、意外と俊敏な動きだった。
しかしそれは、他の奴らが見たらの話だ。
俺達から見れば、まるでスローモーションの様にしか見えなかった。
迫ってくるヴァルディッシュの柄を掴むと、そのまま押し返した。
軽く押したつもりだったが、かなりの距離を飛んでいった。
そしてそのまま、山の岩壁にぶつかった。
岩壁にぶつかる事によって、ようやく止まったという感じだ。
張文遠は岩壁にぶつかったまま頭を垂れている。
俺は手に残っているヴァルディッシュを奴の頭の横に向かって投げた。
ヴァルディッシュは狙い違わず、奴の顔のすぐ横に突き刺さった。
これだけ力の差を見せれば、どんな馬鹿でも逃げていくだろう。
俺はそう思い、奴に背を向けた。
しかし少し歩いた所で、信じられない言葉を耳にした。
張「…待て。」
振り返ると、奴はヴァルディッシュを持って立っていた。
……こいつは馬鹿か、それとも死にたがりなのか?
ヒ「あれだけ力の差を見せ付けたのに、何故お前は立ち向かってくる?
…何故だ?」
張「…俺は、スモーと約束した。
スモーが悪の道に走ろうとしたなら、俺がスモーを止めると。
スモーは魔物を統べる者、ブルーヘクサとなって世界に恐怖と闇を齎している。
俺はスモーとの約束を果たす為に、このまま退く訳にはいかんのだ!」
スモー、スモーと言うから誰かと思ったが、ブルーヘクサの名が出てようやく誰の事かわかった。
だがこの計画を止めさせるわけには行かない。
この計画に込めた俺達の思いの為にも。
ヒ「計画を止めさせるわけには行かない。
いや、例えお前がブルーの所に行っても止められない。
あいつはお前を泣きながら斬る事になるだろう。
それによってブルーに迷いが生じてもらっちゃ困る。
だからお前は、今ここで俺が倒す!」
俺は脚に力を溜め、張文遠目掛けて思い切り突進した。
張文遠も俺に対しストライクスマッシュを仕掛けてきた。
俺と張文遠は空中でぶつかった。
そして俺の勢いの方が勝っていたらしく、張文遠は弾かれた。
張「まだまだッ!」
しかし張文遠は、着地と同時に再度俺にストライクスマッシュを仕掛けてきた。
ヒ「弾けろ、インテンスファイッ!」
俺は両手に気を集中させ、それを張文遠に向けて放った。
張文遠は俺に触れる事無く弾き返され、地面に仰向けに倒れた。
再度立ち上がって俺に攻撃を仕掛けようとするが、足元がふらついている。
さすがにダメージが蓄積している様だ。
ヒ「おいおい、俺はまだ半分も力をだしてないぞ?」
張「……ッ!」
俺の言葉が気に入らないのか、張文遠は俺を睨みつけて来た。
張「武人の勝負に手加減は無用。全力で来いッ!」
……よっぽど死にたいらしいな。
ヒ「…良いだろう。御望み通り本気を出してやろう。」
言い終わると同時に、俺は自分の気を全て右手に集中させた。
張文遠もヴァルディッシュを構えた。
しかしその構えは、今までの構えとはまったく違っていた。
あれはブルーの…。
張「のーくんでぃ…俺に力を。」
俺は右手に気を集中させたまま、張文遠に向かっていった。
張文遠はあの構えのまま、微動だにしなかった。
俺の体がヴァルディッシュの射程圏内に入った瞬間、張文遠が動いた。
それと同時に、俺も気を張文遠に向けて放った。
張「スモーキー槍術奥義・破槍ッ!」
ヒ「我気の前に平伏せ、プラナスマッシュッ!」
俺の気と張文遠のヴァルディッシュがぶつかった。
しかしぶつかると同時に、張文遠のヴァルディッシュは粉々に砕けてしまった。
そしてそのまま俺の気が張文遠を直撃した。
手応えは十分。
張文遠の体の中に俺の気が入り込んでいく。
ヒ「それなりに楽しかったぜ。安らかに……眠れ。」
言い終わると同時に、俺の気が張文遠の体の中で爆発した。
張「武に生きた我人生に一片の悔い無しッ!」
それだけ言うと、張文遠は力無くその場に倒れた。
アト「やっぱり我慢できずに殺しちゃったのかしら?」
振り返ると、アトラクナクアが立っていた。
相変わらず気配を掴みにくい奴だ。
ヒ「計画の邪魔をしなければこうなる事も無かった。
全てはこいつが招いた事だ。」
アト「…そうね。もしもここで倒さなかったら、ブルーは計画を止めていたかもね。」
アトラクナクアは俺を見て話していない。
不審に思い振り向くと、張文遠が立っていた。
そんな…馬鹿な?!
アト「安心しなさい。…もう死んでるわ。」
近づいてみると、アトラクナクアの言うとおりだった。
張文遠は立ったまま息絶えていた。
ヒ「死して尚、立ち上がってくるか…。
やはりここで倒しておいて正解だったな。
もしもブルーだったら、計画の中止を言いかねない状況だ。」
ブ「たかが戦友一人の死で、この俺が計画を辞める訳がないだろう。」
何時の間にか、ブルーは俺の横に立っていた。
ヒ「本当にそうか?」
ブ「当たり前だ。それにこいつも理解していただろう。
今の俺を止められるのは…、あいつしか居ないってな。」
本拠地に戻ろうとしたが、ブルーは動かなかった。
俺がブルーを呼ぼうとするのを、アトラクナクアが制止した。
ああは言っていたが、ブルーも俺達も一人の人間に変わりはない。
俺はアトラクナクアと二人で本拠地へ戻っていった。
後編は年末までかかるかも byスモーキー
最終更新:2009年11月17日 21:48