エピローグ



ブルーヘクサの乱と言われたあの戦いから2年が経った。
あの後、佐紀は奇跡的に一命を取り留めた。
驚異的とも言える程の自然治癒能力で、数日後には立って歩けるほどに回復した。
結局、スモーキーさんを見つける事はできなかった。
落下地点と思われる場所には、夥しい血痕があった。
そしてそこから移動していったと思われる血痕が残っていた。
しかし途中で血痕は消えており、その後の足取りは不明だった。
終戦を機に、5カ国は不可侵条約を締結した。
これにより、永きに亘り続いた戦乱の世は終わりを告げた。
今ではどの国の人だろうと、5カ国を自由に行き来できるようになっている。
5カ国間全ての問題が無くなった訳ではないが、昔に比べれば無いに等しいと思えた。

~カセドリア連合王国首都・アズルウッド~

兵士育成機関のグラウンドに、金属同士がぶつかる音が響いている。
グラウンドでは、二人の兵士が戦っていた。
その二人とは…。

沙「まだ30分位しか経ってないのに、動きが遅くなってきてるわね。
  もう疲れたのかしら?」

佐「まだまだッ!」

後退して佐紀と距離をとろうとした。
それを見て、佐紀が突進してきた。

佐「ヤーッ!」

沙「甘い!」

佐紀の隙をついて、ルグナザドを喉元に突きつけた。
佐紀はそれを確認すると、その場に膝をついた

佐「今日こそ勝てると思ったのに!」

沙「まだまだ佐紀には負けないわよ。」

ルグナザドを鞘に納めると、どこからか拍手が鳴った。
佐紀との訓練に夢中で、人が居る事に気づかなかった様だ。
音の鳴る方を見ると、拍手をしているのはベルだった。

ベ「久しぶりですね。唯一無二の親友にして、世界を救った英雄沙羅。」

沙「久しぶりね、会えて嬉しいわベル。
  でも、私は世界を救って無いわ。」

何故私が世界を救った英雄と言われるのかには訳がある。
あの戦いの後、ブルーヘクサを倒したのは私だという噂が世界に広まったのだ。
私自身は何もしていないのに……。

沙「ブルーヘクサを倒して、本当に良かったのかな…。」

そう言うと、私は俯いた。
すると、ベルが近づいてきた。
そして、私の手を取って言った。

べ「良かったと思います!」

沙「…ベル。」

べ「ブルーヘクサを倒したのは、他の誰でもない貴女自身なのよ。
  貴女がそんなでは、あの戦いで死んでいった兵士達に失礼ですッ!」

佐「そうだよ。お姉ちゃんは世界に、平和という名の光を齎したんだよ!」

沙「……うん。」

二人の言葉に自然と涙がこぼれた。

後日、私はフレイヤ王に呼ばれたので、シルヴァン城へと向かった。
謁見の間に通されると、玉座にフレイヤ王が座っていた。

フ「突然呼び出したりして、失礼だったかしら?」

沙「いえ、問題ありません。それにしても、何か用事でしょうか?」

フ「貴女に見せたいものがあるのよ。」

フレイヤ王に案内され、宝物庫らしき場所に着いた。
中に入ると、宝石や綺麗なドレス等が飾ってあった。
しかし私が驚いたのは、ある物が飾ってあった事だ。
それは宝石やドレスが飾ってある部屋にはそぐわない物だった。

沙「これは……フェンリル?!」

そう、スモーキーさんが使っていた武器だった。

フ「驚いた?あの戦いの時に見つけたものよ。」

あの戦いのときに見つけた?
しかしこれは、スモーキーさんが持ったまま落ちたはず…。
私はフレイヤ王に近づき、その目を見た。

沙「これが発見された場所には、ブルーヘクサが居ませんでしたか?!」

もしかしたら、という淡い思いが頭を過ぎった。
しかしフレイヤ王は首を横に振った。

フ「ブルーヘクサは貴女が倒したのよ?
  もうこの世にはいないわ。」

沙「……そうですか。」

私はフレイヤ王の雰囲気に、少し違和感を感じた。
しかし、それが何なのかは解らなかった。

沙「それにしても、何処と無く変わられましたね。」

フ「そうかしら?」

そう言いつつ、下腹辺りを摩っている。

沙「あの、失礼かもしれませんが、妊娠なされているのですか?」

私の言葉に、フレイヤ王は笑みを浮かべた。

フ「そうよ。」

沙「お相手は誰なんですか!?
  何処かの国の貴族か王族ですか?」

フレイヤ王は世界でも屈指の美女だ。
しかも一国の王ともなると、相手は相当な貴族かそれとも…。

フ「貴族でも王族でもないわ。」

沙「それじゃ、庶民と結婚されるんですか!?」

フ「そうよ。
  昔ね、約束したのよ。大人になったら結婚しようって。
  もう忘れてるものと思ったけど、彼も覚えてくれてたみたいなの。」

フレイヤ王の顔を見ると、その人をとても愛しているのが解った。
そして何かを思い出したのか、はっとしたような顔をした。

フ「そうそう、彼から伝言があったわ。
  今の貴女にはぴったりかもしれないわね。」

今の私にぴったり?

沙「何でしょうか?」

フ「少し乱暴な言葉だけど、最後まで聞いてね。
  お前は世界に光を齎したんだから、胸を張って前を見ろ。
  それができないならずっと後悔すればいい、この甘ちゃんが。
  私も、貴女は世界に平和を齎したんだから、前を向いていて欲しいわ。」

……甘ちゃん。
その言葉だけで、彼というのが誰なのか解った。

沙「……解りました。もう自分がしたことに後悔なんてしません。」




数日後、私は佐紀を連れて世界を見て回り始めた。
平和になった世界を、この目で見てみたいと思ったからだ。

沙「行くよ、佐紀!」

佐「うん!」


全ての人々に、クリスタルの加護のあらんことを・・・ 。



カセドリア連合王国軍アマテラス~精錬の書~ 完



長文駄文なSSでしたが、無事に終わりました。byスモーキー

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最終更新:2010年11月26日 16:51