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部品納入例 - (2010/09/20 (月) 21:43:08) の最新版との変更点

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#expand(700){{{ #image(http://eastnw.x0.to/bbs2/img/9868.jpg) **02:部品納入例 ---- #contents(fromhere=true) ---- **部品産業コラボレーション ***フィーブル藩国 様 ―――講習室  室内ではフィーブル藩国謹製のコンピューターが、ブーンとファンの音を立てて鎮座している。 今日はフィーブル藩国から講師を招いてのCAD/CAM講座が開かれる日であり、 多くの若者が受講をしていた。  手書きの製図でも十分じゃないかという話もあるが、 国外の外注が増える中、藩国間の距離を考えるとネットワーク上で設計データを受け取って製作する方が効率的であり、将来的にも藩国での製作も考えると十分なリターンが見込める事もあり、 コンピューターの使い方を一からちゃんと教育してもらおう、という事になったのである。 「それでは講義を始めます」 銀髪の教師役のフィーブル藩国人が言うと、 背筋を伸ばしたリワマヒ国民が 「Yes Sir! 教官殿!」 と答える。 あいつ、学生時代の頃の癖が抜けないなぁ・・・ 等と周りからは思われていた。 /*/ ―――3日後。工場内NC旋盤前 あれから毎日練習の日々が続いた。まだまだ使いなれないが、 何とか講義は進んでいる。 「ということで、先ほど入力したデータを使って早速製作してみましょう」 あれから彼らはなれないコンピューター、なれないプログラムに四苦八苦しながら、 やっと一つのデータを作っていた。 機械に板状の鋼材をセットし、削り始める。 時間をおいて完成したのは、小型耕耘機用のブレードで、 リワマヒでは機械化農業はしていなかったが、 発注がきているフィーブル藩国に、講師に来てくれた彼らに見せるために、 もっと簡単なモノにしたらどうですか、というのを押し切って選ばれていたのだ。 大地を耕すその輝く歯は、誇らしげにすら見えたのだった。 #image(http://eastnw.x0.to/bbs2/img/9868.jpg) ***海法よけ藩国 様 ―――リワマヒ国内鉄工所  あちらこちらで溶接の火が上がる中、場内クレーンにつり上げてられて加工済みの鋼材が運ばれていく。 ここはリワマヒ国営鉄工所。 リワマヒ国が受注を受けた国の中で”大物”発注をした海法よけ藩国からのモノを扱っていた。 国が大きいという意味ではなく、発注した部品のサイズが、スケールが大きいのである。  それはもっともな事で、巨大ドックで建造するような大型船に使う鋼材やメガフロート用の部品ともなれば、 小さな高力ボルトから20mを越える鋼材まで、蟻のサイズから象までである。 特に鋼材は規格を提案した国としても品質に不備がある訳にもいかず、 もっとも緊張したラインの一つであるのは確かだった。 彼もそんなラインの担当ではあった。 手に小さな超音波探査機を当てて、手元のモニターに出る波形で溶接部の不備が無いことを確認しつつ、 顔を上げると場内で加工されている鋼材達を眺める 「こいつらは、組み上がったらドコへいくんだろうねぇ」 海は、世界を渡れるらしいなどとも聞く。 願わくば、幸せの橋渡しに就いて欲しいなぁ・・・と思いつつ、 検査の終わった鋼材が運ばれて行くのを見ていた。 ―――リワマヒ国国営工場検品課  海法よけ藩から依頼された機械類を目の前に、検品を行っているチームがある。  「そういえば機械は口金さえ合えば使えるさって話があってなー?」 検品課の中では少し年上の作業員が手を動かしながら口を開く。  「まぁ、圧力や出力によって厳密に決まってるものなので、出来るのはわかってますが」 彼の隣にいる、年若い工員が答える。  「だからといって、適当にしていいわけないでしょう!」 まじめそうな眼鏡君が声を荒げる。  「いやー、でも仕様にないし」 最初の工員。  「まてまて、構造物関連の商品で手を抜いたのばれると、ラメ摂政が怒濤の勢いで殴りこみに来ますよ?」 眼鏡がやり返す。  「あの人、建設系で手抜くと五月蠅いからなぁ」 若いのが、遠い目をしていた。  「一週間連続で朝まで呑みながら愚痴られるのはちょっとな・・・」 覚えがあるのか、言い出しっぺがうんざりとした感想を述べる。  「まじめにやりますか」 同意するかのようにうなずくと、眼鏡を直して提案した。  「「ああ」」 #image(http://eastnw.x0.to/bbs2/img/9847.jpg) ***レンジャー連邦 様 ―――リワマヒ国国営工場付属倉庫  「きゃりっ子さん規格のトランスポンダーってドコに請求出せば良かったっけ?」  「ああ、それは―――」  倉庫付きの事務室で倉庫の在庫について確認をしている工員達。 リワマヒ国はこれまで一度も切らさずにきゃりっじを含む航空機を生産し続けているため、 倉庫の中に新造用のパーツの在庫があるのだが、 レンジャー連邦の航空産業育成に合わせた新造機の為、共用出来る部品の先行放出の準備を進めていた。 軍事機密に当たらない範囲で工廠にもう何年も積み上げ続けてる部品を引き取り、 整理売却の準備をしているのである。 特に、共和国防空網との連動があるため、位置情報の発信器などは実績のあるパーツとして、 積極的な売り込みも行っていた。  軍用機としては安い部類のきゃりっじも、市場で作れば5億はする機体である。 共通部品として流通量が確保出来るならばさらなるローコスト化も狙える、 そんなもくろみもあった。  「いっそ、機体ごとレンタルした方がよかったんじゃないの?」  「まー、編成と整備の手間があるから遠慮したらしいよ」  「奥ゆかしいねぇ。悪い意味で」  「全くね」 出涸らしの安いお茶をすすりながら、手元の出荷伝票に注文の有った部品を記入していく。 ―――リワマヒ国国営工場新商品開発部レンジャー連邦対応係(自称)  「くそぉぉぉぉ」 野郎共の怒号がこだまする。  「こんな部品精度じゃ使ってもらえねぇぇぇ」 手に持っていたリベットらしき物体を「没箱」と書いてある段ボールに投げ入れる。  「何を馬鹿なことをやってんだ?」 上司らしき男性があきれ顔で訪ねる。  「レンジャーと言えばハート、ということでハート型のリベットと工具を作ってたらしいんですが」  「形の精度が出なかった、と」 捨てられたリベットを手に取ると、微妙にゆがんでいる。  「おまけに、方向揃えて打てないとダサい、とダメ出しもありまして」  「重量も増えるだろうし、良いとこないんじゃ?」  「ですね。まぁ、ハート形のパーツは笑いは取れるでしょうからいいんじゃないですか?」 冷めた顔で作業に戻る工員を見送ると、彼は大声でわめいてる連中に宣告をした。  「お前ら、無駄にした分は給料から天引するからな」  「そりゃねぇぇぇぇぇぇよぉぉぉぉ」 #image(http://eastnw.x0.to/bbs2/img/9852.jpg) ***世界忍者国 様 ―――リワマヒ国国営工場前広場、始業前。 「ぉいっち、にぃ、さん、しっ!」 「ごぉ、ろっく、しち、はち!」 緑色の制服に身を包んだ国民達が揃って運動をしている。 朝の清涼な空気の中、綿と化繊で出来た吸汗製の良い生地が さらっと気持ちがいい。 子供達が夏の朝に良くやらされる、ラジオ体操である。 親達もよくつきそいで一緒にやるのだが、 なんで国営工場で始業前にやっているかといえば、 規則だからである。 藩王曰く。 「体操をすることで、血の巡りを良くし頭をすっきり目覚めさせるんですよ」 ということで、国営工場では始業前にやることになっていた。 『みなさんおはようございます』 「おはようございます!」 #image(http://eastnw.x0.to/bbs2/img/9850.jpg) ***玄霧藩国 様 ―――工場。  今日は朝から鉄のパイプを一本一本キレイに曲げ、切断し、溶接。 つなぎ目や切り口をキレイにヤスリがけをし、白い抗菌塗装をする。 厳しい目で塗り残しや、バリ、とがった部分が無いことを確認し、 出来ていないものはやり直しを指示し、キャスターをとりつける。  丈夫な化学繊維のカバーのついたスプリングの効いたマットレスを敷く。 ああ、ここに天日で干した良い匂いのするシーツがあれば、 この緑の制服を脱いですぐに倒れ込んでしまいたいのに。 これから売り込みに行くための商品のサンプルを作りながら、 どんな奴が使うんだろうなぁと思っていた。 ―――会議室 着慣れないナニワ製のスーツを着た若い新人の営業マンが、 先輩を相手に練習をしている。 ちょっと笑顔が引きつっている気もする。 「こちらの介護ベッドなどはいかがでしょう? 抗菌塗装を施した丈夫なキャスター付きのベッドになります。」 「今回はさらに高齢者介護などを行いやすい、電動モーターによる高さ調整機能、 上半身を起こすリクライニング機能をお付けして、この価格。」 『笑顔が硬いし、他人行儀だよなぁ』なんて、先輩そりゃ酷いですよ。と心の中でいいつつも、練習の最中。 集中集中。 「大量購入をご検討いただけるようでしたらさらに値引きも可能です」 「もちろん一個からの小ロットからの製造でもお任せください。」 #image(http://eastnw.x0.to/bbs2/img/9868.jpg) ***ナニワアームズ商藩国 様 ―――リワマヒ国国営工場鉄工所  海法よけ藩国からの大規模発注が増える中、 リワマヒ国の鉄工所での取り扱いシェアが延びている藩国がある。 ナニワアームズ商藩国から出る金属素材各種である。 共和国の中で唯一の鉱山資源をもつ藩国で、 リワマヒ国の安定志向を考えると少々割高でも、 品質、産量の読めるナニワ産の鉱石は好まれたのである。 「というわけで、ナニワアームズの鉱山では怪獣達が掘っていてな」 工場見学に来た小学生低年齢達を前に、あり得ない嘘をつく。 「送られてくるインゴットは怪獣の吹く火で精錬してるんだぜ」 『んなわけねーよ』という、大人びた子の反論と、 『すごい!』ときらきらと輝く目をした子供の目、 どっちもどっちで、将来有望だな、なんて思う。 「ナニワ産の素材は、そんなわけで大変良いものでな」 子供の頭をなでながら考える。 「リワマヒの職人のおやっさん達ご愛用なわけさ」 まぁ、これは嘘じゃない。 子供達を送りながら考える。 ちゃんと学校にいって、俺達があの国の材料を愛する理由を 勉強してきてくれたらいいなぁ・・・と 子供達には夢を。嘘つきにもっともらしい仕事だな、 と思いつつ、今日の仕事は終わりにしよう、 と更衣室に帰るのだった ―――朝。とある若者の自宅。  今日から、営業課へ配属だ。工場で支給される緑色の制服でなく、 自前の、ちょっと高かったがばきっとノリの効いたシャツに、 ナニワアームズの、なんていったっけ・・・の、店で買ったスーツ。 正直、普段上半身裸で過ごしている姿を考えると・・・ 似あわねぇ・・・と姿見に映る自分を見て思わなくもない。 「でも、他の藩国じゃそうも言えないしな」 声に出して自分を納得させる。 よし、髪に寝癖もついてない。 それじゃ行こうか! #image(http://eastnw.x0.to/bbs2/img/9848.jpg) ***羅幻王国 様 ―――リワマヒ国国営工場 塗装ライン  そろいの制服に身を包み、いくつもの塗料の染みついたエプロンに、 顔には防塵・防毒マスク、目にはプラスチックで出来たゴーグル。 手にはスプレーガンと、短い配管らしき部品を手にもった職工たちが、 丁寧に何度も塗装をしている。  乾燥が終わり、検品を受けた部品が箱詰めにされ陸送用コンテナにて、 工場から出されていく。  発送先は「羅幻王国」、同時期に発注を受け始めた為、 間違いが無いよう、箱にでかでかと送り状のシールが張ってあった。  リワマヒ国が羅幻王国から受注したのは各種船舶などの保守部品であった。 一家に一台などとなる車両に比べると、どうしても生産数が少なく、 かつ海上構造物である船舶では、金属の腐食が早い為、 錆止めの塗装を施さないといけないなど、小ロット・加工工数の部品が多く、 これらは小ロットになるほど、手作業が増える為就職援助目的の 国営企業としてはありがたい商品だったようだった。 『ウゥウゥウウウウウー』  休憩時間のサイレンが鳴る。手に持ったスプレーで、 目の前のエルボを塗りきると、乾燥用の受け棚にひっかけて、 隣で作業している奴に声をかけると休憩室へと向かっていた。 ―――リワマヒ国国営工場 休憩所 「ぶはぁっ」 休憩所に入って、マスクをはずす。 この暑い国でマスクをしているのは結構しんどい所行だった。 換気が効いていてエアコンの入ってる休憩所での休憩は、 本当に天国である。 「あー、生き返るー」 ベンチに浅く腰掛けだらしなく足を延ばし、ベンダーで入れてきた麦茶をすする。 顔についたマスクの痕が、かゆいのでボリボリとかく。 「俺、マスク無しで仕事したいんだけどなぁ」 幼なじみの猫妖精がよっこいせ、と隣に座りながらぼやく。 そういやこいつ、昔は良くマタタビ酔いしてたっけ。 好きな匂いを嗅ぐのを我慢できなかった奴だけど、 大分大人になったんだなぁ。 「見回りにきた女の上司の人がえらい怒るからやめとけよ」 「正座でお説教はいやだもんなー」 全然いやそうにも見えない顔で答える親友に、 帰りにまたたび酒でも呑みにいこうぜと誘うのだった。 #image(http://eastnw.x0.to/bbs2/img/9849.jpg) ---- NEXT>03:[[EV165/工場の猫]] BACK>00:[[EV165 産業育成準備]] ---- 担当: 絵:和子 文:東 恭一郎 }}}
#expand(700){{{ #image(http://eastnw.x0.to/bbs2/img/9868.jpg) **02:部品納入例 ---- #contents(fromhere=true) ---- **部品産業コラボレーション ***フィーブル藩国 様 ―――講習室  室内ではフィーブル藩国謹製のコンピューターが、ブーンとファンの音を立てて鎮座している。 今日はフィーブル藩国から講師を招いてのCAD/CAM講座が開かれる日であり、 多くの若者が受講をしていた。  手書きの製図でも十分じゃないかという話もあるが、 国外の外注が増える中、藩国間の距離を考えるとネットワーク上で設計データを受け取って製作する方が効率的であり、将来的にも藩国での製作も考えると十分なリターンが見込める事もあり、 コンピューターの使い方を一からちゃんと教育してもらおう、という事になったのである。 「それでは講義を始めます」 銀髪の教師役のフィーブル藩国人が言うと、 背筋を伸ばしたリワマヒ国民が 「Yes Sir! 教官殿!」 と答える。 あいつ、学生時代の頃の癖が抜けないなぁ・・・ 等と周りからは思われていた。 /*/ ―――3日後。工場内NC旋盤前 あれから毎日練習の日々が続いた。まだまだ使いなれないが、 何とか講義は進んでいる。 「ということで、先ほど入力したデータを使って早速製作してみましょう」 あれから彼らはなれないコンピューター、なれないプログラムに四苦八苦しながら、 やっと一つのデータを作っていた。 機械に板状の鋼材をセットし、削り始める。 時間をおいて完成したのは、小型耕耘機用のブレードで、 リワマヒでは機械化農業はしていなかったが、 発注がきているフィーブル藩国に、講師に来てくれた彼らに見せるために、 もっと簡単なモノにしたらどうですか、というのを押し切って選ばれていたのだ。 大地を耕すその輝く歯は、誇らしげにすら見えたのだった。 #image(http://eastnw.x0.to/bbs2/img/9868.jpg) ***海法よけ藩国 様 海法よけ藩国とはこのターン聯合が組まれておらず、本来であれば協力は見送られるはずであったが、 大統領府の協力の下、厳しい監査が入るという条件ではあるが協力体制が取り付けられていた。 ―――リワマヒ国内鉄工所  あちらこちらで溶接の火が上がる中、場内クレーンにつり上げてられて加工済みの鋼材が運ばれていく。 ここはリワマヒ国営鉄工所。 リワマヒ国が受注を受けた国の中で”大物”発注をした海法よけ藩国からのモノを扱っていた。 国が大きいという意味ではなく、発注した部品のサイズが、スケールが大きいのである。  それはもっともな事で、巨大ドックで建造するような大型船に使う鋼材やメガフロート用の部品ともなれば、 小さな高力ボルトから20mを越える鋼材まで、蟻のサイズから象までである。 特に鋼材は規格を提案した国としても品質に不備がある訳にもいかず、 もっとも緊張したラインの一つであるのは確かだった。 彼もそんなラインの担当ではあった。 手に小さな超音波探査機を当てて、手元のモニターに出る波形で溶接部の不備が無いことを確認しつつ、 顔を上げると場内で加工されている鋼材達を眺める 「こいつらは、組み上がったらドコへいくんだろうねぇ」 海は、世界を渡れるらしいなどとも聞く。 願わくば、幸せの橋渡しに就いて欲しいなぁ・・・と思いつつ、 検査の終わった鋼材が運ばれて行くのを見ていた。 ―――リワマヒ国国営工場検品課  海法よけ藩から依頼された機械類を目の前に、検品を行っているチームがある。  「そういえば機械は口金さえ合えば使えるさって話があってなー?」 検品課の中では少し年上の作業員が手を動かしながら口を開く。  「まぁ、圧力や出力によって厳密に決まってるものなので、出来るのはわかってますが」 彼の隣にいる、年若い工員が答える。  「だからといって、適当にしていいわけないでしょう!」 まじめそうな眼鏡君が声を荒げる。  「いやー、でも仕様にないし」 最初の工員。  「まてまて、構造物関連の商品で手を抜いたのばれると、ラメ摂政が怒濤の勢いで殴りこみに来ますよ?」 眼鏡がやり返す。  「あの人、建設系で手抜くと五月蠅いからなぁ」 若いのが、遠い目をしていた。  「一週間連続で朝まで呑みながら愚痴られるのはちょっとな・・・」 覚えがあるのか、言い出しっぺがうんざりとした感想を述べる。  「まじめにやりますか」 同意するかのようにうなずくと、眼鏡を直して提案した。  「「ああ」」 #image(http://eastnw.x0.to/bbs2/img/9847.jpg) ***レンジャー連邦 様 ―――リワマヒ国国営工場付属倉庫  「きゃりっ子さん規格のトランスポンダーってドコに請求出せば良かったっけ?」  「ああ、それは―――」  倉庫付きの事務室で倉庫の在庫について確認をしている工員達。 リワマヒ国はこれまで一度も切らさずにきゃりっじを含む航空機を生産し続けているため、 倉庫の中に新造用のパーツの在庫があるのだが、 レンジャー連邦の航空産業育成に合わせた新造機の為、共用出来る部品の先行放出の準備を進めていた。 軍事機密に当たらない範囲で工廠にもう何年も積み上げ続けてる部品を引き取り、 整理売却の準備をしているのである。 特に、共和国防空網との連動があるため、位置情報の発信器などは実績のあるパーツとして、 積極的な売り込みも行っていた。  軍用機としては安い部類のきゃりっじも、市場で作れば5億はする機体である。 共通部品として流通量が確保出来るならばさらなるローコスト化も狙える、 そんなもくろみもあった。  「いっそ、機体ごとレンタルした方がよかったんじゃないの?」  「まー、編成と整備の手間があるから遠慮したらしいよ」  「奥ゆかしいねぇ。悪い意味で」  「全くね」 出涸らしの安いお茶をすすりながら、手元の出荷伝票に注文の有った部品を記入していく。 ―――リワマヒ国国営工場新商品開発部レンジャー連邦対応係(自称)  「くそぉぉぉぉ」 野郎共の怒号がこだまする。  「こんな部品精度じゃ使ってもらえねぇぇぇ」 手に持っていたリベットらしき物体を「没箱」と書いてある段ボールに投げ入れる。  「何を馬鹿なことをやってんだ?」 上司らしき男性があきれ顔で訪ねる。  「レンジャーと言えばハート、ということでハート型のリベットと工具を作ってたらしいんですが」  「形の精度が出なかった、と」 捨てられたリベットを手に取ると、微妙にゆがんでいる。  「おまけに、方向揃えて打てないとダサい、とダメ出しもありまして」  「重量も増えるだろうし、良いとこないんじゃ?」  「ですね。まぁ、ハート形のパーツは笑いは取れるでしょうからいいんじゃないですか?」 冷めた顔で作業に戻る工員を見送ると、彼は大声でわめいてる連中に宣告をした。  「お前ら、無駄にした分は給料から天引するからな」  「そりゃねぇぇぇぇぇぇよぉぉぉぉ」 #image(http://eastnw.x0.to/bbs2/img/9852.jpg) ***世界忍者国 様 ―――リワマヒ国国営工場前広場、始業前。 「ぉいっち、にぃ、さん、しっ!」 「ごぉ、ろっく、しち、はち!」 緑色の制服に身を包んだ国民達が揃って運動をしている。 朝の清涼な空気の中、綿と化繊で出来た吸汗製の良い生地が さらっと気持ちがいい。 子供達が夏の朝に良くやらされる、ラジオ体操である。 親達もよくつきそいで一緒にやるのだが、 なんで国営工場で始業前にやっているかといえば、 規則だからである。 藩王曰く。 「体操をすることで、血の巡りを良くし頭をすっきり目覚めさせるんですよ」 ということで、国営工場では始業前にやることになっていた。 『みなさんおはようございます』 「おはようございます!」 #image(http://eastnw.x0.to/bbs2/img/9850.jpg) ***玄霧藩国 様 ―――工場。  今日は朝から鉄のパイプを一本一本キレイに曲げ、切断し、溶接。 つなぎ目や切り口をキレイにヤスリがけをし、白い抗菌塗装をする。 厳しい目で塗り残しや、バリ、とがった部分が無いことを確認し、 出来ていないものはやり直しを指示し、キャスターをとりつける。  丈夫な化学繊維のカバーのついたスプリングの効いたマットレスを敷く。 ああ、ここに天日で干した良い匂いのするシーツがあれば、 この緑の制服を脱いですぐに倒れ込んでしまいたいのに。 これから売り込みに行くための商品のサンプルを作りながら、 どんな奴が使うんだろうなぁと思っていた。 ―――会議室 着慣れないナニワ製のスーツを着た若い新人の営業マンが、 先輩を相手に練習をしている。 ちょっと笑顔が引きつっている気もする。 「こちらの介護ベッドなどはいかがでしょう? 抗菌塗装を施した丈夫なキャスター付きのベッドになります。」 「今回はさらに高齢者介護などを行いやすい、電動モーターによる高さ調整機能、 上半身を起こすリクライニング機能をお付けして、この価格。」 『笑顔が硬いし、他人行儀だよなぁ』なんて、先輩そりゃ酷いですよ。と心の中でいいつつも、練習の最中。 集中集中。 「大量購入をご検討いただけるようでしたらさらに値引きも可能です」 「もちろん一個からの小ロットからの製造でもお任せください。」 #image(http://eastnw.x0.to/bbs2/img/9868.jpg) ***ナニワアームズ商藩国 様 ―――リワマヒ国国営工場鉄工所  海法よけ藩国からの大規模発注が増える中、 リワマヒ国の鉄工所での取り扱いシェアが延びている藩国がある。 ナニワアームズ商藩国から出る金属素材各種である。 共和国の中で唯一の鉱山資源をもつ藩国で、 リワマヒ国の安定志向を考えると少々割高でも、 品質、産量の読めるナニワ産の鉱石は好まれたため、大統領府の協力の下、 何とか交易を取り付けたのである。 「というわけで、ナニワアームズの鉱山では怪獣達が掘っていてな」 工場見学に来た小学生低年齢達を前に、あり得ない嘘をつく。 「送られてくるインゴットは怪獣の吹く火で精錬してるんだぜ」 『んなわけねーよ』という、大人びた子の反論と、 『すごい!』ときらきらと輝く目をした子供の目、 どっちもどっちで、将来有望だな、なんて思う。 「ナニワ産の素材は、そんなわけで大変良いものでな」 子供の頭をなでながら考える。 「リワマヒの職人のおやっさん達ご愛用なわけさ」 まぁ、これは嘘じゃない。 子供達を送りながら考える。 ちゃんと学校にいって、俺達があの国の材料を愛する理由を 勉強してきてくれたらいいなぁ・・・と 子供達には夢を。嘘つきにもっともらしい仕事だな、 と思いつつ、今日の仕事は終わりにしよう、 と更衣室に帰るのだった ―――朝。とある若者の自宅。  今日から、営業課へ配属だ。工場で支給される緑色の制服でなく、 自前の、ちょっと高かったがばきっとノリの効いたシャツに、 ナニワアームズの、なんていったっけ・・・の、店で買ったスーツ。 正直、普段上半身裸で過ごしている姿を考えると・・・ 似あわねぇ・・・と姿見に映る自分を見て思わなくもない。 「でも、他の藩国じゃそうも言えないしな」 声に出して自分を納得させる。 よし、髪に寝癖もついてない。 それじゃ行こうか! #image(http://eastnw.x0.to/bbs2/img/9848.jpg) ***羅幻王国 様 ―――リワマヒ国国営工場 塗装ライン  そろいの制服に身を包み、いくつもの塗料の染みついたエプロンに、 顔には防塵・防毒マスク、目にはプラスチックで出来たゴーグル。 手にはスプレーガンと、短い配管らしき部品を手にもった職工たちが、 丁寧に何度も塗装をしている。  乾燥が終わり、検品を受けた部品が箱詰めにされ陸送用コンテナにて、 工場から出されていく。  発送先は「羅幻王国」、同時期に発注を受け始めた為、 間違いが無いよう、箱にでかでかと送り状のシールが張ってあった。  リワマヒ国が羅幻王国から受注したのは各種船舶などの保守部品であった。 一家に一台などとなる車両に比べると、どうしても生産数が少なく、 かつ海上構造物である船舶では、金属の腐食が早い為、 錆止めの塗装を施さないといけないなど、小ロット・加工工数の部品が多く、 これらは小ロットになるほど、手作業が増える為就職援助目的の 国営企業としてはありがたい商品だったようだった。 『ウゥウゥウウウウウー』  休憩時間のサイレンが鳴る。手に持ったスプレーで、 目の前のエルボを塗りきると、乾燥用の受け棚にひっかけて、 隣で作業している奴に声をかけると休憩室へと向かっていた。 ―――リワマヒ国国営工場 休憩所 「ぶはぁっ」 休憩所に入って、マスクをはずす。 この暑い国でマスクをしているのは結構しんどい所行だった。 換気が効いていてエアコンの入ってる休憩所での休憩は、 本当に天国である。 「あー、生き返るー」 ベンチに浅く腰掛けだらしなく足を延ばし、ベンダーで入れてきた麦茶をすする。 顔についたマスクの痕が、かゆいのでボリボリとかく。 「俺、マスク無しで仕事したいんだけどなぁ」 幼なじみの猫妖精がよっこいせ、と隣に座りながらぼやく。 そういやこいつ、昔は良くマタタビ酔いしてたっけ。 好きな匂いを嗅ぐのを我慢できなかった奴だけど、 大分大人になったんだなぁ。 「見回りにきた女の上司の人がえらい怒るからやめとけよ」 「正座でお説教はいやだもんなー」 全然いやそうにも見えない顔で答える親友に、 帰りにまたたび酒でも呑みにいこうぜと誘うのだった。 #image(http://eastnw.x0.to/bbs2/img/9849.jpg) ---- NEXT>03:[[EV165/工場の猫]] BACK>00:[[EV165 産業育成準備]] ---- 担当: 絵:和子 文:東 恭一郎 }}}

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