「資源低減技術:集中学習コースの様子(SS)」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
資源低減技術:集中学習コースの様子(SS)」を以下のとおり復元します。
*資源低減技術の開発(イベント)

[[→もどる>資源低減技術の開発(イベント)]]


**集中学習コースの様子?(SS)


リワマヒ国、一時期は緑の地獄とすら呼ばれていた、にゃんにゃん共和国の一藩国である。
いまや砂漠の国と化したリワマヒ国の復興期に、実は「もう一つの緑の地獄」とあだ名された場所があったことは、実は余り知られてはいない。
この文章は数少ないその事件の関係者に取材を行い、それを元に再構成したものである。
作品中の氏名、団体名等はすべて仮名であり、さらに、娯楽作品として一部脚色し再構成している。

読者諸氏に置かれては、上述の件をよくお含みおきいただいた上で読み進めていただきたい。
舞台はリワマヒ国のおこたの間から始まる。

/*/

「困りましたね」
リワマヒ国おこたの間。藩王室賀兼一はセリフのとおり悩んでいた。

資源の無駄、むら、無理を減らし、全体効率・品質の向上へとつなげ、ついでにリワマヒ国も栄える資源低減技術開発プロジェクト、
通称「MANTIS計画」は、いよいよ第二計画の段階へ達していた。 国営工場の、設定国民によるEBOである。

各国に散った設定国民を配置販売員として現地にいながらに雇用する計画は無事に進んでおり、
A&Sビル内に築かれたモデル工場からも、そろそろ新規要員の募集をかけるべく要請が来ていた。


しかし、工員の入れ替え、経営権の移譲ともなれば、設定国民には大量の技術・知識の習得を強いることになる。
特に経営者ともなればその責任は重大だ。
一方で、
すでに幹部候補生として学習カリキュラムに入っている生徒たちの中には、勉強についていけない者が出始めていた。


ガラガラガラ。
おこたの間に突如として複数の人物が、現れた。逆光でシルエットは定かではない。

「そんなときこそ、私たちの出番ではないですかな?くっくっく」

「自分がくそったれのウジ虫どもを立派な海兵隊にして見せます!サー!」

「わたしたちはあー腐ったミカンを作るんではなく、人間をつくるんです」


沈痛な面持ちの藩王。
「そういう手段は採りたくなかったのですが……」

「でも、ことここに至っては仕方ありません……うちの子たちをよろしくお願いします」

「「「はい」」」

三つの影は音もなく消えた。

/*/

「今日も研修かったるいネウー」
「とっとと終わらせてマタタビバーでふにゃーってなりたいにゃー」
言いながら研修室のドアを開けたのは、サクラ工場第三生産ラインB班。通称3B所属の猫士、カトーとジュンコである。リワマヒ国のMANTIS計画のテスト工場の中でも最も研修進行度の遅いグループの、さらにその中の問題児であった。

「あれ?誰もいないネウ?」
「まあ、適当にすわってればそのうち始まるにゃ」
着席。当然、最後列窓際の特等席である。
ふと、カトーは強烈な眠気に襲われた。

(なんにゃこれは。昨日は十二時間寝たはずにゃ)
横を見るとすでにジュンコは寝息を立てている。
窓を見ればなぜか、目立たぬような透明のテープで目張りがしてあった。

(おかしい・・・にゃ・・・)
薄れゆく意識の中で、カトーはガスマスクをつけた歩兵風の人間が教室のドアを開けて入ってくるのを見たような気がした。


/*/


同日。
各地で問題児と呼ばれていた研修生が、眠らされたままリワマヒ港に浮かぶ船へと運びこまれてゆく。
後に「もう一つの緑の地獄」と一部でいわれるようになる事件の、その始まりであった。

/*/

テスト工場の一つ、フクモト工場でも一番のワル、カイチは目を覚ますと昨日は飲んでいないはずなのにと思った。なぜか頭が痛い。若干の吐き気がある。

「う…!」
覚醒。目の前に見えた光景はカイチの今まで見てきた中でも一番異様であった。

そこは教室のような場所だった。机が等間隔に5×5で並んでおり、一つ一つの机に生徒らしき人々が突っ伏している。全員お揃いのガクランもしくはセーラー服(リボンは赤のクラシックなタイプ)である。

「にゃ…!」
よく気がつけばカイチも同じガクランを着ている。

ざわ…ざわざわ…ざわ

(冗談じゃねえ…なんだってこんなもん…!)

さらに、異常なのは、この教室内の“色使い”であった。すべてが緑色、緑一色。
黒板はもとより、机、イス、床、壁にいたるまですべてに緑が使われていた。
何人かの生徒が起きだし、だんだん教室が騒々しくなりだした。

バシンと音を立てて教室の入口のドアが開き三つの影が教室に入ってきた。
うちの一人が大声をあげる。

「アテェンション!!そのだらしなく(ピー)を垂れ流す(ピー)みたいな口を、一刻も早く閉じろ!この(ピー)ナッツ野郎ども!」
迷彩服姿の男の一声によって、一瞬で教室は静まり返った。

「今から怒根川校長よりお話がある!お前らの空っぽの脳みそのいいところは溢れる心配がないことだ! 一言一句漏らさず聞け! 返事はサーだ!その口から(ピー)を垂れる前と後にサーと言え! 分かったかウジ虫ども!」

「サ、サー、イエッサー……」
大迫力の暴言にのまれる生徒たち

「ふざけるな! 全く聞こえん! タ…」
「まあまあハードマン先生。ここからは私が説明しましょう。」
「サー!イエッサー!」
ハードマン先生を止めた人物は、緑色の黒板の前の、緑色の教壇に立つと一度ぐるりと全体を見回した。

「ようこそ、希望の合宿所、エスポワールへ。今宵皆さんを歓迎させていただきます。校長の怒根川でございます」
にこやかな表情。落ち着いた物腰。ハードマン先生の後だけに、怒根川校長は生徒たちに安心感を与えていた。

(常識人ネウ~!)

「あの~ここはどこにゃ?」
一人の猫妖精が手を挙げると、次々に質問が出た。

「家にはいつ帰れるにゃ??」
「おやつがほしいにゃ!マタタビも」
「合宿なんてまっぴらにゃ!」
次々に口を開く猫妖精たち。しかし、怒根川はあくまで口調を変えない。

「質問には答えられません。そういう規定になっています」
のんびりおっとり素直なリワマヒ国民とはいえ、彼らは不良である。
あくまでもにこやかに返答する怒根川に、教室内はさらにざわついた。

「ふざけるにゃ!人権侵害にゃ!」
「おれたちには知る権利があるにゃ!」

「権利!権利!」
「権利!権利!」

机をたたく者、大声をあげる者。今にも飛びかからんばかりの者。
たっぷりと間を取って、表情を消した怒根川がぼそりとつぶやく。

「FUCK YOU…」

教室がその一言にシーンと静まり返った。

「ぶち殺すぞ、このゴミめら…」
「いつまで甘えていやがる…質問をすればすぐに返事が返ってくると…臆面もなく…!いいか、大人は本当のことを言わない。」
「なるほど簡単だ。この後の授業は何時から何時まで、休憩が何時間、おやつの猫缶は一人三百円以内。何日したら家に帰れる。そう言った話をすることはできる。だが、貴様らはそのウラを取ることはできない。ならばそれは何の意味もない」
滔々と語り続ける怒根川。

その間に、不良生徒の一人、カイチは気づく。圧倒的な違和感…異変…異常!

(さっきからおかしいぜ。薬が残っているにしたって…揺れが収まらない…まさか
…!)

ガタン、音を立てて立ち上がるカイチに怒根川は視線を向けた。

「ふ、ヤマグチカイチ君だったかな。君は優秀、実に優れている。気がついたようだな。そうここは」

脱出不可能な船の中だ

「くく、くくくく、くひひひひ」
嬉しそうに笑う怒根川。なんかもう、軽く涎まで出ているサディストっぷりである。

「では、ここから先はキンパツ先生に説明してもらいましょう。くくく」
嬉しそうに笑って教室を去った怒根川に代わって教壇に立ったのは、南国人らしい金色の長髪、しかしながらギャル男っぽさはまったくない胴長短足がに股の中年である。くたびれたスーツにゴム入りのズボンがさらにダサい感じを出している。

「はあーい、それではあーみんなにここでの生活をー説明しまーす」
やけにもったいぶった、言い方で髪をかきあげながらしゃべる。

「先生はあー考えましたあーみんながどうしたら集中力をあげることができるのかあー。それは緑でーす。この緑色が皆さんの目の疲れを癒しいー適度にリラックスしながら勉強することができまあーす」
脱出不可能ということで静まり返っていた教室が、またざわつきだした。

(ジュンコ、やばいにゃここ)
(あの短足教師も頭いっちゃってるにゃ)

「でも緑一色だとおー室内では息が詰まってしまうのでえー上には青い絵の具で空をかいてみましたあーうれしいだろー」

(それは刑務所の考え方にゃ!)
(…あんまり変わらない気もするにゃ)
さらにざわつきだす教室。

「…こらあ!カトー!!」

びゅごおおおおお

某変形戦闘機アニメのマイクロホーミングミサイルのような複雑軌道を描いてチョークが飛び、カトーの額を直撃した。どうでもいいが初対面のはずなのになぜかセリフに年季が入っている。

「ぐにゃああ!痛いにゃ!何するにゃ!」
「はあーい、私語しなーい!皆さーん」
バンバンと教室の前の張り紙をたたく

「意見を言うときは手を挙げてから!これがぁー」

がっつりとためる

ためる

ためる

さらにためる

「この教室のおールールでえす!」
得意げに生徒を見回すキンパツ。

「いいですかあー人という字はあー支えあう二人の人間からできていまーす。皆さんでー支えあってー一緒に合宿をのりきろうなあーじゃあ一日目はハードマン先生の授業でーす」

「はーいネウ…」
もはや生徒たちに逆らう気力は残っていなかった。

/*/

以下は「もう一つの緑の地獄」の合宿風景をダイジェストでお送りする。
どうか読者諸氏に置かれては、ご承知おきいただきたい。

/*/

一日目・ハードマン先生
「単語を覚えろこの(ピー)ども! なんだその面は! パパとママの愛情が足りなかったのか!」
「サーイエッサー!」

「こんなものも分からんのか! なんだ貴様らは! じじいの(ピー)方がまだ気合が入っているぞ!」
「サーイエッサー!」


二日目・怒根川先生
「ククク、選択問題で五分も使うか。一生迷ってろ…そして失いつづけるんだ、貴重な機会を…!」

ざわ…ざわざわ…ざわ

「ねじは…ねじは命より重い…!その認識をごまかす輩は生涯地を這う!目を覚ませ!渡れこの鉄骨電流橋!人間競馬っ!」

ボロボロ…ボロボロ


三日目・キンパツ先生
「はーい、それではあ~今日は皆さんにい~殺し合いをしてもらいまーす」
「冗談でーす。言ってみたかっただけでえーす」

カッカッカッカ
「人の…為…と書いて偽と読みまーす」

カッカッカッカ
「信…者…と書いて儲けると読みまーす」


四日目・最終日卒業式

「本日より貴様らはウジ虫を卒業する! 貴様らはこれより立派な工員戦士である!」

「CONGRATURATION…!おめでとう…!おめでとう…!」

「以上。三年B組卒業生徒二十五名」

/*/

事件発生から四日後。
船の中には、証言にあるような人物は一人も乗っておらず、
緑の部屋の中で、蛍光ラインマーカーですっかり緑色になった書類に埋もれながら死体のように倒れている、なぜか制服姿の男女25人がいるだけであった。

本当にこんな事件があったのか、それすら誰にもわからない。
ただ確かに言えるのは、彼らがしばらく緑色の恐怖におびえていたことと、
二度と船に戻らないために猛勉強をし、資源削減プロジェクトの現場を支える優秀な工員になったということだけである。


/*/

ここはリワマヒ国民の集うおこたの間。
今日も第七世界人たちがこたつに入ってお茶をすすっていた。

室賀「指導お疲れ様でした、皆さん」

匿名「藩王様も後始末お疲れ様でした」

室賀「みなさんノリノリで驚きました。
 カツラと衣装は私が預かりまして、ばれないように始末しておきますね。
 これからもよろしくお願いします」

匿名「こちらこそよろしくお願いします。ターン14もがんばりましょう」

復元してよろしいですか?

目安箱バナー