赤とんぼが、舞う。ススキが、揺れる。
その中心に立つ、一軒家。その中の座敷はすごくにぎやか。
そこに集うは異形の妖たち。
ここで、私……
ろくろ首の葬式が行われているらしい。
そこにあるはずの、骸はない。当然だろう、『向こう』に置き去りのままなのだから。
「それでは、わが娘のご友人、という御二人に弔辞を読んでいただきます……」
ご友人?御二人……まさか!
「只今、ご紹介にあずかりました首子……ろくろ首さんの元弟子、妖怪雨すすりです」
「同じく、妖怪あばらです」
やっぱお前らか、ズコーッ!
と、コケる順番が逆転してしまったがひとまず彼らは弔辞を読み始めた。
「お江戸に輝く首長系ビッグスター、首子……ろくろ首さん。突然の別れに憔悴しております」
私はまたコケた。何なんだ、毎回この謎妖怪は。
その後、横にいたあばらが続けた。
「首子さんと出会った日、痩せていて、あばらが見えていることしか取り柄のない私の日々がそれとなく輝きだした気がします」
修正してねェェェェ!つか、あんた太ってたじゃん!あばら見えてなかったじゃん!ていうか、それとなく!?
「あなたのそのロングネックはまさに、愛やら勇気やらの証!」
私はまたまたコケてしまった。父親まで、何なんだ。
その後も妖怪親子が繰り出すいろいろな「うまいこと」で何度もコケさせられた。
首をのばして、彼らの頭にアグレッシブピスタチオスターダストをくらわせてやりたかったが、
何せ私には身体がない。伸ばす首もない。
どうすることもできず、草葉の陰でフラストレーションをためるばかりだった。
「首子さん、いつか会える日が来たらまた僕達を弟子にしてくださいね。
何やかんやで、楽しい人でしたし。本当にありがとうございました」
雨すすり……。果たして褒めているのかけなしているのかわからないけど。
まあ、とにかくだ。もし生まれ変わってまた彼らに出会えたら、誇りに思えるような妖怪(ひと)になってやる。
青空を流れる鰯雲に、私は誓った。
「それでは、みなさん。ゴムゴムネックの首子……ろくろ首さんに盛大な拍手を!」
秋の高い青空に、反響する雨すすりの声。
その声を聴きながら、私は……
「ズコーッ!」
気持ちよく、コケた。
ギャグマンガ日和・首子 ろくろ首エピローグ おしまい
最終更新:2015年12月15日 00:21