【名前】カピタン・グラツィアーノ
【性別】男
【出展】からくりサーカス
【支給品】破壊の剣『スペッツァ・フェッロ』@からくりサーカス、正義の剣『スパヴェンタ』@からくりサーカス
【スタンス】造物主(フェイスレス)奉仕マーダー
【人物】
フェイスレスによって作り出された自動人形の中で『最後の四人』と呼ばれる4体の自動人形の内の1体で、中世の軍人を意識した衣装の男性の姿。キザでナルシストな性格で、人間の「伝統」に興味を持っている
自動人形の中でもごく最近に作られたにもかかわらず、自分を「由緒正しき軍人の家系」と思い込んでおり、同じ『最後の四人』のハーレクインやディアマンティーナからも呆れられるほどのホラの自慢話を長々と語るのが趣味。しかも誰かに聞いてもらうことが目的でなくただただ話したいだけなのでうざったい事この上ない
【戦闘能力】
巧みな剣技と、破壊の剣『スペッツァ・フェッロ』、正義の剣『スパヴェンタ』を武器
雷撃を帯びた剣で敵を貫く『血と雷(サングレ・イ・フェーゴ)』と、左腕から繰り出す乱れ突き『撃破(フラカッソ)』なる必殺技を持ち、足の裏に装備されているバーニアで飛行可能と、純粋に基礎性能が高い
【ロワ内の行動】
黒賀村で勝に敗北した後からの参戦
……なのだが、カピタンの記憶が敗北直後からロワ会場で目覚めるまで断絶しており、当の本人は敗北した事実を覚えておらず、しかも造物主であるフェイスレスや他の『最後の四人』まで名簿に載っている、そのため
「そうか、既の所で造物主様が御身を案じ救ってくださったのだな! しかし華麗な逆転劇の後に機能が一時停止してしまうとは、私もまだまだ未熟というわけか」
何を言っているんだお前は
と事実無根も甚だしい思い込みをしつつも、造物主様の邪魔をする人間どもを狩りつつ造物主様を捜索するという方針を取ることとなった
最初に出会ったのは弱音ハク。彼女の元ロワ経験からしてフェイスレスとは因縁があり、カピタンがいつもの事ながら自慢話を披露した際、その過程でフェイスレスの関係者ということが判明されロッケンフィールドをしれっと小馬鹿にしたことに怒ったハクと交戦
ハクが懸糸傀儡『ペンタゴナ・ノッカー』を使いこなし、しかも髪色が銀色であることから当初こそはしろがねと認識したものの、冷静に戦いながらもハクがしろがねではないことを見抜き、『血の雷』でペンタゴナ・ノッカーの胴体を破壊。肝心の弱音ハクこそ逃してしまったものの、久の戦としてはカピタン的には上々な結果であった。
次に出会ったのはユージオ。またしてもホラ話を披露しまくったため、そのウザさと傲慢さにユージオから「ゲス貴族(ライオス)の同類」と断じられ結果的に交戦
この時のユージオは参戦時系列的に《武装完全支配術》を習得していなかったため、カピタンの優勢であったのだがその最中に竜殺しの大英雄たるシグルドが乱入
流石のカピタンも目の前に現れた大英雄相手にはユージオ程度に気に留めるわけにもいかず、このすきに逃げるユージオを無視して大英雄との戦いに挑む
「我が名は造物主様様の第一の剣にして、誇り高きアラゴン王に仕える軍団長の一族の末裔、カピタン・グラツィアーノなり!」
「当方は魔剣を使う者。戦士。シグムンドとヒヨルディースの子。セイバーのクラスを以って限界せし者。真名シグルド――いざ参る!」
と、戦闘前の挨拶こそかっこよかったがいざ口を開けるとバーニアで飛びまくりながら武勇伝をひっきりなしに語りまくるから色々と台無しである。これにはシグルドも内心ウザかったのか宝具開放準備
が、シグルドの宝具は制限により不発……というよりも閃光をぶっ放しただけという方が適切。カピタンはかすった程度ですんだがその威力の凄まじさに退散を選択。この時自身の体が発光したような感覚に陥っていたが、それが後々彼に転機をもたらすこととなる
因みにシグルドの逸話は勝手にこいつの伝統に追加された。こいつ抜け目ねぇ……
次に出会ったのは『神化』時代の超人である人吉爾朗。爾朗の方はカピタンを柴来人とは違うタイプのサイボーグと思っており、当初こそは意外にも話が盛り上がっていたが、爾朗がカピタンから感じた血の気の匂いから戦闘に勃発
爾朗から聞いた『神化』の歴史すらも自分の伝統に組み込むという形で爾朗すらも呆れられるもお構いなし。結果『血と雷』の一撃で横浜駅へとふっとばして満足した
そんな彼にも転機が訪れる。それは中盤に差し掛かった頃、
ブロントさん&泉こなたのペアとの戦闘であった
護りも硬い攻守一体のナイトと、二度の殺し合いを乗り越えたパワードスーツライダー女子高生
しかも両者ともリアルではモンクタイム。ロワで最初に戦った懸糸傀儡使いのしろがねモドキとはわけが違う。両者ともその実力は自身のスペックを遥かに超えている
だが、そんな苦難は(彼の脳内では)何度も乗り越えてきた。サハラでの人形破壊者たちとの激闘や、クラウン号防衛戦等でそんな激闘は何度も乗り越えてきたのだ(彼の脳内では)
その思いが彼に答えたのか、人間の血代わりとして飲んでいたドリンクが彼に力を与える
それは、生命の水――
元々自動人形とは、主であるフェイスレスを笑わせるために作り上げられた『芸人』であり、彼らにはそれぞれ『黄金律』と呼ばれる規律が存在する。それ故に懸糸傀儡使いや無手の格闘家相手ではスペックが制限されてしまう。
今回戦っている二人こそ武装は使っているものの、前述した通りリアルではモンクタイプ――つまりは無手だ
だからこそ相手がモンクタイプでの戦闘をしてきた場合、確実に隙が生まれることになる
だが、例外は存在する――生命の水を飲んだ自動人形は黄金律から解放され、どのような相手でもフルスペックで戦えるようになるのだ。
事実、生命の水を飲み黄金律から解き放たれた自動人形の一人であるチャイナ・ホーは、歴戦のしろがねであるルシードや、気の格闘家である鳴海を圧倒していた
で、チャイナ・ホーですらあのような強さ位に至ったのが、新型自動人形でかつフェイスレスの側近クラスが生命の水を飲もうものならどうなるか――
いや、ただそれだけならばただ「強い」だけで済んだだろう。本当の問題は
カピタン・グラツィアーノがこのタイミングで『心意』を習得したことだ。というか、「自分にはこんな偉大な伝統がある」と思い込んでいるカピタン・グラツィアーノの性質が、感情や心の力を主とする心意システムと相性バッチシだったのである
こうなれば一転攻勢、『血と雷』と『撃破』を組み合わせた連続雷撃20連突き『鉄風雷火(テンペスタ・ディ・ヴェント・スティレ・フェーロ)』や、防御も兼ねた周囲に雷撃を展開する『洗礼(バッティージモ)』等、持ち前の剣技を心意システムを利用し進化させた技で二人を追い込んでいく
が、ここでブロントさんもまさかの生命の水を服用ししろがね化。黄金の鉄の塊で出来たナイトが人形破壊者たるしろがねになったことでカピタンの戦意もうなぎのぼり
小娘(こなた)への防御を優先している事を利用しわざと庇わせることで『鉄風雷火』をブロントさんに当てることに成功。追い詰めるもこのタイミングで造物主たるフェイスレスの死亡を知り一時的に動きが止まってしまい、結果として二人を逃してしまうこととなった
衝撃的な情報を知って結果的に二人を仕留め残った事はともかく、現状は死んだ造物主たるフェイスレスの蘇生を優先事項とし、他の『最後の四人』を捜索しながらも、参加者がある程度減るまで身を隠す方針を取るように
ロワも中場を超え、同志であるディアマンティーナやハーレクインの名前が放送で流れるのを聞いていた時
―――眼前に「神の姿」が映し出されていた
それは今ロワにおける主催陣営の一人、神槍グングニルを携える北欧神話の最高神たる
オーディン
何をトチ狂ったのかカピタンは、オーディンの神々しき神威に魅入られ、主催たちを新たなる造物主と認識
(いや実際ある意味マジの造物主なんだけど)
主催側からすればただの玩具にして『機械仕掛けの神』のための材料にしかすぎない認識ではあったが、何かと役に立つと思い、彼に対し複製した真・真夜中のサーカス団の自動人形軍団と最初の整合騎士であるベルクーリ・シンセシス・ワンの神器『時穿剣』を追加支給
新たなる造物主(と思い込んだ相手)から直々に剣と軍団の指揮権を授けられたと歓喜極まったカピタンはこの自動人形軍団を『黄昏の曲芸騎士団』と命名。造物主たちにとって不都合な存在を狩るべく進軍するのであった
(流石にドクトル・ラーオやワイルド・ウエスト・ジェーンのような将クラスの自動人形軍団は支給されなっかたが)
そんなご機嫌絶好調なカピタンと主催陣営の繋がりを目撃した男が一人、男の名は伊藤大祐
欲望のままに行動し、ついさっきまでお間抜けなガキンチョをうまい具合に煽ってやった彼であるが、流石に此処に続けるのは本能的にまずいと判断、逃走を図るも案の定自動人形の一体にとっ捕まってカピタンの眼の前に放り出される。
大祐の滑稽さを面白がって冗談交じりに「泣き喚いて命乞いをするなら命だけは助けてやろう」と発言した所、言葉通りに実行したため、慈悲として自らの小間使い兼スパイとして引き入れることとした
(尚肝心の主催からは「どうせ裏切るだろ……」と半ば呆れられていたが、下手な行動しすぎた場合遠隔で首輪を起爆させるということで放置)
そして、そんな二人に主催より神命は下される。
「図書館にいる始皇帝組の討伐」
中国異聞帯の王にして演算能力だけで言えば全参加者を上回る始皇帝を筆頭に、タイムジャッカーから危険視されている仮面ライダージオウこと常盤ソウゴ、アドミニストレータと因縁があるカーディナル等、主催にとって目障りな面々が多い彼らを討伐するよう神命を下したのだ
勿論カピタンは小間使いを引き連れ直ぐ様討伐に向かうのであった
こんな過程もあり、調子に乗ったカピタンの虚偽伝統は更に膨大化していった結果……
「おお、今 英雄は至れり!割れよ白雲!響けよ雷鳴!!!創造主様第一の剣、カピタン・グラツィアーノ推参!!
静聴せよ、下等にして惰弱なる者共! 天地開闢の砌より連なる我が伝統の一門!その不滅の栄光を!
このカピタン・グラツィアーノこそは、外ならぬ偉大の神々の手によって建造された原初の神器が一、神の手でのみ為されうる奇跡の美術!!
戦乙女の導きの下、ヴァルハラの館にて永遠の戦士の誉れを約束されたる永劫不滅の英霊の代表にして
神々の黄昏を切り裂くただ一振りの剣なり!!!
かの神々の大戦にては、叛神ロキを殺し、魔狼フェンリルを屠り、巨人族の全てを殲滅し、主神にして我が創造主なる御方より、地平を埋め尽くすばかりの勲章を賜ったのだ!!
そして命受けし頃より一度たりと離れることなく共に戦場を駆けたる我が相棒こそはこの"時穿ちの剣"!!
かの邪悪なる白龍の首を刈り取り神々の祭壇に捧げたるもこの剣!!!喝采せよ!!!!!!!!!!!」
こ れ は ひ ど い
初期に言いふらしていた伝統は何処へ行ったか、しれっとベルクーリの功績を借りパクする所もゲスい。なお、この書き手のあまりのカピタンエミュの上手さと酷さに支援スレにて「お前正義の剣スパヴェンタとか破壊の剣スペッツァ・フェッロとかどこやったんだよ!!」「お前を作ったのは神じゃなくて失恋ストーカーの変なヒゲ男だろうが!!」等々ツッコミが飛び交い、読み手は大爆笑の渦へと巻き込まれることとなった
まあそんな感じで意気揚々と軍団引き連れ前進していた所、道中で取り逃がしたブロント達と遭遇。何やら妙な連中が増えているようであったが、何れ対主催に害をもたらす存在として認識していたカピタンは軍団に彼らの殲滅を指示。だがブロント達の中にはカピタンにとって予想外な人物がいた
ブリゲッラ・カヴィッキオ・ダ・ヴァル・ブレンバーナ――カピタンの現状認識に置いて嘗ての同門『最後の四人』の一人。彼が強力な武装を所持していながらも人間の格闘術を使っている変わり者の自動人形
何故奴等の側に与しているからは知らないが、仮にも同じ『最後の四人』として話しかけることに
「おや?其処にいるのはかつての我が同門たるブリゲッラ・カヴィッキオ・ダ・ヴァル・ブレンバーナではないか?
どうしたというのだ、人間などと共に居ようとは?いつもの熱心な勉強癖が出たのか?
もはや人などを生かしておく道理はない、我らが創造主である神々のため、人間どもとその仲間を皆殺しにし、我が戦列に加わるのだ、ブリゲッラよ」
「…我ら〈最後の四人〉の『造物主』はフェイスレス様だろう、カピタン。造物主様は死んだ。もうどこにもいない」
「何を言っている?フェイスレスだと? そんな名前の者は我が伝統に見当たらんな!」
「……。まあいい。私はこの者たちと行動を共にし、『強さ』というものを見極めるために今ここに在るのだ」
ブリゲッラは変わっていた。当初こそはカピタン同様造物主のために動いていたが、度重なる敗北、そしてドラえもんや吉田沙保里といった者たちとの接触を得て、『本当の強さ』を見極めるために行動をともにしていた
元よりカピタンはそのようなことを知る由も無い
「何を馬鹿な事を。早くお前の得意武器であるミサイルを用い、人間どもを殺すのだ」
「断る」
この言葉がきっかけとなり、カピタンはブリゲッラを同士ではなく神々に仇なす『敵』と認識
例のしろがね騎士とその仲間ともども滅ぼすよう軍団に指示を下す
「長く人の技に触れるうちに、狂ったかブリゲッラ。ならば最早同門と呼びはすまい!我らが敵、神の敵として、我が配下の軍勢『黄昏の曲芸騎士団』によって人間ともども滅びるがいい!!」
「狂った、か。そうだなカピタン。私はもしかしたらここで狂ってしまったのかもしれない。或いは、ミサイル兵器として生まれ、格闘技に焦がれた時から、既に狂っていたのかもしれない。
……だが、それも良い。この拳と、在るか無きかの心の先にあるものを、狂いの果てにでも掴みとってみせる」
此処で予想外だったのはブリゲッラの強さ。元よりブリゲッラは格闘戦に置いては加藤鳴海をも唸らせるレベルの技術の持ち主。しかも一度ボディを破壊され改めて修復され、心も体も生まれ変わったブリゲッラの性能はカピタンが知っていた頃よりも遥かに上回っていた。あとついでに吉田沙保里とかいうしろがねですらない女も無駄に強い
更に「気」を扱うこなたとのコンビネーションにより自動人形軍団の半数は壊滅。自身で相手取ったブロント自体は追い詰めていたものの、沸を切らした主催陣営に始皇帝組の殲滅を優先するよう発破をかけられたため、捨て台詞を吐き捨てながらも残った軍団を引き連れ図書館へと向かうことにした
なおこの格闘家無双を眼にした大祐は早々とカピタンを切り捨て、主催から得た情報を元に対主催に売り込みをするべくさっさとトンズラしたのだが、状況が状況なだけにカピタンは気にする暇もなかった模様(というか神命を最優先したと勘違いされ逆にカピタンに感心された)
そして、やっとたどり着いた始皇帝組の本拠地でもある大図書館。主催からの情報によると本来カーディナルが身を隠していた大図書室の再現との事
事前に主催からマップデータを得ていたことで内部の仕様は把握していたが、捜索の最中に妙な一室を見つける
其処はまるで図書室とは無縁な、まるで宴会場のような場所。不思議と思ったカピタンは炙り出しを兼ねて宴会場を『血と雷』で破壊。そしてカピタンの憶測は的中することとなる
「命は取りまちぇん、でちゅがその二枚舌……いえ八枚ぐらいある舌は許しまちぇん!」
何が出てきたかと思いきやまさかのお子ちゃま……なのだが、泉こなたの一件でもはや女子供とだけで慢心することはなくなったカピタンと護衛に引き連れた自動人形8機は即座に戦闘態勢。
相手は閻魔亭の女将にして地獄の獄卒、舌切り雀の紅閻魔。
宴会場や拵えた料理を台無しにされ、さらにカピタンの自己掲示だけのホラ吹きに対しマジ切れ獄卒ガチモード
並々ならぬ実力者だと機械の肌で感じ取ったカピタンであるが、目を瞬かせた刹那に護衛の8機はきれいな輪切りに。
いくら生命の水を飲んだにしても一筋縄ではイカず、雀の小柄さとすばしっこさを兼ね備えた神速の閻雀抜刀術には直接剣で受けるのではなく、受け流す事で何とか拮抗
更に追い打ちをかけるかの如く、相手側に増援が
一人はその実力はベルクーリに次ぐと称された整合騎士、アリス・シンセシス・サーティ――否、今の彼女は元の記憶を取り戻し、先立たれたキリトとユージオの為にも元凶たる主催を討ち果たさんと文字通り『帰った来た』アリス・ツーベルク
もう一人は、本来なら一介のアイドルであった少女、橘ありす。こちらは受け継がれた消えぬ炎の快男児の意思を心に灯し、カピタン同様心意をも習得した可能性の少女
アリスは主催に彼女をよく知っているものがいたためその実力は把握しているものの、橘ありすに関しては主催にとってもイレギュラー。
つまりカピタンですら手こずる実力者二人と、全く未知の戦士一人という厳しい状況に置かれる事となったが――
彼には切り札が存在していた
まず、彼が主催から賜った追加支給品は自動人形軍団の軍勢や時穿ちの剣だけではなかった。カピタンそのものの性能が神々による魔改造によって恒常されてもいた
それだけではなく、主催がオリジナルに作り上げたライドウォッチ『アナザーイスカンダルウォッチ』をカピタンは主催から受け取っていたのだ。だが、カピタン自身がライダーに変身するわけではない
『アナザーイスカンダルウォッチ』を上に掲げ、危険を察知し襲いかかる対主催を追加でやって来た自動人形軍団が身代わりとなることで防ぎ、そして―――
――――世界は流転する
「ここはかつて我が軍勢が駆け抜けた黄昏の大地・・私と苦楽を共にした盟友達が等しく心に焼き付けた景色だ」
三人の目の前に広がったのは黄金の夕暮れが大地を照りつける永久凍土の大地
「見よ、我が無双の軍勢を!」
「肉体は滅び、魂と成りてヴァルハラに召し上げられて、それでもなお我に忠する我が古き盟友達にして永劫不滅の英霊達よ!」
「時空を、次元の壁をも越えて我が言葉に応じる永遠の朋友たち。
彼らとの絆こそ我が至宝! 我が伝統! カピタン・グラツィアーノたる我が誇る最強の軍勢――」
「即ち――これこそが我が真なる『黄昏の曲芸騎士団』なり!」
―――空から舞い降りる数万数億の翼を身につけた戦乙女達
―――地面を覆い尽くす数万数億の騎馬兵士、重武装歩兵、魔導砲兵、大盾兵
―――ライフルとナイフ投げが得意な自動人形の将、『幻獣』を巧み自在に操る自動人形の将、下半身が巨大な蜘蛛となっている自動人形の将
―――不死鳥のごとく無限の炎矢を放つ赤い騎士、一千枚の大鏡より生み出された神器を扱う紫の騎士、大蛇の王の皮より作り上げた鞭を操る星霜の騎士
―――その他、竜殺しの大英雄、グレンデルを打ち倒せし闘争の王、氷の魔狼、世界を飲み込む大蛇、他カピタンの(脳内伝統における)盟友、戦友、伴侶、宿敵――その数は那由多の果てをいざ知らず
神々による魔改造の結果、膨大と増長を繰り広げたカピタンの完全なる自己暗示たる誇大妄想は、虚偽のものとはいえ心象風景として、アナザーイスカンダルウォッチのエネルギーを別の形で活用することで、固有結界レベルへと昇華
フェイスレスの「都合のいいように改竄した自分語り」の象徴と言われることが多い彼であるが、今この時、今この時のみはカピタンの「伝統」は
――絶対的な絶望という形で、ありす達の眼前に、その現実を思い知らしめるが如く、姿を確かなものとしていた
もはや敵なし、あとはただ蹂躙し、残りを皆殺すのみ。この総いなる軍勢の前に女騎士や雀風情の抵抗など意味を持たぬ
カピタンの思い通り、舌切り雀の紅閻魔も、アリス・ツーベルクも傷つき地に伏しる。残るは橘ありすただ一人
だが、残酷なる神々の御使いとて一時は慈悲を与えうるもの。故にカピタンは橘ありすにチャンスを与える
「泣くがいい!泣いて我が足にすがりつくならば、貴様かこの二人、どちらかの命は助けてやってもよいぞ!」
それは、神々の無慈悲にして慈悲なる選択
紅雀と女騎士は叫ぶ、自分たちのことは良い、あなただけでも逃げてほしい、と
妄想の怪物は嘲笑う、命乞いの時間は残されていない、せいぜい泣き顔を我らが神の供物として捧げるが良い、と
だが、帰ってきた答えは、この場にいる誰もが予想だにしないものであった
「――どっちも断る」
……今、この娘はなんと言った? どっちも拒否しただと? この絶望的状況で?
カピタンは冷静に彼女の瞳を視た。――まだあの娘は絶望していない。むしろまだその瞳に消えぬ炎を宿している
ならばその炎、今この場で消し飛ばしてくれる――将に命を下し、彼女の命を消そうとする
――自動人形のナイフが少女の体を貫いた 少女は倒れない
――『幻獣』の一体が少女の脇腹に噛み付いた 少女は幻獣を振り払った
――蜘蛛足が彼女の体を刺し貫く 少女の炎は消えない
――自慢の雷撃が彼女に直撃する 少女はまだ倒れない そして笑みを浮かべた
何故だ、何故倒れない 何故尽きない なぜ――何故心折れない、絶望しない、何故だ、何故だ、何故だ!?
カピタン・グラツィアーノには理解できなかった 眼の前の現実が この思い通りにならない光景に
「何故だ!? 何故笑っていられる!? この億千億万の我が軍勢を前に!?」
「この絶望的な状況、たかが武器を持った程度の人間風情が、しろがねですらない貴様が、何故!?」
カピタン・グラツィアーノは叫ぶ。眼の前の今にもボロボロな少女に
「大切なことを教えてくれた快男児がいた」
「あの人は進んでって言ってくれた。道に迷おうと、泥濘に嵌まろうと、悩もうと、悲しくて後ろ向きになっても」
「それでも、止まらないで、進み続けろと――生きている限り、歩み続けろって」
それはカピタン・グラツィアーノにとって一番理解できない感情、理解できない『人間』の行動原理
「可能性はゼロじゃない――あのひとが教えてくれた」
「そして、私はこんな状況だからこそ――あの人みたいに、」
―――思い出した。あの少年と同じだ
『もう…泣かない…泣いてたら…誰も助けられないから…』
『「泣かないというだけで勝つつもりか?」』
『…だから今は泣くべきじゃない』
「不敵に『笑うべきなんだ』」
あの少年がしていた眼と同じ――気に入らない、忌々しい記憶だ!
そんな思考を繰り広げている暇もなく、倒れ伏した女二人が絶望を振り払い、我が眼前に立ち塞がっている事に気づく
あの娘が何を企んでいたかはわからんが、おそらく時間稼ぎのたぐいであろう。ならばその企みを貴様らの希望ごと叩き潰してやる――
「蹂躙せよ!」
全軍に指示を出し、全力を持って希望を摘み取ろうとする――だが、いつまで経っても二人の壁を突破できない
もはや戦闘もままならぬ程に傷を受けているはずだというのに
またしてもわからない、わからない、わからない、わからないわからないわからないわからない
わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない
わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない
わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない
わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない
わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない
わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない
―――何故っ! 何故っ! 倒れない!?
痺れを切らし、カピタンは自らありすを殺そうと突入。幸いにも二人は我が軍勢の相手に手を離せない
勝った!――その意識のまま『鉄風雷火』を少女に繰り出――
「よう、何が、『勝った』だ?」
繰り出したはずの『鉄風雷火』が、妙な液状系意味不明生物に無力化された事実を知るまでに、数秒ほどの沈黙があった
カピタンにとっての誤算 それは始皇帝組の一部メンバーがある事情で離れており、それが今帰ってきたのだ
そして真っ先に異常に気づいたのが、その身に大賢者のスキルを宿すスライム(大爆笑)みたいな存在、リルム=テンペスト
これにより状況は一変した
ユニークスキル『捕食者』は、対象を取り込むだけでなく、解析をすることで対象のスキルや魔法を習得することが出来る。
カピタン軍団に底こそ無いものの、これではただ我武者羅に相手に力を与えるだけの結果である
これのせいで突破は更に難しくなり、先の二人もリルム達が持ってきたであろう回復アイテムで回復している
そして、カピタンに対し、致命的な一撃が、――――カピタンが一番危惧していたありすによって繰り出された
―――そこは、ライブ会場のような場所
固有結界が別のものへと変貌し、困惑するカピタンを尻目に舞台の上には7人の軍服を纏ったアイドル
『生存本能ヴァルキュリア』
もっと強く もっと優しく なれたなら後悔は減るのかしら
歌が聞こえる あの娘の声以外にも、別の声が奏でる、『本物』の戦乙女達の歌
欲しいもの 欲しいと言えば 与えられる気がしていたあの頃
あの目障りな歌を止めようと兵たちに指示を出す――だが、兵らは反応しない
本能が叫ぶわ 守られるばかりのコドモじゃない もう私
兵だけではない、将も、唯一無二の盟友すらも
変わりたいと願う 守りたいもの守れる強さを
――全てが戦乙女達の歌に聞き入り、涙を流していたのだ
手に入れたいの この両手で
固有結界『黄昏の曲芸騎士団』には致命的な欠陥が存在していた
そもそも固有結界とは本人の心象風景を昇華してなるものであるのだが、わかっている通りカピタンの心象風景――伝統は嘘っぱち
存在しない伝統など本来固有結界に昇華出来ない――故に
固有結界によって呼び出された軍団は――全てカピタン・グラツィアーノの顔で統一されている
至極当然の結論であろう、彼の伝統は彼自身の脳内にしかないのだから。故にどれだけ数を増やそうと――どうあがこうとカピタン・グラツィアーノは『一人』なのだ
カピタン・グラツィアーノの『伝統』という不純物が、空っぽの入れ物に入った状態なのがカピタン・グラツィアーノが呼び出した軍団
眼の前で歌っているアイドルたちは、今ある姿こそ幻想であるものの、その積み重ね、その思いは『本物』だ
そう、不純物よりきれいな純物の方がきらびやかに輝く、つまりは
元より虚偽妄想の産物であるカピタンの『偽りの伝統』が、本物の戦乙女達の輝きに勝てる道理はなし
「偽物が本物に劣るとは限らない」とはいうが、こればっかりは覆しようがない現実だ
「馬鹿な!天地の始まりより連なる我が栄光の…我が歴史に…こんな…こんな耳障りな歌は…
やめろ…やめろ貴様ら!我が黄昏の曲芸騎士団は観客などではない!我々が主役なのだ!!舞台の主役は我わ…」
虚妄の騎士は叫ぶ。このような舞台は認められない、その目障りな歌はやめろと
だが歌が止むはずもない それどころか舞台は更に盛り上がる
生き残れ 胸が張り裂けそうな夜も越えて いつかの誓いを抱いて
戦うよ 君が立ち上がり続ける限りは 君こそが希望だから
共に行きたいから
「お前は主役になんかなれないよ、カピなんとか」
「嘘偽りの虚偽妄言で塗り固めた貴方の舞台なんてちっとも笑えないし、ちっとも面白くない」
「嘘っぱちの伝統じゃ、誰の心も本当の意味で動かせない」
「――嘘吐き人形(ドン・キホーテ)は風に飛ばされて、夢から覚めなさい!」
これは、真実の輝きによる痛快愉快な逆転劇
輝くアイドルたちの歌は、黄金の風となりて、嘘吐き騎士の虚妄を吹き飛ばす
それは正に風車、真実の姿を映し出す風車の大鏡
――ふざけるな、たかが人間風情のクソガキがァァァァァァァァ!!
もはや今のカピタンに、さっきまでの余裕も、態度も存在しなかった
激昂しながらありすの斬りかかるも、歌補正も入っているのかシンフォギアキャラレベルに舞台を縦横無尽に飛び回るありすを止められない
今のカピタンは宛ら滑稽な三流悪役
ならばと神々より賜った時穿ちの奥義『裏切り』にてその動きを――
「ようやく捕まえたでち!」――時穿ちの剣は紅い一閃にて砕かれた
ならば我が真の愛剣たる正義の剣と破壊の剣にて――
二人のありすが紡ぐ協奏曲にて破壊の剣はその右腕ごと砕かれた
せめて、せめて――あの目障りな歌姫の喉笛を――
「憐れね、カピなんとか。あなたの伝統なんで神々が取ってつけた妄想」
「そんな作り物の妄想は、『あなたには存在しない』。だから貴方は負けるのよ」
それが全ての引き金だった
――我が伝統が神々によって取り付けられた偽物だと?
――いや、これは、これは……!?
――無い!? 何故思い出せない!? 我が武勇伝が! 我が輝ける武勇が!?
――そうか、もしそうだというのであれば――否、否否否!
「我が伝統に――神々の、創造主の意思など関係ない!」
「そのような伝統は――私の伝統ではない!!」
――その発言の刹那、カピタンの体は泥のように崩れ落ちる
カピタン・グラツィアーノは、自らの存在意義を否定してしまったのだ
自動人形が自らの存在意義を、造物主を否定する、それの結末自らの『死』そのものだ
崩れ落ちる己が体、崩れ落ちる伝統、崩れ落ちる幻想
壊れた騎士は、何かを呻きながら、『輝き』を奪わんと手を伸ばす
騎士が最後に聞いた声は、景色は
「カピタン、貴方の伝統なんか」
『カピタン、お前の伝統なんて』
「『一瞬で忘れてやる』」
自らに唯一無二の敗北を刻みつけた少女/少年の声と姿を焼き付けながら
彼の武勇伝は絶望と虚無と『真実』の元に終幕の帳をおろした
最終更新:2024年01月19日 22:55