【名前】小股潜りの又市
【性別】男性
【出典】巷説百物語(アニメ版)
【スタンス】対主催
【人物】
幕府の権勢にも揺らぎの見え始めた幕末の世、闇が息づき魔物が恐れられていた時代に、闇から闇へと葬られる事件の始末を請け負う、妖しき小悪党一味。その中心人物として、脅す賺す誑かす丸め込む、恐るべき口八丁で様々な妖怪仕掛けを施す札売り御行姿の男。一人称は「奴(やつがれ)」。
自ら小悪党を以て任ずる飄々とした性格だが、人情を知り義を通す一面も持つ。仕掛けの最後に鈴の音とともに「御行奉為(おんぎょうしたてまつる)」と詠ずるのが
お約束である。
世界観や登場人物がみな戯画的に誇張され怪奇色の増したアニメ版ではドラゴンボールのフリーザ役などで知られる中尾隆聖がCVを担当し、目玉付きの偈箱(げばこ)を提げ杖を振るう白衣矮躯の姿で描かれた。
「邪心野心は闇に散り、残るは巷の妖しい噂――」
【ロワでの動向】
時代も常識も違う会場に放り込まれ少なからず混乱するも、この殺し合いを「始末すべき一件」と判断し、行動を開始する。原作に比べオカルト色・ファンタジー色の増したアニメ版出典とはいえ、専ら口先と悪巧みで以て立ち回った。
登場話では、雅@彼岸島Xとともに現れるも、得意の口八丁で「吸血鬼に与する使い走り」を演じ切り、命の危機を切り抜ける。なお、小悪党芝居があまりに上手かったため、状態表が出るまで普通にマーダー思考だと勘違いする未把握者が続出していた。
続いて、一刻堂@ゲゲゲの鬼太郎4期と遭遇。「ふむ、札売りの願人坊主――御行どのですか」「あンたは」「憑き物落としの拝み屋ですよ」「――何だか聞き覚えのあるお声でやすねェ」などと、CV原作者(アニメ巷説百物語でも「京極亭」を担当)相手にネタを披露する。
「妖怪変化を現象に分解する」「現象を妖怪変化に仕立て上げる」と対照的な生業同士らしく、それぞれのやり方でこの事態を解決することを告げあい、情報交換のみで別れたが、この時、「時空を改変する歌を歌う妖怪=さら小僧」について一刻堂から聞いている。
また、妖怪への復讐心から、人外を付け狙う危険スタンスとなっていた石動零@ゲゲゲの鬼太郎6期を惑乱・誘導するために、即席で妖怪をでっち上げ、他の参加者から遠ざけさせるなど、常の周到な仕掛けは無理と判断しつつ、力の弱さを自覚して情報工作や煽動面で働く。
最終的には、レイ・ラングレン@GUN×SWORDとの衝突を弁舌で回避させたことをきっかけに、孫悟空@ドラゴンボールGTと、才賀勝@からくりサーカスのコンビに合流。制限下にありながら強大な力を持つ悟空と、子供の身に天才的な頭脳と「転送(ダウンロード)」された技術を持つ勝を必要な人材と認め、星宮烈火@炎炎ノ消防隊による焔ビト被害や誤情報の拡散にもいち早く対処するなど、二人の参謀役を務めた。
「奴(やつがれ)も色んな人間を見てきたが――貴方のような人は初めてですねェ。相当色々背負ってらっしゃるようで」と、子どもの姿をしていても悟空には敬語を使っており、その参戦時期も含めた只ならぬ気配を察知して接していたようだ。悟空の側も又市に対し、「なぁんかおめぇ、オラの知ってるとびきりの悪党とそっくりな声してんな」と面白がっていた。
一方で、勝に対しては山岡百介とどこか通ずる真っ直ぐさやひたむきさを感じたらしく、何かと教え導き、「ずるがしこさ」を教授するなどしていた。
加藤鳴海と才賀エレオノールの二人の死を放送で知った際、葛藤の末に悟空の言葉で何とか踏み止まった勝とは、
「何黄昏れてンだい、天才さん」
「又市さん…僕は、弱いよ。今だって、悟空さんの言葉がなかったら、鳴海兄ちゃんやしろがねのために、殺し合いに乗ってたかもしれない…」
「……確かに、御前さんは弱ェ。だが、自分が弱ェことを知ってる。其処んとこは、御前さんからすりゃ不本意かもしれねェが、奴(やつがれ)も同じよ」
「……僕は、又市さんみたいに賢くない。ただ頭がいいってことと、賢いってことは、違うよね…」
「賢いんじゃねェ、狡いのさ。手前ら小股潜りは地べた這いずって、人様だまくらかして、おまんま食ってる小悪党だからよゥ。
けれどもな、御前さんは手前たちと違って、飽くまで真っ当で居ながら、狡くもなれる器だ。泣き乍らの帳尻合わせばかりが人の道じゃねえ。御前さんなら──清く正しく美しく、騙して賺して謀って、けじめつける事だって、出来るんじゃねェか」
と、いかにも彼らしい発破をかけている。
その後は、勝の頭脳と現代知識、「顔無し」由来の技術などを利用して、首輪の解析や主催の目的の操作、さらには参加者たちにかけられている「制限」を解除できる方法を探っていた。
一刻堂の死が放送された際には、「拝み屋の旦那、此度の仕事はこちらへ譲ってもらいやす」と言って鈴を鳴らす。
ロワイアルの佳境、個人で国家戦力級の実力を持つ「“鬼”の跡目」ことダグラス・バレット@ONE PIECE STAMPEDEとの戦闘では、居合わせたキュルル@けものフレンズ2に纏わりつく「何者か」の妖気を察するも、バレットの放つ覇王色の覇気に一介の小悪党が耐えうるはずもなく、失神。勝によって何とか助けられ、後方に下げられる。
激戦が続く中で覚醒、ようやく制限解除の方法を看破し、まず悟空にそれを伝えて超サイヤ人4への変身を可能にさせると、戦闘を悟空と勝に任せ、かつて惑わした石動、そして
東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険第4部 ダイヤモンドは砕けないなど、ほかの対主催たちへと制限を破る方法を「事触れ」して回った。
役を果たし、戦線へと帰還した又市は、バレットとの激戦の果て、悟空がその命を散らし、希望の四星球を残して消え去ったことを勝から告げられる。
「何だかね――そんな気がしていましたよ。あんた、童のなりをしていながら、やつがれなんぞ及びもつかねェ、“不思議”なお人だった――」
空へ向けてそう呟き、珍しく殊勝な黙祷を捧げた。
主催戦では、仕組まれた目論見を裏から崩すため、ロード・エルメロイⅡ世@ロード・エルメロイⅡ世の事件簿との談判の上、非戦闘員の協力を受けた上で潜入の任を担う。
その際、勝に悟空の四星球を託し、最後の会話を交わした。
「天才さんの調べてくれた、この不思議道具――そいつが、この腐れた催しの仕掛人の大事らしい。ついでに、拝み屋の旦那に教わった『悪ィ妖』の始末もつけなけりゃアな」
「……僕も、最後まで足掻くよ。悟空さんのくれた希望、鳴海兄ちゃんとしろがねのくれた勇気、絶対無駄にしない」
「――いい眼、するようになったじゃあねェか。
矢張りお前さんは奴どもみてぇな、ただの小悪党とは違う。お天道さんに顔向けて、歩いて行けらァ。ここを出たら、小股潜りとの付き合いなんぞ、忘れちまい――」
「イヤだ」
勝の即答に、又市は目を丸くする。
「僕は、覚えたことは絶対忘れない。
それに、又市さんは、僕のもう一人のお師匠だ。
だから、きっと一緒にここを出よう」
「…まったく、参ったね。芝居で役者をノセる、熱心な客みてえな目だ。
ついでにその石頭も、治した方がいいぜ」
そう言って、しゃん、と杖を鳴らすと、
「それじゃあよ。ちょっくら一仕掛け、行って参りやす――」
彼は、才賀勝の元から去っていった。
そして、潜り込んだ主催本拠地にて、保管されていた「奥の手」、マギアコナトスと組み合わされた、リセットシステムの根幹の一つ――時を巻き戻す力を持つ、ぺったらぺたらこのカセットテープ@ゲゲゲの鬼太郎(4期)を、又市は発見する……。
やがて、全ての参加者と主催者たちは聴いた。
ふいにあたりに満ち満ちた薄闇のどこかから、「聴こえてはならないはずの唄」が響き始めるのを。
♪ぺったら……ぺたらこ……ぺったっこ…
♪ぺったら……ぺたらこ……ぺったっこ…
「──奴(やつがれ)は魔除けの札撒き、渡り御行を生業と致しやす、又市と申す半端者に御座いやす…
なに、御前さま方が勝手に大事な唄を盗っていきなさったことを、怨みに思う妖(ばけもの)が居やがってね…」
♪ぺったら……ぺたらこ……ぺったっこ…
ぺったら…ぺたらこ……ぺったっこ…
……イヤァオ!!
♪川の流れは おれさまの お心次第だ なすがまま
♪人間どもには 邪魔させない 俺たちゃ妖怪 あの世はハッピー! ハッピーハッピーハッピー
それと同時に、手足を振るう異形の影があちこちに映り始める。終極の譚歌を歌う、妖怪「さら小僧」の、恨みがましい影が。
大慌てで逃げ出したり、混乱して同士討ち始めたりと散り散りになっていく主催拠点の兵力。
その一方で、狂気に呑まれマギアコナトスへと向かうブエナ・フェスタ@ONE PIECE STAMPEDEは、奏でられる唄の発信源を追い、ついにその場所を突き止める。
どうやってかはわからぬながら、幻の四番の制御を得、さら小僧を呼び起こした反逆者を見るや、配備されていたDIP(の装填銃)@ロジャー・ラビットで以て、危険なカセットテープを止めるため破壊。
そしてそのまま、さら小僧の影を次々と溶かしてゆくと、そこに立っていた扇動者である又市と揉み合いになりながら、彼を躊躇なく撃ち殺したのだった。
――全ては、小悪党の企んだ、妖怪仕掛けとも知らず。
小股潜りの又市に、時間改編の品を、本物の妖怪の唄の宿る神秘を、どうにかできる技など、ありはしない。
起きたことの悉くが、ただのまやかし。
勝の協力の下で作り上げた、幻燈仕掛けと音響装置による、「さら小僧」の幻影だったのだ。
(ざまァねえやな……
此度の一件、何時もながらの三文狂言、謀り騙りの安芝居よ──)
存在ごと溶かされてゆきながら、小悪党の札撒き御行は嗤った。
りん、と鈴の音が鳴る。
「────御行(おんぎょう)、奉為(したてまつる)」
最期の妖怪仕掛けは、見事、気取られることなく、その幕を下ろしたのである。
まやかしあやかしを操る小悪党は、戦闘力を持たぬ対主催ながら、口八丁と工作によって戦い、最後まで主催を「騙し切って」消えていった。
さらに、彼が置き土産のように施していたDIP銃へのアポリオン@からくりサーカスの細工は、その後、暴発によってドゥーム判事@ロジャー・ラビットの消滅をも引き起こすこととなる。
大勢を決めた、主演俳優ともいうべき参加者たちの陰で、まさしく仕事人として役を果たしたキャラだといえるだろう。
最終更新:2024年08月24日 11:22